5
カランカラン
コートを羽織った壮年の男が入店して来た。
「いやー、爺さん元気にしてたかい。」
「なーに、まだまだくたばりぁしないよ。」
「久しぶりに、飲みに来たんだが、相も変わらずといったところだね。」
という会話をした後男は懐から一枚の茶封筒を差し出した。
「悪いが昔の様に頼まれてくれないか」
「管鮑の交であると言っても過言ではないお前とワシの関係だから引き受けてやりたが、さすがにもう無理だ。」
「そこを何とか、お願いだ。」
「分かった分かった。仕方がない、あの坊主に任せてみるか。本当は、もっと簡単なことからやらせたかったんだが。まぁよい。」
「大丈夫何だろうな、そいつ。」
「何、問題はない。かつて世を恐怖のドン底に陥れた一族の末裔だからな。」
カラン
グラスの中の氷が未来を暗示するかの様に冷たく笑った様であった
夜もだいぶ更けた頃
『ただいま~』
「おかえり、お前に様があるんだが、少しいいか?」
「えっ私?」
「違う違う、そっち。」
「俺かよ。区別して呼べよ。でないと分からないだろ。」
「あぁ、それもそうだな。んーじゃあまぁ差し当たって、孫娘と居候とでも呼ぶとするか。」
「居候は少し気に食わんが、まぁ実際問題そうだから、それでいいや。」
本日の成果、呼び名が決まった。
じゃなくて、
「爺さん、俺に何か用があったんじゃないのかよ?」
「おぉ、そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ。ほい。」
俺の手元に茶封筒が放られた。
「よっ。」
俺、ナイスキャッチ。
「これは一体何だよ。」
「読めば分かる。」
「ん。後で、部屋で読むわ。ところで部屋何処?」
「カウンターの裏にある扉開けると、空き部屋が幾つかあるから、適当に。」
「ん。じゃ、お休み~。」
ガチャ
確かに、部屋があるな、山ほど。適当にと言われても、迷うぞこれ。とりあえず、近くの部屋に入るか。
ガチャ
おぉ~。すげえ。こんな部屋初めて見た。冷暖房付き風呂付きトイレ付きTV、インターネット完備の部屋なんて。
「いいのか、こんな豪勢な部屋使って。」
「いいんだよ。自由に使ってくれ。」
それはそれは、有難うございます。心中で感謝し、そのまま、ベッドに倒れ込んだ。
「カッター、カッターっと。」
ジャキーン、スパッ、スッ。
封筒の中には一枚の紙が入っていた。
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第四幕