No.502304

真・恋姫無双 ~新外史伝第80話~

しばらく出ていなかった魏・晋の動きが少しだけ出ます。

そして翠と愛紗の絡みですが、普段の翠と違いすぎるかもしれませんが…ご容赦願います。

今回は一刀と紫苑は出ていません。

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2012-10-30 23:42:48 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5161   閲覧ユーザー数:4605

愛紗が一刀の元に降った情報は、魏や晋にも伝わっていた。

 

~魏~

 

「そう。関羽が蜀に降るとはね…。意外だったわ」

 

「華琳様、関羽が蜀に降ったのがそんなに意外でしたか」

 

「そうよ、稟。私への誘いを断り、そして呉の誘いも蹴り、劉備への忠義に拘り続けたあの関羽が北

 

郷に付いて行くとは思わなかったわ」

 

「フン!関羽という女、華琳様の誘いを断り、あんな男に降るなんてふざけてのかしら!」

 

「今回は関羽に縁が無かったから仕方がないわ」

 

桂花が罵倒するが、華琳は愛紗を策で桃香から離反させたため、自分の陣営に引き寄せることは出来

 

なかったので残念がっていた。しかし何れ機会があれば、自分の手元に置こうとは考えていたが。

 

「ですが、これで蜀は完全に漢と呉を敵に回すこととなり、蜀とこの二国との戦いは避けられないで

 

しょう」

 

「こちらとしては助かるわ。蜀が漢と呉と争っている間に何としても晋を潰す必要があるわ」

 

「しかし司馬懿殿の手腕は侮れません。以前から治めていた并州は勿論、そしてこの混乱の中、幽州

 

も手際良く手に収めました」

 

「そうですね~稟ちゃんの言うとおりです。更に司馬懿さんは、今、冀州内で頻発して発生している

 

豪族たちの反乱にも一枚噛んでいるみたいなのです。まずはこれを叩かないと晋の討伐はできないの

 

です」

 

「これで漢呉同盟に更に晋が加われば、我々は三方から包囲される形を受け、華琳様の覇業に困難が

 

生じます」

 

「望むところだわ。覇業が困難であればあるほどやりがいがあるわよ」

 

「と言っても同時に三方から攻められた時には、幾ら何でもまずいのです」

 

「その通りです。我らの領土は攻められやすく守りにくい土地、特に西から攻められた場合、堅城と

 

呼ばれる城がないため、攻められた場合、苦戦は必至です」

 

「だが稟、漢と呉との同盟を結ぶのは無理があるぞ」

 

この発言は秋蘭であるが、以前、華琳が徐州を攻め入り奪い取っているので、こちらから漢への同盟

 

を結ぶことは体面上難しく、そして漢と同盟を結んでいる呉も連動することからそれらに対して、暗

 

に反対しての発言である。

 

「ええ、それは分かっています。もし手を結ぶのであれば、蜀しかないかと」

 

「何言っているのよ。あんな男が君主のところと手を結ぶ気なの!」

 

「何処の国と手を結ぶ必要はない!もし三国が攻めてきても私が居れば問題はない!」

 

「……桂花殿、貴女、自分の嗜好をこの場に持ち込まないで下さい。それに春蘭殿、幾ら貴女でも三

 

国同時に攻められたら、身体は一つしかないのです。後の二つは抑えることは無理です」

 

「ハァ……桂花、貴女、男という理由だけでいい加減、相手を見縊るのは止めなさい。それは軍師と

 

しては失格よ。それに春蘭、幾ら貴女が強いと言ってもそれは1対1でのこと、複数から攻められる

 

と幾ら貴女でも無理よ」

 

「…申し訳ありません、華琳様」

 

「…分かりました」

 

華琳から指摘されると二人は意気消沈してしまった。

 

「確かに晋攻略中に、漢や呉に後背を突かれると拙いですね~。ここはやはり蜀と何か手を結ぶ必要

 

があります~」

 

風の言う通り蜀と手を結ぶ必要はあったが、華琳は同盟というよりは、どちらかと言えば、期限付き

 

での不可侵条約を考えていた。少なくとも魏が晋に勝つ。蜀が漢に勝つ。その両方が為されるまで、

 

互いに互いを攻めない。蜀にそういう話を持って行けば、条約を結ぶことは可能かもしれない。もし

 

これが成れば、蜀は私を気にせず漢・呉との戦に乗り出すことができる。逆に私たちも漢・呉を気に

 

せず晋の戦いに専念できる。

 

ただ問題は、晋が私たちより好条件を持ち出し、蜀と同盟する可能性はある。晋も同じく漢と一時交

 

戦した経緯があるので、同じ様な理由で漢とは同盟を結びにくく、そうなると同盟できるのは蜀だけ

 

となる。

 

「ここは万全を期す必要があるわね…場合によれば私自身が直接交渉に出た方がいいかもしれない

 

わ…」

 

華琳はそう呟き、桂花と稟に冀州の反乱の鎮圧の指揮及び晋への対策を指示、そして風には蜀との交

 

渉の下準備を指示した。

~晋~

 

「おい、陽炎、これからどうするんだ」

 

酒乱軍師である蒋済(真名:白雪)が何時通り酒の臭いを漂わせ、遠慮なく陽炎こと司馬懿に今後の

 

事を尋ねた。

 

「そうね…まずは貴女の意見から聞かせて貰おうかしら」

 

「へっ。取り敢えず今の私たちじゃ、単独で魏の軍勢を打ち破ることは無理だな。冀州でも奪い取れ

 

れば話は別だけど、今は取り敢えず冀州で攪乱しながら、力を蓄え、魏が何処かと戦いに入った時に

 

隙を見て攻め入るのが妥当じゃないか」

 

白雪は何処とも同盟等を結ばず、あくまで単独で戦うことを貫こうと考えていた。

 

「それが貴女の考えね」

 

「その言い方だと、私と意見が違いそうだな」

 

「ええ、私の考えは蜀と手を結ぼうと考えているの」

 

「へぇ…その訳は」

 

「今の蜀を敵に回すと厄介だからね。それに冀州の攪乱だけではなく、あと…」

 

陽炎は蜀との同盟と同盟とは別に更なる策を説明した。

 

「……それ上手くいくか?」

 

「別に失敗してもいいわよ。仮に気付いても私たちの仕業かどうかはっきり分からないだけよ」

 

「そうだな。気付いても喰うか喰われるかの戦いだ。騙される方が悪いだけか」

 

白雪は陽炎の策を聞いて、失敗しても大勢には大きく影響しない事を理解したので、策に反対するこ

 

となく、後は自分がやると一言言い残しこの場を去った。

 

「さて曹孟徳、北郷一刀、どこまで私を楽しませてくれのかしら…」

 

陽炎は今後の好敵手になるであろう二人の名前を出して、微笑を浮かべていた。

~蜀・長安~

 

愛紗が一刀の陣営に来て二週間くらい経過したが、こちらに来て当初は本人も不安であったが、最初

 

の紹介の時に関羽のファンというか以前から実物を見たかったと言っていた霞が、

 

「うおおおお関羽やぁぁぁ~~~~~!生関羽やぁぁぁ~~~!会いたかったでえぇぇぇ~~~!関

 

羽、関羽、関羽うぅぅぅ~~~」

 

言いながら愛紗に抱き着くと、霞の突然の豹変ぶりに皆は驚き、流石の愛紗も突然のことでどうして

 

良いか、うろたえるばかりで、ただ立っていることしか出来ないでいた。しかしこれを切っ掛けにし

 

て愛紗も皆から徐々に認められるようになった。

 

しかしここ二、三日の愛紗は何か悩んだ顔をしていた。その理由は一刀にあった。

 

救出戦後、愛紗は一刀の事を常に意識している自分が居ることを自覚していた。

 

星だけでは無く、義妹の愛香や部下の周倉に言われ、逆に一刀の事を意識しないでいようと思ったが

 

自然と目で追いかけている自分が居たことに気付いた。

 

紫苑を筆頭に七人の妻がいる状態で、無骨な武人である自分に入る隙間がないと思っている自分もい

 

る。

 

だが別の話では紫苑と璃々が世間で言われている姉妹では無く、実は親子関係であると聞き、親子を

 

妻にしている一刀は、一体どれが本当の素顔で、そして聞けば聞くほどどんな人物か分からなくなり

 

混乱していた。

 

「……はぁ」

 

愛紗は考えれば考える程分からなくなり、そして自然と溜め息を吐いていた。

 

そんな愛紗を見て翠が声を掛けた。

 

「どうした愛紗。溜め息吐いてよ」

 

「ああ、翠か…」

 

愛紗は翠の姿を見て、一刀の事について質問をしたくなった。翠は元々、西涼馬家の次期当主の予定

 

だった豪の者、それが何故一刀のその地位を譲り、そして一刀の三番目の夫人に収まったのかを。

 

「翠、一つ聞いてもいいか?」

 

「ああ、いいぜ愛紗。それで何を聞きたいんだ」

 

「……翠、なぜ次期当主の地位にあったにも関わらず、自ら一刀様のところに嫁ぎ、そしてその地位

 

を譲ったんだ?」

 

愛紗の疑問はもっともであった。翠がそのままで居れば自らその後を継ぎ、そして逆に一刀を迎える

 

ことも可能であったのにも拘らず、なぜ一刀を当主にしたのか、当時桃香と一緒にいた愛紗には分か

 

らない事であった。

 

愛紗の質問に翠は、愛紗の表情が真剣であったので

 

「ああいいぜ」

 

一刀の出会いから、今まであった事を包み隠すことなく話した。

 

翠の話を聞き終えて、愛紗は毒気が抜かれた様な表情をしていた。

 

「言っておくけど、これは嘘でも何でもないからな」

 

「ああ…お前が嘘を吐くような者でないことは分かっているが…」

 

話を聞いて愛紗はまだ困惑を隠せないままでいたが、そんな愛紗を見て翠が

 

「なあ愛紗、何を迷っているか私には分からないけどよ。迷った時は自分が一番したいことをしたら

 

いいと思うぜ。何か愛紗を見てると、以前の自分を見ている様な気がするぜ」

 

「翠…」

 

翠はそう言いながら、自分で話して恥ずかしくなったのか足早にこの場を離れた。

 

その場に残された愛紗は自問自答を繰り返していた。

 

(「しかし、まだ分からない。私は本当に一刀様を好きなのか…好き、だとは思う。ただ君主として

 

は好きだが、これが一生共に生きる男性として好きなのかどうか……。ただ一刀様の周りには、紫苑

 

や璃々を始め多くの妻が居る」)

 

(「もう少しだけ、見極めよう。自分が、一刀様に妻が沢山いても、それでも一刀様のことを好きだ

 

って言えるのか。それを見極めてから決めよう」)

 

愛紗が、まずはそう結論付けるとさっきよりは、足取り軽くその場を離れたのであった。

 

 


 
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