No.523577

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十


 お待たせしました!

 今回は拠点話の第一弾です。

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2012-12-26 21:36:35 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6325   閲覧ユーザー数:4885

 

「それじゃぁ、みんないくわよぉぉぉぉぉ!!」

 

「ほわぁっ、ほわぁっっ、ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 今日も今日とて張三姉妹のライブは大盛況であった。

 

 ・・・・・・・

 

「ふう、今日もお客様で一杯だったわね~」

 

「ちぃ達がいるんだから当然でしょ!!」

 

 天和と地和がそう言ってはしゃいでいる横で、人和は算盤をはじきながら眉間

 

 に皺を寄せていた。

 

「どうしたの、人和?らいぶに問題でもあったの?」

 

「今日のらいぶは大成功なんだけど…やっぱり前に比べて収入が落ちてるわ」

 

「え~っ、でもいつも私達のらいぶは満員だよ?」

 

 天和のその言葉に人和はため息をつきながら答える。

 

「私達のらいぶはね。でもそれ以外の部分が芳しくないのよ」

 

「ちぃ達以外?…もしかして美羽が抜けたから?」

 

「ええ、間違い無くそれが原因ね」

 

 美羽が交州へ行ってからしばらく経ったが、代わりになるような歌い手は見つか

 

 らず、収入が落ちてきていたのである。

 

「それじゃ、私達がもっとらいぶをすればいいんだよ!」

 

 天和はそう言うが、

 

「それも考えたけど、限界があるわ。それに美羽のふぁんだった人達はそれだけで

 

 は戻って来ないし…」

 

 人和はそう言って再びため息をついた。

 

「よし!それじゃ、美羽の代わりになりそうな人をちぃ達で『すかうと』よ!!」

 

 地和の後先考えないこの発言で三姉妹は歌い手探しに行く事になったのである。

 

 

 

「というわけで、朱里と雛里!歌を歌おう!!」

 

「はわわっ!?何でしゅか、一体!?」

 

「あわわ、歌でしゅか?」

 

 いきなり執務室に入って来て、これといった説明も無く言葉を切り出す地和に

 

 二人は驚きのあまり、口が開いたままであった。

 

「いきなりごめんなさい。実は…」

 

 人和の説明でようやく二人は事態を飲み込む。

 

「はぁ…美羽さんの代わりですか」

 

「そう!だから二人をすかうとに来たのよ!!」

 

「朱里ちゃん、すかうとって何?」

 

「仕事に誘う事だよ。この場合は歌い手になりませんかって来ているの。地和さん、

 

 私の国の言葉を知っている人はまだ少数なんですから、言葉を使う時は気を付け

 

 てくださいね」

 

「うっ、わかったわよ」

 

 地和は朱里よりそう注意を受けるが、

 

「それはさておき、どう?歌を歌わない?」

 

 また強引なスカウトを続ける。

 

「わ、私は…朱里ちゃん、どうしよう。私、人前で歌うなんて出来ないよ~」

 

「雛里ちゃん、嫌なら嫌って言えばいいんだよ」

 

「それじゃ…地和さん、ごめんなさい。無理でしゅ」

 

「何でよ!!」

 

「「政務があるからです。それとも地和さんが代わりにやってくれるんですか?」」

 

「さようなら~」

 

 地和達は慌てて執務室から去っていった。

 

 

 

「地和ちゃん、人和ちゃん、輝里さんと燐里さんを連れてきたよ~」

 

 天和が輝里と燐里を連れてやってきた。

 

「何なのよ、天和?ちゃんと説明してってば」

 

「輝里、ここは人和に聞く方がいいと思うけど?」

 

 再び人和が説明する。

 

「へぇ~、いなくなった袁術の代わりねぇ(輝里と燐里は美羽とは会っていないので

 

 真名ではない)。で、私達が?」

 

「そう!どうかしら?」

 

「断ります」

 

 燐里は速攻でそう言った。

 

「何でよ!?ちょっと位考えてくれたって…」

 

 地和がそう反論したが、

 

「私はあくまでも軍師として一刀様にお仕えしているのであって、歌い手になる為に

 

 来たわけではないの。それとも何?あなたが軍師もやってくれるとでもいうのかし

 

 ら?そもそも、いきなり何も説明もしないで連れて来て、歌い手になれって言われ

 

 たって…」

 

 逆に燐里の一方的なまくし立てが小半刻ほど続き、地和は完全に白く燃え尽きてい

 

 たのであった。

 

 ちなみに輝里からは、

 

「歌っている暇があったら庫見家に出す本を書くので」

 

 という一言で断られたのである。

 

 

 

「意外に難しいものねぇ、すかうとって」

 

 それから幾人かに声をかけたが皆に断られ、三人は茶屋で一休みしていた。

 

「ちぃ姉さんが後先考えずに声かけるからよ」

 

「ぶぅ…じゃ、人和には何かいい案でもあるっていうの?」

 

「そ、それは…」

 

「今は喧嘩してる場合じゃないよ~。早く決めようよ~。お姉ちゃん疲れたよ~」

 

 三人がこれからどうするか悩んでいた時、

 

「ああ、ここにいたのか?」

 

 一刀が声をかけてきた。

 

「何、一刀?ちぃ達に何か用なの?」

 

「いや、随分城の者達をスカウトしてたと聞いてね。何か力になれる事はないかと

 

 思ってさ」

 

「もう一刀さんの耳にも入ってるんですか?」

 

「そもそも朱里に最初に声をかけてただろう?すぐに俺の所まで報告があったよ」

 

「申し訳ありません、普通に考えたら城の人達は皆さん忙しいのはわかっているの

 

 に…一刀さんまでに気を使わせるような事になるとは…」

 

 人和は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「別に謝るような事じゃないよ。それより新しい歌い手を確保する為にはどうするか

 

 を考える方が重要だろ?」

 

 

 

「一刀には何かいい考えがあるの?」

 

 地和にそう聞かれて、少し考える。

 

「そういえば、オーディションとかは考えないのか?」

 

「それも考えたのですけど、それなら今の芸の村の仕組みがそれを兼ねているわけで

 

 すし、あえて外にまでそういうのをいきなりやっちゃうと、中にいる芸人さん達に

 

 悪い気がしまして…」

 

「それじゃその人達が上ってくるまで待った方がいいんじゃないのか?」

 

「今、落ちてる収入を何とかしようって時にそんな悠長な事やってられないわよ!」

 

 ふむ、新しい歌い手の確保は急務だが外から手広く募集するつもりもないと…何か

 

 わがままな条件だな。なら後は…。

 

「そうだ、涼はどうなんだ?結構いい声してるし、人気もあるんだろ?」

 

 元黄巾党の将であった涼は、現在は芸の村の警備担当をしているのだが、結構美形

 

 な上に、よく通る声と凛々しい姿に彼女目当てに来る人間も少なくない状況となっ

 

 ていたのである。本人は戸惑っていたが。

 

「涼さんは確かにいい声してるんだけど…惜しいのよね~」

 

 そう言ったのは天和だった。

 

「惜しいって?」

 

「彼女の歌い方はちょっと独特でして…」

 

 人和がそう付け加える。

 

「そうそう、決して下手くそというわけじゃないんだけどね」

 

 地和もそう言った。三人共そういうんじゃダメなのだろうか?…でも、そこまで言わ

 

 れるような歌なら逆に聞いてみたい気もする。

 

「それなら一回、涼の歌を聞いてみたいな」

 

 

 

「何故、一刀様が私の歌を…?」

 

 涼は一人舞台の上に立っていた。ちなみに客席には俺と三姉妹のみである。

 

「まあまあ、いいから一曲聞かせてよ」

 

「は、はぁ…」

 

 怪訝な顔をしながらも涼は歌いだした。

 

 ふむ…確かに天和達の歌い方とはちょっと違うけど、別に悪いわけではないような…

 

 ああ、そうか。この歌い方って…。

 

「あ、あの、どうでした?」

 

 涼はおずおずと聞いてくる。

 

「こぶしの利いた歌い方だね」

 

「こぶし?拳で殴られたような衝撃のする歌という事なんですね…やっぱりダメなんだ」

 

 涼は舞台の上でへたりこむ。

 

「いやいや、そういう意味ではなくてね…なら俺が歌を教えるからそれを歌ってみてよ。

 

 多分それが一番早いからね」

 

「はぁ…わかりました」

 

 こうしてしばらく涼に歌を教える事になった。これなら、きっとうまくいくはずなのだ

 

 が…問題はこれが受け入れられるかどうかだな。

 

 

 

 それからしばらくして…。

 

「涼さんの歌、随分評判のようですよ。その効果で芸の村の収入も大分回復したとか」

 

「おおっ、それは何より。俺も教えた甲斐があったというものだな」

 

 朱里より報告を受け、俺は我が事のように喜ぶ。実際半分は我が事なんだけどね。

 

「でも、涼さんのライブの時だけ他の人の時と雰囲気が違うとか…」

 

「ほう、何だろう?気になるな、一度行ってみるか」

 

 ・・・・・・

 

「確かに雰囲気というか…年齢層が違うな、完全に」

 

 涼のライブが始まる直前、舞台の客席に集まっていたのは…大半がご老人だった。

 

「確かに今までは来る事の無かった人達なんですけどね。そういう意味では大成功

 

 といって間違い無いのですけど…本当に涼さんのライブの時だけなんですよ」

 

 人和がそう言って不思議そうな顔をしていた。

 

 やはりこっちでもああいう歌はこういう方々にうけるのだろうか?

 

 それからすぐに幕が上がり、涼のライブが始まった。

 

「皆様、今日も私の歌を聞きに来てくださりありがとうございます。それではまず

 

 一曲目『恋は火の舞、剣の舞』をお聞きください」

 

 音楽が流れ、涼が歌いだす。客席の人は、じっと歌に聞き入っている。

 

 そして歌い終わった途端、全員が立ち上がり拍手喝采を送る。

 

「いや~~~、やっぱり涼さんの歌はええの~」

 

「まったくまったく、涼さんの歌を聞くだけで十年は長生き出来そうな気がするわ」

 

 目の前にいる二人のご老人はそうしみじみと言っていた。

 

 

 

「はわわ~、こっちでも演歌はお年寄りに大好評ですね」

 

 朱里もそうしみじみと言っていた。

 

「演歌?一刀さんが涼さんに教えた歌はそういうのですか?」

 

 人和がそう聞いてくる。そういえば、ちゃんとは教えてなかったな。

 

「ああ、俺達の国独特の歌だよ。涼の歌い方は演歌に適していたんだよ」

 

「へぇ、それじゃあの服も演歌の時の?」

 

 『あの服』とは涼が着ている服…着物、しかも振袖である。

 

「あれは俺の国独特の衣装を少し構成し直した物だけどね。俺達の国では、演歌を歌う

 

 時にああいう衣装を着る人が多いんだよ」

 

 しかし見れば見るほど涼は着物が似合っているなぁ。

 

 俺が少しばかり見惚れていると、朱里が少し機嫌悪そうに言う。

 

「どうせ私がああいうの着たら七五三みたいですよ、ふん」

 

 その言葉に俺は苦笑を隠せず、意味の分かっていない人和はぽかんとしていた。

 

「さあさあ、折角の涼の歌なんだから楽しんで聞こう」

 

 俺達は舞台に眼を向ける。

 

「それでは次の歌を聞いてください」

 

 涼はとても嬉しそうに舞台で歌っていたのであった。

 

 

 

                                  続く(かも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は拠点第一弾という事で、張三姉妹と涼さんの巻でした。

 

 何か最後は涼さんオンステージで終わってしまいましたが…。

 

 我ながらちょっとゴチャゴチャした感がしないでもないですが、

 

 拠点の話は少々遊びが入ったりするのでその辺はご勘弁を。

 

 次回、誰の話にするかはまだ未定です。リクエストは引き続き

 

 募集中ですので。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ二十一でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 さすがに次の投稿は年を越すと思いますので。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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