第百四十一技 絶望は希望へと変わる
キリトSide
戦闘を再開した俺達。
〈The
ハクヤは武器を『コロナリッパー』に持ち替え、俺達は四人で同時に攻撃を行っている。
僅かな隙を突いて攻撃を当てていくが、当然ながら相手の攻撃も俺達に命中する。
ハクヤ達が攻撃を行い、ボスがそれを捌いている内に俺は《ヴォーパルストライク》を放ち攻撃を命中させた。
そこで奴は尾を俺に向けて叩きつけた。俺は壁に叩きつけられ、六本の武器で三人を切り裂いていく。
「ぐぅ!?」
「ぬっ!?」
「あぁっ!?」
三人のHPが削られていく。
俺は可能な限りの速度を出して、奴の背部に辿り着き《スターバースト・ストリーム》を放った。
「!?!?!?!?!?……!」
十六連撃を全て受けた奴は、翼を大きく振り、俺達を吹き飛ばして自身も後退した。
俺達のHPはレッド寸前まで削られていた。
「……なんて奴だ…」
「明らかに76層のステータスじゃない」
「茅場の仕業だろうな。四人のユニークスキル使いが現れたから、能力を上昇させたのかもしれない…」
「そうだとしたら……残りのあたし達がバレたら、絶望的なまでに高めそうね…」
呆然と呟くハジメにハクヤが言った。
ハクヤの言うようにこいつのステータスは76層のボスにしては高すぎる。
俺は自分の考えを言い、カノンさんの言葉に同感した。
「とにかく≪ハイポーション≫を飲んで回復しよう。奴が距離を取っているうちに」
俺達はハイポーションを飲んでHPを回復させる。
これで俺とハクヤとハジメの分は一つ、カノンさんは二つとなった。やはり回復アイテムが足りな過ぎる。
俺達のHPが全回復した瞬間、奴が武器を上に掲げた。すると奴の体を紅いオーラが纏った。
その様子に俺達は一気に気を引き締めた。
「マズイ、よな…?」
「明らかに、ね…」
「!!!!!!!!!!」
ハクヤとカノンさんが口にすると、奴はこちらに向かってかなりの速度で突撃を仕掛けてきた。
奴はそのまま俺達に武器を振り下ろしてきた。
それを回避するも、俺は追撃を受けてしまい二本の剣で切り裂かれた。さらにそのまま俺を蹴り飛ばす。
「クッ、ソォ!?」
俺は地面を転がりながら壁にぶつかった。俺は自分のHPを見て驚愕した。
全快のHPが再びレッド寸前まで削られたのだ。
おそらくあの紅いオーラを纏ったことで攻撃力と速度が上昇したのだろう。
すぐに起き上がり奴に向かおうとした時。
「きゃあっ!?」
「……っ!?」
カノンさんとハジメが吹き飛ばされた。カノンさんは地面に落ち、ハジメは壁に激突した。
「カノンさん! ハジメ!」
「だ、い…じょう、ぶ…」
「……私も、だ」
なんとか返事を返した二人。そこでハクヤが戦闘を続けているのに気付いた。
ボスが振るう六本の武器をたった一つの炎の鎌で捌くハクヤ。
だが攻撃力と速度が増した奴の攻撃を全て捌ききることはできず、HPが異常な速度で減っていく。
だがハクヤはその攻撃の中を掻い潜り、奴の懐に入り込んだ。
「オォォォォォ!!!」
そこでサイススキル《ヴァンディエスト》を発動した。鎌による八連撃のスキルだ。
さらに《斬撃》が加わり、倍の十六連撃となる。ここまでくれば最早《二刀流》に並ぶほどだ。
全ての攻撃が入り、奴のHPバーが残り五本となった。攻撃を受けた奴は体勢を崩すように後ろに倒れようとする。
ハクヤはそれを感じ取り、距離をとろうとする……が。
「!!!!!」
「「なっ!?」」
奴は自身の尾を第三の足として地面に突き刺して体を支えたのだ。
そしてそのまま正面にいるハクヤに向かい、
「!!!!!!!!!!」
全ての武器を振り下ろした。ハクヤの体は刻まれ、最後に奴は蹴りを喰らわせた。
「あ、あぁ……」
「……っ」
「っ、ハクヤーーーーーーーーーー!!!」
カノンさんは呻き、ハジメは息を呑む。
俺の絶叫を受けながら、扉の前に転がったハクヤ。そのHPはレッドになり、未だに急速に減っていく。
「これまで……か…」
そうハクヤが言った瞬間、彼のHPが0になった。
絶望を覚えた。死ぬ…ハクヤが。嫌だ、仲間を、幼馴染を、親友を……失いたくない!
そう思った時、ハクヤの後ろにある扉が突如として開いた。そしてそこに居たのは、
「キリトくん!」
「アスナ……」
アスナを含めた攻略組プレイヤー達だった。俺はその中にクラインがいるのを認めるとすぐさま叫んだ。
「頼む、クライン! ≪還魂の聖晶石≫を、ハクヤに!」
「っ、分かった!」
俺の発した言葉の意味を理解したのか、クラインはすぐにアイテムストレージから一つの石を取り出した。
それをクラインの後ろにいたのであろう一人の少女が受け取り、ハクヤの側に駆け寄った。その少女とは、
「蘇生、ハクヤ!」
「リズ!?」
鍛冶師の少女、リズベットだった。
キリトSide Out
To be continued……
オリジナルスキル説明
サイススキル《ヴァンディエスト》
鎌の最上位スキルの一つ。巧みに鎌を動かして斬りつける八連撃のスキル。
後書きです。
はい、ハクヤが一回死にました。生き返りましたが・・・。
それと『結晶無効化空間』なのに≪還魂の聖晶石≫が何故使えるのか?ということを皆さん考えたと思いますが、
本作では結晶アイテムではないという解釈でお願いします。何卒・・・。
というわけで、攻略組の援軍です。
嫁登場、とかみなさん思っていますよねw
戦闘はもう少し続きます。
それでは・・・。
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第百四十一話です。
タイトルが示すものとは・・・。
どうぞ・・・。