文字サイズ:
幅:
―――風が荒れ、雷鳴が鳴り、大雨だった。
彼女の見開かれた瞳に、見知らぬ『それ』がいた。
ごうごうと耳元で、風の暴風と激しい雨音が響き渡る。
「来ないで……っ!」
彼女は叫ぶ。しかし、暴風と激しい雨音がかき消した。
「………」
『それ』はゆっくりと、確実に彼女の周囲を取り囲む。もう、逃げ場はない。
「私は……私は……っ!」
声が乾いていた。身体も震えている。
「貴方は選ばれた……」
『それ』は微笑な声で彼女に語りかけた。
「貴方は選ばれた……。これから、貴方の心も身体もすべて捧げられる……」
「何をっ!」
「決定……人形……生贄……」
『それ』は薄気味悪い声と意味不明な言葉と共に、彼女の身体を侵食する。
「うぅ……っ!?」
抵抗空しく、あっという間に彼女は『それ』に飲まれ、そのまま地面の中へ溶けるように消えた。
「―――! ―――!」
叫んだ。でも、返事はない。
「どこ、どこにいるの……?」
ぽつりと呟いた。
「―――様! こちらに……っ!」
部下が手を振る方向へ走る。そして………。
「―――――――――――――――――――――――――――っ!!!!」
絶叫した。
「蓮華―――――――――――――――――――――――――――っ!!!!」
妹の死を。
Tweet |
|
|
![]()
5
|
![]()
0
|
第一部『理想編』
第二.五話 その一
『絶世の美女と狂戦士』