No.510422

それは子供たちの戦争である。

即興小説トレーニングにて
お題:元気な発言 必須要素:コーヒー牛乳
http://webken.info/live_writing/novel.php?id=19558

2012-11-20 20:52:40 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:461   閲覧ユーザー数:458

 ある日のとある小学校のお話。

 皆様、リクエスト給食というものをご存じだろうか?

 その名の通り、給食の内容をリクエストできるというものだ。毎月一回、どこかしらの小学校でリクエストを募り、給食センターがそのリクエストを叶えるというものだ。

 そして今日、この小学校にリクエストの権利が回ってきたのである。

「それでは、みんな、今度のリクエスト給食は何がいいですか?」

 先生がそう答えると、クラスのほとんどが手を挙げた。

「それじゃあ……まずはAくん」

「はい!! 飲み物はコーヒー牛乳がいいと思います」

 その発言にクラスのみんなは「賛成~!!」と言った。

 コーヒー牛乳は人気なのだ。

「それじゃあ、飲み物でほかの意見がある人はいますか?」

 しかし、特に反対意見もなく、飲み物はコーヒー牛乳となった。

「それじゃあ、ご飯はなにがいいですか?」

 するとこれまたクラスのほとんどの児童が手を挙げた。

「じゃあ、Bちゃん」

「はい、私はきなこあげパンがいいと思います!!」

 きなこあげパン……これまた人気メニューだ。しかし、これには反対意見があったらしくCちゃんがこんな意見を出した。

「はい、私はわかめごはんがいいです!!」

 わかめごはん。なぜか人気が高いメニューだ。ほかにも、焼きそばパンだの、サンドウィッチなど、いろんな意見が出た。

「じゃあ……これは多数決で決めます。皆さん目をつぶってくださいね。はい、じゃあどれがいいか手を挙げてくださいね」

 こうして、ご飯はわかめごはんが勝利した。

「それじゃあ、次にサラダです。サラダはなにがいいですか?」

 サラダ、あまり人気があるメニューとは言えないのだが、それでもとあるサラダに関してはとても人気が高い。むしろ、それ以外のサラダは食べたくないというのがクラス……いや、この小学校、いやもっと大きく言えば、全国の小学校共通の認識だ。

 つまり全員一致でそのサラダに決定したのである。

「春雨サラダ!!」

 そう、春雨サラダ、そのさっぱりした味と春雨の食感。これぞまさに小学生にとっての最高のサラダに他ならない。

「ではサラダは春雨サラダに決定です!!」

「やったー!!」

 むしろ毎回、春雨サラダがリクエストされるため、給食センターはリクエストの日以外は春雨サラダを出さなくなったくらいだ。

 小学生たちは自分たちの好きなサラダを出してもらえる、この日を待ち望んでいたのかもしれない。

「それじゃあ、次におかずですが……なにがいいですか?」

 これまたクラス全員が手を挙げた。

 から揚げ、ちくわの天ぷら、焼き魚、ハンバーグ、いろんな意見が出た。

 多数決でもなかなか決まりきらず、ついに決戦投票まで持ち込まれた。

 そして勝利を収めたのはから揚げである。

「よっしゃああああああ!!」

 から揚げ派の勝利の雄叫びが学校中に響き渡る。ほかの派閥も「から揚げなら仕方ない」という納得の顔をしている。

「それじゃあ、次にスープです。スープはなにがいいですか?」

 これもまた、クラスの意見が割れた。

 コーンスープ派とフルーツポンチ派の二つに分かれたのである。

 なかなか決まらなかったが、コーンスープ派のとある一言が、この戦いの流れを引き付けた。

「フルーツポンチはデザートになっちゃう。そうするとほかにデザートが出なくなっちゃうよ!! つまり給食の品数が一つ減っちゃうんだよ!! それでもいいの!?」

 そう、フルーツポンチはスープでありながら同時にデザートでもある。フルーツポンチが出る、これすなわち給食の食べるものが一つ減ることと同意義なのである。

 いっぱいご飯を食べたい小学生にはこれは死活問題だ。

 こうして引き寄せられた流れによって一気にコーンスープ派が勝利を収めることとなったのである。

「じゃあ、最後です。デザートは何がいいですか?」

 これも非常に揉めた。各自いろんな意見が出ては反対意見が出る。むしろ、このデザートが本当の戦いと言わんばかりに、激しい様相を呈している。

これもおかずと同じように多数決で決めようとしたが、いかんせん、おかず以上の意見が出ているために、なかなか決まらない。

 しかし、時間が流れれば物事は進むものである。

 最終的には麦芽ゼリーなるものが勝利を収めた。

「はい、ではわかめごはん、春雨サラダ、から揚げ、コーンスープ、麦芽ゼリー。リクエストはこれえでいいですね?」

「はーい」

 こうして、たくさんの元気な発言が見られた給食リクエスト戦争は終結した。

 しばらくして、給食センターにリクエストが送られてきた。

 それをみた給食センターのおばちゃんが一言言った。

「ホント、どこも毎回同じものをリクエストするわねえ……」

 そう、リクエストとは名ばかり。結局、みんな同じような内容をリクエストすることとなり、あまりリクエストの必要性がないような、給食センターのおばちゃん、教師含め、かなりの人間がそんな気がしていたのである。


 
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