ゼロが現れる2年ほど前。
薄暗い場所がある。どこかの洞窟か何かだろう。
その場所には町が入るぐらいのスペースがあり、実際小さいながらもビル郡が建ち並んでいた。
その場所の中央には大きな柱がある。
柱の中には扉があった。赤い鳥の様な紋章が書かれたとても大きな扉だ。
その扉の前で仰向けになっている者がいた。
どこかの学生なのか黒い制服を身に纏っている。
身長は男としてはやや高いほうだが、別段太っているわけでもなく、逆に痩せ過ぎているわけではない。
ごく普通の男性だ。
「スー、スー」
・・・どうやら寝ているようだ。
しかも腹が立つぐらい幸せそうに。
「・・・」
そんな男に近づく小学生位の体躯の少年がいた。
男に比べるととても小さく、下手をしたら男の半分ほどの身長しかないだろう。
そして次に目立つのは驚く程長い髪。少年の背丈より長い長さの金色の髪だ。
「・・・おい起きろ」
少年が男の頭を軽く蹴り始める。
「う、ん」
「・・・」
「・・痛い痛い。起きるよ」
あまりのしつこさに耐え切れず、男が痛くなった頭を押さえながら体を起こす。
「君は誰だい?何故ここにいる?」
「自分の家で寝てちゃ悪い?」
少年の質問に、男はまだ覚め切っていない頭でうつらうつらと答える。
「・・・ここが君の家に見えるのかい?」
「俺の家に絨毯なんかひいてないなぁ、つまり夢か」
再び寝ようとした男の目の前に足を見せる。
「また蹴られたいのかい?」
「・・痛いからやだよ。ってことは夢じゃないのか。あぁ、なんか気持ちが悪いな。寝すぎかな?」
まるで船酔いで起こるような吐き気と頭痛が男を襲っている。
もちろん寝すぎが原因ではない。
原因はもっと別なものである。
「そんなこと僕が知るはずないだろう?それより君の家は何処にあるんだい?」
「俺の家?日本の東京23区のうちの1つだよ。それより先は個人情報ってね」
「日本だって?何を言っているんだい、あそこは今はもうエリア11だろ?」
「・・・」
男は異変に気が付いた。
とてつもなく大きな異変に。
「(待とう。うん、待とう。このありきたりな展開はなんなんだろう?絶対なにかがどうにかなっちゃったよ。そうだ、これは夢だ。夢ってのは時には痛みを伴うこともあるんだろう)」
男は一人で納得すると、安心したようにため息をつく。
「それよりさ、君の名前はなんて言うの?俺は(・・待て、ここで本名を言うのは夢とは言え得策じゃないな。なら、ここは偽名で)ゼブルって言うんだ」
「変わった名前だね?僕の名前はV.V.」
男(以降ゼブル)がここで初めて顔を上げると、目の前の少年(以降V.V.)の全体が目に入った。
「(あれまぁ、声だけじゃなくて外見もそっくりなことで・・って、まぁ夢ならそうなるだろうな)」
「それにしても、随分リアルなギアス饗団だなぁ。それに結構広いんだね」
「何故そのことを知っている!」
V.V.は今の言葉に激しく驚いたのゼブルから距離を離す。
「(・・このままだとV.V.に殺されるのがオチだな。それで目が覚めるのならいいんだけど、それもそれで勿体無いか)」
未だに夢と現実の区別がついていないゼブルはもう少しこの場所に居たいと考え、ある手を取ることにした。
「V.V.、たぶん俺は異世界から来たんだ」
「何を言っているんだい?」
「お前の話を聞いて確信した。俺の世界では日本は日本のままだったし、それに俺の世界にもこの場所はあった」
そう、ハッタリをかましているのだ。
「別の世界でも研究していたのかい!?しかも同じ場所で!」
ハッタリが聞いたようだ。
ここまで上手くいくとはゼブルも思っておらず
「そ、そこまでは知らないよ。なんせ俺の世界では最後に使われていたのは50年も前らしいし、今では既に誰も廃墟となっていた、はず・・・確かここは中国だろう?」
「中国?中華連邦の事かい?」
「俺の世界では中華人民共和国と言う名前だ。で、その中国に旅行で来たときにな、さっき言った通り廃墟だが観光名所として有名だったんだよ」
「なるほど」
V.V.その話に納得している。
まぁ、違う世界を出されたら誰でもありえない話でない以上そうなるやもしれない。
「信じてくれたかい?」
「未だに信じられないけど、信じるしか無いみたいだね。君みたいに他の世界から来た例もあることだし」
「そうなの?(そんな設定あったっけ?)」
「まぁね」
「へー、じゃあさ、ちょっと俺の頼みを聞いてくれない?」
考えるの諦めたゼブルはV.V.に近づいて座り込み、そして目線を合わせる。
「俺には元の世界に帰る事もどこかに行く当ても無いんだよ、だから少しの間俺をお前の傍に置いてくれないか?この世界のことも知りたいし」
「君を置いといて僕に何のメリットがあるのかな?」
「ギアスと言う物の俺に与えて実験してみない?ここではそう言う事をしてるんでしょ?それに俺の世界のことも気になるでしょ?いい事尽くしだと思うけどな(俺もギアスが欲しいし)」
「いいのかい?ギアスは王の力そのものを不幸にするんだよ?」
「俺から頼んだ事だからね。でも、体とか脳を弄らないないでよ?」
「ふぅーん。まあ、いいよ。君は信用できそうだし、君の世界も面白そうだしね」
V.V.は笑みを浮かべて答える。
何だかんだV.V.の笑顔を初めて見たゼブルは同じく顔がニヤける。
2人は同じことを考えていた。
「「(彼とは仲良くなれそうだね)」」と。
何故かは分からない。
お互いの相性が良かったのかもしれないし、お互いの価値観が合っているのかもしれない。
とにかく、初対面でここまで仲良くなるのは何かの運命を感じるほどだった。
「んじゃ、よろしくね。契約書でも書くかい?」
「いや、これは誓約だよ。僕と君のね」
「俺は君に何が出来るんだい?」
「そうだね。僕を裏切らない親友になってもらおうかな。僕にはいなかったからね」
「奇遇だな。実は俺も引きこもってばかりだったから友達がいなかったんだよ。ちょうどいい、俺と君は今日この日から一番の親友だ」
「裏切ったら承知しないよ?」
「お互い様だよ」
お互い笑みを浮かべて握手を交わす。
これから始まることを
「(まぁ、夢の中だし大丈夫でしょ)」
と、呑気に構えているこの男はなにも知らずに。
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起きた場所はギアス嚮団!?急にコードギアスの世界に連れて来られたギアスファンの主人公がギアス(チート)と謎の女神から貰った神秘の力(同じくチート)を使いコードギアスの世界を自分好みに変えていく。他の世界からも少数ながら登場!(マイナーな上にあまり出番は無いのですが)