「やることがない」
1人ベッドの上で呟く。
俺がこの世界に来て1ヶ月が経った。
部屋を出ることを制限されているため、やることと言えば寝ることか部屋にある本を読むことぐらいになってしまう。
とは言っても読んでいるのは漫画や小説ではなく情報端末が無い部屋だからというV.V.の計らいでこの世界の歴史、世界情勢などの本だ。
明らかに日本語ではない本なのに何故か読める。
俺の体には自動翻訳機能でも搭載されているのだろうか?
便利で良いんだけど俺の体がどうなっているのか不安になる。
とにかく、ここまで日にちが経つと流石に本も読み終えてしまって、やることがなくなってしまった。
これでは軟禁と変わらない。
唯一部屋を出れる機会であるV.V.のお呼び出しは最近はめっきり少なくなってきた。
俺に飽きちゃったのかな?
少し寂しくなっっちゃうね。
こうなると本当にどんどんマイナスに考えてしまうので、自分の思考の奥に逃げることにしよう。
うん、そうしよう。
Side out
説明しよう!
これから始まる脳内会議はゼブルの中にある他の人格たちと話しをするだけである。
他の人格が出来た当初は、ずっと他の人格たちの声が直接頭に響くというとてもうるさい状態だったが、少ししてからオンとオフが出来る様になったのだ。
ゼブルの脳内
【ひまだよぉ!(ハイド】
↑の半カッコは喋っている人格を表しています。
【我慢しろ、みんな同じなんだ(ダイクン】
【では、そんな皆様に私のとっておきを披露して差し上げましょう!(センス】
【うるせぇんだよ!声のボリュームを落とせ!(ティグ】
【いや、君も十分うるさいよ(ピース】
【ワッハッハッハ!(コンフ】
【・・・(マジック】
【ふぅ、やっぱりここは落ち着くね(ゼブル】
【あっ!もどってきた(ハイド】
【あまりに暇過ぎてね(ゼブル】
先程までの静かさから一転。他の人格たちの騒々しい声でゼブルに笑みが溢れる。
【やっぱりさ、こっそりこのへやをでちゃおうよ(ハイド】
【監視カメラがあるって言っていただろう?いくらお前の力が便利だからってこればかりは無理だ(ダイクン】
【それにどちらかと言えば欺くのはマジックの分野だし(ゼブル】
【他の動物の存在も皆無。近くにネズミ一匹といないよ(ピース】
【いれば何かと便利なんだがなぁ(コンフ】
【それをやらせないためにしてるんだろ?少しは考えろボケ(ティグ】
【対人相手では最強無敵なギアスを持つ私たちですが、この状況ではただの人格の集合体ですね(センス】
【・・・(マジック】
【ほんと、最近のV.V.は何か変だよ(ゼブル】
【会う機会がめっきり減っただけじゃなく、何故か余所余所しいところがあるな(ダイクン】
【どうせあいつはすぐ死ぬんだから別に良いじゃねぇか(ティグ】
【何を言っているんだお前は?一宿一飯の恩は一生の恩と知らんのか?(コンフ】
【それに僕たちが生まれるきっかけを作った人でもあるんだし(ピース】
【は!んなの知らねぇよ!(ティグ】
【どうでもいいけどひまだよぉ!(ハイド】
【ん?誰か来たみたいだぞ(ダイクン】
【暇が潰れたようだね。じゃ、俺は戻りますか(ゼブル】
【変わってやってもいいぞ?(コンフ】
【おれっちも!(ハイド】
【また別の機会にね(ゼブル】
ゼブルの部屋
「ゼブル、起きてるかい?」
「起きてるよ、暇で暇で寝るのも飽きちゃったからね」
「それは悪いことをしてしまったね」
部屋に入ってきたのはV.V.だった。
最初の頃はよくV.V.はこの部屋に来て、ゼブルと一緒に話していたりしていた。
しかし、最近はほとんど来なかったのでひどく懐かしい気がする。
「こうやって話すのも久しぶりだね。最近どうしちゃったの?」
「・・・」
「何か急に俺と目を合わせなくなったし、会っても少し冷たい雰囲気だからさ。もしかして俺なにかしちゃった?」
「ううん、君は悪くないよ」
V.V.はそう言いながらゼブルの隣に腰掛ける。
「なら、なんで?」
「実はね、君について色々調べていたんだよ。そしたら君の服がエリア11にあるアッシュフォード学園と言うところの高等部の学生服だったってことが分かったんだ」
「(そういえばこの服ってそうだった。ナチュラルに着てたから忘れてたよ)」
「君は多分その学校に行く運命なんだってね。だから、その学校の制服を着ていた。違うかい?」
「まぁ、そう考えればそうなのかもね」
ゼブルが着ている服はV.V.の言うとおり私立アッシュフォード学園の制服だった。
違う世界の住人がそのような身分を示す服を着ていると言うことは、必然的にその場所が何かの手がかりになっていると分かる。
「・・僕は友達がいなくてね。僕にとって君が初めて出来た友達なんだよ。でも、そんな君が学校なんて場所に行ってしまえば君にとって僕は友達のうちの1人になってしまうって思ってさ。そう考えると君をここから出したくないって思っちゃうんだ」
「なんだ、そんなことか」
「!?」
ゼブルは笑った。
2人の関係が壊れる心配していたのは自分だけでは無かったのだという事に。
「V.V.と俺は親友であり家族だ。それ以上の関係が他にあると思うのかい?」
「でも」
「例え何があろうとも俺と君の関係は変わらないはずだよ。そうだろ?俺と君は一蓮托生だ」
「・・うん、そうだね。君は僕がいないと何にも出来ないしね」
やっとV.V.の顔に元気が戻ってきた。
「言ってくれるじゃないか。寂しがり屋の甘えん坊のくせに」
「うるさい、僕は別に」
「でも、そうだな。俺もV.V.がいないとダメなんだろうね。だからこれからもよろしく頼むよ、親友」
「ふ、もちろんさ」
2人はお互いを確認するように握手を交わした。
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男はヒロインになるのかどうかが問題。