「死んだ人はお星さまになって、私たちを見守ってくれる。……なんて、誰が言い出したこと何だろうね?」
そんな言葉を残して、彼女は死んでしまった。
もともと長生きが出来る体ではなかったが、どうしてそんな言葉を残して君は逝ってしまったのだろうか。
教えてくれ、彼女が好きだった夜空よ。
点々と輝く星たちに、君がいるなら答えてくれ。
どうして僕を置いていってしまったのか。
「星を見つめる私たちはスターゲイザーよ。」
恥ずかしげもなくそんなことを言っていた君はもう隣にはいない。
寒空の下で眺める星空はこんなに冷えるものだっただろうか。
一人で眺める夜空はこんなにも寂しいものだっただろうか。
つい、彼女が好きだった星座を探してしまう。
オリオン座。
そういえば前に、どうして好きだったか聞いた気がする。
「何でって言われてもねえ……。見つけやすいからかな?」
思い出すと笑ってしまう。
彼女と星を眺める時はこんな他愛のないやりとりをしていたのかと。
そんなことを思いだしたが、オリオン座がどこにあるのかわからない。
きっと、覚えてはいるはずだ。
「オリオン座も見つけられないの? 小学校の教科書とかに載ってなかった?」
そんなことも言ってたな。
でも、もし僕が一人で見つけてしまったら。
見つけてしまったら、もう彼女がいなくても大丈夫なんだと思ってしまう。
だから、見つけることは出来ない。
彼女の事を忘れることなんて、出来ない。
君がいないと、僕は駄目なんだ。
あれだけ教えてもらったはずの星座も、何一つ見つけられない。
「君はあれだよ、見習いスターゲイザーだよ」
結局、君はスターゲイザーを誤用したままだったな。
でも、僕は見習いのままだ。
ずっと、見習いのまま。
そう、ずっと。
こちら見習いスターゲイザー、本日の観測はここまでとしたい。
レンズの故障なのか、星がにじんでしまってよく見えない。
故障が治り次第、観測を再開したいと思う。
どうかそれまで、僕が見習いでなくなるまでは見守っていてください。
僕は自分を抱きしめる。
もう君を抱きしめる事が出来ない腕で。
涙を拭ってくれる人も、もう隣にはいないのだ。
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掌編書きたくて、思いついたままに。タイトル詐欺っぽい気もする。少しだけ詩を意識しました。