No.507796

魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と StrikerS編 第十七話

出会いと温もり、そして・・・過ち

2012-11-13 18:16:28 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9743   閲覧ユーザー数:5910

―――――帰らなきゃ・・・

 

     エルフになる事を夢見た少女は呟く

 

―――――もう帰らなきゃ

 

     満月の夜空を飛んでいく

 

―――――もう日が暮れて、月がこんなに高くなっちゃって

 

     残り僅かな力でただひたすら飛び続ける

 

―――――早く帰らないと、お父さんとお母さん、心配するもの・・・

 

     ク~~・・・

 

     少女のお腹が鳴った

 

??? 「はぁ~・・・お腹空いたなァ~~。今日の晩ご飯・・・何かな――――・・・・。」

 

     そして翅を得た少女が落ちていく

 

     命はまだあるが、空高くから落ちたら一瞬でその灯火は消えるだろう。

 

     だが、そんな少女が見たのは地面ではなく、淡く輝く紫色の光りだった。

 

??? 「光・・・?」

 

     その光から声が聞こえた気がした。

 

     それは小さな女の子の声の様だった

 

??? 「何だか・・・とっても・・・・温かいなぁ。」

 

     光に包み込まれた少女の意識はそこで途切れたのだった・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーテシア「お兄ちゃん!早く助けてあげてよ!」

 

零冶  「っ!あ、ああ!」

 

 

     停止した思考を呼び戻したのはルーの言葉だった。

 

     零冶はすぐに回復の魔法をイメージして唱えた

 

 

零冶  「これは・・・酷いな。光は包み全てを癒やす―――リザレクション!」

 

 

     その異様な少女を中心に魔法陣が展開されて薄く輝いた。

 

     すると、少女の体が見る見るうちに再生されていく。

 

     そして完全では無いが、ある程度治った。

 

 

零冶  「・・・よし、これで何とか助かったか。」

 

 

     零冶が安らかに寝ている少女の容態を確認するとホッと息を吐いた

 

 

ディード「零冶お兄様!!」

 

ウェンディ「零冶兄!大丈夫ッスか!?」

 

ノーヴェ「何が起きたんだ!?」

 

セッテ 「ルーちゃんも大丈夫なの!?」

 

オットー「・・・大丈夫?」

 

 

     そこへ新人組が駆けつけた。

 

 

零冶  「ああ、俺もルーも大丈夫だ。」

 

ウェンディ「よかったぁ・・・・って、この子誰!?」

 

ノーヴェ「ってか何で裸!?」

 

オットー「・・・不思議。」

 

ディード「零冶お兄様!見てはいけません!!」

 

セッテ 「取りあえず向こうを見てて!!」

 

 

     そして倒れている少女に気がつくとディードとセッテが零冶を後ろに無理矢理向かせた。

 

 

零冶  「え?あ、ああ・・・すまん。・・・取りあえず、その子を医務室に連れて行ってくれ。」

 

 

ウェンディ「分かったッス!セッテ、運ぶッスよ!」

 

セッテ 「分かったわ!」

 

 

     2人が少女を医務室に連れて行った。

 

 

零冶  「・・・ディード、ノーヴェ。」

 

ディード「はい、お兄様。」

 

ノーヴェ「ん?何だ?」

 

 

     零冶は真剣な表情で二人を呼んだ。

 

 

零冶  「俺が許可した以外の奴が医務室に入ることを一切禁ずる。お前達2人は医務室の前で見張っていてくれ。勿論、完全武装でな。」

 

ノーヴェ「っな!?」

 

ディード「お待ち下さい零冶兄様!あの娘は確かに異様でしたが、そこまでする必要があるのですか!?」

 

 

     ディードの見解ももっともだ。だが、今回ばかるは勝手が違う。

 

     奴はどうあっても使徒である。

 

     人とは相入れない存在。

 

     いや、本当に共存が可能かも知れないが、今はそれを信じるのは愚の骨頂である。

 

 

零冶  「お前はあの存在を知らない。アイツが本気を出せば・・・お前等なんて瞬殺だろうな。」

 

2人  「っ!?」

 

 

     2人は零冶の言葉に驚愕する。一体、あの少女のどこにそんな力があるのだろうか、と。

 

 

零冶  「ともかく、頼んだぞ。」

 

ノーヴェ「ま、まぁ・・・零冶がそう言うのなら・・・」

 

ディード「仕方ありませんね・・・。」

 

 

     2人はあまり納得していないが、承諾して医務室へと向かった。

 

 

零冶  「さて・・・そういう事だから、お前達にも頼むぞ、チンク、セイン?」

 

 

     2人が言った後、零冶が後ろを振り返って言った。

 

     正確には後ろの床に向かってだが・・・

 

 

セイン 「あちゃ~、バレてた・・・。」

 

チンク 「だから無駄だと言っただろう?こんな小細工で零冶の目を欺ける訳が無かろうに・・・。」

 

 

     床が波打ったかと思うと、チンクとセインが出てきた。

 

 

零冶  「まぁ、聞かれて困る話じゃないから良いがな。で、だ。チンクは今からトーレと一緒に完全武装で医務室であの娘を

     監視してくれ。セインは床に潜って同様に監視だ。」

 

チンク 「・・・なぁ、零冶・・何故そこまで警戒するのだ?それほど危険な風には見えなかったが?魔力もそれほど高く無いようだし

     ・・・。」

 

セイン 「私もそれ、気になる。」

 

 

     零冶は真剣な表情で2人を見て言った。

 

 

零冶  「・・・あの姿から分かるように、彼女は人間じゃない。・・・いや、元は人間だったがな。」

 

チンク 「・・・どういうことだ?」

 

零冶  「詳しい事は省くが、アイツは使徒と呼ばれる存在だ。今はあのように人に近い姿をしているが、本来の姿は全く違う。

     俺ならアイツの事を知っているし、対処も出来る。だが、地形や相性によるが・・・不意打ちをされたらお前達に勝ち目は

     無いと思えば良い。兎に角、監視だけは厳重にしてくれ。おれはジェイルに話を聞いてくる。」

 

チンク 「・・・分かった。」

 

セイン 「・・・分かったわ。」

 

 

     2人も医務室へ向かい、零冶はジェイルの研究室に向かった。

 

 

 

ジェイル「零冶君、か。先ほどの巨大な魔力反応のことかね?」

 

零冶  「聞かなくても分かってるだろうに。・・・で、単刀直入に聞くが・・・あのロザリオは一体何だ?」

 

 

     零冶がジェイルを鋭く睨み付けた。

 

 

ジェイル 「ふむ、気持ちは解るが、そう殺気に近い怒気を込めないでくれ。ちゃんと答えよう。さて、あのロザリオの事・・・いや、

      正確にはロザリオの中央にある魔法石のことだったね?」

 

 

     零冶は無言で続きを促す。

 

 

ジェイル「正直言うと、私もよく解らないのだよ。」

 

零冶  「・・・は?」

 

 

     ジェイルの言葉に零冶は意味が分からなかった。

 

 

ジェイル「実は・・・今朝におかしな夢を見たのだよ。」

 

零冶  「いや、今ジェイルの夢より「まぁ、話は最後まで聞いてくれ。」・・・。」

 

ジェイル「その夢の中で私は誰かの声を聞いた気がしたのさ。不思議に思って耳を澄ませば、聞こえたのは青年の声だった。『この石を

     蟲を操りし娘に渡すが良い。さすれば、君の大切なものを守ることが出来るだろう』ってね。ふと目を覚ますと、私は

     いつもの部屋で寝ていたのだよ。夢だと思って起きたら、夢に出たあの石を私が持っていたという訳だよ。正直、この私でも

     訳が分からなかったよ。」

 

零冶  「・・・まさかな?」

 

 

     零冶はジェイルの話を聞いている内に心当たりが一つだけできた。

 

 

ジェイル「ん?心当たりがあるのかい?」

 

零冶  「・・・いや、確証が無いから今は何とも言えない。」

 

 

     だが、零冶は何の確証も無かったために、言わなかった。

 

 

ジェイル「それをあの小さな魔法石に合ったサイズのアクセサリーを作り、ルー君に渡したのだよ。私の知る蟲を操る存在と言えば、

     ルー君しかいなかったのでね。」

 

零冶  「・・・なるほど。まぁ、そのことはまた後で話すとして、問題はアイツの事だな。」

 

 

     零冶はジェイルにも使徒の事を話す必要があると思った。

 

 

ジェイル「あいつ・・・とは?」

 

零冶  「ああ、そういえば話していなかったな。ルーが召喚魔法を行っている際、あのロザリオが輝いたのだが・・・光が収まると

     とある存在を召喚してしまってな・・・。」

 

ジェイル「とある存在?勿体付けないで教えてくれるかい?」

 

零冶  「ああ・・・そいつは使徒って呼ばれる奴さ。」

 

 

     零冶がジェイルに使徒というモノについて説明する。

 

 

ジェイル「・・・・・なるほど。まるで人間が再び生態系に組み込まれたかのようだね。」

 

 

     人間は生態系の頂点とも表現されるが、そもそも人間は生態系のカテゴリに入らない。原始時代では入っていたが、

     現代では生態系から除外されている。

 

     だが、人間を対象として捕食する存在が現れたら生態系に入るのは理解できた。

 

 

零冶  「取りあえず、あの子の事は俺に任せてくれ。危険と判断したら即刻始末する。」

 

ジェイル「やれやれ・・・君がそこまで警戒する相手とはな・・・。分かった。零冶君に全て任せるよ。」

 

零冶  「助かる。だが・・・俺も殺したい訳ではない。出来れば新しい家族になれたらとおもうが・・・。それじゃ、俺は医務室に

     行って来る。」 

 

     

     零冶は医務室へと向かった。

 

 

     医務室の前にはノーヴェとディードが立っていた。

 

 

ディード「あっ、零冶兄様・・・。」

 

ノーヴェ「零冶、やっと来たか・・・。」

 

零冶  「ああ、さっきジェイルと話終わった所だ。で、目が覚めたのか?」

 

ディード「いえ、まだです。」

 

ノーヴェ「今、チンク姉とトーレ姉、セイン姉が監視してる。」

 

零冶  「そうか。お前達はこのまま見張ってくれ。俺は中に入る。」

 

 

     2人がまだ何か聞きたそうにしていたが、零冶はそれを無視して中に入った。

 

 

トーレ 「零冶か。見た通り、まだ目覚めていない。」

 

チンク 「言いつけ通り、ちゃんと武装している。」

 

零冶  「ああ。」

 

トーレ 「チンクから話は大体聞いたが、にわかに信じられないと言うのが正直な所だな・・・。」

 

 

     トーレは零冶が嘘を吐いているとは思っていないが、やはり信じられなかった。

 

 

零冶  「信じられないのも無理は無い。だが、今は信じてくれとしか言えないな・・・。」

 

トーレ 「ああ・・・分かっているさ。」

 

 

     そしてトーレが頷いた時、

 

 

??? 「う・・うう・・・ん・・・。」

 

 

     少女が目を覚ました。

 

 

零冶  「起きたか?」

 

??? 「ここ・・・は・・・?」

 

零冶  「ここは医務室・・・あー、治療を施す部屋だ。お前の怪我が酷かったから治療した。」

 

??? 「にん・・・げん・・・?どう・・・して・・・?」

 

 

     少女は訳が分からないと言った風に困惑していた。

 

     いくら人間に近い外見とは言っても、明らかに人間ではない自分を治療するなんて正気の沙汰では無いと思ったのだろうか?

 

 

零冶  「お前の疑問はもっともだ。そもそも、お前を助けて欲しいと言った女の子がいてな・・・。まぁ、俺も助けるのは異論が

     無かったから治療した。」

 

??? 「女の・・・子?もしかして・・・・ジルなの?」

 

 

     少女が若干期待の眼差しで零冶を見たが、零冶は首を振って否定した。

 

 

零冶  「いや・・・違う。それに、ここはお前が居た世界とは違う世界なんだよ・・・ロシーヌ。」

 

ロシーヌ「っ!!お前!何で・・・私の名前を「闇槍三式。」うっ!」

 

 

     ロシーヌが起き上がろうとした時にチンク達全員が構えるが、影の触手がロシーヌをベッドに縫い付けた。

 

 

零冶  「落ち着け。それを踏まえて全部説明してやるから・・・。」

 

 

     零冶は溜息を吐くが、油断はせずに警戒していた。

 

     そしてロシーヌの力が抜け、抵抗の意思がないのを確認して後に零冶は拘束を解いた。

 

 

     説明中・・・

 

 

ロシーヌ「嘘でもない・・・かな?こんな立派な部屋と服にベッド・・・貴族並に豪華だもの。それにお前・・・貴族っぽくない。」

 

チンク 「っぷ。」

 

 

     ロシーヌの一言にチンクが少し吹き出した。

 

 

零冶  「・・・チンクぅ?」

 

チンク 「ぷふっ・・・すまんすまん。いや、零冶が貴族の格好をしているところを想像してみてな・・・。我慢できなかった。」

 

 

     周りを見ると、トーレも少しだけ笑ったように見えた。

 

     少し場の空気が和んだが、話を戻した。

 

 

零冶  「とまぁ、お前の名前や事情を知っているのがさっきの理由だ。ここには他の使徒も居ないし、ゴッドハンドもいない。」

 

ロシーヌ「・・・。」

 

零冶  「そして何より、ここにはお前を虐める奴はいないし、酷いこともしない。だから・・・」

 

 

     ロシーヌは黙っていたが、零冶の一言で顔を上げて驚いた。

 

零冶  「もし・・・もしお前が普通に生きて行きたいのなら・・・家族にならないか?」

 

ロシーヌ「・・・え?」

 

 

     ロシーヌは信じられなかった。

 

     明らかに人間を辞めた自分に家族にならないか?と聞いてくるとは思いもしなかった。

 

 

零冶  「ロシーヌが嫌なら無理強いはしない。どうする?」

 

ロシーヌ「え?で、でも・・・え?わ、私・・・人間じゃないよ?何人も殺して来たんだよ?」

 

零冶  「それは過去の話だろ?見たところ、普通の食事もできそうだし・・・人間を襲わなければ良いよ。」

 

ロシーヌ「・・・・少し・・・考えさせて。」

 

 

     ロシーヌは俯いて答えた。

 

     彼は大人だが、自分が見てきた大人とは全く違った。

 

     奴等はロシーヌに酷い事をしたり、見て見ぬ振りして助けてくれなかった。

 

     でも、彼はロシーヌに手を差し伸べようとしている。

 

     後ろに控えている女性と女の子?も優しそうに見ている。

 

     そうして彼を信じてみたいと思う自分がどこかにいる。

 

     だが、彼女の受けてきた傷はそう浅くは無い。

 

     だから、彼女は考える時間を欲した。

 

 

零冶  「ああ。勿論だ。だけど、一応此処で生活はしてもらうぞ?食事や寝床ぐらい用意してやるから。」

 

ロシーヌ「・・・・。(コクッ)」

 

 

     ロシーヌが頷いた。

 

     それを確認した零冶はパンッと手を打って立ち上がった。

 

 

零冶  「さて、そうと決まれば晩飯にしようか!チンク、トーレ、母さんとコジロー、ムサシに飯を作ってくれるように言ってくれ。」

 

トーレ 「ああ、分かった。」

 

チンク 「フッ、分かったよ。」

 

 

     チンクとトーレはロビーで休んでいるクイントの所に行った。

 

 

零冶  「セインも、お疲れさん。もう出てきてもいいぞ。」

 

セイン 「っぷはぁ!息苦しかったぁ・・・。あんな空気、私には耐えられないよ。」

 

ロシーヌ「っ!?」

 

零冶  「すまんすまん。それと、ディード、ノーヴェ!入ってきていいぞ!それと、他の奴等(・・・・)もな!」

 

セイン 「へ?」

 

 

     零冶はディードとノーヴェを呼んだ。そして、その後ろから罰が悪そうに入ってくるウェンディとセッテ、アギトがいた。

 

     あと序でにルーも。

 

 

ディード「だから隠れても無駄だよと言ったのに・・・。」

 

ノーヴェ「ウェンディに言っても聞きやしねぇよ、ディード」

 

アギト 「ちぇ、ばれてたのかよ・・・。」

 

ウェンディ「あ、あははは~・・・・ごめんなさいッス。」

 

ルーテシア「お、お兄ちゃん・・・ごめんなさい・・・。」

 

 

     ディードとノーヴェは溜息を吐き、ウェンディとルーが謝った。

 

 

零冶  「ウェンディ、今回だけは許すが・・・次は無いからな?」

 

ウェンディ「うぅ・・・はいッス。」

 

零冶  「ルーも、心配なのは分かるが、ちゃんと待ってなきゃダメだろ?」

 

ルーテシア「はぁい・・・。」

 

零冶  「まぁ、小言はこれくらいにして・・・。話を聞いてたなら分かるだろ?お前等、ロシーヌと友達になってくれるか?」

 

ロシーヌ「え?」

 

 

     零冶の言葉に全員が頷いて賛同した。

 

 

ルーテシア「ねぇねぇお姉ちゃん!その翅で空を飛べるの?」

 

 

     ルーがロシーヌの隣まで来て目を輝かせて聞いてきた。

 

 

ロシーヌ「え?あ、うん・・・飛べるよ?」

 

ルーテシア「すごーい!でも、ルーも空を飛んだことあるんだよぉ!」

 

ロシーヌ「え?・・・どうやって?」

 

 

     こんな小さな普通の女の子が飛べるとはロシーヌは信じられなかった。

 

     確かにルーは飛べないが、なにもルー自身が飛ぶ必要はない。

 

 

ルーテシア「零冶お兄ちゃんのお友達に乗って飛んだんだよ?こーんなに大っきいんだよ!」

 

 

     ルーが両手を広げて表現する。

 

     ロシーヌは冗談かと思ったが、零冶の一言で驚きに変わる。

 

 

零冶  「あー、ルーの言ってることは正しいぞ?まぁ、口で説明するのが難しいからちょっと来てくれ。」

 

ロシーヌ「え?ちょ、ちょっと!?」

 

 

     ナンバーズと零冶はルーを連れてシミュレータールームに向かった。それを追いかけるようにロシーヌが付いていく。

 

     ロシーヌをこんな風に自由にさせて大丈夫かと思うが、零冶はちゃんと警戒している。

 

     闇槍三式とルナの展開がすぐに発動できるようにしているのだ。

 

     いつでも殺せるように・・・

 

 

     そしてシミュレータールームにやって来た。

 

     因みに、ロシーヌにはちゃんと服を着せてある。かなり苦労したらしい・・・。

 

 

零冶  「ここだ。」

 

ロシーヌ「・・・何にも無いけど?」

 

零冶  「まぁ、少し待て。」

 

 

     そして零冶は詠唱した。

 

 

零冶  「我が意に集いし友よ。その黒き雷は冥界より出でし雷なり。汝が敵を焼き尽さんとす雷なりて汝の前に立ちはだかる者を屍とせしめん!」

 

ロシーヌ「な、なに・・・これ?」

 

 

     魔法陣から感じられるとてつもない魔力がロシーヌの体を震え上がらせる。

 

 

零冶  「来たれ!高地の支配者!冥雷竜ドラギュロス!」

 

ギュロス『ギュアアアアアアア!!!』

 

 

 

 

ロシーヌ「嘘・・・人間が・・・ドラゴンを召喚した!?」

 

 

     魔法陣から現れたのは白く、禍々しい程の威圧感を放っている。

 

 

ギュロス『・・・斯様な場所に呼び出した用向きを聞こうか?』

 

ロシーヌ「・・・喋れるの!?」

 

 

     ロシーヌは竜が喋れることに驚く。

 

     ※ギュロスは雄です。

 

 

ギュロス『礼儀のなっていない小娘だな・・・。人が言葉を話せて、何故に我が言葉を解せぬと思うのだ?』

 

 

     ギュロスがロシーヌを睨み付ける。

 

 

ロシーヌ「うっ・・・・。」

 

零冶  「まぁ、そこは許してやってくれギュロス。さて、少し運動(・・)しないか?」

 

ギュロス「ふむ、運動か(・・)・・・。よかろう・・・少し退屈していた所だ。」

 

 

     1人と1匹の会話にナンバーズに嫌な悪寒が走った。

 

 

零冶  「よし、それじゃあ・・・ノーヴェ!ディード!2人で相手しろ。」

 

ノーヴェ「じょ、冗談じゃねぇぞ!?ギュロス相手に何で俺が出なきゃなんねぇんだ!?」

 

ディード「そうです零冶兄様!命が幾つあっても足りません!!」

 

 

     2人は零冶に抗議した。

 

     2人はまだ稼動して間もないために経験も浅く、力も不足している。

 

 

零冶  「大丈夫だ。今回は覚醒禁止だ。まぁ、良くて互角に戦えるぐらいだろうしな。じゃ、頑張れ。」

 

ギュロス『さぁ、小娘共!覚悟は出来ているか?いくぞっ!!』

 

 

     そういってギュロスが飛翔し、低空飛行で2人に突撃した。

 

 

ノーヴェ「ちょ!?まっ!?」

 

ディード「いきなりですか!?」

 

 

    だが、普通に2人は回避に成功している。

 

 

ギュロス『ガァアアア!!』

 

 

     ギュロスが匍匐飛行しながら黒い雷のレーザーを吐く。

 

     ちなみに、出力は抑えていると思うので、当たっても死にはしない・・・だろう。

 

 

ノーヴェ『あぶねっ!?こんのぉ!やってやらぁ!!』

 

ディード「舐めるな!!」

 

 

     ノーヴェが吶喊する。ディードが右に回り込み、ツインブレイドを展開した。

 

 

ギュロス『ふんっ!』

 

ノーヴェ「ぐっ!」

 

     ギュロスはノーヴェを翼の先端にある鞭のような鉤爪で迎撃。ノーヴェは両腕を交差してガードするも、はじき飛ばされる。

 

 

ディード「はっ!」

 

ギュロス『っ!小賢しい!』

 

 

     だが、その隙にディードが高速で懐に潜り込み、足を切りつける。

 

     ギュロスはそれを飛翔して回避するも、薄く傷が付いた。

 

 

ノーヴェ「うおおおおお!!」

 

ギュロス『調子に乗るな!』

 

 

     体勢を立て直したノーヴェが再びギュロスに向かって突っ込む。ギュロスはそれを鉤爪を思いっきり叩きつけるように攻撃した。

 

     だが、今度はノーヴェが耐えきった。

 

 

ノーヴェ「へっ・・・耐えきったぜ!」

 

ギュロス『・・・言っただろう?調子に乗るなと!』

 

 

     鉤爪から一瞬黒いスパークが起きたかと思ったら、一気に放電してノーヴェを黒い雷が襲う。

 

 

ノーヴェ「あぁあああああ!?」

 

ディード「ノーヴェ!?このっ!」

 

 

     そこへすぐにディードが後方から援護に入る。

 

 

ギュロス『甘いわっ!』

 

 

     ギュロスの太い尻尾の両側に沿うようにして伸びている2本の細い尻尾を地面に叩きつけた。すると黒い雷が地面を伝って、

     ディードに向かって行く。

 

 

ディード「うそっ!?きゃあああっ!!」

 

 

     さすがに後ろを向いたままの攻撃は予想外だったのか、ディードがまともに喰らってしまった。

 

     あまりの痛みにディードが地面に膝を着く。

 

 

ギュロス『まだまだ!』

 

ノーヴェ「うぐぁっ!?」

 

ディード「え!?ちょっ!?きゃあっ!?」

 

     ギュロスはノーヴェをディードの方へ吹き飛ばし、ディードがノーヴェとぶつかる。

 

     すぐにギュロスは2人へ向かって匍匐飛行する。

 

     そして、2人のすぐ側を円を描きながら上昇する。

 

     その風圧に2人は身動きが取れずに、踏ん張っていると、

 

 

ギュロス『小娘共!耐えきってみせろ!!』

 

ノーヴェ「ぐぁああああああ!?」

ディード「きゃああああああ!?」

 

 

     上昇する際に上空から黒い稲妻が2人を直撃する。

 

     あまりの衝撃と痛みに2人は倒れた。

 

     

零冶  「そこまでだ!ふむ・・・まだまだだが、頑張ったな。」

 

 

     これ以上攻撃を喰らったら危険と判断して零冶は止めに入った。

 

 

ギュロス『ふんっ・・・運動にもならん。』

 

 

     ただ、ギュロスは少し不満だった。

 

 

ロシーヌ「す、すごい・・・使徒と互角・・・いえ、それ以上の竜だわ。」

 

零冶  「当然だ。俺の仲間がそんな柔なことじゃ、今頃全員死んでいる。さて、チンク、トーレ、2人を運んでくれ。」

 

 

     零冶はトーレとチンクに運ぶように頼んだ。

 

 

トーレ 「ああ、分かった。大丈夫かノーヴェ?」

 

ノーヴェ「む、無理・・・。」

 

トーレ 「まぁ、よく頑張ったと思うぞ?取りあえず、もうすぐ食事の時間だから、それまで休め。」

 

ノーヴェ「う、うん・・・。」

 

 

     一応大丈夫なようで、トーレが運んでいく。

 

 

チンク 「ディード、無事か?」

 

ディード「な、なんとか・・・。」

 

チンク 「災難だったな。たしか、お前はギュロスと戦った事が無かったな?」

 

ディード「はい・・・。あんなの・・・反則です・・・。」

 

 

     ディードはさっきの後方射出の雷撃と上空からの稲妻に身震いする。

 

 

チンク 「そうか。私も初めて戦った時は瞬殺されたからな。ただ・・・あれ以上の奴もいるぞ?」

 

ディード「え゙?」

 

 

     チンクは遠い目をしながら言った。

 

     因みに、チンクが今まで戦った中で一番強かったのが、アマツマガツチのシェンだ。

 

     ナイフはシェンの風の防壁に弾き飛ばされるし、弾かれる前に爆発させても、また風の防壁に爆風を受け流される。

 

     攻撃手段が無い上に一方的に空からウォーターブレスを受けるなど、チンクにとっては絶望的な相手だった。

 

 

チンク 「まぁ兎に角、すぐに運んでやるからな。」

 

ディード「え?い、いや、いいです!私は零冶兄様に運んでもr(ビシッ!)きゅ~・・・。」

 

 

     チンクがディードの首に手刀を入れて気絶させた。

 

 

チンク 「馬鹿者。そんな美味しい展開、させる訳がなかろう?」

 

 

     チンクがズルズルとディードを引きずっていった。

 

 

ロシーヌ「・・・・あれ、大丈夫なの?」

 

零冶  「まぁ・・・いつもの事だ。さて・・・彼女達はどうだった?」

 

 

     零冶がノーヴェ達の事についての感想を聞いてみた。

 

 

ロシーヌ「どうって・・・あの子達、本当に人間?あんな動き、普通の人間にはできないわよ?」

 

零冶  「・・・人間だ。それに、さっき運んで行った2人が居ただろ?ノーヴェ達より強いぞ?まぁ、大概がアイツ等と同じ強さだと

     思ってくれたら良い。」

 

ロシーヌ「本当に・・・どうなってるのよ、此処は・・・。」

 

 

     ロシーヌが呆れて言った。第一形態(複眼と触覚と翅が変わった状態)で1人を相手にするのが精一杯だ。第二形態(完全変身)でなら

     複数人を相手に出来るといったところだ。

 

 

零冶  「無理も無いか・・・、ん?どうしたんだ、ルー?」

 

 

     零冶が右下からの刺さるような視線を感じた。

 

 

ルーテシア「むぅ~、お兄ちゃん!ずっとルーを無視してる!」

 

零冶  「え?あっ・・・ごめんな、ルー。それじゃあ、ロシーヌと一緒にご飯が出来るまでお話でもしようか?」

 

ルーテシア「うんっ!行こっ!ロシーヌお姉ちゃん!」

 

ロシーヌ「え?ちょっ!?」

 

 

     そう言って、ルーはロシーヌの手を引っ張って行った。

 

     それを零冶も後に続いて行く。

 

 

 

 

セイン 「・・・ねぇ、ウェンディ?」

 

ウェンディ「・・・どうしたッスか?セイン。」

 

セイン 「私達・・・・空気ね。」

 

セッテ 「・・・それは言わない約束よ。」

 

オットー「それは・・・元から・・・。」

 

ディエチ「・・・うん。」

 

 

     置き去りにされた新人組とセインに冷たい風が吹いた気がした。

 

 

 

 

 

     さて、そんなこんなで夕食の時間。

 

 

ムサシ 「さあ!皆、いっぱい食べるニャ!」

 

コジロー「お代わりもあるニャ~!」

 

クイント「腕によりを掛けて作っちゃったわ!」

 

メガーヌ「ええ、渾身の出来よ!」

 

 

     食堂にある大きいテーブルを囲んで全員が座っている。

 

     因みに、ロシーヌの左にクイント、右にルーが座っている。零冶はルーの右にいる。

 

 

ロシーヌ「な、なにこのご馳走・・・・。こんなの、見たこと無い・・・。」

 

 

     ロシーヌが生まれた村ではお世辞にも裕福とは言えなかった。

 

     そうでなくとも、今目の前に並べられている料理は貴族の食事と思えるほど豪勢だった。

 

 

零冶  「まぁ、今回は少し多めに作って貰ったんだ。ロシーヌの歓迎会としてな。」

 

ロシーヌ「私・・・の?」

 

零冶  「そうだ。さぁ、早く食べよう!いただきます!」

 

全員  「いただきます!」

 

ロシーヌ「え?・・・いただき・・・ます?」

 

 

     ロシーヌも皆と同じようにおずおずと手を合わせて言った。

 

     そして目の前のご馳走に喉を鳴らした。

 

     最初は恐る恐る食べてたが、少しすると遠慮がなくなっていた。

 

     途中、いろんな人と話しながら食べている。

 

 

零冶  「どうだ?上手いだろ?」

 

ロシーヌ「うん。すっごく美味しい。私、こんな美味しい料理を食べるの初めて!」

 

ムサシ 「それは良かったニャー!」

 

コジロー「褒められたニャ~!」

 

ロシーヌ「きゃっ!?」

 

 

     突然後ろから現れた2匹にロシーヌがビックリする。

 

 

ロシーヌ「・・・猫?でも・・・しゃべった?」

 

零冶  「ああ、こいつらは俺の仲間で、戦闘のサポート兼世話係だ。基本的に料理はこの2匹が作っている。」

 

ムサシ 「初めましてニャ!私は旦那様の世話係で、アイルー族のムサシニャ!」

 

コジロー「メラルー族のコジローニャ~!」

 

ロシーヌ「え?あ、うん・・・よろしく?」

 

 

     若干頭が追いついていないロシーヌだが、取りあえず握手を交わした。

 

 

零冶  「この料理の大半はムサシとコジローがやってくれたんだ。」

 

ロシーヌ「え?うそっ!?」

 

零冶  「ビックリしただろ?それに、だけど俺の母さん達も負けず劣らずで料理が上手なんだ。」

 

メガーヌ「ええ、そうよ。ムサシちゃんとコジローちゃんに負けてられないもの!」

 

 

     そこへメガーヌが会話に参加する。

 

 

ロシーヌ「あなたは・・・?」

 

メガーヌ「貴方の右隣にいる子の母親よ。ロシーヌちゃんって言ったわね?ルーが貴方を召喚したみたいだけれど、いきなりでごめんなさい。

     ルーも悪気は無かったの。」

 

ロシーヌ「え?」

 

メガーヌ「だって、いきなり違う世界から召喚されて、迷惑だったでしょ?それに、知人や家族と離ればなれに・・・。」

 

 

     メガーヌが暗い表情で言った。

 

     ロシーヌの身に起きた事情を知らないメガーヌはジェイルの報告でずっと心を痛めてた。

 

 

ロシーヌ「家族は・・・・・もう、いないの。だから、謝らないで。」

 

 

     ロシーヌは一瞬、ジルの事を想ったが、彼女と自分はもう違う世界に生きる存在。だから、もうよかったのだ。

 

 

ロシーヌ「それに私・・・あのまま召喚されてなかったら死んでいたから。」

 

メガーヌ「そう・・・・ねぇ、ロシーヌちゃん?よかったら、私の所に養子に来ない?」

 

ロシーヌ「・・・え?」

 

     メガーヌが突然思いついたようにロシーヌへ持ちかけた。

 

 

クイント「あ、ずるいわよメガーヌ!私も狙ってたのに!」

 

メガーヌ「何を言ってるのクイント?貴方にはもう零冶君がいるじゃない?今度は私の番よ!」

 

クイント「む~・・・・。」

 

 

     ロシーヌそっちのけで何か言い争っている2人。

 

 

ロシーヌ「え?でも・・・・え?何・・・で?」

 

 

     ロシーヌは突然の事に訳が分からず、混乱している。

 

 

メガーヌ「こほんっ。ロシーヌちゃん、家族が居ないのでしょ?ならいっその事、私の娘になってくれると嬉しいな。ちょうどもう1人、

     娘が欲しかったの!まぁ、息子も欲しかったけど・・・。」

 

     若干零冶の方を見つつ言うメガーヌ。

 

ロシーヌ「え?いや、だから・・・なんで?私、人間じゃ無いんだよ?なのに「関係ないわよ。」え?」

 

メガーヌ「そんなこと関係ないわ。ロシーヌちゃんにどんな過去があったかは知らないけど・・・でも、心を持っているのなら、

     あなたは立派な人間よ?」

 

 

     メガーヌが優しく微笑みかけるように言った。

 

 

ロシーヌ「でも、でもっ!私、人を殺したんだよ!?たくさん殺したんだよ!?」

 

メガーヌ「それじゃあ、ロシーヌちゃんは今、私達を殺したいと思ってる?」

     

ロシーヌ「・・・え?いや・・・その・・・違うけど・・・。」

 

メガーヌ「ならいいじゃない。普通に食事が出来てみんなと仲良くできるなら、それでいいじゃない。何をそんなに怖がってるの?」

 

ロシーヌ「私・・・怖がってなんか・・・。」

 

 

     ロシーヌがそう言うとメガーヌが立ち上がり、ロシーヌの所まで歩き、そして・・・

 

 

―――――ギュッ

 

 

ロシーヌ「・・・・・え?」

 

 

     優しく抱きしめた。

 

 

メガーヌ「ロシーヌちゃん・・・大人が怖いのね?」

 

ロシーヌ「っ!?(ビクッ!)」

 

メガーヌ「ロシーヌちゃんの反応、零冶君やルー、それにナンバーズちゃん達と話す時と私達と話す時じゃ違うもの。若干警戒するように

     話してたしね。」

 

ロシーヌ「・・・・。」

 

 

     ロシーヌが図星に黙ってしまう。

 

 

メガーヌ「きっと、大人に酷い事されたのね・・・。でも、私達はそんなことしないわ。ここにいる皆は優しい人達よ。」

 

ロシーヌ「・・・・・・。」

 

メガーヌ「もう一度、信じてみない?ねぇ?ロシーヌ。」

 

 

     メガーヌがそっと抱きしめる。

 

     それを周りの皆は微笑んで見守っていた。

 

 

ロシーヌ「どうして・・・・?どうして・・・・そんなに優しいの?」

 

メガーヌ「優しくするのに、理由がいるのかしら?それにさっきも言ったけど、私こんなに可愛い娘が欲しかったの。」

 

 

     メガーヌが眩しそうにロシーヌを見つめて言った。

 

 

零冶  「もういいだろ?ここで一緒に暮らさないか?」

 

ロシーヌ「本当に・・・いいの・・・?」

 

零冶  「もちろんだ。今日から此処が、お前の家だ。」

 

メガーヌ「おいで、ロシーヌ。」

 

     そこでロシーヌの涙腺が決壊した。

 

 

ロシーヌ「う・・・うぅっ・・・ひっく・・・!う・・・・うぁあああああああん!!!」

 

 

 

     こうしてジェイル一家に新たな家族、ロシーヌふが加わった。

 

     決して人間とは相入れない使徒と人間の共存が実現したのであった。

 

 

 

 

 

 

零冶  「へぇ、中々良い訓練をさせてるじゃないか。」

 

ロキ  『うん、見事の一言に尽きるね。』

 

 

     ロシーヌが家族になった翌日、零冶はフェイトに頼まれた訓練の教導をしに来ていた。

 

     フェイトは今忙しいので、好きにやってくれと連絡があったので、こうしてシミュレーター場に来ている。

 

     そこではなのはの部隊が先に訓練を始めていた。

 

 

キャロ 「あ、零冶さん!」

 

エリオ 「おはようございます!」

 

零冶  「ああ、おはよう。どうやら先に始めてるみたいだな。」

 

キャロ 「はい。なのは隊長が零冶さんが来るまでランニングをしておけと言ってたので。」

 

エリオ 「それで、訓練内容はどうするんですか?」

 

 

     どうやら、なのはが指示を出してくれたらしい。

 

 

零冶  「そうだな・・・。先ず2人の弱点を見つめ直そうか。」

 

キャロ 「弱点・・・ですか?」

 

零冶  「そうだ。キャロ、お前は召喚士だな?なら、近接戦闘が皆無だろ?」

 

キャロ 「は、はい・・・。」

 

零冶  「なら、防御系の魔法強化を優先する。」

 

 

     続いて零冶はエリオの報を見て言った。

 

 

零冶  「次にエリオ、お前は遠距離魔法や防御魔法が苦手だろ?それに、筋力やスピードも心許ない。」

 

エリオ 「うっ・・・はい・・・。」

 

零冶  「筋力はまぁ良いが、スピードが劣っているのはダメだ。槍ってのは威力と速度に特化した武器なんだから、そこを生かさないと

     意味が無い。それに自身の魔力強化ぐらいできないと話にならない。それと、攻撃も単調すぎる。」

 

 

     身体強化は単純に体に魔力を循環させるだけでも向上することが可能である。

 

     その魔力循環の精密化と効率化を両立すればかなりの強化が可能である。

 

     零冶はそれをほぼ無意識で行うことが出来る。

 

 

零冶  「それじゃあ、キャロは俺が撃つ魔力弾を防御する練習だ。エリオは今から召喚する奴に攻撃を当てる練習だ。」

 

 

     そうして零冶は詠唱を始めた。

 

 

零冶  「我が意に集いし友よ。その足で地を駆け、その爪で引き裂き、その牙で噛み殺さん。そしてその雄叫びは汝が敵に

     絶望の狂想曲を奏でん!来い!響狼カム・オルガロン!」

 

 

     エリオとキャロの前に現れるのは黒い毛並みをした巨大な狼だった。

 

 

カム  『アニキ!久しぶりに呼んでくれたな!』

 

零冶  「ああ、ちょいとエリオに付き合ってやってくれ。」

 

カム  『おう!・・・って、ノノは・・・召喚しないのか?』

 

 

     カムが嫌な冷や汗を掻きながら零冶に聞いた。

 

 

零冶  「いや、しないけど?」

 

カム  『・・・なぁ、頼むからノノも召喚してくれないか?』

 

零冶  「え?なんでだ?」

 

カム  『いや・・・その・・・俺だけが召喚されたって知ったら、俺・・・殺されるかも・・・。』

 

 

     零冶は一瞬ナニを言ってるか分からなかったが、理解すると少し考えて言った。

 

 

零冶  「あー・・・・・・頑張れ?」

 

カム  『うおぉぉぉおい!?そこは頷く所だろ!?』

 

 

     巨大な狼が前脚を器用に上げてツッコミをする。端から見ているとシュールだ。

 

 

零冶  「と言う訳で、エリオはコイツに一撃当てることができたら午前の訓練終了だ。因みに、カムは攻撃禁止だから安心しろ。」

 

カム  『聞いてねぇし!?』

 

     零冶はカムの言うことを無視する。

 

 

エリオ 「え?あ・・・はい。(・・・いいのかな?)」

 

零冶  「それじゃあ、始めてくれ。」

 

カム  『ちっくしょぉおおお!!』

 

 

     カムは木々の中を走り去っていった。エリオはカムを追いかけて一緒に入って行った。

 

     カムが走り去るとき、雫のようなものがキラキラ光っていたとか・・・・。

 

     

零冶  「さて・・・次はキャロだな。」

 

キャロ 「は、はい!」

 

零冶  「そうだなぁ・・・。確か、ミッドの防御魔法は・・・・プロテクションしか思いつかないな。あれはなのはの方が上手いから、

     なのはから教わると良いな。俺が教えるのは普通のバリアとは違ったモノだ。」

 

キャロ 「違った・・・・ものですか?」

 

 

     キャロが可愛らしく首を傾げた。

 

 

零冶  「ああ、通常のバリアってのは、円形か四角形のを平面状にして展開するが、俺のは角錐にして展開するんだ。」

 

キャロ 「角錐・・・。」

 

零冶  「ああ。技術的にはちょっと難しいし、消費魔力も慣れない内は大きいが、使いこなせるとかなりの魔力を抑えたり、魔法を

     受け流すことが可能だ。見てろよ?」

 

ルナ  [ライフルモード。]

 

 

     零冶はそう言うとルナをライフルモードにして空に構えた。

 

 

零冶  「グングニール。」

 

 

     ガゥン!と銃声が響き、空へと漆黒の魔力弾が放たれる。

 

     ある程度の高さまで行くと、魔力弾は零冶の頭上へと落ちていった。

 

     そして、零冶は真上に三角錐のシールドを展開した。大きさは、零冶の頭ぐらいの大きさだ。

 

     バチンッ!と音を立てて魔力弾は霧散した。

 

 

キャロ 「あっ・・・・。」

 

零冶  「っとまぁ、こんなもんだ。今のシールド、グングニールより低めの魔力で展開したんだ。」

 

キャロ 「す、すごい・・・。」

 

零冶  「ただし、これには弱点があってな。攻撃を平面部分で受けてしまうと、耐久力が大きく減衰する。だから、展開するときは常に

     角錐の頂点を攻撃方向に向けないとダメだ。まぁ、これは対単発魔法だな。」

 

 

     そして零冶の講義と実践を進めていく内に昼を過ぎ夕方になった。

 

 

零冶  「お疲れさん。今日はここまでだ。」

 

エリオ 「はぁ・・・はぁ・・あ、ありがとうございました・・・。」

 

キャロ 「はぅ・・・お疲れ様です・・・。」

 

 

     結局エリオはカムに一撃も与えられず、キャロは良いところまでは行ったもののまだ習得出来なかった。

 

 

なのは 「零冶君、ちょっといいかな?」

 

零冶  「ん?どうした?」

 

 

     昼に休憩を挟んで昼食を取っていると、なのはが話しかけてきた。

 

 

なのは 「えっとね、午後に模擬戦をやるんだけど・・・零冶君と私で新人の相手をしてみない?」

 

零冶  「俺が?いいのか?それにパワーバランスが崩れてないか?」

 

なのは 「勿論良いよ!でも、零冶君は召喚と武器を一種類だけっていう制限にするけど。」

 

零冶  「一種類かぁ・・・。俺はその時の状況に応じて武器換装して今までやってきたからなぁ。ま、俺もいい訓練になるか。」

 

 

     零冶はちょっと渋ったが、今まで一種類の武器だけで通すことはあまりなかった為、良い訓練になると思い、了承した。

 

 

なのは 「それじゃあオッケーでいいかな?」

 

零冶  「ああ。相手はティアナとスバルか?」

 

なのは 「うん、そうだよ。」

 

零冶  「・・・アイツ等がどれだけお前の意図を汲み取ってくれることやら・・・・。」  

 

なのは 「にゃはは・・・・できれば理解してくれていて欲しいなぁ。」

 

零冶  「まぁ、それは後で分かるか・・・。」

 

 

     零冶は不安だった。

 

     先日の誤射の件といい、最近夜にやっている秘密訓練といい、ティアナは無茶をし過ぎている。

 

 

 

     そして模擬戦が始まった。

 

 

 

なのは 「それじゃあ、今回は零冶君にも参加して貰うからね。私か零冶君に一撃でも当てられたら終了。それじゃ、始めるよ!」

 

ティアナ「はい!」

スバル 「はい!」

 

 

     ティアナは一旦距離を取り、スバルは突っ込んできた。本来なら零冶は此処でグングニールで墜とすのだが、少し優しくしてあげることにした。

 

     スバルの拳が零冶を襲おうとするが、なのはがレイジングハートで防いだ。

 

零冶  「悪ぃな。」

 

なのは 「いえいえ♪」

 

スバル 「くっ!」

 

     ガキンッと弾いて、スバルはバックステップをした。そしてウィングロードを発動させて空中に躍り出る。それと同時にティアナの

     射撃がきた。

 

零冶  「グングニール!」

 

     ダンッダンッダンッ!と3発を撃ち、相殺した。

 

     なのはは飛翔してスバルを追った。

 

零冶  「さて・・・こっちはこっちで楽しもっ!?」

 

     零冶がティアナの方へ向き直ったら、そこにティアナはいなかった。気配もしなかっただが、後ろから悪寒が走って咄嗟に

     回避した。

 

零冶  「なっ!?どうやって後ろに!?」

 

     零冶は模擬戦で初めて焦った。自分が知らないうちに隠密の技術を習得したのだろうか?

 

     しかし、それでは任務中で活用しているはず。

 

     そして、今度は右上方のビルの屋上から撃ってきた。

 

零冶  「くそっ!気配も感じられない上に、魔力も・・・・っ!」

 

     ここで零冶は一つ疑問に思った。

 

     気配が感じられないのはこの際いい。ティアナ自身から魔力を感じられないのもまだいいだろう。隠蔽する技術があるのも

     確かだからだ。

 

     しかし、撃った魔力弾から魔力が一切、いや、ほんの僅かにしか感じられないのは解せない。

 

     微量の魔力で魔力弾を形成するのは不可能だ。

 

     ならばと思い、次の攻撃を避けた後、避けた魔力弾を確認すると。

 

零冶  「ビンゴ。あれはフェイクか・・・。」

 

     魔力弾は着弾せずに跡形も無く消えた。

 

零冶  「幻影、とでも言おうか?・・・・だとすると狙いは・・・・なのはか!?」

 

     零冶はティアナの狙いを知った瞬間、すぐに行動に移した。

 

     零冶がビルの上に立つと、オレンジと青、桜色の魔力光が見えた。

 

零冶  「俺を差し置くなんて良い度胸してるじゃ無いか。」

 

     少し頭にキタものの、ちょっと嬉しくなった。

 

     そして、零冶は縮地で向かおうとしたが、スバルとティアナの戦闘を見て固まった。

 

零冶  「・・・阿呆が!」

 

     彼女達はそれなりに戦っていた。なのは相手にそこまでやり合えるのは正直褒めても良いくらいだ。

 

     しかし、戦い方は許容できなかった。

 

     それはリスクが大きく、見返りが殆ど無い戦いだったからだ。

 

     誰かを守れるように、自分自身が生き残れるように零冶は生徒を鍛えて、教えてきたつもりだった。

 

     事実、エリス達は多少の無茶はしてもやり過ぎる事は無かった。

 

     だが彼女達・・・特にティアナはやり過ぎだ。

 

     なのはから一体何を学んだのか、何を聞いていたのか分からない程の無茶だった。

 

     なのはがどれだけ一生懸命に、どれだけ優しくしてきたと思っているのか、自分たちがどれだけ幸せな環境にいるのか全く理解して

     いなかった。

 

零冶  「そんな戦いで・・・何を得られる!!」

 

     零冶は全力で向かった。

 

     零冶が辿り着く時、ティアナはスバルのウィングロードを走り上って、真上からなのはに銃剣のような魔力刃で攻撃しようとした。

 

     なのははただ俯いて攻撃を受けようとした。

 

     そして聞こえたのが――

 

なのは「レイジングハート、モードリリース。」

 

    なのはは態と防御力を最低限に落としていた。

 

    本当ならばなのはの意を汲み取って見守るのだろうが、零冶は考えるよりも先に動いてしまった。

 

 

 

    あの姿が――――斬り裂かれるはやての光景をフラッシュバックさせたから。

 

 

 

    ガキンッ!と、零冶がティアナの魔力刃をルナで受け止め、左手でスバルの拳を受け止めた。

 

ティアナ「えっ!?」

 

スバル 「なっ!?」

 

なのは 「零冶君・・・。」

 

     ティアナとスバルが零冶に止められた事に驚き、なのはは零冶の表情に驚いた。

 

     攻撃を受けた零冶は無表情だった。

 

     そして、背中から足が竦むような威圧感が滲み出ていた。

 

     怒っている―――そう思った。

 

     だが、同時になのはは嬉しくもあった。

 

     自分の為にこんなに怒っているのだから。

 

     そして、2人に言った。

 

なのは 「おかしいな・・・・・2人共、どうしちゃったのかな・・・?」

 

ティアナ「っえ?」

 

なのは 「頑張ってるのは分かってるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ・・・?」

 

     なのはは拳を握りしめた。

 

なのは 「練習の時だけ言うことを聞いてるフリして・・・本番でこんな危険な無茶するなら、練習の意味・・・・無いじゃない?」

 

ティアナ「っ!?」

 

なのは 「ちゃんとさ・・・練習の通りにやろうよ?ねぇ?

 

スバル 「あ、あの・・・。」

 

なのは 「・・・私の言ってること、私の訓練・・・そんなに間違ってるかな・・・?」

 

     なのははティアナの顔を見ていった。

 

ティアナ「くっ!」

 

     ティアナは魔力刃を消して、後方にあるウィングロードに飛び乗って構えた。

 

ティアナ「私は!!もう、誰も傷つけたくないから!誰かを守れるようになりたいから!!」

 

     そして魔力を集束し始める。

 

スバル 「てぃ、ティア・・・・。」

 

ティアナ「だから、強くなりたいんです!!!」

 

     だが・・・その言葉で零冶が初めて動いた。

 

なのは 「少し・・・頭冷やそうか?」

 

     なのはが魔法陣を展開し、スフィアを形成しようとしたところで零冶が止めた。

 

なのは 「零冶・・・くん?」

 

零冶  「自分すら守れない奴に・・・誰かを救えるかよ・・・。」

 

     なのはは思わず魔法陣を消した。

 

     零冶の瞳が空虚で何も映してない冷たい刃物のような瞳だったから。

 

零冶  「自分を御しきれない奴に、誰かを救う事なんて・・・できねぇよ。」

 

     思い出すのは血に染まったはやてと返り血に染まった自分。

 

零冶  「今のお前に、誰かを守る資格は無い。」

 

     零冶の周りに数十の漆黒の魔力スフィアが形成される。

 

ティアナ「うあああああああ!!!ファントムブレイ――――、」

 

零冶  「インパルスデリート。」

 

ティアナ「っ!?」

 

     そして一気に螺旋を描きながら発射され、ティアナに直撃して爆発を起こす。

 

スバル 「ティアーーーー!!?」

 

     スバルが掛けだそうとするが、零冶が闇槍三式で拘束した。

 

零冶  「黙ってそこで見てろ。こんな風になっても、戦場では確実に殺される。こんな感じに・・・な。」

 

     零冶がもう見上げていった。  

 

     その視線の先には、ふらつきながら何とか立っているティアナがいた。

 

零冶  「(悪役には慣れているが、良い気分はしないな。)」

 

     そして、再び魔力スフィアを形成し、

 

スバル 「零冶さん!?」

 

     容赦なく発射する。

 

     そして、ティアナはスバルが引いてあったウィングロードに落ちた。

 

スバル 「ティア!!」

 

     そして零冶は拘束を解き、スバルはティアナに駆け寄った。

 

零冶  「本日の模擬戦は2人の撃墜にて終了。なのは、後は任せた。」

 

なのは 「うん・・・・ありがと、零冶君。」

 

零冶  「・・・なんのことだ?」

 

スバル 「っく!!」

 

     なのはがお礼を言い、スバルは零冶を睨み付けた。

 

     これで良い、と思い零冶はその場を後にした。

 

 

 

 

ティアナ「う・・・・うぅ・・?」

 

     ティアナは目を覚ますと起き上がった。

 

     体に痛みは感じない。あんなに魔力弾を喰らったのにおかしいと思った。

 

シャマル「あ、起きた?一応体にダメージは無いと思うけど。零冶君、結構魔力を抑えてたからねー。」

 

     シャマルがベッドの側に置いてある椅子に座る。

 

ティアナ「いえ・・・・大丈夫です。」

 

     そして時計をふと見たら、夜中の9時だった。

 

ティアナ「え?く、9時?」

 

     そして外を見て驚く。

 

ティアナ「えぇ!?夜ぅ!?」

 

シャマル「日頃の疲れが溜まってた反動ね。ぐっすり眠ってたわよ?」

 

ティアナ「・・・・。」

 

 

 

 

 

     場所は変わってDOG隊舎

 

零冶  「・・・。」

 

     零冶は昼間は少しやり過ぎたかと考えていた。

 

エリス 「隊長、どうかしましたか?」

 

零冶  「いや、何でも無い。」

 

     エリスが手元のカードの様な物を磨きながら聞いてきた。

 

     ちょっと心配していたが、大丈夫だと言われて再びカードを磨いてる。

 

     バライカも同様だ。

 

     零冶は先ほどの考え止め、エリス達に何をしてるか聞いてみた。

 

 

零冶  「なぁ、さっきからカードを磨いてるが・・・何のカードだ?」

 

エリス 「あら、これでしょうか?」

 

     エリスが見せたそのカードには・・・・

 

 

     くろさわファンクラブ 会員証 No,00006―――と、書かれていた。

 

バライカ「やっぱり磨いて綺麗にしておかないとね!」

 

     バライカがサムズアップしてる。

 

零冶  「ちょっと待てぇえええええ!!?まだ持っていたのか!?っていうか名前が変わってるし!?」

 

バライカ「だって、ユンカースって偽名だったじゃないですか?だったら本名に変えないと。」

 

エリス 「それに、持っているのは当たり前です。捨てる訳ありませんわ。」

 

零冶  「いい加減、恥ずかしいから辞めて欲しいんだけど!?」

 

エリス 「お断りしますわ。」

バライカ「嫌です。」

 

零冶  「・・・・・。」

 

     零冶は何を言っても無駄だと分かったのか、もう何も言わなかった。

 

零冶  「はぁ・・・本当に何でこんなことに・・・・っ!!」

 

     だが突然、警報が鳴り始めた。

 

エリス 「っ!これは!」

 

零冶  「DOG隊は全員ブリーフィングルームに集合!」

 

バライカ「はっ!」

エリス 「了解ですわ!」

 

 

 

     そして零冶達はすぐにブリーフィングルームへ向かった。

 

 

 

零冶  「Ⅱ型・・・か。」

 

ヘンリー「はい。形状はほぼ一致しています。」

 

エリス 「その上、性能が格段に上がってますわね。」

 

     零冶は映し出された映像を見ている。

 

     それはガジェットⅡ型と同型の機体が合わせて50機が旋回飛行しているところだ。

 

キール 「舐めてんのか?」

 

バライカ「いや、撃ち落とさせて航空戦力を計ろうとしているわね。」

 

     バライカの言う通り、明らかに意図が見えている。

 

零冶  「ふむ・・・俺が行こう。エリス達は待機してろ。」

 

エリス 「そんな!」

 

     エリスが抗議しようとしたが、零冶はそれを手で制した。

 

零冶  「まぁ、聞け。お前等なら確かに簡単に破壊できるが、バライカの言った通り、これは威力偵察だろう。となれば、お前達の実力は

     把握されたくない。エリス、分かってくれるか?」

 

エリス 「・・・はい。」

 

     渋々ながらも納得したエリス。

 

零冶  「ありがとう。それじゃ、お前達は待機だ。まぁ、すぐに片付けて戻るよ。」

 

バライカ「お気を付けて。」

 

キール 「行ってら~。」

 

ヘンリー「また隊長の動き、学ばせて貰います。」

 

エリス 「では、健闘を祈ってますわ。」

 

     4人が見送ってくれた。

 

零冶  「ああ。」

 

     そして零冶は隊舎を後にした。

 

 

 

 

     なのは達も迎撃に行こうとするだろうと思い、六課へ赴いた。

 

なのは 「あっ!零冶君!零冶君も迎撃に?」

 

零冶  「ああ、ほっといてもお前達がやってくれるだろうが、そこを攻撃材料にする輩がいるからな。」

 

なのは 「あ、あはは・・・大変だね。」

 

零冶  「ああ。」

 

     ヘリポートにスターズ分隊とライトニング分隊全員が揃っていた。

 

     零冶の姿を見たとき、スバルとティアナは微妙な気持ちだった。

 

 

なのは 「それじゃあ、出撃は私とフェイトにヴィータ副隊長、それとDOG隊の零冶隊長が出るから。」

 

     流石に任務となれば、なのはも呼び方を変える。

 

フェイト「皆はロビーで出動待機ね。」

 

ヴィータ「そっちの指揮はシグナムだ。留守を頼むぞ。」

 

スバル 「はい!」

エリオ 「はい!」

キャロ 「はい!」

ティアナ「・・・はい。」

 

     若干送れてティアナが返事をする。

 

     そして、なのはがティアナの前に出て言った。

 

なのは 「ティアナは・・・・出動待機から外れておこうか?」

 

ティアナ「あっ・・・!」

 

     ティアナは目を見開いた。

 

     他のフォワード陣も驚いた。

 

零冶  「・・・だな。」

 

なのは 「今日は体調も魔力も、ベストじゃないし「言うことを聞かない奴は・・・」っ!」

 

     ティアナが俯いて言った。

 

ティアナ「使えない・・・て事ですか?」

 

なのは 「はぁ・・・。自分で「当たり前だ馬鹿野郎。」・・・っ!。」

 

零冶  「自分で言って分からないのか?」

 

     ティアナが零冶方へ向いて言う。

 

ティアナ「でも、現場での指示や命令は聞いてます!教導だって、ちゃんとサボらずやっています!」

 

     ヴィータが前に出ようとしたが、なのはが手で制す。

 

ティアナ「それ以外の場所での努力まで、教えられた通りにやらないとダメなんですか?」

 

零冶  「・・・・。」

 

     零冶は一瞬たりとも目をそらさずに聞いた。

 

ティアナ「私は!零冶さんやなのはさん達みたいにエリートじゃないし、スバルやエリオみたいな才能も、ましてやキャロみたいな

     レアスキルも無い。」

 

零冶  「・・・。」

 

ティアナ「だから!少しくらい無茶しないと、強くなんかならないじゃないですか!!」

 

     そして、零冶が何か言う前にシグナムがティアナの胸ぐらを掴み、殴り飛ばした。

 

フェイト「シグナム!?」

なのは 「シグナムさん!?」

 

シグナム「心配するな、加減はした。駄々をこねるバカはなまじ付き合ってやるからつけ上がる。」

 

     そしてシグナムはヴァイスに飛ぶように促す。

 

シグナム「ヴァイス!すぐに飛べるな?」

 

ヴァイス「乗り込んでいただけりゃ、すぐにでも!」

 

     フェイト、ヴィータが乗り込む。

 

     だが、零冶はティアナの前に立って静かに言った。

 

零冶  「次に会う時まで頭を冷やせ。もしその時までに同じ考えなら・・・六課どころか、魔導師を辞めろ。その時は俺がリンカーコアを

     体を無傷で破壊してやる。」

 

スバル 「なっ!れ、零冶さn「任務中だ。今は二佐か隊長と呼べ。」・・・っ!」     

 

     そして零冶がヘリに乗り込む。

 

なのは 「ティアナ!思い詰めちゃってるみたいだけど、戻ったらゆっくり話そ!」

 

ヴィータ「こら!付き合うなって言ってるだろ!」

 

     なのははヴィータに引っ張られながら乗り込む。

 

     そうしてヘリは飛び立った。

 

     そして、シグナムは告げた。

 

シグナム「目障りだ。いつまでもそうしてないで、さっさと部屋に戻れ。」

 

エリオ 「あ、あの、シグナム隊長・・・その辺で・・・・。」

 

キャロ 「スバルさん・・・取りあえずロビーに・・・。

 

     だが、スバルが立ち上がってシグナムに向き合った。

 

スバル 「シグナム副隊長!」

 

シグナム「なんだ?」

 

     そして、僅かな沈黙の後、スバルは言った。

 

スバル 「・・・命令違反は絶対ダメだし、さっきのティアの物言いとか、それを止められなかった私も確かにダメだったと

     思います・・・。」

 

ティアナ「・・・!」

 

     すると、ティアナは驚いてスバルを見上げた。

 

スバル 「だけど・・・、自分なりに強くなろうとするとか、キツイ状況でも何とかしようとするのは、そんなにいけない事

     なんでしょうか!?」

 

シグナム「・・・・・。」

 

     シグナムは黙って肩を震わせているスバルの言葉を聞いていた。

 

スバル 「自分なりの努力とか、そういうこともやっちゃいけないんでしょうか!?」

 

     そして突然後ろから声が聞こえた。

 

??? 「自主練習は良い事だし、強くなるための努力も凄く良い事だよ。」

 

     全員が声がした方へ向く。

 

スバル 「シャーリーさん・・・。」

 

    そこにはシャリオが立っていた。

 

シグナム「持ち場はどうした?」

 

シャリオ「メインオペレートはアインス曹長に変わっもらったから・・・。なんかもう、皆不器用で・・・見ていられなくて・・・。」

 

     そしてシャリオは何かを決めたように顔を上げた。

 

シャリオ「みんな、ちょっとロビーに集まって!私が説明するわ。なのはさんの事と、なのはさんの教導の意味、そして・・・零冶さんが

     何故あんな風に言ったのかを。」

 

 

 

     そして、ロビーに集まった。

 

     シャリオは端末を操作しながら呟いた。

 

シャリオ「昔ね・・・2人の女の子と男の子が居たの。女の子の方は本当に普通の女の子で、魔法なんて知りもしなかったし、戦いなんて

     するような子じゃなかった・・・。」

 

     そしてスクリーンが現れ映し出されたのは、なのはが小学生の時の映像だった。

 

シャリオ「友達と学校へ行って、家族と幸せに暮らしてた。そういう一生を送るはずの子だった。だけど・・・事件は起こった。」

 

     映像は変わり、なのはがジュエルシードに襲われ、戦う場面に移った。

 

シャリオ「魔法学校に通ってた訳でも、特別なスキルがあった訳でもない。偶然の出会いで魔法を得て、たまたま魔力が大きかっただけの、

     たった9歳の女の子が、魔法と出会ってから僅か3ヶ月で命がけの実践を行ってきた。」

 

     次にフェイトとの対決の場面に移る。

 

エリオ 「これ・・・」

 

キャロ 「フェイトさん・・・?」

 

シャマル「今は違うけど・・・フェイトちゃんは当時、家族環境が複雑でとあるロストロギアを巡って敵同士だったんだって。」

 

シグナム「この件はジュエルシード事件と言われている。」

 

     そして零冶が海上で竜巻を斬り裂いている場面に移った。

 

スバル 「この甲冑姿・・・・零冶さん!?」

 

シャリオ「そう・・・これがもう1人の男の子。何故かジュエルシード事件以前の記録が全く無い、謎の男の子。」

 

シグナム「零冶が一体何者で、何処で生まれたのか一切分かっていない。」

 

     そして、なのはが収束砲を撃つシーンになった。

 

エリオ 「収束砲!?こんな大きなのを・・・」

 

スバル 「9歳の・・・女の子が・・・」

 

キャロ 「ただでさえ、大威力砲撃は体にすごい負担が掛かるのに・・・。」

 

     そして今度はヴィータとの戦いに移った。

 

シグナム「その後もな・・・さほど時も置かず、戦いは起こった。」

 

シャマル「闇の書事件・・・私達が深く関わりった事件。」

 

シグナム「襲撃戦での撃墜未遂と・・・敗北。それに打ち勝つ為に選んだのは・・・当時はまだ安全性が危うかったカートリッジシステムの

     使用。

 

シグナム「体への負担を無視して、自身の限界値を超えた魔力を引き出すフルドライブ、エクセリオンモード。」

 

     今度は零冶との戦いに変わった。

 

スバル 「え?何で零冶さんが!?」

 

キャロ 「どうして・・・?」

 

シャマル「それは当時、零冶君がはやてちゃんを助ける為に蒐集活動をしていたから・・・。」

 

ティアナ「っ!」

 

     そして、今度はアインスがロキに乗っ取られるシーンに変わる。

 

エリオ 「こ、この子!」

 

キャロ 「確か・・・一度模擬戦で・・・。」

 

シグナム「ああ・・・零冶が召喚したロキという少年だ。だが、見た目に反してその身に宿す魔力と力は凄まじかった。」

 

     そして圧倒的な力を振るい、全員が為す術も無くやられていく様が映し出される。

 

エリオ 「たった1人で・・・・全員を!?」

 

スバル 「簡単に・・・。」

 

     4人はロキの力をみて驚愕した。

 

シグナム「ああ、あの時は死ぬかと思った。実際、私は彼に恐怖を感じた。心の奥底から・・・まるで赤子の様に震えが止まらなかった。」

 

キャロ 「し、シグナム隊長がそこまで・・・?」

 

シャマル「今は味方らしいけどね。神様相手によく立ち向かったものね・・・私達。」

 

エリオ 「か、神様!?」

 

スバル 「い、言ってる意味が分からないのですけど・・・?」

 

     当然理解出来ないだろう。

 

     神様なんて居るはずが無いのだ。

 

シグナム「ああ、アイツによると・・・自分は神で、人類と自分を裏切った神々を滅ぼすのが目的だった。」

 

キャロ 「そ、そんな!?」

 

シグナム「因みに、零冶はロキと同じ存在らしい。」

 

エリオ 「お、同じ存在?ってことは・・・零冶さんも神様ってことですか!?」

 

シグナム「まぁ、細かいことは違うらしいが、概ね合っているようだ。」

 

     そして映像がまた切り替わる。

 

     それはロキがモンスターを召喚した場面だった。

 

シグナム「いいか?よく見てろ。アイツがどれだけ凄いのかを。そして、どれだけ仲間に愛されているかを。」

 

     すると映像は真っ白に染まり、再び映像が映ると何も無い草原に立っていた。

 

スバル 「え?さっきまで町中じゃなかったんですか?」

 

シグナム「まぁ、待て。ここからだ。」

 

     そして零冶が長い詠唱を唱え終わると、無数の魔法陣が現れ、モンスター達がその身を現す。

 

キャロ 「こんなに沢山の竜種を!?そ、そんな!竜種は一体でも手に余る存在なのに・・・!」

 

     キャロは驚愕した。ルシエ一族でも複数の竜種を使役する人はいなかった。

 

     力の強いキャロでさえ、精々2体なのだ。

 

     しかし、キャロはもう一体の事は知らない。

 

シグナム「コレが零冶のレアスキル以上の魔法。固有結界という結界魔法だそうだ。」

 

エリオ 「あの・・・固有結界なんて魔法・・・聞いたこと無いのですが?」

 

シャマル「当然よ。だってこの魔法・・・次元世界中を捜しても零冶君しか使えないから。」

 

スバル 「そ、そんなにすごいんですか?」

 

     スバルは今一分かっていない。いや、それは他の3人にも言えることだった。

 

シグナム「固有結界、自身の心象風景・・・まぁ、生まれ持った心の風景と思えば良い。それを現実の世界に侵食させつことで発動する

     その人物固有の結界魔法。故に固有結界というらしい。まぁ、私も詳しくは知らないのだがな。」

 

シャマル「そして、固有結界は持つ人それぞれの特色があるらしいの。そして、零冶君の固有結界の効果、それは・・・竜を

     無詠唱での召喚と、さっきの草原意外に、森、密林、砂漠、雪山、火山などと言ったあらゆる地形に変化させる事。」

 

キャロ 「竜の・・・無詠唱召喚・・・」

 

     キャロは驚くのも疲れたような表情をしている。

 

     他の3人も言葉が出なかった。

 

シグナム「そして、その竜の中でも最強の部類に入る奴等が、これだ。」

 

    シグナムが少し時を進めて零冶がミラ3姉妹を召喚する所に移った。

 

キャロ 「あの時とは違う巨大な黒竜・・・。どれだけ異常なんですか・・・?」

 

シグナム「さぁな。だが、零冶はこの竜達を封印指定しているそうだ。なんでも、その場に居るだけで災害をもたらす故だそうだ。

     例えばこの空を舞っている白い龍。こいつは周りは常に嵐を起こしているそうで、嵐龍と呼ばれているらしい。」

 

スバル 「・・・・・。」

 

エリオ 「・・・・・。」

 

ティアナ「・・・・・。」

 

キャロ 「・・・・・。」

 

     全員が沈黙した。

 

シャマル「そして、この後に起こることが、零冶君がああ言った理由よ。」

 

     今度は零冶が甲冑に取り込まれるシーンになる。

 

エリオ 「な、なんですかこの甲冑!?」

 

スバル 「まるで・・・取り込んでるような・・・。」

 

シグナム「そうだ。この甲冑の名前は『狂戦士の甲冑』。その名の通り、使用者に狂気を与え、敵味方に関係無く殺す狂戦士にする呪物だ。」

 

キャロ 「・・・怖い。」

 

     キャロが恐怖に震えた。

 

シグナム「ああ・・・そしてさっきも言った通り、こうなっては敵味方の区別が付かなくなる。甲冑の力を制御できず、取り込まれた結果が

     ・・・これだ。」

 

     零冶がフェイトを斬ろうとして、はやてが止めるために身を挺した。

 

キャロ 「あっ・・・!」

 

スバル 「ひっ!?」

 

エリオ 「そんな・・・。」

 

ティアナ「うそ・・・・はやてさんが・・・。」

 

     はやてが体を斬り裂かれた。

 

     しかし、はやては踏みとどまって、零冶を抱きしめた。

 

シグナム「この時の零冶の気持ちは最悪だったろうな。自分が守ろうとして一生懸命に戦い、無茶をした挙げ句に守るべき人をその手で

     斬ってしまったのだから・・・。」

 

シャマル「そして、零冶君はその身を犠牲にすることで、私達を救ったのよ・・・。」

 

     シャマルの言葉に、皆はしばらく話すことも出来なかった・・・。

 

 

 

 

零冶  「こちらドラゴン1。これより敵機の殲滅を開始する。ライトニング1は右翼、スターズ2は左翼の敵を。俺は中央の12機編隊のガジェットをやる。」

 

フェイト『ライトニング1、了解!』

 

ヴィータ「スターズ2、了解!」

 

     零冶達はガジェットの迎撃に出た。

 

     機体数は50機前後。

 

     なんの問題もない。

 

零冶  「さて・・・いくぞっ!!」

 

ルナ  「了解。デュアルソード、ブラックウィング。」

 

     零冶は夜天連刃【黒翼】を使用し、無数の魔法陣を展開する。

 

     それを足場にして敵機に肉薄し、切り捨てる。

 

零冶  「今日の俺は機嫌が悪い。さっさと消えて貰うぞ!!」

 

     それは圧倒的なまでの戦闘・・・いや、蹂躙だった。

 

なのは 『こちらスターズ1、中距離火砲支援・・・いきまーす!』

 

フェイト『了解!』

 

ヴィータ『おう!』

 

零冶  「頼む。」

 

     そして、なのはがアクセルシューターを撃ち、ガジェットが次々と墜とされていく。

 

零冶  「さぁ、楽しい戦い(パーティー)の始まりだ!!」

 

 

 

 

 

シグナム「それとさっき、なのはがカートリッジシステムに手を出した事は言ったな?ま、結局それだけ無茶をして体に負担が無いはずが

     なかった。」

 

シャマル「そして、入局二年目の冬・・・事故は起きたの。」

 

     シャリオが端末を操作して、雪が降っている中、なのはが血を流して倒れ・・・ヴィータが必死に呼びかけている映像が映し出された。

 

シャマル「それは異世界で、ヴィータちゃんと当時の部隊の仲間達との操作任務の帰り・・・突然、未確認体が現れたの。いつもの

     なのはちゃんなら何の問題も無く仲間を守ったんだろうけど・・・日頃溜まっていた疲労がなのはちゃんの動きをほんの少し

     鈍らせたの。」

 

シグナム「ちょうど零冶が消えたのも冬とあり、無理矢理明るく振る舞おうとしてたのだろうな。その時のなのははかなり無茶を

     していたのだ。」

 

シャマル「そして、その無茶をした結果がこれ・・・。」

 

     シャマルが端末を操作してなのはが病院に運び込まれた映像を流す

 

スバル 「っ!」

 

エリオ 「これは・・・」

 

キャロ 「ひ、ひどい・・・。」

 

ティアナ「・・・。」

 

     その映像はとても痛々しく、とても見ていられる物では無かった。

 

シャマル「なのはちゃん・・・無茶して迷惑掛けてごめんなさいって私達の前では笑ってたけど・・・もう飛べなくなるかもって、

     立って歩くことさえ出来ないかもしれないって聞かされた時、どんな思いだったか・・・!」

 

シグナム「無茶をしても、命を賭けても譲れない戦いの場は・・・確かにある。だが、お前がミスショットしたあの状況は、本当に

     どうしても撃たなければならない状況だったか?」

 

ティアナ「あっ・・・・・。」

 

     シグナムがティアナを見て言った。

 

     そしてティアナはあの時の状況を思い返した。

 

シグナム「訓練中のあの技は一体誰の為の・・・何の為の技だ?」

 

     そのことを指摘されてティアナは俯いてしまった。

 

シャリオ「なのはさん、皆にさ・・・自分と同じ思いをして欲しく無いんだよ。だから、無茶なんてしなくても良いように、絶対絶対皆が

     元気に帰って来れるようにって・・本当に丁寧に、一生懸命考えて教えてくれているんだよ・・・。」

 

     その言葉にフォワード陣の目に涙が浮かんだ。

 

 

 

 

フェイト「零冶!最後の一機、お願い!」

 

零冶  「任せろ!」

 

     最後の一機になったガジェットは空高く飛んでいる。

 

     零冶はルナをバレットに変えて狙いを定める。

 

零冶  「デモンズ・・・バスタァーー!!」

 

     漆黒の光線がガジェットを包み込み、跡形も無く破壊し尽くして爆散する。

 

フェイト「お疲れ様、零冶。今日はちょっと機嫌が悪かったね?」

 

     フェイトがちょっと苦笑して言った。

 

零冶  「まぁ・・・な。ああ言われたら機嫌ぐらい悪くもなるよ。ただ、俺もまだまだガキだったな。」

 

     零冶が自重する。

 

ヴィータ「そんなことねぇよ。」

 

なのは 「でも零冶君、あの時の言葉・・・本気なの?」

 

零冶  「ああ、本気だ。」

 

     その言葉になのははちょっと複雑な顔をする。しかし、

 

なのは 「・・・「だが・・・」え?」

 

零冶  「なのはの部隊だ。そんな心配無いと俺は思うがな。」

 

なのは 「っ!・・・うん!」

 

零冶  「それに・・・あいつは才能が無いって言うが、立派な才能を持ってる。幻術に射撃と指揮能力、それに・・・努力っていう

     才能がな?そして、模擬戦の時の幻術・・・あれには脅かされた。少しの間とは言え、俺の目を誤魔化したんだからな。」

 

     零冶はちゃんと見ていた。彼女がどれだけ立派な才能があるかを。

 

なのは 「・・・あれ?ちゃんと見てたの?」

 

     だが、そこでなのはの言葉に零冶はずっこける。

 

零冶  「なのはぁ~?俺だって部隊長だぞ?まぁ、人数は少ないけど・・・。だが、それぐらいは見てるっての!」 

 

     零冶はなのはの頬を強く引っ張った。

 

なのは 「いひゃいいひゃい零冶君!?ほっぺが伸びるよぉ~!」

 

零冶  「やかましい。」

 

なのは 「ふえぇ~ん!」

 

ヴィータ「ぷっ!なのは、何だその顔?・・・あははは!」

 

フェイト「ふふ、面白い顔になってるよ?」

 

     それを見たフェイトとヴィータが笑う。

 

なのは 「もー!見てないで助けてよぉー!」

 

     これにて今回の任務は終了する。

 

     そして、4人は帰還したのだが・・・

 

なのは 「えぇー!?」

 

シャリオ「ごめんなさい!」

 

     シャリオが手を合わせて謝っていた。

 

なのは 「ダメだよシャーリー・・・人の過去を勝手にバラしちゃ・・・。」

 

シャリオ「その・・何て言うか・・・見てられなくて。」

 

零冶  「で、俺の過去も話したのか?まさか固有結界や大剣を見せた訳じゃ無いよな?」

 

     零冶がもしかしてと思い、聞いてみたが・・・

 

シャリオ「ごめんなさいっ!」

 

     案の定、話していた。

 

零冶  「・・・はぁ。ま、いつかはバレることだしな・・・?」

 

ヴィータ「そうだな・・・知るのが早くなっただけだと思えば良いんじゃ無いか?」

 

零冶  「だな。俺は固有結界の事と大剣の事を口止めしてくれたら構わないから。」

 

シャーリー「すいません・・・。(よ、よかったぁ~・・・。)」

 

     シャーリーは安堵した。なのはは無いが、零冶とはあまり親しい訳ではないので、怒られると思ったのだ。

 

     因みに、固有結界云々の事ははやて達に聞いていた。

 

零冶  「じゃ、俺は帰る。」

 

なのは 「え?帰っちゃうの?せめてティアナとお話した方が・・・。」

 

零冶  「あのなぁ?あんだけ言っておいて今更ノコノコと出られる訳ないだろ?ま、次に会ったときに返答を聞くとするさ。

     それに明日の出張任務もあるし・・・。」

 

     零冶が頭を掻きながら呟いた。

 

なのは 「そう・・・だよね。私達も全員、明日の午後から任務があるんだ。じゃあ、また今度お話ししてあげてね?」

 

零冶  「ああ、分かっている。じゃあな。ああ、それとなのは。」

 

なのは 「ん?」

 

零冶  「ティアナ達がいつか一人前になって六課を卒業したら・・・DOG隊に引き抜くからな?」

 

なのは 「えっ?」

 

     そう言って零冶はその場を去った。

 

 

 

 

 

     その後、なのははティアナを捜しに埠頭の周辺を散策していた。

 

     そして見つけた。

 

なのは 「あ、見つけた。」

 

ティアナ「なのは・・・さん?」

 

     なのははティアナの隣に腰を下ろす。

 

     そして、幾ばくかの沈黙が流れた後、ティアナの方から口を開いた。

 

ティアナ「・・・シャーリーさんやシグナム副隊長から色々聞きました。」

 

なのは 「なのはさんの失敗記録?」

 

     なのはが言うとティアナは焦ったように否定した。

 

なのは 「ん・・・無茶したら危ないよーって事だよね?」

 

ティアナ「・・・すみませんでした。」

 

なのは 「・・・じゃあ、解ってくれた所で、少し叱っておこうかな?」

 

     なのはは優しく言う。

 

なのは 「ティアナってさ、才能が無いって言うけど・・・あれ、間違いだから。」

 

ティアナ「え?」

 

なのは 「ティアナには立派な才能がある。ティアナやスバル、エリオ、キャロもまだまだ原石なんだから、磨けばもっと輝くの。それに

     零冶君はちょっとティアナにキツイ子とを言ってたけど・・・」

 

ティアナ「・・・。」

 

     ティアナはその話題になるとまた落ち込んだ。

 

なのは 「零冶君、本当はそんなことしたくないんだよ?ああ見えて結構優しいんだよ。それに零冶君、今朝の訓練じゃティアナの事

     褒めるところは褒めてたよ?アイツの幻術には驚かされた・・・ってね?」

 

ティアナ「零冶さんが・・・・?」

 

なのは 「うん。それに、あいつは立派な才能がある。射撃、指揮能力に幻術・・・それに努力という才能があるって。」

 

ティアナ「努力・・・?」

 

なのは 「そう。努力すればいいっていうけど、結構難しいんだよ?挫折しても、壁にぶち当たっても諦めない。そんな風に自分に

     立ち向かえるのって、私も一種の才能だと思うよ。それに・・・」

 

ティアナ「・・・。」

 

なのは 「一番魅力的な所を蔑ろにして、慌てて他の事をやろうとするから、だから危なっかしくなちゃうんだよって・・・

     言いたかったんだけど。」

 

     なのはは横に置いてあったクロスミラージュを手にとる。

 

なのは 「でも、ティアナが言ってた事って間違ってはいないんだよね。」

 

     そして、呪文のようなものを唱えた。

 

なのは 「テストリミッター・・・モードリリース。」

 

クロスミラージュ[イエス。]

 

     クロスミラージュが一瞬オレンジ色に光った。それをティアナに渡す。

 

なのは 「命令してみて?モード2って。」

 

ティアナ「も、モード2・・・。」

 

クロスミラージュ[セットアップ、ダガーモード。]

 

     すると、クロスミラージュがの銃口から二枝に別れた銃剣のような魔力陣が飛び出し、柄と銃口を円を描くように繋がった。

     その先には3つの飛び出した刃が付いている。

 

ティアナ「こ、これは・・・?」

 

なのは 「ティアナは執務官志望だから・・・どうしても個人戦が多くなるし、将来を考えて用意はしておいたんだ。」

 

     そしてティアナからクロスミラージュを受け取り、元に戻した。

 

     そのことを知ったティアナは耐えきれず、涙が溢れ出す。

 

ティアナ「うぅ・・ふぇ・・・うえぇええぇん!!」

 

     そんなティアナの肩をそっと抱き寄せる。

 

なのは 「クロスも、もう少ししたら教えようと思ってた。だけど、出動は今すぐにでもあるかも知れないでしょ?だから・・・

     もう使い熟せている武器も、もっともっと確実なものにしたかった。だけど私の教導は地味だから・・・あまり成果が

     出てないように感じられて苦しめちゃったね?」

 

ティアナ「あっ・・・・ごめん・・・なさい・・・ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

     なのはの優しさを知って号泣するティアナ。

 

     なのはに抱きつき、ひたすら謝った。

 

なのは 「・・・うん。」

 

     そしてティアナはしばらく泣き続けた・・・・。

 

 

 

 

 

     ティアナは泣き止んだ後、なのはと別れて1人で隊舎に向かっていた。

 

     その途中でふと空を見上げる。

 

     空には綺麗な星空が広がる。

 

 

 

ティアナ「早く・・・お兄ちゃんや零冶さんみたいに強くならないと・・・!」

 

 ――――親しき者と離れていくように感じた少女は力を求める余りに過ちを犯す。

 

ティアナ「でも・・・今度はゆっくりと・・・確実に追いついてみせる。」

 

 ――――しかし、それを正すことができた。自分の尊敬する人に教えられて・・・・。

 

ティアナ「だから・・・待っててね、お兄ちゃん・・・零冶さん。」

 

 ――――そして、少女は歩き出す。

 

 ――――今度は過ちを犯すことなく・・・前に進んでいく。

 

 

 

 

 次回予告

 

 運命・・・それは絶対に抗うことの出来ないもの

 

「な!?どうしてここに!?」

 

 それは絶対に逃れることの出来ないもの

 

「アンタが居なくて寂しかったんだから!」

 

 しかし、それを乗り越えることはできる

 

「これより敵を殲滅する。」

 

 それを乗り越えられるのもまた人の身であるからこそ

 

「お・・・お前は!?」

 

 だが、その道は過酷

 

「異界の黒い剣士よ、会えて嬉しいぞ!」

 

 しかし、立ち向かう事を止めるなかれ

 

「貴様を・・・・・殺す!」

 

 

 魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と StrikerS 

 

【第十八話 絆と戦い、そして・・・使徒】 始まります。

 

 

 


 
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