第百七十四技 黒の策士・キリト
キリトSide
あれから俺達は昼食を取り、再び色々と周っている。
最初は装飾店や雑貨屋、家具店を見て回ったので、現在は武器屋などを見ている。
とは言っても、攻略組御用達などの武器屋とは違い、それほど能力の高いものなどがあるわけでもない。
しかし、消耗品として購入する分には安い価格のものが多かった。
改めてこの街を見て回ると、バザーのようなものに思える。人が多く、活気もある。
数日前までは、ここも事件の影響で何もない状態だったと聞く。
それがすぐにここまで持ち直す辺り、この世界に閉じ込められたプレイヤー達はやはり頼もしいのかもしれない。
それにしても、人が多い……ま、これを利用しない手は無いな。
俺は手早くメッセージを書いて、ヤマトに送信し、彼はそれを読んだのか俺に向けて首肯した。
俺はというとアスナの手を握った。
「キリトくん///?」
「はぐれたらいけないから、な?」
「うん///♪」
アスナは頬を微かに紅く染めて、微笑みを浮かべた……ホントに可愛いなぁ。
おっと、今はそれどころじゃない。
「あれ? テツ達はどこ行ったんだ?」
「え? ホントだ、はぐれたかな?」
俺が聞くとケイタもそれに気付いた様子だ。
「あ、ヤマトからメッセージが届いたよ」
「なんて書いてあるの?」
サチがメッセージのことを言ったのでアスナが訊ねると、サチが読み上げる。
―――『ごめん、テツとロックがはしゃぎ過ぎてはぐれちゃった。二人を捕まえたらそっちに合流するよ』
「……だって」
「あの二人は…」
読み上げたサチと呆れるケイタ。
ちなみに本当は既に三人で行動しており、離れたところにいるのだが、
《索敵》スキルやフレンドリストで確認しない限りは、発見することはできないだろう。
「とりあえず、俺達だけで動くか」
「そうしよう」
俺は再びアスナの手を強く、それでいて優しく握って歩き出した。アスナは頬を染めながら俺の隣を歩く。
キリトSide Out
ケイタSide
俺とサチの少し前を、手を繋いで歩くキリトとアスナ。その様は完全に夫婦に見える…夫婦なんだけどね。
まぁ二人とも美男美女なうえに強いし、頭も良いみたいだからな~。
そう考えているとサチが少し遅れているのに気付いた。どうやら人が多くて歩きにくいみたいだ。
俺はサチに近づいて彼女に手を差し伸べた。
「ケイタ?」
「ほら、はぐれたら大変だからさ。小学校の頃とかだってこうしただろ?」
サチは昔から臆病なところがあった。
小学生の頃はよく祭りとかで迷子になりそうになって、俺が手を引いたのを覚えている。
この世界にきて、キリトの指導を受けるようになってからはそれも少なくなってきたけど、
まだこういうところは残ってるんだなぁ。
「うん、ありがとう///」
「っ、ど、どういたしまして…///」
頬を微かに紅く染め笑顔を浮かべてお礼を言ったサチにドキッっとした。
サチってこんな顔も出来るんだ…///
「ケイタ、サチ、どうした?」
「な、なんでもない! 今行くよ! いこ、サチ///」
「う、うん//////」
キリトに呼ばれて俺が促すとサチが俺の手を握る。自分の顔が紅くなるのが分かった。気のせいだ、絶対、うん。
さっきキリトがあんな事を聞いてきたから、意識しているだけだ……きっと。と、その時、
―――ドンッ!
「きゃっ!?」
「っ、サチ!」
他のプレイヤーとぶつかり、倒れそうになるサチを抱きとめた。
「大丈夫か?」
「大丈夫…へい、き……//////」
「ぁ……//////」
その結果、至近距離で見つめ合う形になった。サチの顔が近い…。
俺はさすがに不味いと思って彼女から離れた。
「ご、ごめんな///」
「ホントに、へいきだから…///」
お互いに気まずくなってしまった時だった。
「二人とも、大丈夫なのか?」
「す、すぐ行くって、サチ///?」
キリトに聞かれたので答えるとサチが俺の手を再び握ってきた。
「い、行こ///」
これは、照れる…///
ケイタSide Out
キリトSide
ふぅ~ん、中々いい感じになってきているじゃないか。
「……キリトくんって、策士なんだね…」
「俺自体は何もしてないけどな。周囲の状況を利用したに過ぎないし」
アスナはそう言ったが俺自身はほとんど何もしていない。
やったのはテツ達にこの場から少しだけ離れるように指示しただけで、
あとはケイタとサチの性格や関係を考慮した結果が、自然にああなるようになっただけである。
「これでケイタもかなり意識するようになっただろうし、あとはサチ次第だからな。このままダブルデートと洒落込むか」
「ふふ、そうしようか///」
俺とアスナは手を繋いで歩いてくるケイタとサチを待った。
キリトSide Out
ケイタSide
あのあと、再びヤマトからメッセージが届いた。
テツとロックが色々と見たがっているからもう少し合流が遅れるらしい。
そういうわけで、俺とサチとキリトとアスナの四人で周っている。
しばらくして、休憩のために俺とキリトは露店のドリンクを買いに行く為に、二人から離れてしまった。
そしていま、サチとアスナの許に戻ってきたのだけれど……二人は三人の男性プレイヤーに言い寄られていた。
もちろんテツ達ではなく、見知らぬ人間だった。
その時、俺の中で何か不快感みたいなものが沸き起こった。
それに対して考えるよりも、俺の足が一歩を踏み出していた。
隣のキリトからは……異常なまでの黒いオーラが見えたとだけ、言っておこう…。
ケイタSide Out
To be continued……
後書きです。
というわけで、キリトさんは平常運転なわけですよw
ケイタがアスナの作戦を天然で実行し、サチも行動しました。
まぁ、ホントに偶然(という名の作者の意図)なんですけどね~w
次回で不埒な輩を撃退・・・するといいなぁ~。
それでは・・・。
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第百七十四話になります。
平常運転のキリトさんですw
どうぞ・・・。