No.503757

IS x 龍騎〜鏡の戦士達 Vent 23: 超えなければならない壁

i-pod男さん

簪ちゃん登場と、司狼のISの待機状態の力の片鱗をお見せしたいと思います。

2012-11-03 01:46:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1959   閲覧ユーザー数:1844

福音戦から数日後、一夏は整備室でウィングナイトSの定期点検をしていた。

 

(やっぱり加速する時にこのエネルギーの消費量が問題だな、しかも零落白夜のシールド、クロー、カノンが・・・・まあ当分はリボルウィングで事足りるだろうが、後々使う事になるかもしれないから馴れておいた方が良いか・・・?)

 

「あー、駄目だ・・・・エネルギー節約の目処が全然立たねえ。後にも先にも何もねえし・・・・」

 

「おりむーどうしたのー?」

 

間延びした声が後ろからした。見ると、だぼだぼの袖に改造してある制服を着た女史が立っていた。

 

「ん?ああ、のほほんさん。実は俺のIS、エネルギーの燃費が悪いからどうにか節約出来ないかなと思って。確か、整備科だったよな?」

 

「そーだよー。」

 

「良かったー・・・・じゃあさ、少しアドバイスくれないか?配線とか調整とかは出来る事は出来るんだが、専門的な事になるとメカニックに任せきりでさ。」

 

「いーよー、デザート奢ってねー。一番高い奴。」

 

「安いもんだ。ありがとな。」

 

五分程簡単なレクチャーを受けると、本音はそのままどこかへ行ってしまった。一夏は彼女のアドバイスを元にキーを暫く叩いており、ようやく消費エネルギーを三割近くカットする事に成功した。

 

「はあ・・・・終わった・・・・」

 

ガッシャーーーーン!

 

大きな音が聞こえ、音のした方に一夏は駆け出した。見ると、そこら中に部品や資料が散乱しており、運んでいたであろう人物が倒れている。

 

「おい、大丈夫か?おい!」

 

とりあえず抱き起こして壁を背にさせ、呼び掛けてみた。水色の頭髪に眼鏡をかけている。リボンの色から同級生であると言う事が確認された。

 

「ん・・・・・」

 

「いやー、驚いた・・・大丈夫か?いきなりデカい音がしたから飛んで来たんだが・・・・転びでもしたのか?」

 

「貴方には・・・・関係、無い・・・・」

 

「あれは・・・・そうか・・・・そう言う事か。」

 

一夏は作りかけの黒とグレーの機体を見て納得した。

 

「お前、四組の更識簪だな。俺のISの開発の所為で人員を割かれた。確か、打鉄弐式だったか?それを引き取って残りは自分で組み立てようとしている。そうだろう?その事に関しては、俺もつい最近まで知らなかったんだ。本当にすまない。」

 

「別に、良い・・・・・」

 

「この様子じゃ、お前徹夜続きだったろ?一旦休め。根詰めても何も良い事無いぞ?」

 

簪は立ち上がろうとしたが、体に力が入らないのか、再び座り込んでしまう。

 

「ほら見ろ。お前の体はエネルギー不足なんだよ。ビタミン剤とかじゃ死にはしなくても、体には悪い。外の空気でも吸いに行けよ。」

 

「貴方に!貴方に何が分かるの!?」

 

「・・・・あ?」

 

「私は・・・こんな事で負けられない・・・・あの人に追い付くまで・・・・」

 

「あの人・・・・成る程、あいつ(・・・)か。IS学園唯一の国家代表にして自由国籍持ち、並びに学園最強の四文字を堂々と掲げる生徒会長更識楯無か。確かに、俺には分からない。俺はお前じゃないからな。だが、同じ下の兄弟として言える。必ずしも相手が得意とする分野で勝てるとは思わない事だ。誰にでも得手不得手は必ずある。俺もそうだ。それに、勝負を焦れば負けだぞ?・・・・っ!」

 

キイイィイイイイィイイイイィィィィィィイイイイ!

 

「どう、したの・・・?」

 

(ここで変身する訳にも行かない・・・コイツを使うか。)

 

一夏は後ろ手に隠したデッキから封印のアドベントカードを取り出して近くにある窓ガラスに向けると、直ぐに耳障りな音が消えた。

 

「いや、何でも無い。兎に角、一旦休憩しろ。お前を心配する奴だっているだろうに。」

 

「・・・・・分かっ、た・・・・・」

 

「さてと、休日だし俺も昼寝に行こうかね。んじゃあな。(ちっ・・・・やっぱ戻ってきやがったか!?)」

 

角を曲がった所で変身し、ミラーワールドに飛び込んだ。

 

「ディスパイダーか・・・・まったく・・・・」

 

『ソードベント』

 

『コピーベント』

 

二本のウィングランサーを両手に持ち、飛んで来る糸を全て切り落とした。足を切り崩し、胴体が降りて来た所を貫く。

 

「ギシャーーーーーー!!!!」

 

更にダークバイザーを投げつけ、足を貫いて地面に縫い付けると飛翔斬で倒した。

 

「ふぃ〜・・・・」

 

ミラーワールドから出ると、幸か不幸か丁度そこで簪に出くわしてしまう。幸い変身はまだ解いていないので正体はバレていないが、二人は無言となってしまう。

 

「あ、貴方・・・・誰・・・?」

 

「俺は・・・ナイト。仮面ライダー、ナイト。」

 

「仮面、ライダー・・・・!本当にいたんだ・・・・」

 

「俺の存在は誰にも知られてはならない。特に、IS委員会には。俺に会った事は、誰にも言わないで欲しい。約束してくれるか?」

 

「うん・・・・」

 

「じゃあな。」

 

再びミラーワールドに飛び込み、姿を消した。

 

(カッコいい・・・・)

 

簪はその姿に魅入ってしまい、過去に見た特撮ヒーロー物を思い浮かべていた。現在は指輪で変身する特撮物に嵌っている。時を同じくして、一夏は誰にも見つからない様にミラーワールドから出て自室に戻っていた。

 

「危ねえ・・・・・バレる所だったぜ・・・・」

 

「一夏〜、いるー?」

 

「ん?シャルロットか?おお、良いぞ。」

 

扉を開け、入って来たのはシャルロットとラウラだった。

 

「お、ラウラも一緒か。どうした?」

 

「ちょっと、ね。突然で悪いけど模擬戦がしたいんだ。」

 

「模擬戦?俺とか?」

 

「うん。僕も一応ラファールをある程度改造してもらったんだ。そのテストの為にね。」

 

見ると、確かにオレンジ色だった筈の十字形ペンダントトップの色が変わっていた。カモフラージュグリーンを主に黒とオレンジのラインが幾つか入っている。

 

「ラファール・リヴァイブ改め、嵐の再誕(テンペスタ・リヴァイヴ)だよ。武装はある程度改造してもらってるから、実弾兵器とエネルギー兵器の両方もあるし。ちょっと試してみたいかなーって・・・・駄目?」

 

「まあ、俺としては別に構わない。セカンドシフトしてからと言う物、俺もデータ採取で忙しくて余り体が動かせなくてな。」

 

「ならば、私も、良いか?」

 

「ラウラも?あ、そう言えばあれだな、オルタナティブ・ゼロのテスト稼働があるからやらなきゃ行けなかったな。」

 

「最初はそう思ってはいたのだが、シュヴァルツェア・レーゲンにも愛着があってな。一応向こうに預けてはおいたが・・・・」

 

「確かに、AICやあのワイヤーブレードはかなり有効だから、気持ちは分かる。遠近両用の万能型だからな。俺もあの時は苦戦したぞ。一対一だったら俺は絶対負けてたな。」

 

「うーっす、お前ら。」

 

再びドアが開いて部屋着姿の司狼が入って来た。

 

「お、ラウラ、ここにいたか。お前のIS、出来上がったぞ。型はレーゲンとほぼ同じだ。フルスキンだけどな。アリーナでテストしてみろ。シャルと一夏もとりあえず来い。」

 

「はい!」

 

時を同じくしてアリーナでは箒が紅椿を纏って自主練に励んでいた。かなりの間動かしていたのか、既に汗が顎から滴り落ちている。一旦解除すると、アリーナの端で汗を拭いて一息入れた。すると、向こう側から一夏を含めた四人組が現れた。

 

「じゃあ、シャル、ラウラ、お披露目タイムだ。」

 

ラウラは形がほぼ変わっていないデッキのマークが中心に入ったレッグバンドを渡される。それを付け、二人はISを展開した。シャルロットのシュツルム・リヴァイブはフルスキンで顔は横に三つの細いスリットが入ったモノアイにカモフラージュグリーンの色、両肩には角の様な小さい突起、手足のマニピュレーター部分にはオレンジ色のフレアマークが入っていた。

 

「これが、テンペスタ・リヴァイブ・・・・」

 

「ああ。コイツはラファールとのコンセプトは変わらないし近接武器も積んでるが、どちらかと言えば遠距離主体だ。武装もかなり改造・内蔵してあるから、使い所間違えんなよ?」

 

シャルロットが新しい武装に馴れている間、ラウラの機体もやはりフルスキンで黒く、以前の様なゴツさは無くなってシャープで流線的なデザインを持っていた。右腕は楯も兼用のスラッシュリーダーがあり、両肩にはマイクロミサイル『サイコ・ショック』、背中のウィングバインダーからは六本のワイヤーブレード、更に両手からはAICが発動した。

 

「これは・・・・!?」

 

「愛着は湧いてるだろうと思ったからね、レーゲンのデータはそのままにオルタナティブ・ゼロのデータを書き込んで調整した。万能型なのは変わらないが、速度と機体の軽減をメインに改造してある。その名も、黒い燕(シュヴァルツェア・フリーゲン)だ。」

 

「シュヴァルツェア、フリーゲン・・・・」

 

「アドベントシステムの事についてはもうレクチャーしたから、大丈夫だよな?」

 

「うん、大丈夫だよ。」

 

「こちらも問題無い。」

 

「じゃあ、一夏。コイツらの相手してくれるか?」

 

「はい。」

 

「え、二対一で・・・?」

 

「それではあまりに・・・・」

 

「あいつを見縊るな。あいつは、強いぞ。俺は、向こうで一休みしている奴に挨拶しに行く。だから、ごゆっくり。」

 

司狼は箒のところへ歩いて行った。箒は彼を見るやいなや顔をそらす。

 

「よう、新しく専用機を持った箒さん。調子はどうだ?」

 

「・・・・・いつもと変わらない。」

 

「ああ、そう。あ!そう言えば、君の愛しい一夏君から君宛のある物を預かってる。」

 

「私宛に・・・一夏から・・・?!何だそれは?!直ぐに渡せ!」

 

「嫌だね。今のお前の態度が気に入らない。折角専用機を持ったんだし、ここはIS学園だ。どうせならISバトルでケリをつけよう。俺が勝てばお前が一夏から直接貰いに行け。お前が勝てば、渡す。それでどうだ?」

 

「良いだろう。あの時の私とは違うと言う事を思い知らせてやる!(一夏の為にも、コイツは必ず、消す!)」

 

「ただし、俺は宣言しよう。俺はISは展開しない。このままで、お前を倒す。」

 

「何を馬鹿な・・・・第四世代機に生身で勝てると」

 

「勝てるからそう言っている。それにお前のISが第五、第六世代であろうと関係無い。乗り手が素人だったら宝の持ち腐れだろ?」

 

鞘の一部を開き、その中から短剣を引き抜くと、剣をショットガンに変形させる。

 

「ほら、早くしろよ。」

 

「はあああああああああああああ!!!」

 

イグニッションブーストで接近して来る所を避け、背中ががら空きになった箒にショットガンで攻撃する。

 

「トレース!」

 

『Tracer ON』

 

散撒かれた無数のエネルギー弾が箒を追跡し始める。箒はどうにか振り切ろうとするが、何発か被弾してしまう。

 

「まだまだ!バスターモード!」

 

『Buster ON』

 

狼の頭を模した鞘の先が開き、口の部分から砲身が露わになる。極太のレーザーを放ち、箒を襲う。

 

「何だと?!」

 

避けはしたが、やはり速度と破壊力はかなりの物らしく、肩の装甲をごっそりと剥ぎ取った。

 

「ほらほら、どうした?そんな調子じゃ負けちまうぞ?マックスアウト。」

 

『Max Out, Ready』

 

鞘のゲージらしき部分が少しずつ発光し始める。

 

「何をする気かは知らないが、させるものか!」

 

雨月と空裂から放たれるエネルギー攻撃で司狼を妨害しようとするが、司狼が投げつけた短剣が爆発し、それを相殺してしまう。

 

「五十パーもあれば十分だ。シュート!」

 

獣の砲口の様な銃声とともに箒はシールドを完全に削られ、落ちた。

 

「俺の勝ち。じゃあな。あの三人の様子も見ておかなきゃならないんで。」

 

司狼は白い封筒を取り出し、アリーナに投げ捨てた。

 

「少しは頭を冷やせ。その力に振り回される心の弱さこそが、お前の最大の弱点だ。振り回されるな。武器と同じだ。剣は振る物であり、振り回される物じゃない。人の命を容易く奪える物であり、また守れる物でもある。」

 

そう言い捨てて司狼は箒に背を向けて歩き去った。

 


 
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