ここは長安から少し離れた所に存在する邑。新たな太守もとい太守の代役として入った未来才は政務室で仕事をしていた。元々は前任であった太守の部屋だったのだが、あまりにも派手すぎたため急いで改装させ、今では落ち着いた雰囲気を漂わせる部屋となった。さらに才の好みで床に座って仕事出来るように以前洛陽の職人に頼んで作らせた畳が敷かれている。
「よし、これで今日の書類は終わったな。
「は、はい!」
才の目の前には眼鏡をかけた少女、蔡文姫、真名は月音がおどおどしながら返事をするが筆はしっかりと動かしている。彼女は新米の文官として長安で仕事をしていたが才が優秀な文官が必要だと言ったら、彼の兄、未来望が太鼓判を叩きながら彼女を送ってきた。歴史上の蔡文姫と言えば父(こっちの世界では母)、蔡邕が遺した書物を記憶だけで四百以上再現させたという。その記憶力は確かで洛陽で読んできた書物をすでに五十以上こっちで写している。
「この後どうするんだ?こっちに残っても構わないが・・・」
「いえ、これが終わりましたら長安に戻ります。望様がまた新しい事を教えてくれると言っていましたから」
「そうか、じゃ帰りの護衛を手配しておく」
月音はこの邑で働く文官ではあるが週に二日、あっちの世界で言えば土日みたいなもの、長安に戻って望が開いた私塾に通っている。長安からこっちに来るには険しい山を越えなければならないため、馬でも二時間以上かかってしまう。しかしここ最近にやっと川の開拓が終わり、川を使っていけば一時間で到着するようになった。いずれは船を使って大きな物資を運ぶ計画が進められている。
「さてと・・・飯にするか」
才は厨房に入ると棚に並べられた調味料をいくつか取り出した
「今日はこの味を試してみるか。『趙師範特製、メンマ汁』・・・なんか嫌な予感がするがまあいいか」
若干不安はあったが試にその調味料でチャーハンを作った。鍋に調味料をかけた瞬間、メンマの匂いが漂った。そしてしばらくしてチャーハンが完成し、普通ここでなら紅ショウガを乗せたいがここはあえてメンマを乗せた。チャーハンを一口食べた瞬間才の頭の中で衝撃が走った
「・・・これ、チャーハンだよな?」
才の感想、『チャーハンがメンマになった』だった
とりあえずメンマもといチャーハン(メンマ味)を完食して厨房から出ると黒髪の褐色少女が現れた
「お、水晶。兵士たちの調練は終わったのか?」
「終わりましたが才様?何故厨房にいるんですか!」
「ん?仕事が終わったから飯を食っていたんだが」
才が彼女の顔を見た瞬間、またやってしまったと思った
「あなたは太守なんですよ!料理は料理人に任せてください!!」
「いや・・俺太守代理だし・・・料理は作っている方が好みに出来るし」
才は先ほど食べたメンマ味のチャーハンを思い出すが、口には出さなかった。
「代理でも太守は太守です!才様はもっと自分の立場を自覚してください!料理なら才様好みのを教えてくれれば私が作ります!」
どさくさに紛れて手料理を作ると発言したこの少女、成廉、真名は水晶。才の部下にして自称『未来才の左腕』(才は左利きだから)。才は彼女を苦手としている。別に嫌いではない、ただ彼女のようなまっすぐな女性に弱い。
「分かった分かった、今度からは料理人に任せる。今度、料理本を作るからそれで作ってくれ」
「本当ですか?」
疑った目で見つめるが目が合うとすぐに顔を赤く染めて顔を逸らした
「それじゃ俺はちょっと出かけてくる」
「え?護衛はどうするのですか?!」
「この辺りの警備はまともになっているんだ、遠くには行かないから安心しろ」
「なりません!未だに危険なのは間違いありません!現在、旅商人が襲われる事件が起きています!もし出かけるのでしたら私もついていきます!」
水晶の言う通り、100%安心とは言えない。この前なんか奴隷商人を見つけて何とか捕まえたが未だにこういう世界にいるんだと思い知らされた。奴隷商人は尋問して何とかどこに行こうとしていたのかを吐かせたため、今頃長安の方で調査隊を派遣しているだろう。奴隷たちも今はこの邑で生活させている。彼らが望むのであれば元板場所に返すこともできなくもない。だが、彼らはここに残るといい、今ではこの邑の住民として馴染んできている。
「ついていくって、兵士たちの調練はどうするんだ?」
「それなら華雄様と梅麗がしごいていますから大丈夫です!」
ここで華雄のことを説明しておかなければならない。才がこの邑の太守(代理)になった時、文官と同時に優秀な武将が必要だと言った。その時に送られたのが先ほどの月音と華雄だった。華雄の調練のやり方はかなり荒っぽいが元々力不足な兵士やゴロツキたちが相手なんだ、華雄ぐらいの武将のスパルタ訓練は丁度いいのかもしれない。今ではすっかりこの邑の二代目姐御となっており、元この邑の裏を仕切っていた初代姐御である梅麗も彼女を『姐さん』と呼んで慕っている。
「ん~ついて来ても何も面白い物ないぞ」
「構いません!」
水晶がまた才に強い視線を送った
「はぁ・・・構わんが何か着て行くものを持って行け。その格好じゃ厳しいだろ」
「え?」
才が水晶の頭を撫で厚着のコートを着た
「さ、才様・・・こここ」
「・・・だからその格好じゃ厳しいって言っただろ」
才たちがいるのは邑から少し離れた洞窟の中だった。洞窟の中は10℃以下で冷蔵庫並の寒さである。水晶は才に言われた通りに大き目の布を持って来ていたが彼女は薄い布でポンチョ風に被っているだけだった。しかも、彼女の服装は相変わらず露出の多い格好だった
「・・・たく、コレを着ていろ。俺がその布で十分だ」
「しかし」
「いいから、この奥はもっと寒いぞ」
「・・・・」
それを聞くと恐る恐る才が来ていた厚着のコートを手に取った
「・・・暖かい」
「まあ、多分この時代では一番暖かい素材でできているからな」
才が持っていたコートは元いた世界から着てきた物でカシミヤヤギの毛皮、つまりカシミヤの高級コートなのだ。しかみオーダーメイド生なので現金でいうと50万は超える。そんな高級コートだと知らないが大事そうに着た。ついでにどさくさに紛れてコートの匂いを嗅いだのは秘密にしている。
「才様・・ここはいったい」
「ん?簡単に言えば天然冷蔵庫」
「れいぞうこ?」
「食糧の保管庫だ・・・こういう場所なら食料が長持ちしやすいんだ」
「な、なるほど・・・確かによく見ればあちらこちらに食料がありますね」
「・・・それにこの奥に行けば」
そう言い残し、才は更に奥へ向かい、水晶も続いた。才たちが広い空間に出ると水晶は唖然とした
「すごい・・・」
水晶の目の前には大きな水晶・・・いや氷が所々に生えていた
「ココを見つけたの時は俺もビックリしたさ・・・寒さも忘れてここに何時間もいた。おかげで翌日に熱を出したがな」
「綺麗です」
松明に灯された一つの火から放つ光が水晶の反射で全体を照らした
「さて・・・目的の物を取り出すか」
そう言うと才が部屋の奥にあるツボに手にかけた
「才様、それはなんですか?」
「ん?・・・指に付けて舐めてみな」
ツボの中身はなにやら黄色い液体が入っていた。だが指を付けた瞬間、それが液体のようで固体のような感触に水晶はビックリした。そしてそっと指をそのまま口へ運ぶと甘い風味が口全体に広がった
「・・・甘い」
「そうか、よかった」
「才様!これはなんですか?」
「ん?カスタードクリームだよ」
「かすたーど?」
「まあ、俺が知っている菓子の材料だ。他にも・・・・・ん?」
才が他の材料が置かれている場所に向かうとそこにはいくつもの空の壺が倒れている。そしてその隣にあるのは壺をかぶせていた毛布に包まっている何かだった
「才様!下がってください!」
すかさず才の前に出て武器を構えながら毛布を引っ張る
「子供?」
二人が見たのはボロボロな服を着た小さな女の子だった。だがすぐに普通の子供とは違うのが分かった。なぜならその子の頭には猫耳、そして尻尾らしきものが付いている。だがそれ以上に目に入ったのが彼女の首には鉄で出来た首輪だった。それはつい最近捕まえた奴隷商人が奴隷たちに付けさせていた物と同じだった
「・・・かなり衰弱しているな。水晶、急いでこの子を連れて戻るぞ」
「御意!」
才は少女を毛布で包み急いで邑へ戻った
「・・・・」
少女を客室に寝かせ、才は再び彼女を見た
「・・・本物なのか?」
少女の事が心配なのは確かにある。だがそれと同じくらい気になるのが彼女の猫耳らしき物だった。前いた世界ではこういう趣味を持つ男たちがわんさかいたが才には全く興味がなかった。一度友人と猫耳メイド喫茶という所へ行ったことがあるが精神的にきつく途中退場したことはすでに才の忘れたい過去の一つである。
丁度その時、お湯を持ってきた水晶が部屋に入ってきた
「才様、どうですか?」
「ああ、医師の話だと体力がかなり消耗しているらしいが暖かくして食い物食べれば元気になるそうだ」
「そうですか・・・よかった」
「羅金たちに情報を集めてもらったがやはりあの時の奴隷の一人だったらしい」
「やはりそうでしたか」
「ああ、『南蛮族の少女がいた』って情報が入ってな。多分この子のことだ」
「南蛮族・・・あの南の地で生活している人たちですか?」
南蛮族という言葉を聞き、才は三国志の歴史を頭から掘り出した
「・・・確か孟獲ってやつがその地を収めてるらしいな」
「いえ、南蛮の地を今収めているのは孟獲の姉の猛節と聞いています」
「・・・・そうなのか?」
やはりというか、才が知る三国志の歴史とは若干異なるようだ
「南蛮の地は今でも未開の地と言われ、侵攻としても危険な樹海に囲まれ侵攻するのも困難だと聞いています」
「ずいぶんと詳しいな」
「これでも勉強はしっかりやってますので」
えっへんという感じで自慢げな顔をした水晶をみて少し微笑んだ
「ははは、それは頼もしいな」
才が笑っていると少女の目が開くのが見えた
「にゅ~」
「お、起きたか・・・大丈夫か?」
「お・・・・」
「「お?」」
「お腹が・・・空いた」
それと同時に少女から空腹を訴える音が聞こえた
「ははは、こりゃまずは食事だな。水晶、俺は厨房に行ってくる」
「才様!また自分で料理を作るのですか!それは私に!」
「お前の分も作ってやるから今回は目を瞑ってくれ」
「ううぅぅぅ」
才の手料理と聞いた瞬間何も言えずに拳を握った。才の手料理を食べられるという嬉しさと自分のいう事を聞かないことと料理を見せるチャンスが出なかったこという悔しさに板挟みされた
厨房に立ち、才は何を作るかを考えていた
「さて、とりあえず。栄養のあるものを片っ端から作るか」
才は食糧庫にある栄養のある食材を手に取りあの子が元気になることを考えながら鍋を振った
「はぐはぐ!うみゃああああああ」
少女の目の前には大量に盛合された料理だった。だが今まさにブラックホールに吸い込まれるかの如く料理は彼女の胃の中へと消えていく
「これほど食べられると作った甲斐があるな」
「・・・南蛮人は皆こんなに食べるのですか?」
食べ物をほうばる少女を満足気な笑みで見る才と才が作ったチャーハンを手に持ちながら少女を見る水晶だった
「みゃ~こんなに食べたのは久々にゃ~。お兄ちゃんは
一段落ついたのか少女がペースを落とし、しゃべりだした
「はは、さっきまでとは大違いだな。その様子だともう大丈夫そうだな」
「にゃ~、満腹にゃ。今なら大きくなれる自信があるにゃ」
「そうか。俺は未来才。一様、ここの太守代理をやっている」
「私は成廉。才様の護衛です」
二人があいさつをすると少女も改まったかのように二人を見た
「にゃ。真耶は猛節。南蛮の地を収めていた王にゃ!」
「「は?」」
二人は耳を疑った。今少女はなんて言った?『なんばんのちをおさめていたもうせつ』?
「南蛮の地を収めていたって。お前あの猛節なのか?」
「そうにゃ!今は妹に任せているにゃ」
「南蛮の地からここまでよく来れたな」
「にゃ~ヴリトラに勝負を挑んだら遠くに飛ばされたのにゃ・・・にゅ~あの肉をもう一噛みしたかった」
何を言っているのかもう分からなくなった
「さて、水晶。猛節を大浴場に連れてってくれないか?」
「御意。では猛節ちゃん、一緒に風呂場に行こうか」
少し砕けた喋り方で猛節に接する
「いにゃ!お兄ちゃんと一緒に入る!」
「「は?」」
「あ、あのね。才様は忙しいの。私と一緒に行こう?」
「嫌にゃ!お兄ちゃんと一緒がいい!」
まるで駄々をこねる子供の用だった
「・・・はぁ、水晶。構わないさ。身体を洗うだけだ。俺が連れてってやる」
「さ、才様!まさか、そんな趣味が・・・」
「んな訳あるか!」
顔を赤らめながら怒鳴る才。だがけして彼はそういう趣味を持っているわけではない
「水晶。猛節に新しい服を用意しておいてくれないか?さすがにあのボロ服じゃまずいだろ?」
「御意」
才が猛節と一緒に風呂場に行くとあることに気が付いた
「そういえばお前のその首輪を外さないとな」
猛節を見るとまだあの奴隷たちがつけていた首輪がついていた
「にゃ、外してくれるのか?」
「ああ・・ちょっと待ってろ」
そう言うと才がポケットから細い針を取り出し、首輪の鍵穴に入れた
「このタイプの鍵穴なら・・・ほれ」
針を入れて数秒で鈍い音が首輪から聞こえた
「すごいにゃ!お兄ちゃん神様にゃ?」
「違う。ほれ大浴場に行きな。俺も後から行く」
「にゃ~♪」
重たい鉄の首輪を外し、着替え場所で元気よく服を脱ぎすてる。猛節が広い風呂場に目を輝かせていた。水着に着替えた才も続いて風呂場に入る
「どうだ?広いだろ?」
「すごいにゃ!家の中に温泉にゃ!」
「お、よく分かったな」
彼女の言う通り、この広い大浴場は温泉である。訓練の時、華雄が偶然空けた穴から温泉が噴き出したときは驚いたが、今では邑全体に広げいつでも風呂に入れるようになった。この大浴場は一応太守専用となっているが、ここの使用人たちも時間帯で使用できるようにしてある。今は誰も使用できない時間なので二人っきりである
「さて、猛節。洗うぞ」
「にゃ~」
才がお湯をかけると気持ちよさそうな声を出した
その頃、服を探しに外に出ていた水晶は
「才様とあの子が一緒にお風呂。才様とあの子が一緒にお風呂」
「お!水晶~どないしたんや?」
「ん?飛、それに羅金」
水晶の目の前には同じく才の元で働いている者、楊奉こと飛と宋憲こと羅金がいた
「なんや、なんや?また若の事で悩んでいるんか?」
飛が呼んでいる「若」とは才の事である。初めは「アニキ」と呼んでいたが才が『あいつのポジションに着く気はない』と訳の分からない事を言って拒否された
「べ、別にそんな事ではありません!」
無理やり顔を逸らすが二人は図星だとすぐに分かった
「もしかしてあの南蛮族の女の子か?」
「う・・・」
追い打ちをかけるように羅金が言った
「それで?若とあの子は今どないしたんや?」
「今、才様はあの子を大浴場に連れて洗っています。私はあの子の服を取りに・・」
「な・・・・何だってええ!!」
叫んだのは羅金だった
「水晶!それは本当か!」
「え、ええ」
「こうしてはいられない!飛!俺は大浴場に行ってくる!」
慌ただしく羅金が走り出す。ここで補足しておくが、羅金が大のロリコン。幼女のためなら命を投げ出そうとするほどの変態だ。火編第一話で候成こと梅麗の着替えを覗こうとしたのはロリと大差ない胸を眺めようとしただけである。
「この変態が!」
そしてちょうど彼が曲がろうとした瞬間、噂の梅麗の正拳突きが直撃した
「あ、姐御」
「誰が幼女と大差ない胸だって?」
「いや、俺は何も」
「黙れ!この変態が!」
「だあああ!頼む!今を逃せば千載一隅の・・・」
羅金の声はそこで途絶え、気が付いたらボロ雑巾のようになった人らしき物を引きずっている梅美がやってくるのが見えた
「水晶、話は聞いていた。私の古着が棚の奥にあるからそれを使ってくれ」
「あ・・・はい」
梅麗はそのまま羅金を引きずりながら訓練所へ向かった。おそらくこれから更なるしごきが待ち受けているのだろう。飛も
「さて、私も仕事を終わらせないと」
水晶は急いで梅美の部屋から言われた通りの場所から古着を取り出した
「ちょっと大き目だけど大丈夫かな?」
そしてそのまま才たちがいる大浴場に向かった
「才様。梅美から古着を貸してもらいましたのでそれを持ってきました・・・さ!」
水晶がそのまま入るとちょうど才と猛節があがったタイミングであったため、水着姿とはいえ才の引き締まった肉体を見た瞬間、水晶は顔を赤らめた。
「お、ありがとう。猛節、ほれお前の服だ」
「ありがとうにゃ」
身体を拭いていた布を除けば真っパ同然の猛節を見て、水晶は少し複雑な気持ちになった。猛節が服を着ると、若干ダボダボな格好になったがあのボロボロな服よりはマシだ
「しばらくはそれで我慢してくれ。新しい服を今度用意しておいてやる」
才が再び乾いた布で猛節の頭を乾かした
「にゃ~お兄ちゃんなら真耶の真名を呼んでもいいにゃ。真耶の真名は真耶にゃ」
「ん?そうか、それじゃよろしくな。真耶」
才が猛節の真名を言うと彼女は照れながら笑った
「ほれ、乾いたぞ。水晶、俺も着替えるから。お前は真耶を部屋に案内してやってくれ」
「・・・御意」
水晶は真耶を連れて大浴場を出た
「にゃ?お兄ちゃんは来ないの?」
「才様も着替えないといけないのです。それじゃ猛節ちゃんの部屋に案内するわ」
「ん~。おみゃえ、お兄ちゃんの何なんだ?妻か?こいびとか?」
「な!なななな何を言っているの!私は才様の護衛!それ以上でもそれ以下でもないわ」
「ふ~ん。じゃ何でさっきからそんなにイライラするのにゃ?」
「ぐ、それは・・・」
「にゃはは、真耶知っているにゃ・・それは『嫉妬』っていうにゃ」
「・・・・・・」
全くその通りだ。才が真耶に対して優しくしている姿を見る度に胸が痛くなる。そして、怒りに近い感情がなぜかこみあげてくる
「おみゃえ、お兄ちゃんに『恋』しているのにゃ?」
え?
「こここここここここここ・・こおおおおおいいいいいいい????!!!!!!」
もう頭が爆発寸前の褐色少女は大声を出して爆発を免れたが、頭の中が真っ白になった
「おい、水晶!何かあったのか?!」
半分着替えた状態で飛び出してきた才は上半身裸、上にお気に入りの上着を片腕だけ通した状態で走ってくる
「さい・・・きゃあああああ!」
「ぐあふ!」
水晶は才を突き飛ばした
「いきなり、何をするんだ」
「あ、あっちに行ってください!才様はちゃんと着替えてください!」
水晶は顔を逸らして真耶を連れて行った。そして、入れ替わるように飛が走ってきた
「なんや?なんや?水晶の叫び声がするところにきたら若が半裸やないか?なにかしたんか?」
飛がニヤニヤした顔で見ると才がまさにサバイバルナイフのような鋭い視線を送った
そして、何が何だか分からないまま才は仕事部屋に戻る
「・・・俺が悪いのか?いや、ああいう格好はそこまで露出じゃないだろ?下を吐いていなかったら変態だが、俺はしっかりズボンを穿いていた。別に変態じゃない。そうだ、俺は変態じゃない」
まるで自己暗示をかけるかのように、謎の呪文を唱え続けた
「お兄ちゃああん!」
そして、元気よく入っていたのはややブカブカの服を着ている真耶だった。少し視線を変えたら見えそうなほどであるが、これを意識したら間違いなく変態だろう。明らかに七歳ぐらいの少女だ。こんな少女に意識した奴がいたら俺はそいつを殴りたい
「ハアハア、猛節ちゃん・・・こっちにおいで」
いた!
仕事部屋の扉付近でこっそりと覗いている羅金。普段は真面目な奴なのに大のロリコン。間違いなく変態だ
「この変態が!」
才が覗いている飛にアイアンクローで掴み、そのまま窓から放り出す
「ったく。真耶どうしたんだ?」
「あのね。今日お兄ちゃんと寝たいにゃ」
「おのれえええええ、若!俺は今あんたを呪いたい!呪って俺が若になりt『このドアホ』!!・・ぐは」
あの馬鹿地獄耳が。才のツッコミよりも早く、外にいた梅麗の制裁によって羅金の声はそこで途絶えた。出来れば真耶が元の場所に帰るまで寝ていてもらいたいと思った
「・・はぁ、まあ俺は構わないさ。今日はもう遅いし明日からお前が帰れる方法を探さないとな」
「え?」
真耶がキョトンとした顔で才を見た
「どうした?帰りたくないのか?」
「にゃ~確かに妹が心配だけど~」
「なら、探そう。妹を安心させたらこっちに来ればいいじゃないか」
「にゃ!それもそうにゃ!」
才の提案で真耶が頷く。そして、それtお同時に真耶のお腹の虫が鳴きだす
「よし、飯にするか。何が食べたい?すべての料理をメンマに変える調味料があるが食ってみるか?」
「いにゃ、それは嫌にゃ」
真耶の即答で才が笑いだす
「・・どうしよう。才様の顔を見ていると今まで以上に胸が熱くなるよ・・・・もう、才様の顔を見ることが出来ない」
部屋に閉じこもった水晶はその夜、顔を沸騰させながら一日を送った
翌日、才が目を覚ますとやはり猫耳少女が隣で寝ていた
「おはよう、真・・・・耶?」
才が少女にあいさつしようとした瞬間、昨日のある言葉が脳裏で横切った
『今なら大きくなる自信があるにゃ』
今、彼の目の前で寝ている少女は七歳ぐらいの少女とは思えないくらい成長した
「成長早すぎだろ!」
その後、なんとか気持ちを切り替えた水晶が起こしに部屋に入り
「才様。おはようございます。昨日の御無礼申し訳ご・・・ってきゃああああ」
更なる混乱を招き、続いて入ってきた羅金はロリでなくなって脱力し、今度は巨乳好きの飛がテンションを上げ、ハイテンションの飛に正拳突きを食らわした後自分の古着、特に胸の部分がキツキツな姿を見てショックを受けた梅麗
才がこのカオスな状態を収めるために数時間かかったのは言うまでもない
あとがき
はい、今回は猛節、真名は真耶が新たに登場。作品に登場したメンマ汁・・・おそらく皆さんのご想像通りだと思いますw
それでは軽く猛節の説明します
孟節(もうせつ)
真名:真耶(まや)
武器:爪「牙王爪」
孟獲の姉。南蛮の地に存在する邪龍の肉を食べようとしたら、南蛮の地から飛ばされ、そのまま奴隷商人に捕まった。美以と違って巨乳の持ち主。しかし、それは龍の肉を食べて氣の量が増幅されたため、肉体に影響が出たからである。氣を放出する事も可能だが使った後は七歳ぐらいの子供の姿になる。しかし、氣が回復すれば元に戻る。奴隷商人から逃げ出し、食物庫に逃げ延びたところを才達が助けられる。気の量は光以上で、氣による肉体強化の影響でかなりの力持ち。彼女が装備している爪も特注品で片方百キロ近くある。猫舌で辛いものが苦手。才の特製焼肉とクレープが大好物
真名の由来:イリオモテヤマネコのヤママヤから取った
Tweet |
|
|
4
|
0
|
追加するフォルダを選択
董卓√ 火編。新たなるオリキャラが登場します
南蛮の王、孟獲の兄・・・ではなくここでは姉の猛節が登場します
そして、火編では光の兄、未来才が主人公です
続きを表示