No.511369

ソードアート・オンライン デュアルユニークスキル 第三十六話 終焉の時

やぎすけさん

アインクラッド編完結です。

2012-11-23 13:36:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3220   閲覧ユーザー数:3073

キリト視点

デュオの姿が砕け散ると、ヒースクリフが感心したような声を上げる。

 

ヒースクリフ「仲間を救うため、自分の命を犠牲にするか・・・すばらしい友情だな。」

 

キリト「ふざけるな・・・!!」

 

ヒースクリフのその言葉が、俺にはデュオへの侮辱に聞こえた。

俺は引き千切れんばかりに両手の剣を握り締めると、ヒースクリフに突進する。

 

キリト「うおぉぉぉぉぉぉぉ・・・!!」

 

先ほどの剣戟を上回るほどの乱舞をヒースクリフに叩き込む。

ヒースクリフはそれを防ぐと、盾を突き出して俺を弾き飛ばした。

追撃が来ると思ったが、ヒースクリフは動かなかった。

代わりに、不敵な笑みを浮かべる。

その様子に俺の怒りは頂点に達し、同時に焦りを生んだ。

 

キリト〈俺は、弄ばれていたのか?この男に・・・?〉

 

ヒースクリフ「もう、打つ手無しかな・・・?」

 

俺の考えを読んだのか、ヒースクリフはそう言った。

 

キリト「ならば、これはどうだ!!」

 

俺は再び突進すると、ヒースクリフ目掛けてソードスキルを発動する。

それが大きな間違いであるとも知らずに・・・

 

キリト「【ジ・イクリプス】!!」

 

ヒースクリフ「待っていたよ!!」

 

ソードスキルの発動を確認した途端、ヒースクリフの表情が勝利を確信した者のそれになる。

俺はハッとした。

剣技をデザインしたのは奴だ。

ならばどの攻撃がどこに来るのかも全て読める。

読めるということはつまり、防げるということだ。

しかし、今更ソードスキルを止めることは出来ない。

虚しい剣技がヒースクリフに殺到し、ヒースクリフはそれを淡々と捌いていく。

 

キリト〈ごめん・・・アスナ・・・君だけは生きて・・・〉

 

そう思うと、俺は最後の一撃を繰り出す。

 

キリト「うおぉぉぉぉぉ・・・!!」

 

絶叫しながら放った突き攻撃は、あっさりと弾かれ、同時に左手の剣(ダークリパルサー)が硬質の悲鳴を上げて砕け散った。

スキルの反動で動きの止まった俺の頭上にヒースクリフの長剣が高々と振り上げられる。

 

ヒースクリフ「さらばだ、キリト君・・・」

 

長剣がクリムゾンの光を纏うと、それは俺目掛けてまっすぐに振り下ろされた。

その瞬間、俺の前に飛び込む人影があった。

栗色の髪を揺らして俺とヒースクリフの間に立ちはだかったのは、アスナだった。

ヒースクリフに驚きの表情が現れるが、クリムゾンの光を纏った剣は誰にも止められない。

その斬撃は、両腕を大きく広げて俺の前に立つアスナの体を、無残にも切り裂いた。

アスナの残り少なかったHPが減少していき、そして・・・消滅した。

俺は後ろに倒れるアスナを受け止めるが、その腕の中でアスナは眩い光へと変わっていく。

 

アスナ「キリト君・・・大丈夫・・・?」

 

キリト「嘘だろ・・・アスナ・・・こんなのって・・・」

 

アスナは力無く微笑むと、眠るように目を閉じた。

 

アスナ「さよなら・・・」

 

最期の言葉とともに、アスナの体が光る破片となって砕け散る。

 

キリト「ぁぁっ・・・!!」

 

アスナの重みが消え、俺の目から涙が溢れる。

声にならない叫び声を上げて、俺は先ほどまでアスナだった破片を集めようとする。

しかしそれは無情にも、俺の手に触れると消滅していく。

 

ヒースクリフ「麻痺から回復する手段は、無かったはずだが・・・こんなことも起きるものかな・・・」

 

ヒースクリフの呟く声が聞こえ、次にクラインの叫び声が届く。

 

クライン「キリト!!何してる、剣を取れ!!早く!!」

 

俺は残った右手の剣(エリュシデータ)を持つと、よろよろと立ち上がる。

剣に振り回されるような状態で、ふらふらと剣を振り回す。

 

ヒースクリフ「幕切れは、呆気無いものだったな・・・」

 

ヒースクリフは、哀れむような表情を見せた後、長剣で俺の剣を弾き飛ばした。

俺はもう剣を拾う気力も残っておらず、ただ呆然と立ち尽くす。

ヒースクリフはゆっくりと剣を向けると、俺の体を貫いた。

HPが減少し始め、俺は膝立ちの状態になる。

すると、両手の指先に何か硬いものが触れた。

見るとそれは、俺を守って消えていった2人の剣だった。

だが、そこにはもうアスナの温もりも、デュオの優しさも感じられない。

あるのは、ただの冷たい金属の感覚だけ。

 

キリト〈アスナ・・・デュオ・・・俺も今から行くよ・・・〉

 

俺がそう思った時、デュオの剣が脈を打ったような気がした。

そして声が聞こえたような気がする「まだ終わってない。アスナと俺のためにも勝て。」と。

次の瞬間、俺はかつて感じたことのない激烈な怒りを覚えた。

キリト〈アスナとデュオを、俺の妻と仲間を殺したのはこいつなんだ。

俺たちは一体何なんだ。SAOシステムという絶対不可侵の糸に踊らされる滑稽な操り人形か?システムが良しと言えば生き延び、死ねと言えば消滅する、それだけの存在か?〉

 

俺の怒りが再び燃え上がった。

まるで劫火と呼ばれた友のように激しく、まるで閃光と呼ばれた恋人のように輝きを放って。

それをあざ笑うかのようにHPバーが消滅する。

[You are dead]というシステムからの死の宣告が下り、体が崩壊を始める。

 

キリト「そうは・・・いくものか・・・!!」

 

アスナもデュオも俺を助けるために死んだのだ。

ならば、たとえ死が避けられなくとも、せめてこれだけは・・・

 

キリト〈絶対果たす!!〉

 

今一度、両手に剣を握りしめ、ヒースクリフに向ける。

最後の力を振り絞り、2人の剣をヒースクリフに突き刺した。

その顔には、わずかに穏やかな笑みが浮かんでいる。

音もなく貫く2本の剣をヒースクリフは目を閉じて受け入れた。

ヒースクリフのHPが音も無く減っていき、そして消滅する。

 

ヒースクリフ「これは驚いた・・・スタンドアロンRPGのシナリオみたいじゃないか・・・」

 

ヒースクリフは穏かに、そしてどこか満足気にそう言った。。

 

キリト「これで・・・もういいかい・・・?」

 

役目を終えて、気力を使い果たした俺は静かに呟く。

2人の剣からは何も感じられないが、それでも一瞬だけ俺の問いに答えるように光を反射させた。

次の瞬間、オブジェクト破砕音が2つ、重なるように響き渡る。

今度こそ意識が遠のいていく。

闇に沈んでいく意識の中で、自分の体が千の欠片となって飛散するのを感じた。

 

エギル「キリトォォォォ・・・っ!!」

 

クライン「キリトォォォ・・・っ!!」

 

エギルとクラインの声だろうか。

俺を呼ぶ声が、かすかに聞こえてくる。

それに被さるように、無機質なシステム音が聞こえてきた。

俺たちが・・・いや、クラインたちがこの世界から解放される合図。

[ゲームはクリアされました。]

 

 

あとがき

これでアインクラッド編終了です。

少し短かった気もしますが・・・

次回からタイトルが代わります。

突然ですが、アンケートを行います。

 

2.フェアリーダンス編は書いた方が良いですか?(オリジナルは原作のフェアリーダンスが終わってすぐの物語です)

 

書いた方が良いと思う方は①を、書かなくて良いと思う方は②を選んでください。

 

ご協力、よろしくお願いします。


 
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