第百三十技 崩落の罠
リズベットSide
『アグニ火山』の中は天然の迷路のようになっていて、MAPデータが無ければ間違いなく彷徨っていたと思う。
キリトとハクヤが予め安全な道の情報を手に入れていたようなので、モンスターとのエンカウントが少ない。
そしてレア素材をドロップするモンスターの目撃例が一番多い場所についた。
「意外と広い場所なんだね」
「立ち回りで困ることは無さそうだな」
「だな。リズベットはモンスターが出て来たら物陰に隠れて」
「う、うん…」
アスナとキリトは場所を見て戦闘の分析を行っており、ハクヤからは忠告を受けた。
ハクヤの言う通りに行動しよう。サブ迷宮とはいえ、ここは最前線に近い場所の一つだ。
命が惜しいので隠れていよう。とは言っても、やはり親友とその友人二人が心配になる。
いくら三人が攻略組であってもこちらとしては心配になるのは当然である。
その時、キリトとハクヤが武器を構えた。
アスナもすぐにレイピアを構えて、あたしも自身の武器である
アスナが目配せをしてきたので、あたしはすぐさま隅にある岩陰へと隠れた。
地響きが起こると溶岩の中から大きなモンスターが出てきた。
「あれが…」
それは四足歩行で歩く地竜だった。赤い鉱石で身を覆っており、二本の巨大な角が生えている。
名前は〈フレイム・ホーンズ〉と表示されている。
その姿からしてこいつが目的のモンスターに違いないはず。
―――グゥオォォォォォ!!!
「ハッ!」
「フッ!」
「ッ!」
敵の雄叫びが上がると同時に三人が攻撃を始めた。
ハクヤとキリトが主な攻撃を行い、アスナが速さを生かして攪乱させている。
しかも敵があたしに気付かないように、かつこちらに来ないようにして戦っている。
やはりこの三人は別格だと改めて思った。
あっという間に減っていく地竜のHP。けれどHPバーがレッドになった時に、敵はそのモーションを起こした。
―――グゥガァァァァァ!!!
「「「「なっ!?」」」」
地竜は飛び上がると、二本の角を地面に向けて突き刺した。次の瞬間、
―――ドガァンッ!
地面に大きな穴が開いた。割れ目は広がっていき、あたしの足元にも穴が開いた。
「キャアーーーーー!?」
「っ、リズベット!」
落ちていくあたしにハクヤの声が掛かり、そのまま抱き締められて穴に落下していった。
そこであたしの意識は途切れた。
リズベットSide Out
No Side
「リズーーー!」
「くっ!」
穴に落ちていった二人を見過ごすことしか出来なかったアスナとキリト。
アスナは穴の側で涙を浮かべながら叫んでいる。キリトは未だにこの場に健在である地竜と相対している。
「アスナ、まずはこいつを潰すぞ! 二人の安否はそれからだ!」
「っ、うん!」
アスナは涙を拭うと再びレイピアを構えた。
二人の怒涛の攻撃で地竜はHPが0になり、消滅していった。戦闘を終えた二人は開いた大穴に近づいた。
「どうしよう、キリト君……」
珍しく弱々しい声で言葉を発したアスナ。
キリトは苦虫を潰したような表情をしながら、ウインドウを開いて操作していく。
彼はなにかを確認するとホッとした様子で息を吐いた。
「二人は無事だ。ハクヤのフレンド登録が解除されていないし、あいつがリズベットを庇って落ちていったからな」
それを聞いたアスナは腰を抜かしたように地面に座り込んだ。
「どうやらこれは罠の一つみたいだな。いくらかの攻撃を受けると地面が崩壊して下に落ちるものみたいだ。
しかも二人が結晶で脱出しないところをみると、おそらくだが『結晶無効化空間』だろうな…」
「そんな……」
それを聞いたアスナは動揺を隠せないでいる。対してキリトは心配でありながらも毅然とした様子だ。
「二人が落ちたのは地下だ。なら俺達もできるだけ下に向かうぞ」
「うん、そうだね」
キリトの言葉にアスナは立ち上がってしっかりと頷いた。二人は地下に向かって走り出した。
No Side Out
To be continued……
後書きです。
はい、結局穴には落ちました。しかも巣穴ではなく、完全に罠仕様の穴です。
どうやって脱出するかは今後の展開で・・・ハクヤは壁を駆け昇ろうと言うバカなことはしませんよ。
では・・・。
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第百三十話です。
迷宮内部にてリズ達は・・・。
どうぞ・・・。