第百二十八技 訪れる黒
リズベットSide
~約半年程前(圏内事件終了後)~
「ん~~~はぁ。よし、今日も一日頑張りますか」
あたしは大きく伸びをしてから、自分の店である『リズベット武具店』のCLOSEの札をOPENに裏返した。
店の中に戻るとしばらくしてから数人のお客さんがやってきた。私は笑顔を浮かべてこう告げる。
「いらっしゃいませ、リズベット武具店にようこそ♪」
こうして今日も、あたしのアインクラッドでの日常が始まった。
一日で忙しい時間の一つである朝の開店時間。それも過ぎてしばらく経った時に彼女がやってきた。
「やっほ~リズ~。剣の研磨お願いね~」
「いらっしゃ~い。打ち始める前で良かったわ、早速だけど貸してちょうだい」
親友のアスナだ。彼女から
けれど、耐久値はあまり減っていなかった。聞いてみると常に万全の状態にしておきたいらしい。
それにしても、アスナは先程からどうも身なりを気にしているようだ。
あたしは少しのイタズラ心を持って彼女に聞いてみることにした。
「ねぇ、アスナ」
「うん、なに?」
「好きな人でも出来たの?」
アスナは顔を真っ赤にして硬直した。冗談まじりでカマをかけたんだけど、図星だったのね。
それにしても……あの攻略の鬼に、ね~。
アインクラッドで五指の美人と言われる彼女の気を引いた人物に興味が湧いた。
「どんな人なのよ~。私の知ってる人?」
「多分、リズでも知ってると思うよ……」
つまりかなりの有名人ということになると思うけど…。
「キリトって名前なんだけど…」
アスナが言ったその人物の名前に、今度はあたしが硬直した。
思わず彼女に正解を求めるように訊ねた。
「も、もしかして、【黒の聖魔剣士】のキリト!?」
「(コクッ)/////////」
紅くなりながら頷くアスナ。驚くにも程があると自分で思ってしまった。
キリトといえば、上位の強度を誇る黒剣と白剣、
そして聖剣と魔剣の名を持つ剣の計四本を自由自在に扱い戦うという攻略組最強の一人と称されていて、
『黒衣衆』の一人だったはず。
攻略組ではないが前線の方で商売をする身であるので、彼の名前と噂くらいならば聞いたことがある。
「あんた、一体なにがあってその人のことを……」
「あ、あははは…、まぁ色々あって。それで、その、このあとも彼と会うことになってるの//////」
どうやらアプローチは既にかけているみたいだ。それにしても、そういうことだったのか。
最近彼女が明るくなったように感じたのは恋が原因だったみたいだ。
それにしてもさすがは攻略組、好きになる人も半端ではない。
とりあえずレイピアの研磨を終えて彼女に渡した。
「上手くいくといいわね、頑張りなさいよ」
「う、うん。頑張る///」
「あ、そうだ。ついでだからウチの宣伝もお願いね~!」
「しっかりしてるね、リズは。それじゃあね!」
店から出ていく親友を見送ってから、軽く息を吐いた。
恋、か……あたしもいい出会いがほしいなぁ。
そう考えながらもあたしは受けている仕事をこなすために店の奥にある工房へと入った。
翌日。再び朝の忙しい時間が終わり、小休憩をいれるために揺り椅子に座っている。
依頼の仕事をこなすために睡眠時間を割いてしまったので、いつの間にか眠っていたらしい。
彼に起こされるまでは。
「あの、すいません」
「え…あ、ごめんなさい!? リズベット武具店にようこそ///!」
お客さんに起こされたあたしは恥ずかしさで顔を紅くさせながらも出来る限りの笑顔を浮かべて迎えた。
店の中を見回すと、起こしてくれた人以外にもう一人のお客さんがいた。
「えっと、武器をお探しですか?」
「いや、俺はそいつの付添いなんだ」
「武器のオーダーメイドの為に、依頼を頼みたいんだけど…」
「依頼、ですか…」
オーダーメイドだけではなく依頼を頼むということは相当な金額を要求することになるのだけど、
依頼をしてきた男は茶髪でオールバックのヘアスタイルに空色とも言うべき蒼い瞳を覗かせており、
その出で立ちは黒革のジャケットとズボンと靴、黒いマントを着ており、
その背には白に近い紫色をした大鎌を背負っている。
付添いと言った男は黒い髪に黒い瞳、黒いシャツとズボンとブーツに黒い片手剣が一本という出で立ち。
正直に言うと、お財布の方は大丈夫なのだろうかと心配になってきた。とにかく依頼の内容を聞いてみることにした。
リズベットSide Out
To be continued……
後書きです。
さて、原作とは少し違う「心の温度編」の始まりです。
リズの店にやってきた二人組とは・・・と、いっても容姿で誰か分かりますねw
黒服に黒い片手剣と鎌といえば我らがあの二人ですしw
それでは次回・・・。
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第百二十八話です。
「心の温度編」の始まりですよ~。
どうぞ・・・。