No.511283

戦極甲州物語 拾伍巻

武田菱さん

戦極甲州物語の16話目です。

2012-11-23 02:26:22 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2751   閲覧ユーザー数:2519

 山での戦は上を取った方が有利。

 これは基本的な戦略として知られている。名軍師として知られる者たちも、上を取ることを論理的に理屈付けているほどだ。

 

「左翼1番隊、突破されました!」

「右翼3番隊、先鋒を叩くも後続部隊と続けざまに交戦! 救援に向かえないとのこと!」

「御館様! 正面に敵が集中しています! 跡部隊の援護なくしては……!」

 

 とは言え、高低差による優劣も絶対ではない。そもそも戦の優劣に絶対などというものはない。兵力・士気・知略・武装・地形・天候など、多くの要素が介在する。そう、戦とは総力戦である。

 先んじて御坂峠を陣取った信繁率いる武田軍本隊であったが、高低差による優劣は兵力差による優劣に相殺されてしまっていた。いや、お世辞にも相殺では済まされまい。押されている、と言うべきであろう。

 高所に陣取っているがゆえに見晴らしはいい。信繁は左右に伝令の兵士たちを置いてその報告を耳にしつつ、戦の様相を己が目で確認していた。武田と北条の旗がひしめく下方を。武田の旗も北条の旗も激しく振り乱れている。山であるからか風も強く、旗のはためきも激しい。信繁は正面からの逆風に目を細めた。さっきから砂が目に入ってくる回数が増えてきている。それだけ戦の激しさが増しているということであろうが、それにしても逆風が吹きすさぶとは何ともこの状況を示しているようで、天運の無さに文句の1つも言いたくなる。もちろん、そんな言葉よりも総大将の身として先に出てくるのは指示命令であるわけだが。

 

「左翼の1番隊は先触れ通りに散って後退したろうな?」

「は。ただその、この状況ですのできっちり確認したとは言えず……」

「徹底はさせたのであろう?」

「は、ははっ! そ、それは確実に!」

 

 信繁――『御館様』の怒りを買ったと思ったのか、伝令兵は深く首を垂れて数歩後ずさった。怒っている暇もないので別に叱り飛ばす気はないのだが、これも信虎の弊害ということであろうか。

 

「その方、左翼2番隊へ伝令に赴け。1番隊の後退を援護させよ」

「承知いたしました!」

 

 逃げるように駆け去る兵の背中を眺めるゆとりもなく、信繁は別の兵に視線を向ける。

 右翼部隊には遊撃部隊を向かわせるのでそれまで持ち堪え、遊撃部隊の加勢後はゆるりと後退。すでに後退を完了している右翼各隊と足並みを揃えるように伝えさせる。

 

「多田。疲れていようが、任せるぞ」

「承知」

 

 信繁の刀を持って控えている佐五とは別に、斜め後ろに控えていた満頼が一礼して信繁の脇を走り去っていく。その後に続く黒づくめの集団。忍者を模した服装のようだが、お世辞にも忍びとは言えない技量。満足に足音を消すこともできないほどだ。

 情報戦を始め、隠密を担う存在があまりにも武田には欠如している。それをよく示していると言うしかない。満頼個人も隠密技量は実のところ大したものではない。彼女が優れているのはあくまで情報面を司る指揮官としての技量。忍びのように実際に暗殺や工作などを行う隠密としての技量は、残念ながら真似事の域を出ない。

 そのことは彼女自身が自覚していることだろう。

 

(……風魔衆。話には聞いていたが、やはり本物の忍びの技量は侮れぬ)

 

 この御坂峠の戦、最初の接触から数えるとすでに半日を経過していた。昨日の内に着陣した武田軍に対し、北条綱成率いる北条軍別働隊も、当初の到着予想よりもはるかに早く、夜半には御坂峠の麓にまで至っていた。両軍睨み合うこと数刻、仕掛けてきたのは北条軍。夜の帳に紛れて風魔衆たちが武田の陣へと奇襲を仕掛けてきたのだ。

 その狙いは実に正確であった。充分に仕掛けるだけの時間がなかったとはいえ、囮として用意していた罠が功を奏したはいいものの、10以上は用意していたその罠もせいぜい2つくらいしか敵の忍びを絡め取ることはできなかった。結局その後は武田の常套手段――力押し。結局討ち取れた忍者は数名。対してこちらの被害は罠が悉く見破られて無力化され、討ち取った忍者の数倍に及ぶ兵の損失。

 

「してやられたな。あれだけ素早い行軍ともなれば兵の疲労も大きいゆえ、そうそうすぐには攻めて来れぬと思うていたのだが……」

 

 実際、信繁のその予想は外れてはいなかったろう。最初に仕掛けてきたのは本当に忍びだけのようで、北条兵は全く攻めては来なかった。

 様子見というのもあるかもしれない。だがそれ以上に、信繁は敵の目的が武田の士気低下と疲弊の増加を狙ったものであると読んだ。

 先に着陣したからこそ行軍の疲れを少しでも長く取る時間があった武田軍。対して北条軍はかなりの速度で行軍して着陣したばかり。兵の疲弊は北条軍の方が大きい。とは言え、武田軍を長く休ませてやるのは北条方にとってよろしくない。兵の疲弊による優劣をなくすべく、北条は忍びによって武田軍をかき乱し、混乱とそれによる疲弊を狙ってきたのだろう。混乱が長引けば長引くだけ、その間に北条はゆるりと兵を休ませることができる。

 

「北条綱成殿……地黄八幡と呼ばれるほどの猛将。その名に踊らされて搦め手に対する備えを怠るとは何たる失態。兄上がおられたならば拳骨では済まされぬな」

 

 今はまだ地黄八幡とは呼ばれていないが、そう呼ばれることになるのも時間の問題だろう。すでに北条綱成の名は関東にその名を知らぬ者はいない。河越夜戦でもその名は高く聞こえ、その勇猛ぶりは広く讃えられ、また畏怖されている。

 それゆえに、見誤った。

 『地黄八幡』の名と『猛将』という評価が、搦め手を使ってくるという策への意識を薄くさせてしまっていた。

 

「しかし……同じことを考えようとはな。結果としては私がやられた形になったが」

 

 綱成が用いた忍びを使った搦め手。実は信繁も全く同じことを考え、実行に移していたのだ。

 兵力差で劣る以上、奇襲や工作は当たり前。信繁は満頼に命じて隠密に長けた者を――本物の忍びには比べるべくもないだろうが――選び出し、北条軍へ奇襲攻撃を仕掛けるつもりだったのだ。行軍の疲弊を狙い、休ませるなと。そのための切り札も惜しまず投入した。

 だが結局先に武田軍への風魔衆による奇襲が始まり、信繁は出払っていた満頼たちに撤退と加勢を命じるより他になかった。

 そして風魔衆は散々武田を混乱させて撤退し、武田はその混乱を早朝まで引きずった挙句、朝飯すら余裕綽々に平らげていたらしい北条軍の攻勢に遭うことになる。

 

「いつまでもこんな策が通用するとは思えぬ。すでに北条方も攻撃を開始して三刻は経つ……ここいらで痛撃を与えれば北条も攻めに慎重にならざるを得ぬはずだが」

 

 武田の損失も馬鹿にはならないが、北条とて三刻に亘る競り合いには相応の被害を負っているはず。

 

「それにしても左翼3番隊は実に見事な動きをする」

 

 左側、本陣のやや下方に布陣する左翼3番隊。本陣のすぐそばに布陣している立場ゆえ、本陣護衛も重要な任務だ。それゆえに本陣防衛の最後の要として敵にも映っているらしく、攻勢は波状で何度も仕掛けられている。にも拘らず、3番隊はその立場を逆に利用して時に崩れたように分裂したと思いきや、これに乗って突っ込んできた敵を左右から挟撃して混乱させ、まるで狙い目ですよと言うかのように本陣からの援軍がいる場所へと誘導している。そうなれば三方からの囲い込みで一網打尽にするだけだ。

 

「攻めるにしては受け身。逃げるように退いたと思えば策で絡め取る……跡部や浅利にしては両人の指揮らしくないな……佐五」

「はっ」

 

 信繁の呼びかけに佐五が跪く。信繁は彼に左翼3番隊を務める浅利隊の様子を尋ねる。佐五は直ちに資料から兵の名簿を調べ始めた。

 

「信繁様。浅利様は部隊の中より目のいい兵を各小隊の長に命じておられます。どうやらそのうちの1人がなかなかの目利きのようで」

「ほう。その名は?」

「˝はるひ˝と申す女子にございます」

「˝はるひ˝か……ん? はるひ?」

「? どうかなさいましたか、信繁様?」

 

 信繁の驚いた様子に、佐五は知り合いですかと尋ねてきたが、信繁は無言のままですでに思考を巡らせていた。

 はるひ。別にその音に覚えがあるわけではない。ただ……浮かんだ文字が嫌に引っかかる。もし考え通りの人物であったとしたら……。

 

「ふふ。天もまだまだ我ら武田を見捨ててはおらなんだか」

「信繁様?」

「佐五よ、直ちに浅利隊へ向かえ。私の言葉を浅利とその˝はるひ˝と申す者に伝えよ」

「は、ははっ!」

 

 佐五に命令を与えると、信繁は直ちに兵に命じて馬を用意させる。信繁は兜を被り、その緒を締め直す。陣幕を払い、戦場へと身を晒す。

 動かざること山の如し。静かなること林の如く。されど動くときは風の如くに。いや、雷霆の如く! そして気合は火の如く!

 刀を半分ほど鞘から引き抜き、その具合を確かめるように信繁は静かに納めて。

 

「正面の敵には私が当たる! 続けい!」

「「「「「おおおおおお!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 御坂峠は神話に登場する地である。征伐に赴くヤマトタケルがこの地を通っていったことから御坂という名が付いたという。

 綱成はそれほど文学に敏いわけでもなく、むしろ本人としてはそういった文化面に関してはまるで素人という認識でしかない。鎧をまとい、槍を持ち、戦場で大暴れする――それこそ自分に相応しい姿。生来、武骨者なのだと。

 そんな綱成であるから、ヤマトタケルという名こそ常識的な知識として知ってはいても、神話に出てくる地名まで知っているわけもなく。

 

「この地を通って武田征伐に赴く我らには天運が味方してくれる……か。兵たちを鼓舞するためとは言え、義姉上も近頃とみに口が上手くなったものだな」

「御本城様の影響だぁな」

「それは間違いないだろうな。まあ、それ以外にもありそうだが」

 

 訛りの強い副将と軽口を叩きつつ、綱成は氏康の口達者ぶりが早雲の影響もさることながら、早雲の説教――主に見合いに関する事柄――からどうにかして逃げようとしてきた結果、逃げ口上が上手くなったという見方もできるだろう。氏康の立場のために口にはしないでおくが。

 槍の柄床を地面に立て、雷光を模したようなギザギザの刃を上へ向け、直立して御坂山を見上げる。常日頃より富士を間近に眺めることができる身にて、御坂山はさほど目を惹かれるものではない。それでも氏康からこの山の名の由来を聞いたとあって、どことなく神秘的なものを感じるというのも何とも単純な話である。こんなことだから常より氏康からは美が分からない愚弟だの何だのと言われるのだろうけれど。とは言え、強いて否定する気もない。その辺に疎いのは自覚しているし、氏康には悪いが別に大した問題ではないと考えているからだ。なので氏康からそういった内容で責められるときに綱成が返す言葉は決まっている。

 

――『日頃から日ノ本一の富士、そして御本城様や義姉上を見ているのです。目が肥えたせいでちょっとやそっとの美では感じ入ることができないのですよ』

 

 そう返すと決まって氏康は言葉を無くして赤くなる。終いには逃げ出す。責め苦からの回避は成功である。

 

――『……綱成様もたいがい口達者でございますな』

 

 偶々その場に居合わせた松田憲秀にはそう呆れられたが。

 もちろん、綱成も自身の逃げ口上が上手くなっているのはわかっている。しかしそれも致し方あるまい。毎度毎度、氏康の起こす見合い騒動に付き合わされる身としてはたまったものではない。回避策を用いるのも当然の成り行きというものである。是非もない。

 まあ憲秀あたりに言わせれば、『快活明朗で知られる綱成様がかような口説き文句を平然と口にすれば、女子ならああなりましょうぞ』というところだが。もちろん、そのあたりの自覚が無いのはお約束というものである。

 余談はさておき。

 今の綱成の目に映るのは、神秘性を感じる御坂の山よりも、その御坂の山々から覗いて見える武田菱である。

 

「攻撃開始よりどれほど経った?」

「おおよそ三刻だぁなぁ」

「風魔衆が仕掛けてからならもう半日。よもやわずか500の敵にここまで手こずるとはな……」

「武田の戦い方がこれまでのものと違いすぎてらぁ。手こずるというより、こっちの兵たちが戸惑ってるって方が正しいべや」

 

 太陽は丁度天頂にある時間。その陽の光を一度見上げながら頷きを持って返す綱成の感じ方にも、その言葉がすんなりと当てはまった。

 北条と武田の間では幾度か合戦が起こっており、綱成や氏康には経験が無いが、早雲や憲秀曰く、力押しで搦め手が非常に有効な相手であったという。ただ信虎を始め甲州兵は血気盛んで、強引に罠を破って襲いかかってくる。まさに猛獣の如しと。下手な罠や搦め手は逆に相手の勢いを増すだけに終わる。

 だからこそ今回の風魔衆による奇襲は徹底させた。実に三刻に亘る波状奇襲攻撃。風魔衆に徹底させたのは奇襲と罠の排除。できなくても罠の位置や仕掛けの種類だけは把握したい。将を狙う必要はないし、敵兵の数を減らすことに注力する必要もない。ただ奇襲を仕掛けて敵を精神的に追い込みたかっただけだ。おかげで武田軍は真夜中から朝方までずっと風魔衆による奇襲に晒され、寝ることもできないまま、朝方の北条軍の本格攻勢を受けることになった。兵力という物理面での有利と、先に着陣されたことによる不利をなくし、精神面でも優位に立つ。休息を取り、朝飯も食べた。兵たちの士気は十分だ。例え武田軍が力押しで反撃してきても充分にやり合える。

 

 そのはずだったにも関わらず。

 

 武田軍は真っ向から反撃せず、北条軍の攻勢を受け流すように迎撃してくる。

 

「押しては引き、引けば押し返してくる……武田はいつからそんな器用な真似ができるようになったべや?」

 

 刈り込んだ頭を乱暴にかき、いったいどこの生まれかもわからなくなるほど多くの地方の喋り癖を披露する副将、多目元忠。軍師たる者、その身を出身から煙に巻くものよ、とはこの男の口癖だ。ひょろっとした細い体つきだが、その目に宿る光はひどくぎらついている。初見の者はだいたいこの男の眼光に引いてしまうほどだ。細い分なのかこの男は身長が高く、手足も人より少し長め。そういう体だからこそ、その風体を忌み嫌われて孤独に生きてきたという。だが元忠はその名が示す通りの忠義の士であり、北条に仕え、多くの将を育てている。綱成もそうだし、氏康や氏綱、他にも北条綱高などの各将らもその実力を認め、教授を受けている。はるかに歳が上の松田憲秀ですら、その講義には欠かさず出てくるほどだ。

 

「そもそも罠を張る時点でこれまでの武田の戦い方とは違う。武田信虎はそんな小細工を好まない性格だったはず。しかも風魔衆が発見したからよいものの、まさか武田も奇襲攻撃を行う手筈であったとは」

 

 綱成ですらこうなのだ。武田攻めの経験がある指揮官や兵の戸惑いはより大きいはず。何か画策しているのか、という考えが首をもたげればきりがなく、今ひとつ総攻撃に踏み切れない。綱成は知らず知らずのうちに爪先で何度も地を叩いていることに気づいていなかった。

 

(わずか500の兵に手こずっている場合ではない。早く行かねば上杉に先を越されかねない)

 

 だからと言って目の前の敵を軽視するわけにもいかない。敵はわずか500なれど、それを指揮するのは武田軍の総大将、武田信繁である。信繁の指揮能力に関する情報は実のところ少なく、唐突に代替わりした武田の総大将の力量を図りあぐねている。これまで信繁は戦場に出ても表立って総指揮を取ることもなく、せいぜい信虎から一部隊を預けられていたくらいで、その役割も主力と言うよりは他部隊援護という色が強く、目立った功績もない。評価するにも材料が足りないのだ。

 そんな総大将がわずか500の兵で3000の北条軍に向かってきた。いったい何を考えているのかわからない。その上、奇襲や罠を張ってくるわ、実際に北条の攻勢を受けても三刻に亘って耐えているわで。綱成が直接前線に出ることも難しい。綱成としては状況を打破するためにも出たいのだが、別働隊3000を預かる身としてそう易々と出払うわけにもいかず……実にもどかしいことこの上ない。

 

「本当に敵は500なのかどうか信じられなかったが……三刻経っても未だ新たな兵が出てくる様子が無いあたり、本当に敵兵力は500ということらしいな」

「連れてきている将こそ飯富・多田・跡部・浅利と見受けられるが、総大将が僅か500たぁなぁ」

 

 北条軍が全軍揃っていきなり攻勢をかけるわけにもいかなかった理由は決して行軍の疲弊があるからだけではない。ただでさえ北条軍別働隊は背後に小山田氏というまだ充分信用を置くことができない勢力を抱えている。もしかすると小山田と通じているのではないかと思い、綱成は風魔衆に奇襲をかけさせると同時にその辺りも探らせていた。が、結果はシロ。小山田氏に動く気配は全くないらしい。

 奇襲の成功とその報告を受けて攻撃を開始したが、御坂峠は笹子峠ほど開けた山道がなく、整備もされておらず、大軍が一気に進めるものではなかった。それゆえに大軍で踏み越えることができず、小競り合いのような状態になっていた。

 

「敵の布陣は変わりないのか?」

「こっから見える通りぜよ。連中は鶴翼陣を崩さねえ」

「背水の陣、ということか」

 

 御坂山塊を超えれば武田が長らく治めてきた、甲斐では国中と称される地になる。ここに敵兵を入れたくはないのだろうか。

 武田軍は当初、左右に長く広がった布陣である鶴翼陣を取っていた。北条が攻撃を始めると、左右の翼でこちらを囲い込むような形で布陣を変えてきた。山道を登ってくる北条軍を左右と正面の三方から囲いこもうという構え。もちろん正直にその中に突撃しようとは思わない。綱成は左右の陣を中心に攻撃させ、両翼の先端から1つずつ潰していくように攻撃を指示。しかしそれがわかっていたのか、武田軍は無理に戦おうとせず、押されると兵たちが散り散りになって山に散っていき、今度は後方の部隊が北条軍と矛を交え始める。そしてその間に散った兵たちが後方で態勢を立て直して部隊の最後尾にまた並んで待機、という動きを取っているらしい。散った兵たちを追って殲滅するにも、北条にとって慣れない山を縦横無尽に走る武田兵を追い回してこちらが迷子になったら笑い話にもならないし、山の中に仕掛けでも施されていたらそれこそこちらの被害が増す。

 

「見た目は鶴翼陣だが、前の部隊が崩れたら後方の部隊が新手として出てくる動きは魚隣陣のそれだな」

「地形を上手く利用しとる。平地ならそんなもん、敵のさらに左右から攻め立てりゃええだけの話だぎゃあ、山を回り込むとなると時間もかかるし兵の疲労も馬鹿になんねえ。しかも敵は山の上に陣取っとるから、こっちの動きは逐一見えちまってらぁ」

「おまけに笹子峠と違って道はほとんど整備されていない。少し道をそれれば深い森。慣れない兵たちの移動は難しい……まったく、御坂峠を先に取られたのは痛かったな」

 

 兵の統率も成っている。布陣の真ん中にある本隊はどっしりと動かず、左右の両陣が代わる代わる動いている様子が旗を見ていてよくわかる。

 

「……やはり動かないままだな」

「ああ。左翼の旗は飯富、右翼の旗は跡部だぁな」

 

 代わる代わる相手をしている武田軍の部隊の中で、飯富虎昌と跡部信秋の旗は信繁と同じく一点に留まっている。

 風魔衆に探らせたところ、どうやら虎昌が左翼の全体指揮、信秋が右翼の全体指揮を担っているらしい。これらを信繁が上から睥睨し、総指揮を取るという仕組みだ。

 

「武田軍はおおよそ50人を一部隊にして10部隊を編成。うち9部隊を武田信繁・飯富・跡部が3隊ずつ指揮しとるぜよ」

「そして残る1部隊を多田満頼が指揮し、遊撃部隊として機能しているわけか」

 

 信繁本隊は戦況によって部隊を左右に派遣しており、おそらくは散った兵たちが最終的に集まるのも信繁本陣。そして信繁指揮の下で再編成され、また両陣へと振り分けられる。まるで回転するように。

 

「……そう見ると上杉や長尾が得意とする車懸りの陣に似ているな」

「そう言われりゃあそうさなあ」

 

 

 

――ならば話は早い。核は信繁本隊。これを優先すればいい。

 

 

 

 ……とまあ、こんなことは攻撃を開始して一刻も経てばわかっていたこと。

 北条軍はそこを突いて両陣を攻め立てつつ、左右両翼の武田軍部隊がそちらに意識を取られている間に中央を進撃して信繁本隊を突こうとしたのだが、ここで厄介なのが多田満頼の遊撃部隊である。

 

 

 

 

 

「まさか部隊の兵全員が種子島装備とは……」

 

 

 

 

 

 種子島。

 地名であり、そして地名以上に名を知られる新兵器――鉄砲である。

 日ノ本では急速にその数を増やしつつあるこの兵器。細く長い筒から放たれる鉛玉は目に見えず、耳を劈く大音が一度鳴れば兵が倒れていく。

 日ノ本ではその生産地が限られ、各地の大名たちも自力生産を試みてはいるが、なかなか上手くいっていないのが現状。日ノ本では和泉の堺、紀伊の根来、近江の国友・日野がその一大生産地として知られている。これが如何せん、東国からは遠い。取り寄せるにも各地の関所で止められ、やむなく闇商人たちから買うしかないのだが、これがまた高くつく。殊に甲斐は内陸国。海上輸送という手段がない以上、どうしても陸路から手に入れるしかないのに、まさか50人全員に鉄砲を持たせるとは。

 北条兵も鉄砲は知っているが、人ですら怯えるその威力、そして音。厄介なのは音だ。あの音に兵は元より、馬が怯えてしまって暴走するという事態。これにより信繁本隊を突こうとした北条軍部隊は将が暴れまわる馬から落馬するわ、腰砕けの兵が続出するわで自壊し、撤退するより他になかった。

 

「道理で騎馬軍団で知られた武田にしては騎馬が戦いにくい山を戦場に選んだわけだ」

 

 騎馬軍団が下馬して戦う。何とも皮肉な話だが、これまでの武田からは想像もつかない柔軟さを綱成は感じていた。

 

「三刻も持つとは確かに意外であったが……もうあと少しというところだろう」

「そりゃ間違いねぇな」

 

 綱成の言葉に元忠も深く頷く。

 どんなに粘ろうとも兵力差は厳然として存在している。御坂山には城も砦もない。武田は御坂山に陣取ることには成功したが、防御壁などを構築できたわけではない。せいぜいが馬防柵を拵えられた程度。あとは即席――にしてはよく作ったものだが――の罠を作ったり、攻撃や防御に使うために周辺の木を切ったりできたくらい。

 

「確実に武田も被害と疲弊が蓄積していっている。山を駆け回る体力もそれほど残ってはいないはず」

「撤退するか、何か仕掛けるか……何かしら動きがあるはずだぁな。ま、なければ動かざるをえなくしてやるだけだべや」

「風魔衆は?」

「いつでも行けるぜよ。今度はヘマこかねえって息巻いてやがらぁ」

 

 真夜中から朝方まで奇襲を続けていた風魔衆は綱成の命令でこの攻勢の最中に休ませていた。たった数人とは言え、仲間が罠にかかったことを恥じているらしい。充分な効果はあったはずだから綱成としては気にしていないのだが、忍びには忍びなりの誇りがあるのだろう。

 綱成たちが視線を注ぎ続ける武田の本陣――武田信繁は未だに動きを見せない。何かを待っているのか。だとすればそれは援軍か? 何かの策か? それとも……誘いか?

 綱成はそこまで考えてくっと笑った。どんな思惑があろうが、ただ1つだけ、間違いなく言えることがある。

 

 

 

 

 

――武田信繁は、この戦に勝つつもりなのだ。

 

 

 

 

 

 そのための思惑。決して無駄に時間を引き延ばしてこちらの士気を削いで和解に持ち込もうとか、自棄になっているわけでもない。勝つ――武田の動きに、綱成は勝利への執念を感じ取っていた。

 体が震える。心の奥底から湧き立つものがある。

 

「武田信繁……爪を隠す鷹であったか。御本城様のお言葉は正しかったわけだ」

 

 もちろん鉄砲は北条にも僅かだがある。だが綱成は温存していた。500ばかりの兵に鉄砲までは必要ないだろうと。切り札としてのそれも、先に信繁に豪快に切られた今となっては、切り札としての価値は半減している。武田軍は馬を下りて戦っている兵ばかり。同じような混乱を武田方に期待することはできないだろう。

 搦め手には搦め手で返すということだろうか。

 

「やってくれる……!」

 

 綱成の呟きに混じる色は怒りか。それとも悔しさか。

 否。

 

 

 

 歓喜である。

 

 

 

 元忠は言葉もない。肩を歓喜に震わせて山を見上げる綱成は、実に不気味であった。会えば誰もが颯爽としていて立ち姿も絵になり、好感を抱く青年であるが、戦になると豹変したように好戦的になる。それでも将としての器はあり、冷静さを決して失わない。だからこそ川越夜戦でも早雲や氏康が援軍に駆け付けるまでの長い間、上杉らの大軍から城を守り抜くことができたのだから。今の彼は、そのときよりも不気味だった。能ある鷹は獅子を呼び覚ました、というところか。

 

「申し上げます!」

 

 綱成が槍を持つ手をうずうずさせている中で、陣幕を払って兵が入ってきた。

 

「敵の右翼を崩しました! お味方は再び崩れたところから敵勢の切り崩しを狙いましたが、敵勢の立て直しが素早く……」

「また失敗こいたべ?」

「も、申し訳ありません!」

 

 綱成が無言だったので元忠が攻撃を続けろと命じておく。すると今度はその兵と入れ替わりに別の兵が入ってきた。

 

「敵左翼に乱れあり! 我が方の攻勢に対し、敵将・武田信繁が本隊を率いて出て参りました!」

「おおう。ようやったぜよ! 綱成殿!」

 

 元忠が声をかけるまでもなく、綱成の目はすでに武田の動きを捉えていた。

 御坂山の中腹に陣取る武田軍。その中央でこれまでまったく動きを見せなかった武田菱が一斉に動き出している。これまでの不動ぶりが嘘のような速さだ。

 

「敵右翼への攻撃は維持し、敵左翼に集中して戦力を振り分けろ! この崩れを立て直させるな! 本隊は俺に続け! 中央を攻撃し、武田信繁を討ち取る!」

「綱成殿が直々にお出になられるぜよ! 全軍、気を入れ直せ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 

 綱成は兵が引いてきた馬に乗り、颯爽と戦場へと繰り出した。壮絶な笑みを浮かべつつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武田信繁がいたぞおおお!」

「奴を討ち取れ!」

 

 一見しても他とは毛並みも体格も違う馬を見て判断したか、北条兵たちが信繁に迫ってくる。

 信繁を守ろうとする佐五たちを一喝して制止。信繁は地に倒れ伏す北条兵から槍を引き抜いて逆の手で握り締めている手綱を引いた。すると愛馬がそれに応えて雄叫びを上げ、前足を地面から飛び上がらせる。馬上で立って片腕で落ちぬように踏ん張り、そして槍を持つ手は思い切り振りかぶって――!

 

「ふんっ!」

 

 気合豪投!

 愛馬が前足を地面に叩き付ける勢いと信繁自身の腕力を注ぎ込んだ投槍は迫る北条兵の胴体を貫く。しかも止まらない。甲冑など何のその! 槍は北条兵を貫通してその背後の兵にまで届いた!

 その威力と信繁の一見過剰にも見える動作が迫力を生み、戦場の熱がその迫力をさらに大きく強く見せかけて。北条兵たちがどよめき、足踏みした。

 

「我こそが武田典厩信繁なり! 名声が欲しくば我が首を取って誉れとせよ! さりとてこの首、安くはないぞ!」

 

――オオオオオオオオ!

 

 信繁の気勢に今度こそ佐五たちが前進した。僅か500の武田軍が、6倍の兵力差にある北条軍に果敢に挑む。守っているのではない。彼らは攻めている。まるで川越夜戦の再現にして、今度は北条が上杉の立場になっている。しかし北条兵もさるもの。馬に乗る将が自ら進み出て武田兵の1人を斬り伏せて叱咤すると、北条兵も士気を取り戻して武田兵に食いつく。

 再び戦況は一進一退の様相を見せるか――そう両軍に思わせたのは束の間。

 その将の額に、矢が突き刺さった。

 

「――――」

 

 将は刀を突きだした姿勢のままでしばし姿勢を保っていたが……馬が僅かに身を揺らすと、その動きに合わせて突きだした腕はそのままにぐらりと後ろに倒れて落馬。目を見開いたまま事切れていて。

 

――オオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 武田兵がまるで勝鬨のように雄叫びを上げた。さすがの北条兵もこれには二の足を踏む。ここで再び前に出る将は――いない。

 

「全軍、前へ!」

「攻めよ、攻め立てよ!」

 

 浅利・跡部の両将が先頭切って敵中へと挑みかかっていく。これぞ武田の戦いとばかりに真正面から。

 彼らを頼もしいと思いつつ、信繁はこの機この瞬間を逃さずに敵将を射抜いた者へと視線を移す。そこには顔の片側を完全に前髪で覆った、まだ年若い少女。信繁の視線に気づき、何か失態をやらかしたとでも思ったのか、体をびくりと震わせて縮こまる。その様に信繁は苦笑するしかない。

 

(前世でも農民出身だからと遠慮深い性格であったが、この世ではより顕著になっているな)

 

 今まで信繁が彼女を見つけられなかったのも道理なのかもしれない。

 信繁は勘助のみならず、前世における武田家重臣、その悉くの所在を突き止め、何とか武田家に抱え込もうとした。前世の武田家を見ていたからこそ、彼らの有能ぶりは敵に回れば恐ろしい。この世はどんな変化が起きてもおかしくないのだ。抱え込んでおくに越したことはない――そういう打算もある。だが何よりは、かつて苦楽を共にして兄信玄に仕えた者たちと同じ魂を持っている者たちだからこそ、この世でも共に在りたいという信繁自身の強い希望があった。

 特に武田四天王――飯富虎昌・板垣信方・甘利虎泰・上原昌辰とは別――と言われた4名と勘助は絶対に外せない。飯富昌景と工藤昌豊は元より武田家臣であったからよかった。信春も武川衆の1人であったからその動向は把握しやすい。問題は勘助と武田四天王最後の1人。

 

 

 

 

 

 春日虎綱。

 

 

 

 

 

 勘助は流浪の身であり、虎綱は元々農民だ。どこにいるのか把握するのは骨が折れた。勘助より虎綱は早く見つかるだろうと思っていたが、予想に反して勘助は見つかっても虎綱だけはその所在がとうとう明らかにできなかった。

 それもそのはず。前世において虎綱は当初『源五郎』という名であったが、この世では彼女は全く違う名であったのだ。まあ、この世では女性にも男のような名を付けるが、全員がそうであるわけではない。その傾向が強いのは武士階級であり、農民たちはほぼ前世と同じ。だから『源五郎』で探しても見つかるわけがなかった。

 それでも彼女は前世と何の関係もない名を名乗っているわけではなかった。彼女もやはり前世の春日虎綱と同じ魂を持つ存在。名前という個を示す大事な言の葉は、しっかりと前世と繋がっていた。

 そう、彼女の今の名は、『春日』と書いて『はるひ』。

 

(何という灯台もと暗し。少し考えれば思いつくこともできように……私の意識の死角を突くとは、さすがは『逃げ弾正』か?)

 

 彼女にそのつもりはなかったろうが、前世よりさらに遠慮深く目立たない様を見ていると、どうしてもそう思ってしまう。

 武田四天王とは別に、武田の三弾正と言えば『攻め弾正』真田幸綱、『槍弾正』保科正俊、『逃げ弾正』春日虎綱。冷静な判断力と的確な退却指揮能力を持つが故の『逃げ弾正』。退却指揮能力が高ければすなわち殿軍の指揮に向いている……とは一概には言えないが、虎綱は確かに殿軍を任せても見事にやってのけることだろう。だが決して殿軍だけに向いているわけではない。退却とは何も逃げ帰ることと同義ではない。戦略的な退却もその1つ。そう、例えば――陽動も。

 

 

 

 

 

「信繁様、敵本陣に動きが!」

 

 

 

 

 

 佐五がそばにやってきて指差しながら。

 麓から離れた場所に陣取っていた北条軍本陣前から砂煙が上がっている。進撃してくる軍勢が巻き上げる砂埃だ。その先頭に眩く太陽の光を反射する馬印が!

 

「御館様! 敵将、北条綱成が向かって参ります!」

「誘いに乗ったか……!」

 

 春日に任せたのはわざと崩れたように見せかけて総攻撃を誘うこと。すでに戦闘開始より三刻。北条軍も痺れがきているころだろうし、なぜかは知らないが北条には何かしらの焦りが感じられる。ならば隙と見れば一気に来るはず――そう読んだ信繁の策。

 そしてそれは、見事に的中した。

 

「全軍に前に出すぎるなと触れよ!――虎綱春日!」

「は、はい!」

 

 信繁が呼ぶと、春日はもう何度目かわからぬ驚きの反応を見せた。

 

「よくぞやってくれた! そなたの働き、この信繁、しかと覚えおくぞ!」

 

 春日はその言葉を茫然として聞いていたが、信繁はその様を見るまでもなくわかっていた。だから背を向けたままで。

 

「次は私が目にものを見せてくれる! 全軍、我に続け!」

「若が――御館様が先陣に立たれる! 後れを取るでない! 我が飯富の赤備えを以って御館様を援護せい!」

「武田の底力、北条の輩に思い知らせてやれ!」

 

 信繁たちも一斉に山を下り始める。その勢いを以って北条兵を蹴散らしてゆく。砂煙を上げて進むその様、まさに土石流の如く。北条兵にしてみれば、自然によるものか人によるものかの違いはあれ、等しく『脅威』であった。

 

 

 

 

 

「全軍、怯むな! ここが正念場だ!」

 

 

 

 

 

 しかし武田の猛威に真っ向からぶつかる者がいた。北条軍の先頭を突っ走る黄色の騎英!

 

「戦場に在りし眩き黄色! 貴公が北条綱成殿か!」

「その赤き鎧……赤備え。甲山の猛虎……いや、違う! その覇気、武田信繁殿とお見受けする!」

 

 信繁も綱成も共に手綱を引いて馬を止めた。半身を見せつつ、両雄は十数間の距離を置いて向かい合う。

 互いの兵がその間に割り入って主を護ろうとするも、2人はこれを制した。佐五でさえ、信繁から無用だと脇へやられる。綱成もまた、横に並ぶ元忠に目配せして下がらせた。

 

「如何にも! 私が武田家当主、武田典厩信繁なり!」

「北条上総介綱成! 武田信繁、その首、俺の槍が貰い受ける!」

「見くびるな! こちらは甲山の猛虎直伝の腕と譲り受けた赤備えの魂がある! 地黄八幡の力量も我が刃で飲み込んでくれる!」

「よく言った! やれるものならやってみるがいい!」

 

 譲るものは何もない。これ以上に交わすべき言葉も必要ない。

 信繁は自身の内に沸き立つ戦意を感じ、そしてそれを隠すことなく綱成へとぶつける。だが綱成は全く動じない。受け流すでも耐えるでもなく、真っ向から覇気を当て返してくる。2人とも、互いの存在に今は全神経を向けていた。

 信繁の頭に、策や信玄たちのことも、今はない。ただただ、目の前の男だけ。彼に勝つこと、それ1つ。

 当たり前だ。

 それらすべて、今は余計。余所見をしていて勝てる相手ではない!

 信繁は幾度かの深い深い呼吸の後、一気に息を吸い込み――叫んだ。

 

「いざ!」

「尋常に!」

「「勝負!」」

 

 両軍から飛び出した赤と黄の騎英が――――ぶつかった。

 

 

 

 

 

――続く――

 

 

 

 

 

 

【後書き】

 長らくお待たせいたしました……いや、待って頂くほど御大層なものでもないのですが。(笑

 ようやく試験も終わりましたので、執筆再開です。もう1ヶ月書けなかった反動か、筆が進む進む……いつもそうだといいのに。

 

 などと愚痴るのは白けるだけなのでやめとして。

 ついにこの戦で最も書きたかった戦いを描くことができて嬉しい私です。

 武田信繁と北条綱成。漢字は違う癖に韻を踏んでるあたり、実際にこの2人って気が合う者同士だったりしてなあと思ったりします。以前、後書きにて書いたことがあったと思いますが、信繁には『兄貴分』と『親友』を設定していると言ったことがあったと思います。綱成はそのどちらでもありませんが、言うなれば『好敵手』でしょうか。敵であれ味方であれ、彼と信繁には互いを常に意識し合って強くなっていってほしいと思っています。

 綱成は原作の3にて、サド気質があるように描かれていますが、拙作でもその設定はもちろん健在のつもりです。上手くその辺りを描けているでしょうかね。綱成は自分のその気質に気づいておらず、元忠は「あ~あ~、出ちゃったよ、この厄介な悪癖」みたいな態度を取らせたつもりです。

 

 策を練り、けれど戦う時には思いっきり。智将でもあり猛将でもある2人を描きたかった私としては、結構満足してたりします。この調子で信玄たちの方も進めていきたい所存です。

 

 以下は頂いたコメントへの返信です。

 

>通りすがりのジーザスルージュ様

 信龍はある意味最も純粋ですからね~。信玄や信廉も信龍の素直っぷりを見習ってもらいたいもの(?)です。

 天狗として出てきたというのはあれですが、まあ、無双にならなかったのでよかったと思ったものです。(笑

 

 それでは今回はこれにて失礼いたします。

 


 
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