それぞれ激戦を続けるゼロと皇魔。
しかし、戦っているのは二人だけではなかった。
「フッフッフッ…」
ここに、もう一つの戦いがある。
「ハッハッハッ…!!」
それは、ジャンバードとダークゴーネの戦い。といっても、逃げ回るジャンバードをダークゴーネがひたすら光線、ゴーネビームで攻撃する、一方的なものであったが。無論、ジャンバードも黙ってやられるつもりはない。ミサイル、ジャンミサイルを大量に発射して反撃する。それを見たダークゴーネは、ゴーネビームを一度に何発も、そしてあらゆる方向に発射して多数、撃墜し、撃ちもらしのミサイルを回避。戻ってきたミサイルを再びゴーネビームで撃墜することによって、難を逃れた。
と、ダークゴーネはジャンバードに向けて、片手から鞭を伸ばす。鞭、ゴーネビュートは、まるで意思を持っているかのようにジャンバードを追いかけ、ジャンバードの片翼に絡み付いた。
「エネルギーを吸収されています!エメラル鉱石の残りが、もう僅かしかありません!」
「ええっ!?」
ダークゴーネはゴーネビュートを使い、相手のエネルギーを吸収することができる。ジャンバードは自身に起きたその異常を伝え、ナオは焦った。
「ふん!」
ダークゴーネはそのままゴーネビュートを引っ張り、勢いをつけてジャンバードを地面に叩きつけた。
一方では、ミラーナイトとアイアロンが死闘を繰り広げている。アイアロンはワイドゼロショットを無傷で受けきれるほどの頑丈な肉体、スペースボディーを持っており、それを利用してミラーナイトの攻撃を防ぎながら、自慢の怪力でミラーナイトを追い詰めていた。
「鏡の星は脆かったなぁ!お前も!ヒヒヒ…!!」
自分の有利を誇るあまり、自分が破壊した鏡の星のこと、それからミラーナイトのことを馬鹿にするアイアロン。
「…!!」
自分と自分の母国の誇りを汚されたことに、ミラーナイトは静かな怒りを燃やすのだった。
「ふん!ふん!」
地に落ちたジャンバードを完全に破壊しようと、連続で踏みつけるダークゴーネ。
「このままでは、私の機能が停止してしまいます!脱出の準備を!!」
悟空達は他のベリアル軍にかかりきりであり、援軍は期待できない。勝機を失ったと見たジャンバードは、ナオとエメラナに脱出を促す。
しかし、エメラナは無言で席を立ち、どこかへ走っていった。
「姫様!?どちらへ!?」
「エメラナ!?」
慌てて追いかけるナオ。
エメラナがたどり着いたのは、ジャンバードの内部にある特殊区画。
「まさか!?いけません姫様!!」
エメラナはジャンバードの制止を振り切り、指紋認証システムに手をかざして、区画の最奥にあるハッチを開ける。この区画はジャンバードの内部の中で最も重要なものの一つであり、万が一ジャンバードが機能不全に陥った場合、エスメラルダ王家の者が手動でハッチを開けられるようになっているのだ。よって、ジャンバードからのコントロールも受け付けない。
「ジャンバード。あなたはまだ戦える」
ハッチの前に立つエメラナ。すると、エメラナの身体が、エメラル鉱石と同じ鮮やかな緑色の光を帯び始めた。
「私の体内には、エメラル鉱石と同じエネルギーが宿っています。それがエスメラルダ王家の血…」
エメラナは、自分がジャンバードのエネルギー源となることで、足りなくなった燃料分のパワーを補おうとしているのである。
「しかしそれは…!!」
無論、ジャンバードもそれがどれだけ危険かは理解している。もしエメラナが全てのエネルギーを失えば、死んでしまう可能性もあるのだ。
「別の宇宙から来たゼロ達が、命懸けで戦っているのです!!」
しかし、エメラナの決意は固かった。ゼロ達の戦いが、エメラナに『守られっぱなしは嫌だ』と、戦う決意をさせたのだ。
「私も…!!」
「姫様!!」
「エメラナ!!」
ジャンバードと追いついたナオが止めるのも聞かず、ハッチの中に飛び込むエメラナ。
こうして、ダウン寸前だったジャンバードのシステムは復旧した。
「…ナオ。私に力を貸してくれ」
ジャンバードは、どうすることもできずにハッチの前へ座り込んでしまったナオに語りかける。
ナオはジャンバードの誘導に従い、さっきとはまた別の特殊区画へ来た。その部屋の中央にあるステージに、ナオを立たせる。
「ここに立てばいいの?」
「そうだ。」
これで、とりあえず第一条件はクリア。ジャンバードはとあるシステムを作動させるため、ナオに頼む。
「叫べナオ。『ジャンファイト』と!」
「…」
そして、ナオは言われる通りに叫ぶ。
「ジャーンファイッ!!」
すると、ジャンバードが緑色の光に包まれ、衝撃波を放ってダークゴーネを吹き飛ばした。しかし、まだ終わらない。素早く発進したジャンバードは、空中で変形し、巨大なロボットになったのだ。ロボットは立ち上がったダークゴーネを、バーニアを駆使したタックルで突き飛ばし、
「ジャンナックル!!」
ロケットパンチでダークゴーネを殴り飛ばした。飛んでいった腕は、自動で戻ってくる。
「すごいよジャンバード!」
ナオはジャンバードにこれだけの力があったことに驚くが、今の彼はもうジャンバードではない。
「ジャンボットと呼んでくれ。」
その名はジャンボット。エスメラルダを守護する、鋼鉄の武人。
「共に戦おう!ジャンブレード!!」
ジャンボットの右腕から、緑色のブレードが出現する。そのまま駆け出したジャンボット。どうにか持ち直したダークゴーネは、同じくゴーネブレードという剣を出してジャンボットと斬り合う。
ジャンボットには、ジャンファイトしたパイロットと動きをシンクロさせて戦うシステムが存在する。つまり、パイロットの戦闘力が高ければ高いほど、ジャンボットも強くなるのだ。ジャンボットの動きはナオの動きと連動し、ダークゴーネを追い詰める。
「うわっ!」
ついにゴーネブレードを弾かれたダークゴーネ。間髪入れずに斬り込むジャンボット。しかし、ダークゴーネは突如として消えてしまい、ジャンボットの攻撃は空振りする。
「センサーに反応しない…」
いつどこから襲われても対応できるよう、ジャンボットは周囲を警戒。だが、ダークゴーネはセンサーに反応しなかった。それもそのはず。ダークゴーネには、闇から闇へ瞬間移動する能力があるのだ。ジャンボットが斬り込んだ瞬間、『建物の影という闇』へと逃げ込んでいたダークゴーネは、影を経由してジャンボットから離れた場所へと逃げていた。
「フッフッフ…!!」
そして、今またジャンボットの影という闇から出現したダークゴーネは、ゴーネビュートをジャンボットに巻き付け、電流攻撃を喰らわせる。
「うわああああああああああああ!!!」
ジャンボットが受けている電撃を、自分も受けるナオ。ジャンファイトすれば確かにジャンボットとシンクロして戦えるが、ジャンボットが受けたダメージまでがシンクロし、パイロットに反映されてしまうのだ。
「フッフッフ…」
とどめを刺そうとゴーネブレードを出して、ジャンボットに接近するダークゴーネ。
「今だよジャンボット!!」
しかし、それはダークゴーネを誘き寄せ、確実に仕留めるための罠だった。
「バトルアックス!!」
ジャンボットの身体から斧が分離し、ゴーネビュートを切断。斧、バトルアックスを掴み取ったジャンボットは、身体を回転させながら振り回し、一撃を放つ。
「「必殺・風車(かざぐるま)!!!」」その一撃はゴーネブレードを叩き折り、ダークゴーネの腹へクリーンヒット。
「グワアアアアアアアアアアア!!!!」
ダークゴーネは爆発した。
「フッ!フッ!」
跳躍しつつ両手から鋭利な光弾、ミラーナイフを放ってアイアロンを攻撃するミラーナイト。アイアロンはそれをスペースボディーで弾き、
「うおおおーっ!!」
着地したミラーナイトに突撃する。ミラーナイトは、再び跳躍して回避。
「!!」
その時、ミラーナイトは見た。自分がミラーナイフを当てた箇所に、小さいが傷がついている。
「はっ!!」
突破口を見出だしたミラーナイトは、鏡を生み出してアイアロンを包囲する。
「鏡だと!?」
「シルバークロス!!」
驚くアイアロンにシルバークロスを放つミラーナイト。アイアロンはこれをスペースボディーで弾くが、弾かれたシルバークロスは鏡に当たって反射し、再度アイアロンのスペースボディーへ。この鏡はディフェンスミラーという技で、本来は防御技なのだが、こんな感じに相手を包囲し、自分の技を反射させることもできる。
「そんなもん痛くも痒くもないわ!!」
だが、アイアロンにダメージはない。それでも、シルバークロスは反射を続ける。
「そろそろお見舞いしてやろうかい!フヒヒヒ…!!」
アイアロンソニックのチャージを始めるアイアロン。
次の瞬間、
「セルーーーッ!!!」
アイアロンの真上から声がした。そこにいるのは、両手を前に構えているベジータ。余裕ができたので、ミラーナイトを助けに来たのだ。
「貴様にこれを受けられるか!!ははは!!無理だな!!貴様はただの臆病者だーーっ!!!」
「だから俺はセルじゃねぇって言ってんだろ!!」
アイアロンは相変わらず自分をセルと呼び続けるベジータに抗議する。
そして、また次の瞬間、シルバークロスがアイアロンの頭部を貫通した。
「まさか!同じ所に、正確に…!!」
ミラーナイトは、ミラーナイフを当てた箇所についていた傷を狙い、さらに何度もそこへ攻撃をぶつけることで、鉄壁のスペースボディーを突破しようとしていたのだ。しかもベジータから声をかけられたせいで反撃のタイミングを失い、受け続けるをえなくなってしまった。それらの要因が重なり、とうとうスペースボディーは破られたのだ。
「ファイナルフラーーーッシュ!!!!」
さらに両手から光線を放つベジータ。
「ブルアアアアアアアアアアアア!!!!!」
シルバークロスとファイナルフラッシュの連撃を受け、アイアロンは爆発した。
「脆かったのは、お前だ!」
「これが超エリートサイヤ人の、圧倒的戦闘力だ!」
皇魔は、本来なら苦もなく倒せるはずのニセ暗黒四天王達を相手に苦戦していた。やはり一体一体がオリジナルの数倍近くパワーアップしていることと、皇魔のパワーが弱体化していることも原因だが、一番の原因はグローザム。今の皇魔にグローザムを完全消滅させるパワーは、ない。しかも、エンペラ星人の姿で活動できる限界が、もう目前に迫っている。このままでは勝てない。そんな皇魔に、ニセ暗黒四天王達が一斉に光線を放った。すかさずリフレクターマントで防ぐ皇魔。
(…こうなれば…)
今の皇魔に必要なものは、活動時間を伸ばすためのエネルギーと、グローザムを一撃で消滅させるパワー。これらの条件を一度に満たせる方法が、あるにはある。ただし、非常に危険だ。
(連中の光線技を受け、それを余のエネルギーとして吸収する…だが…)
失敗すれば、恐らく死んでしまう。今受けた光線が、予想以上の威力だったからだ。そもそも、皇魔にそんなスキルはない。スキルはないが、自分の中に流れ込んできた北斗神拳の教えに、こんなものがある。
『激流に身を任せ、同化する。』
これは北斗神拳の柔の拳の極意だ。北斗神拳の技は大まかに分類すると、『剛の拳』と『柔の拳』がある。剛の拳は、破壊力重視の攻めの技。対照的に柔の拳は、受け流しや防御に徹し、相手の力を利用したり隙を突いて決定打を喰らわせる守りの技。今回必要なのは、柔の拳。その極意。無理に相手の力の流れに逆らおうとはせず、その流れに身を任せ、同化し、利用する。これをエネルギーの方に応用すれば、相手のエネルギーを自分のエネルギーにすることも、理論上は可能だ。
(失敗すれば死…だが、やるしかあるまい!)
皇魔が今まで使っていたのは剛の拳で、柔の拳を使うのはこれが初めて。
(どちらも会得せねば、この先の戦いに勝つなど不可能!!)
皇魔はよりエネルギーを吸収しやすくするため、そして感覚をイメージしやすくするために、リフレクターマントを脱ぎ捨てる。
「来い!!」
挑発。それを見たニセ暗黒四天王達は、再び一斉に光線を放つ。そして、皇魔はそれを受けた。
(激流に身を任せ同化…激流に身を任せ同化…!!!)
心中で必死に復唱する皇魔。本来なら受けた瞬間に爆発を起こしているはずだが、爆発は起きない。妙に思ったニセ暗黒四天王達は、光線を強める。まだ爆発は起きない。しばらくして、ニセ暗黒四天王達はようやく理由に気付いた。
光線が皇魔に吸収されている。
それに気付いたニセ暗黒四天王達は攻撃をやめるが、
(気付いたか!?だがもう遅い!!)
既にエネルギーは十分補給できた。彼の力も幾分か回復したし、あと十時間以上はこの姿で活動できる。
しかし、まだエネルギーを回復できただけだ。さらなるパワーアップをする必要がある。そのパワーアップとは、EX化だ。何らかの条件を満たした者が劇的なパワーアップを果たすこと、それがEX化である。これは転生前からの皇魔の課題。
今までどんな方法を使っても成せなかったEX化だが、それについては、悟空達からヒントを得ていた。
それは悟空達サイヤ人のパワーアップ方法、超サイヤ人である。これに興味を持った皇魔は、悟空から極意を聞いていた。
『超サイヤ人ってのは、怒りをきっかけにしてなるもんなんだ。自分にとって一番怒りを覚えることをイメージして、怒りと一緒に力を爆発させる。それがコツだ』
怒りによる力の爆発が超サイヤ人化へのコツ。
(超サイヤ人と化した悟空達の戦闘力は、通常時の五十倍以上に強化されていた…)
皇魔はサイヤ人ではないので、どう頑張っても超サイヤ人にはなれない。だが、北斗神拳の真髄は極限の怒りと哀しみ。超サイヤ人へのパワーアップは、北斗神拳の真髄に通じる部分があり、相性はいいはずなのだ。
(上手くいけば…)
かなりのパワーアップが狙える。そう思った皇魔は、早速、自分にとって一番怒りを覚えることをイメージ、というより思い出した。
彼が一番怒るのは、やはり光を奪われたこと。だが、今回はなぜか別のイメージが浮かぶ。
『皇魔!』
自分に微笑みかけるレスティーの姿。
『皇魔くん。』
自分の服の袖を引っ張るかなで。
『皇魔!』
音無。
『皇魔くん!』
ゆり。
『皇魔!』
『皇魔さん!』
『皇魔くん!』
『皇魔先輩!』
自分を慕う者達。
それらが命を奪われる瞬間だった。
「うおおおああああああああああああああああああああ!!!!!」
怒りの慟哭を上げる皇魔。そして皇魔の姿が閃光に消えた時、
皇魔の頭部の髪あたる部分は黄金に輝き、表皮は白銀に。目は赤く光っていた。
遂に皇魔は、EX化を成功させたのだ。
「!!」
押し寄せる気迫に、一歩下がるグローザム。皇魔はそれを見逃さなかった。右手に光を、左手に闇を宿し、両手を合わせて融合させ、破壊の力として解き放つ。この新必殺技、EXレゾリューム光線を受け、グローザムは断末魔を上げる間もなく消滅した。残るは雑魚のみ。
「北斗輯連打(ほくとしゅうれんだ)!!」
皇魔はヤプール、デスレム、メフィラスに拳の連打を浴びせる。
「ひでぶ!!」
「あべし!!」
「たわば!!」
残ったニセ暗黒四天王達は、それぞれ断末魔を上げて爆発した。戦いが終わり、EX化を解除する皇魔。
「…くっ…」
皇魔は倒れかけ、こらえた。エネルギーの消耗が思った以上に激しかったのだ。
(多用はできんな…)
しかし、まだ倒れるわけにはいかない。ベリアルを倒さない限り、この戦いに真の意味での終わりは来ないのだ。
「ゼロ…!!」
ベリアルを追いかけていったゼロの身を案じ、皇魔はゼロを捜しに行った。
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EXエンペラ星人
皇魔が悟空から習った超サイヤ人へのパワーアップ方法をヒントにしてEX化した姿。頭部の髪あたる部分が黄金に、表皮は白銀に輝き、目は赤く光っている。
能力は通常時の数倍に向上し、また疑似ウルトラマンとも呼べる存在であるため、通常時に使っていた闇の力に加え、光の力も使うことができる。
必殺技は光の力と闇の力を合わせ、光線として解き放つ、EXレゾリューム光線。
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皇魔にある変化が訪れます。