この話は実際には語られなかった記録・・・・・
とある物語の主人公である・・・・・一人の青年の記録である。
北郷一刀
ひょんな事から乙女だらけの三国時代にタイムスリップしてしまった少年である。
そして彼は無数の世界に無数に存在する。
劉備達と共に三国を平和にするために歩み続ける北郷一刀。
天下を統一するために曹操と覇道を突き進む北郷一刀。
呉を護るため平和にするため孫策達と共に家族を守る北郷一刀。
董卓達と、袁紹達と、過ごす北郷一刀。
あるいはどの国にも属さずたった一人で乱世を駆け抜けていった北郷一刀
そして物語上に存在しなかった北郷一刀。
全てはそれぞれの物語にそって時を進める、そして全ての北郷一刀は偽者などいないれっきとした北郷一刀自身である。
ならばなぜこれだけの北郷一刀であり北郷一刀では無い者が生まれたのか・・・・・・・・
そうあらゆる物には全て原点が存在する。
ある者は言った「人は神によって作られた」とある者は言った「神など存在しないと」。
北郷一刀とは何であり何者なのか。
これは記録・・・・・・・・・・・・
外史において語られなかった物語であり、北郷一刀の原点であり記録。
そう・・・始まりの北郷一刀の記録である。
「もう行くの?」
彼女の言葉に対し薄れゆく意識の中彼は彼女をしっかりと見据える・・・・・
「うん・・・俺の役目はもうここまでみたいだから・・・・」
「どうして?」
彼女の言葉は未だに覇気を帯びた覇王の言葉だ、だが間切れもなく彼が愛した一人の・・・最愛の女性の言葉でもあった。
「華林の物語はここで終端を迎えた・・・だったらそれをそばで見ていた俺も終わりを迎えなくちゃ・・・」
「おしまいにしなければいいじゃない・・・」
「そういう訳にはいかないよ」
「駄目よ・・そんなの認めないわ」
「そうだな・・認めたくないよ俺も、」
彼等の言葉はほんの数秒そこで途切れた。
今すぐにでも彼女を抱きしめたい・・・震えている彼女を抱きしめ大丈夫だと、どこにも行かないと言って彼女を安心させたい。
そんな想いにかられるも、彼はそれを行う事が出来ない。
目の前にいるのに・・・・
こんなにも近くにいるのに・・・・・・・・
手を伸ばせば届く筈なのに・・・・・
彼は今、消えようとしている。
「どうしても行くの?」
先に言葉を拓いたのは彼女だった。
「あぁ・・・・・」
「そう・・・・恨んでやるから・・」
「ははは・・それは怖いな・・・でもうれしいって思えるよ」
「・・・・行かないで・・・」
「ありがとう・・華林」
「一刀・・・・」
「さようなら・・誇り高き王よ・・」
「一刀・・」
「さようなら・・・寂しがり屋の女の子・・」
「一刀!!」
「さようなら・・・愛していたよ・・・・華林・・・
そして青年はこの世界から、消えた。
「一刀?」
・・・・・・・・・・・
「一刀!!一刀~~~~~~~~~一刀!!!!!」
彼女は叫ぶ・・・・唯ひたすらに・・。
そこに元の覇王の姿はない、あるのは一人の女の子の姿だけであった。
「ばか・・・ばかぁぁ・・・・っ!!」
「・・・・・本当に消えるなんて、なんで・・・っなんで私のそばにいてくれないの・・・っ!」
「なんで・・・・・!!」
「ずっといるって・・・言ったじゃない・・・・っ!!」
「ばか・・・ぁ・・・!」
彼女は泣きながらその場に膝をついた。
自分の覇道を掲げここまで歩んできた。
欲しいものは何としてでも欲し、そして手にしてきた彼女・・・・天下をも手にした彼女だったが、その代償はあまりにも小さく、そしてあまりにも大きすぎた。国よりも、民よりも、そして自分よりも大切な最愛なる物をこの日彼女は失った。
これは一人の青年の記録・・・・・・・
そうこれは記録なのである。
一刀視点
俺は自分の異変に気がついた。
この景気は見覚えがある華林と何度かきたことがある場所だ。
小さな小川が流れていて夜になると月が照らし幻想的な空間を生み出す。
今宵は満月・・・・・・
そして気がついた。
俺の物語はここまでなのだと・・・・・・。
なんていうのか世界から拒絶されていくような・・・この世界から・・・・俺と言う存在が消えようとしている感覚。
あぁ・・・そうか・・・だから俺の心はこんなにも悲しんでいて・・・・そして
泣いている。
「帰るの?」
「わからない・・・・帰れるの・・・かな」
「・・・そう・・・・」
まったく華林はいつも通りだな・・・流石に傷つくぞ俺・・・・でもそれが華林らしくて・・そんな所が俺は大好きなんだ。
どれくらい話したのかはわからない・・・けど・・・もう・・・・
「さようなら・・・誇り高き王よ・・」
華林・・・・
「さようなら・・・寂しがり屋の女の子・・・」
華林・・・
「さようなら・・・愛していたよ・・・“華林”・・」
華林・・・・・
・・・ごめん・・・・・
意識が遠のいていくのがわかる。
本当に終わったんだ・・・何もかも・・・・・・・・
ある空間にて・・・
「・・・・・ここは?
!!俺はどうして生きて・・・だってあの時・・・俺は・・」
(・・・ばか・・・ぁ)
「・・そうだ・・華林!!!」
『目が覚めたか?』
「!!・・・・誰だあんたは?」
『それだけしゃべれるなら・・完全に復活した、という事だな・・』
「何を言ってるんだ!!ここはどこだ?俺はどうしてこんな所に」
『覚えていないのか?』
「??」
『お前は外史にて終端を向かえ消滅した・・ゆえに俺がお前を再生させた』
「・・・外史の終端・・・・・・そうだ・・あの時・・・俺は光に包まれて華林の元から・・・」
『そうだ・・・だがまさか・・“自分の作った世界”に消されるとはな・・・』
「!!・・・今・・なんて・・・・言ったんだ・・?」
『だから・・・自分の作った・・・ちょっと待て・・・お前・・・本当に自分が何なのかわかっていないのか?』
「何の話だ・・それよりも俺を華林達の元へ帰せ!!」
『・・・・なるほど・・・どうやら本当に何も知らされていないんだな・・』
「・・・・だからさっきから何の話をしているんだ??」
『まぁ少しは落ち着け・・まずは自己紹介からだ・・・』
「・・・っ・・・北郷・・一刀だ・・・」
『・・知ってる・・・』
「じゃあなんで聞いたんだよ!!本当にお前は何なんだよ!?」
『悪かった・・少しからかっただけだ・・・・そうだな・・・俺は
・・“ラファエル”・・・神に仕える大天使だ』
「・・・は?」
一つの物語は終わった・・・・だが同時に終わりは始まりを意味し新たなる物語が始まったのだ。
「・・・ラファ・・・エル・・?」
『そうだ・・・俺は・・いや私は神に仕える大天使。聖なる者にして絶対的なる正義!!その意味は神の薬、あらゆる物を癒しあらゆる物を蘇生させる力』
自らをラファエルと名乗ったこの男は高らかに宣言するように両腕を上げた。
・・誰がどう見ても唯の人間である。スーツのような物に身を包んだ20後半から30前半といった容姿を持つこの男。
第三者からみれば“痛い電波男”もしくは“厨ニ病なおっさん”である。
「ちょっと待ってくれよ・・・自己紹介するなりいきなり変なこと言い出しやがって!ラファエル???そんな神話の天使の名前なんて使ってないで本名を言え」
『・・・ふむ・・・信じてはいないか・・・』
「当たり前だろ・・・いきなり現れて天使ですって言われても信じられるわけないだろ!?」
『なぜ信じない?』
「そんな物は空想の産物だろ・・・だいたい今までにそんなの見た事もないからな」
『なるほど・・・ならば君は神を信じるか?』
いきなり神の話まで進展したことに一刀は戸惑いつつ(あぁ駄目だコイツ電波だ)と思っていた。
このわけのわからん空間には自分と目の前の電波(自称天使)だけ・・とりあえず質問されたからには答えてやろうと思い一刀は自称天使に意識を戻した。
「信じて・・・るかな・・・」
『神の存在は信じるのに天使は信じないのか?』
「そりゃあ神様は皆にあがめられてる存在だろ?そんな存在なのに自分達と変わらない姿をした人間がいきなり“私は神です”って言っても信じれるわけないだろ?」
一刀は自分なりの・・いや誰もが思う正論を述べた。
『なるほど・・・では仕方ないな』
ラファエル(自称天使)はそう呟き一刀の前まで近づいてきた。
「??」
そして次の瞬間・・・・・・
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!
ピカ!!
強烈な光を全身から放った。
「!!!・・っ・・まぶしい!」
咄嗟のことだったので思わず目を瞑った一刀。
だがそれも一瞬のこと。
光が目を開けていても大丈夫なことに気が着いた一刀はそっと視界をふさいでいた自身の両腕の隙間からその姿を見た。
「っ!!!!!」
そこにいたのは異形の者。
純白の光を常に放ち続け片方づつに3枚ずつ計6枚の巨大な翼を纏い一対が体を守るよう覆っている。
何かの古代呪文のような物がかかれた衣を纏いそしてその姿は人にも動物にも見える。
ただいえることは・・・・これは人間では決してない、という事だけ。
「あ・・・ああぁ・・・・」
一刀は口をあけその姿に魅入っていた。
シューーーーーー
そして光は弱まり蒸気を出す音を出しながら元の姿に戻っていった。
『これで私が天使だと信じてもらえたかな?』
ドヤ顔で話しかけてくるラファエル。
しかし今の一刀にそんなことを確認する余裕はない。
今自分の目の前で起きたこと、夢とも思えるがさっきの光景が頭から離れない。
そして・・・・・・
「本当に・・・貴方は天使なのか・・・?」
『どうやら信じてもらえたようだな・・・』
ラファエルは唇を少し吊り上げニヤリと微笑んだ。
未だに信じられない・・・ただしあんなものを見た後では信じるる事しかできない。
『さて自己紹介共々終わったところで今の君の状況、そしてここどこで私が何故ここにいるかを話そう』
「ッ・・そうだ・・・!!!」
そこで一刀はある事を思い出した。話に流されて忘れかけていたがさっきラファエルが言った事・・・・・【まさか・・・自分の作った世界に消されるとはな】
自分が作った・・・世界。
『では今から全てを語ろう・・・・物語の始まりを』
そして天使は語りだした・・・・・・新たなる外史(物語)に続く道を
『まず天使は存在するこれはいいかな?』
「あぁ・・流石にあんなものを見ちゃったらなぁ・・・」
『実を言うとこの姿は本当は人間には見ることが出来ない。ひとたびみてしまば内側から目と耳を“聖なる光”に焦がされる』
「え!?じゃあ俺も・・・・」
咄嗟に一刀は自分の目と耳を押さえた。」
『心配するな君は特別だから我々の真の姿を見てもどうこうなったりはしない。まぁ君に限らずある特定の人間は我々天使の姿も見え声も聞こえる』
「・・・特定の人間?・・・」
頭の中は混乱する一方である。
『まず今君の目の前にいる私、人間の姿を強いているがこれは人間の器に私が入っただけだ』
「????」
さらに混乱する一刀
『天使というのは聖なる者、その姿は人間の目には刺激が強すぎ声は耳に刺激を与えすぎる。ゆえに我々は人間に会うときはこのように人間の器に入りコンタクトをとる。そして我々が入る人間は神の信仰者つまりは神や天使を信じている信者のみ。そのような特別な存在にしか入る事が出来ない』
「じゃあ・・あんた・・貴方の姿もその特別な人間に入っているという事ですか?」
『そうだ・・彼は人間界に居たどこにでもいるような男だったしかし命の危機に瀕していたので私が助けてやるから少しだけ体を貸せと言ってな・・今しばらく体を借りているという事だ』
「・・なるほど・・・」
今更だが一刀は自分が敬語で話している事に気づいてない。無意識のうちかそうさせられているのか・・・彼は知る由もない。
大体は理解してきたが未だにこんな話が現実だとはとても思えない。
実のところ、一刀は何とか話についていくのに精一杯だった。
『一応天使としての力は使えるからその証拠も見せておいてやろう』
そういうとラファエルはおもむろに右腕を上げ中指で指を鳴らした。
パチン!!
つぎの瞬間今まで何もなかった空間が一気に変貌した。
見渡す限りの青空そして見渡す限りの草原にいた。
「・・・・・・・・・・・((((;° 口 °))))」
本日二度目の口ポカンである。
『ぶっ飛んだ・・かな?では話を続けるぞ』
心なしかラファエルの顔はドヤ顔に磨きがかかっているように見えた。
『我々天使の存在を信じてもらった事を前提に話をするが、無論この世界にいるのは私達だけではない“悪魔”や“堕天使”“異界の神々”も存在する。』
「・・はい?」
最早は話についていく所の話ではない。
「じゃ・・・じゃあキリストやアラビアに出てくる神話って・・」
『全て現実であり、全て存在する』
「嘘・・・だろ・・」
『事実だ。ただ見えいないだけ、神々や天使、悪魔、堕天使達は私を含め今もなお聖戦をしている。人間界の近くでな』
「人間界の近く?」
またしても疑問が増える。
『そうだな・・わかりやすく説明するなら・・・』
そういってラファエルは一枚の紙を取り出しそれを一刀に見せながら説明した。
『ここが君達人間が住む世界。そしてその上を天界、下が地獄だ。私達はこの天界と地獄で常に戦っている。君達人間は知る由もないが少なからず私達の戦いは人間界に悪影響を及ぼしている。』
「と、言うと?」
『私達が戦った痕跡は君達の世界で地震や台風、異常気象などといったもので君達の世界を破壊している』
「!!!」
ラファエルが言った一言。それは想像を絶する衝撃の真実。
『君も突然の地震や台風などの災害にはあったことがあるだろう?それらは全て天界や地獄で起こっている戦争が原因だ』
俄かには信じられない真実。
普通の人間である一刀には受け入れられない真実。
『君はヨハネの黙示録というものを知っているかな?』
「ヨハネの黙示録・・・」
それは神の使いであるミカエルが神に叛いたものルシファーと戦う最終戦争。
その最終戦争をきっかけにあらゆる破壊と混沌が生まれたとされている。キリストの神話で最も有名な話である。
『始まりはそれだその後、最終戦争は肥大化し今の戦争にまで発展した。そしてこの戦争はこれからもひどくなる。そうなれば近いうちに君達の世界は耐え切れず崩壊する。』
「!!!」
ラファエルが継げたのは一刀にとってはあまりに大きすぎ現実離れしすぎている話。
受け止められるはずもなかった
『私は人間界が好きでね。出来ればあの美しい世界を壊したくない。そして私と同じように思っているものは他にもたくさんいるんだ。しかしどうする事も出来ない私程度の力では戦争を止める事は出来ないしそもそも彼等は止まらない。現実を受け入れるしかなかった』
ラファエルは語りだした。自分の思いをそして彼の表情はどことなく沈んでいた。
『だがしかし、ある日思わぬ事が起きた。・・・・我々の住む天界と地獄、そして人間界にそっくりな世界が現れた。』
「???」
『言うなればその世界はIFの世界。存在するはずのない世界だった。最初は神が新たな世界を作り出したかと思った。だが違った。その世界不安定ながらもある一人の少年を基準に動いていた。』
ラファエルは静かにこちらを見据える。
その時一刀は全てのピースが埋まったようにある一つの結論を導き出していた。
『もうわかっただろう・・・その少年というのが君だ
・・・・“北郷 一刀”君・・・・・』
ピースは全て埋まった。
「そんな・・・・」
『不思議には思わなかったか?唯の人間である君がありもしない世界に訪れた事に・・・・・・・・あの覇王曹操が君のような唯の人間を愛した事に?
街の民が部下が仲間が君を天の御遣いだとあがめた事に・・・・・・』
「それは・・・・」
『出会いは偶然だと思ったか?・・愛は本物だと思ったか?・・・違う全ては必然であり定められた事だったのだ!なぜならあの世界を作ったのは君自身で彼女たちをそう作ったのも君だからだ』
「!?」
『あの世界は君が作った。無意識のうちにな。だがそうして作られた世界は不完全であった。それは忠実を元にして作っているという不完全さだ。完全なオリジナルではなく記録を元にした模倣世界。そして世界は忠実にそって時を進めるために君をイレギュラーと判断し君を消し去った。作った世界に“力を解放”していない君はあっさりまけそして消されたのだ』
全ての事実が今暴かれた。
そうあの世界は一刀が作った世界。彼が無意識に作り上げ彼を基準にするように作られた“自分だけの世界”
『だが皮肉にも君が消された事によって世界の不安定さは消え去り完全なるもう一つの世界となったがね』
「そんな・・俺があの世界を・・・華林を・・・・」
前に一度一刀は友人の及川とそのほかの何人かで映画を見に行った。
ジャンルはSFものの映画で自分達が住んでいた世界は実は偽者で作られた世界に記憶を植えつけられて生活しているという世界観だった。
そのなかで主人公がその世界で生き残る為に戦っていく物語。
最後はその世界を作ったとされる自分を神だと名乗るものを倒してハッピーエンドで終わり。
不意一刀は自分の存在を映画でたとえていた。
そう今の自分はその映画では悪役の神様と同じ立ち位置。
勝手に作り出しそして勝手に殺す・・・・。
『つらいかもしれないがこれが全ての事実だ。だから最初に言っただろう?【君は特別だ】ってね』
様々な感情が入り乱れる中、話の中で一刀はある疑問を抱く。
「・・・もしそうだったと仮定して、貴方が此処にいる理由は何だ?何故俺の前に?それにあの世界が貴方達と何の関係が・・・?」
冷静を装いつつ自分の抱く疑問を並べていく。
『・・・・!!・・・・いいところに気がついたな・・・さっきも言ったが私を含めた天使、堕天使、悪魔、異界の神々にも人間界を好んでいる者はたくさんいる。そんな彼等の前に好きなだけ暴れてもいい世界が目の前に現れたとしたら』
「!!まさか・・華林達の世界を!!」
『その通り・・・』
ブチン!!
「ふざけるなァァァァァ!!」
そこまでが限界だった一刀は拳を振り上げラファエルに飛びついた。
ドン!!
「ッかは!!」
しかしその拳は届かなかった
人間の一撃など天使に取っては気にも留めることでもない。ましてや武将でもなかった一刀の一撃ならなお更。
一刀は空中で止められ念力のような物で腹を殴られ数メートル飛ばされた。
「・・くそ!!」
『いい目だ。だがどれだけ頑張っても君に私は倒せないし肩膝つかせることも出来ない。』
「うるせぇぇぇ!!!!」
ガシ!!
ドン!!
「ぐホッ!!」
再度突っかかる一刀。
だが今度はラファエルに首をつかまれ地面に勢い良く叩きつけられた。
それは人間ではありえないほどの怪力だった。
『あきらめろ北郷一刀いくらやってもむだだ。君に出来るのは現実を受け入れる事だけだ。それでも気がすまないのなら何回でも来るといい。幸い此処は私が作った空間だここでは時間が存在しない好きなだけ足掻きたまえ』
「・・・くッ・・・うぉぉぉぉぉぉぉ」
それでもラファエルに向かっていく一刀。
今は唯こうすることしか出来ない・・・全ての事実から唯逃れたいだけ・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
何時間経過しただろうか此処では時間が過ぎない。
一刀はボロボロになって地面に崩れ落ちていた。
『気は済んだかな?』
「・・・・・」
『返事・・・なしか・・・』
ラファエルはつまらなそうにして一刀を見下ろした。
「・・れは・・・」
『なんだ?何か言いたいのか?』
「俺は・・華林を愛していた・・・・」
『・・・・・・』
「あんたに言われた事が事実だったとしても・・俺は華林を心から愛していたんだ・・・っ!!なのに俺は彼女を泣かせてしまった。離れないって言ったのに・・・それどころか今華林たちの世界が狙われてるのに・・っ・・俺は何も出来ない・・・・」
『それで・・・・』
「・・・く・・・りたい・・・っ!!」
『なんだ?聞こえないぞ?』
「・・っ・・強くなりたい!!」
『・・・・・』
「守ってもらったんだ俺は!!彼女達はこんな俺を愛してくれた!!例えそれが決められた事だったとしても。今度は俺が守るんだ。華林たちをこの手で」
『・・!!?』
そういって立ち上がった瞬間一刀の体からわずかに光がこぼれた。
そしてそれは握っている一刀の拳へと集められた。
「うぉぉぉぉぉお」
無我夢中で一刀はラファエルに向かって拳を振るった。
ドッコン!!
『かはッ!!』
その一撃はラファエルに捕らえられることなくまっすぐにラファエルの顔面に直撃した。
ズズズズズズズドン!!
ラファエルは数メートル吹っ飛び崩れ落ちた。
「・・はぁ・・はぁ・・なんだ今・・・の・・」
そこまでで限界だったのか一刀もぐずれ落ちた。
意識が遠のく中彼が見たのは満足そうな笑みを浮かべるラファエルがこちらに微笑んでいた事だけだった。
【ようやく力を開放させたか・・・・・・・・
今は眠れ・・・・・・・北郷一刀・・・・・・・
いや・・・・・
“聖なる神の器”よ・・・・】
ついに止まっていた歯車は動き出した。
開放された一刀の力。
そして華林達の住む世界に訪れる絶望。
平和になった世界に舞い降りる異界の介入者たち。
「どぅふふふ♪さぁ物語は始まったわよん。」
貴方はこの新たなる物語〈外史〉の扉を開きますか?
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コメントされたかたがいてくださったので序章だけでも書いてみました。
続けるかは作者の文章力と時間と気分しだいです。