第百十七技 事情聴取
キリトSide
実験を終えたことで、ヨルコさんの元に訊ねる時間をうまく消費できた。時間は午前九時。
昨日、彼女が泊まった宿屋を訪れた俺達。そこにヨルコさんが宿屋から出てきた。
見た様子あまり眠れなかったのだろう、疲労しているのが分かる。
「ごめんなさい、お友達が亡くなったばかりなのに……」
「いえ、大丈夫ですから…」
アスナが言葉と共に一礼をしたので俺もそれにならう。ヨルコさんもそれを返してきた。
その時、アスナを見たヨルコさんの眼が外見の年齢に相応しい輝きを持った。
「うわぁ~、アスナさんすごいですね。その服全部、アシュレイさんのワンメイク品じゃないですか」
この世界に来てからオシャレの話しというのをティアさんとカノンさん以外では初めて聞いた気がする。
ちなみにアシュレイというのはアインクラッドで一番最初に《裁縫》スキルを
なんでも、最高級生地のレア素材持参でなければ中々作ってもらえないという話しだ。
それを聞いてアスナを見ていたら、彼女が顔を微かに紅く染めた。
「な、なによ…///」
「いや、アシュレイのオーダーメイドだったんだなぁと思って…」
そんな風に関心していると、ヨルコさんが今度は俺を見て声を出した。
「あの、キリトさんの服ってもしかして……ラルドさんのワンメイク品ですよね!?」
「え、えぇ!? そ、そうなの、キリト君!?」
「あ、あぁ、そうだけど…」
二人が驚愕の表情と声を露わにしたことでさすがに俺もたじろいだ。
ラルドというのは、アシュレイに並ぶもう一人のカリスマお針子である。
彼女は技術も確かなのだが、なによりも完成度がとにかく高い。
というのもラルドさんはリアルの服などを再現するのに非常に長けている。
服以外にも靴や帽子、装飾品などもほぼ完璧に再現するのだ。それだけでなくとも質の良い物を作ってくれる。
ただ、彼女はオーダーメイドどころか普通の服の販売でさえ、
常連客でなければ行わないのでアシュレイよりも性質が悪い。
俺達『黒衣衆』の服は全て彼女のオーダーメイドによるワンメイク品である。
そういう訳でこの二人は驚いているのだろうな。
「私…ラルドさんの服を全て揃えるどころか、着ている人を見たのも初めてです…」
「私もです。ちょっと感動…」
ヨルコさんの言葉にアスナも続いて感想を漏らした。
それほどの事か、とも思ったが女性にとっては大事なことだろうとも思ったので口にはしなかった。
ともあれ、俺達はヨルコさんの話を聞くために、昨日まともに食べる事が出来なかったレストランへと向かった。
レストランに着いた俺達。
ヨルコさんも既に朝食を終えているとの事で早速昨日から調べたことを報告した。
カインズ氏の死亡時刻と死因、凶器に使われた武器の性質、
いまのところは報告に上がっていないが未知のPK技についてなどを報告した。
「……以上が報告なんだけど、ヨルコさんに聞きたい事があるんだ。
おそらく、鍛冶プレイヤーの『グリムロック』、『聖竜連合』槍使いの『シュミット』。
この二人の名前に聞き覚えがあるんじゃないのか?」
俺は悪いと思ったが、少々威圧的に訊ねた。
ここで彼らについての情報を聞き出しておかなければ後手に回ってしまうかもしれないからな。
「はい。二人とも、私とカインズと同じギルドに所属していたメンバーです。少し前のことですけど…」
やはり関係があったか。アスナに視線を向けると彼女も俺に視線を向けて頷いた。
「ヨルコさん。俺達は今回の事件を復讐や制裁といったものだと思っている。
四人が同じギルドだったということは、過去に何かあったとも考えてる。
もし、当時ギルド内で何か厄介事があったのなら教えてほしい。
辛い事を聞いているのは重々承知だ。だけど、事件の解決にどうしても必要なことなんだ…」
俺の言葉に少しの間ヨルコさんは沈黙を保っていたが、
落ち着くようにするためか紅茶を少し口に含んでから意を決したような表情になった。
「わかりました…お話しします……」
彼女は語り始めた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
前半の話しはアニメでなかったので、やっぱり書きたかったんです!
それにしても原作を読んでいて思ったんですが、
ヨルコってなんでアスナの服がアシュレイのものだと分かったんでしょうか?
謎ですね・・・。
それでは、次回で・・・。
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第百十七話です。
ヨルコへの事情聴取になりますが、前半はノリでやっちまいましたw
どうぞ・・・。