No.521578

真・恋姫無双 短編 『○○サンタがやって来るっ!?』

こんにちは。
あと数日でクリスマスですね。
なので、今回は小ネタの貧乳噺はちょっとお休みして、クリスマスにちなんだお話を書いてみました。

誤字脱字、ご意見ご感想等ありしたら、是非にコメントを。

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2012-12-22 20:24:50 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1653   閲覧ユーザー数:1539

 もうすぐ、クリスマス(暦が違うからアレだけど、たぶん)。

 そんな折、三国鼎立の象徴にして天の種馬・北郷一刀は思った。

 

 この世界には龍がいる。

 他にも猫耳と尻尾の生えた人間や妖術使い、謎の筋肉ダルマだって存在する。

 

 ってことは。

 かの高名な赤服の老人、『サンタクロース』だっているんじゃないか、と。

 

 だが彼の推測に反して、この世界――この外史にサンタクロースはいなかった。

 それはこの外史の基本である三国時代(紀元二世紀後半から三世紀初頭)に、サンタクロースの元になった聖人『聖ニコラウス』の伝説(紀元四世紀)がまだ存在していないこととはなんの関係もない。

 細かな時代背景なんて軽く超越するのが『外史』であって、別にサンタの一人や二人、その辺に転がっていても不思議はなかったのだ。

 たまたま、今回の外史が「サンタのいない外史」だった、というだけで。

 しかし――外史は書き換えられる。

 かつて、完全に消滅するはずだったとある外史に生きた英傑たちが、一刀の想いによってその存在を保ったように。

 

 ――サンタクロースだっているんじゃないか?

 

 それは子供が大人になるにしたがい忘れて行く無邪気な夢。

 

 ――サンタクロースにいて欲しい。

 

 けれどだからこそ尊く、その『力』は強烈で。

 

 ――サンタクロースは、いる!

 

 一刀の思いは想いとなった。

 

 さあ、今。

 『サンタクロース』が、生まれる。

 ✝✝✝

 

「はっくしょんっ! ……うあ?」

 

 その日、公孫伯珪こと白蓮は自分のくしゃみで目を覚ました。

 そして特に意味なく仰向けの状態からくるっとうつ伏せになり、寝具からもぞもぞ這い出た彼女は、

 

「うぅ、今朝も冷えるなぁ」

 

 と、普通のことを言う。

 今年の冬は冷え込むのが例年より遅かったが、ここ一月は紛れなく寒かった。

 もっとも、現在寝起きしている都より北辺で生まれ育った白蓮は比較的寒さに強い。

 

 強い、はずなのだが。

 

「……ぶるぶるっ。な、なんか今日はいつもより寒くないか? 特に腹まわりと足が妙に冷えるような……」

 

 立ち上がった白蓮が、両手で自分の身体を抱きしめながら、震える。

 いくら寒さに強いとは言え、眠る前にはしっかり寝間着を着込んでいた。

 これで普段なら、寒い寒いと言いつつもぱぱっと着替え、食堂なり厠へ向かうのが彼女の朝。

 そのあと午前中は普通に調錬をこなし、正午には普通に昼食をとり、午後は普通に事務仕事に打ち込み、夕方普通に夕食と酒を普通に嗜んで普通に寝る。

 それが普通の白蓮な一日である。

 

 しかしこの日は。

 そんな白蓮が慣れ親しんだ普通とは少々勝手が違っていた。

 

 やたらと冷えるのも着替えちゃえばなんとかなるか、と思い、寝間着を脱ごうとした白蓮が叫ぶ。

 

「な、なんだこれ!?」

 

 『それ』に気付いた白蓮の脳裏をまずよぎったのは、

 

(……北郷がなにかしたのか!?)

 

 だった。

 何故って、着ている服が就寝前そうだったはずの寝間着ではなく、見たことのない意匠のものに変わっていたからだ。

 ただ良く観察してみれば、基本的なデザイン自体は彼女の普段着とそれほど違いがあるわけでもない。

 両肩と二の腕を露出し、肘から手首にかけてを別の布で覆っているのは同じだし、ミニスカートなのも同じ。

 何の生地で出来ているのか、覆われている部分は常よりも暖かいくらいである。

 だが明らかな違いはウエストに布がなく、おへそ丸出しになっているのと、ソックスをはいておらず素足なところ。

 それと、色。

 もともと上着は赤っぽいものを着用しているが、いま身につけているのは、上着・腕・スカート全部、それよりもっと赤い。

 そしてその赤さをより引き立たせるごとく、ところどころに白いふわふわした毛皮があしらってある。

 露出は多いが、どことなく可愛らしい恰好だった。

(北郷が……寝ている私の服を脱がしてこれを着せた?)

 

 そう考えた白蓮はしかし、その考えをすぐに一蹴する。

 

「いやいや、北郷に限ってそんなまさか。……着替えさせただけで何もしないとか、有り得ん」

 

 うんうん、と一人頷く白蓮。

 あらぬ方向に信頼されている一刀だった。

 

「けどそれじゃ……ん?」

 

 ――どたどたどたどたっ!

 

 一刀犯行説を捨て、他の可能性を思い浮かべようとした彼女の耳が、なにやら騒がしい音を捕える。

 どうやら誰かが慌てて廊下を走っているらしく――そして、その音はどんどん近づいて、

 

 ――ドンドンドンッ!

 

 彼女の部屋の前で止まった足音は、強いノックの音に代わった。

 

「白蓮! 起きてるかっ! 白蓮!」

「北郷?」

 

 ドアの向こうから聞こえて来るのは一刀のものだ。

 

(やっぱりこれは北郷の仕業だったのか?)

 

 と思わないでもなかったが、それよりも常ならぬノックと強さと、ずいぶん切迫した声の質の方が、いまは気になる。

 変な服装を見られてしまうのに多少抵抗はあるものの、

 

「起きてるぞ。入ってくれて大丈夫だ」

 

 扉に向けて声をかけた。

 するとよほど慌てているのか、転がるようにして部屋に入ってきた一刀が、一気にまくしたてる。 

 

「た、大変なんだよ白蓮! 今日早く目が覚めたからちょっと散歩でもと思って厩の辺りまで言ったんだ! そうしたら何か馬たち騒いでてな、どうしたのかと思って厩のなかを覗いてみた! そして吃驚した! いない、いや、いたんだ!」

 

 それを聞いた白蓮は――話がまったく理解できなかった。

 

「いやおい! それじゃ全然意味がわかんないだろ、北郷!? もう少し落ち着いて話してくれ」

「あ、ああ。すまん、本当に驚いたんで、ちょっとな。……こほん、じゃあ改めて続きを話そう。と、それとな白蓮? 話を聞いても、できれば冷静でいて欲し……………………って、おまえ、その恰好っ!!?」

 

 白蓮の指摘で心を落ち着かせた一刀は、それまで目に入っていなかった彼女の服装に気付いたらしい。

 

「……あー、なんかさ、起きたらいつの間かこんな服になってたんだ。念のため聞くが、これ、おまえの――」

「……じぃーーーーーーーーー」

「ちょっ!? な、なんだよ、そんなに見るなっ……こっ恥ずかしいじゃないかっ!」

 

 突然食い入るように見つめられた白蓮が照れる。

 そして、一方の一刀は――

 

「ミ、ミニスカサンタ……否っ! ミニスカ『公孫サンタ』さんっ!! やった、やったよマム! サンタクロースはホントにいたんだっ!!!」

 

 力いっぱい叫び、

 

「ひゃっほぅ♪」

「う、うわあぁぁぁっ!?」

 

 白蓮に抱きついたのだった。

 ✝✝✝

 

 ――この日を境として、大陸に新たな伝説が生まれた。

 

『冬のとある日、公孫某という赤い服を着た普通の乙女が、ひどく苦労しながら子供たちに贈り物をする』

 

 ――その伝説は、『公孫惨多苦労主(サンタクロース)の物語』として、末永く語り継がれたという。

                                      

                                           ――完

                                           

 ✝✝✝ 

【おまけ】

 

「ところで北郷。おまえ、なんでそんなに慌ててたんだ?」

「おおっ! そうだ、忘れてた。あのな、白蓮の白馬がいなくなってた」

「ああ、そうか……って、えええええっ!? わ、私の白馬っ! 私の白馬がっ!? た、大変だ、早く探してやらなきゃああああああわわわわわわっ!!!?」

「お、落ち着け白蓮! 俺もさっきまではそう思ってたんだが、おそらく大丈夫だ」

「な、なんでだよ!?」

「代わりに真っ白なトナカイ――まぁ、でかい鹿だな――がいたから。おそらく、そいつが元・白馬だろう」

「………………は?」

「さて。こうなったからには、急いで準備しなくちゃならん。忙しくなるぞー」

「え、あの、私全然話についていけないんだが……」

「はっはっは! 問題ない! 説明は準備しながらでも出来るからな! けど、とりあえず簡単に話しておこう。……白蓮」

「な、なんだ?」

「キミはこれから、白い大鹿にまたがり、夜な夜な子供たちの枕元へ贈り物を置くのが仕事になるんだ。良く心得て欲しい」

「まったく意味がわからん!?」

「ちなみに、その仕事は基本一年に一日だけだから……あとは、あまり部屋から出ないでね? この仕事につく人間は、普段出来るだけ人目につかない方が良いんだ。贈り物の準備とかは、専用の部下をつけることにするからさ」

「や、やだよ!? そんな生活してたら私――完全に皆から忘れられちゃうだろーーーーーーーーーーっ!!?」

 


 
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