第百二十四話 漆黒と殺人鬼
No Side
二人の青年と一人の女性は今の状況が理解できずにいた。
体格の良い青年シュミットは先程自らが犯した行動により、
敬愛するリーダーが死に繋がったことを彼女の墓の前で懺悔した。
ローブを着た青年カインズと女性ヨルコは、シュミットを追い詰める事で彼の行動とやらを聞き出す事に成功した。
しかし、指輪事件の犯人がシュミットでは無かった。
それはまだいい。手がかりとしては十分だったのだから。
だが何故……何故ここに
「『
倒れ伏したシュミットがそう言った。彼は麻痺毒に侵された事で身動きが取れずにいる。
「Wow……本当にDDAのリーダー格とはな…」
艶やかな美声を放ち、ポンチョのフードで顔を隠した男……ラフィン・コフィンのトップスリーにしてリーダー、PoHが言った。
「どうやって殺そうか、ヘッド~?」
全身を黒の装備で覆い、頭陀袋のようなマスクを被り、
少年のような無邪気な声で残酷な言葉を発するのはトップスリーの一人、
毒ダガー使いのジョニー・ブラック。
「結局、殺すのなら、いたぶる、か?」
髑髏のマスクを着け、赤く光る瞳で睨みを効かせながらカインズとヨルコを牽制し、
擦過音の混じる声で喋るのはトップスリー最後の一人、赤眼のザザだ。
SAO最大の
「It show time……といきたいが、どうするか?」
「じゃあ、あれやろうよ。『殺し合いで生き残った奴だけ助ける』っての」
「お前、このまえ、全員殺した、じゃないか」
「ちょ、それを言うなってザザ~!」
PoHの問いかけに陽気な声で答えるジョニー、それに言葉を掛けるザザ。
あまりにも恐ろしい会話を子供が遊びの方法を決めるかのように話す殺人者達に、シュミット達は体を強張らせる。
しかし、その場にそれが現れた。
―――ぶるるるるぅぅぅっ!
巨大な黒馬が三人と殺人者達の間を駆け抜けていった。だが馬の背には誰もいない。
しかし、一つの影だけがその場に残る。
「っ、下がれ!」
PoHの言葉に部下二人はすぐさま後方へと飛び退いた。
直後、彼らが居た場所に豪撃が行き渡り、砂埃が舞い上がる。砂埃が晴れるとその場にはある者がいた。
その者は三人が無事なのを確認すると笑みを浮かべ、すぐに表情を引き締めて危険人物達を睨みつけた。
そう、その人物とは……、
「相変わらず趣味が悪いな……PoH、ジョニー・ブラック、赤眼のザザ…」
攻略組ソロプレイヤー、【黒の聖魔剣士】キリトだった。
No Side Out
キリトSide
こいつらは相変わらず陰気な格好をしているな、と思ったが自分も似たようなものなので口にはしないでおく。
「久しぶりじゃねぇか、キリト」
PoHが友人に会ったかのような口調で奴は話しているが、かなりの殺意を含んでいる。
「随分と、余裕、じゃないか…」
ザザもカインズ氏とヨルコさんに
「今の状況解ってんだろうなー!」
ジョニーに至っては毒のダガーを振り回している、子供かよ…。
そんなジョニーをPoHは自身の愛剣にして魔剣である『
「こいつの言う通り、いくら貴様でも三人を同時に相手取るのは無理だろう?」
よく分かってやがるな。こいつらを一人ずつ相手にすれば勝つことは出来る。
だが、三人同時に戦うのはいくら俺でも無理がある。
今は《二刀流》を使う事が出来ない、これは秘密でなければならないからな。まぁ、対策はあるが。
「確かに俺一人なら無理だろうけど……誰も一人なんて言ってないぜ?」
「なに?」
奴が聞き返したその瞬間だった。
「はぁーーーーー!」
「ふっ!」
―――ガキィンッ!!!
「なぁっ!?」
「ぐっ!?」
かなりの速さで二人の乱入者が現れてジョニー・ブラックと赤眼のザザに斬りかかった。
それに加わるように俺もPoHへと斬りかかる。
「はっ!」
「チィッ!」
奴らは攻撃を防ぐと後退して距離を取った。ちなみに乱入者とは……、
「ヴァルッ、このクソガキが!!!」
「子供みたいな奴にガキとは言われたくないですよ、ジョニー・ブラック」
「ハジメ、邪魔するな」
「……断る。相手になってもらうぞ、ザザ」
ヴァルとハジメだ。
この二人は
特にヴァルはいつもの口調なのだが、明らかな殺意を滲ませている。
「援軍か…」
「ちなみにこの後、総勢四十人近い攻略組が来ることになっているけどな」
その言葉に三人はさすがに諦めを悟ったようだ。
「Suck………引くぞ」
PoHが指を鳴らしたのを合図にそれぞれ武器を収めた。
そんな中俺は、ザザがハジメを睨んでいるのに気付いた。どうやら目をつけられたみたいだな。
奴らはすぐに身を翻して、この場を後にした。
どうせ街まで行かずに転移結晶を使うと思うが、念の為に俺は街に控えている攻略組の一人、
クラインにメッセージを送っておいた。
取り敢えず……難は去ったみたいで良かった。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
「ラフコフとの戦闘が少ない」ですか?知らん、苦情は受け付けん!
キリトさんが馬から飛び降り、そのまま斬りかかり、さらには一触即発状態。
このシーン凄く書きたかったものですから、満足しましたw
それでは・・・。
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第百二十四話です。
ラフコフ登場!といっても、大してすることはありませんが・・・。
どうぞ・・・。