創世神話
原初に母なるアドナがあった。アドナは辺りを覆っていた泥を吸い、空気を吐いた。
泥はアドナの体内へと入って大地となり、空気は大気となって、空が生まれた。
大地と空、海とが出来たが世界は未だ暗く、アドナは光を求めて両の眼を開いた。
その開かれた左目からは太陽が、右目からは月が生まれ出た。二柱の美しい神は燦々と輝き、闇もなく天と地を遍く照らし出した。
太陽と月とが生まれたことで、冷え切っていた天と地は暖まり、大地からは樹木が芽吹き、天には雲と風、雨と嵐が生まれた。
太陽と月の双子神は片時も離れず、二人の間には次々と神が生まれていった。
川の神や森の神、石の神など、多数の神々が生れ落ちる中、最後に生まれたのは、名も無き邪神だった。
火の神が生まれたところで、大地はとうとう熱さに耐えかね、アドナに救済を求めた。
太陽と月、そして火がずっと地上に留まっていることで、川は干上がり樹木は枯れ、動物たちも多数が死んでいった。
大地の求めに応じて、アドナは太陽と月を天へと上げ、更に住む世界を分けた。
昼の世界は太陽のものとなり、夜の世界は月のものとなったが、引き離された太陽と月はお互いを求め、永遠に天空を走り回ることになった。
太陽と月が天空を治め大地に火が残った頃、アドナは自らの箱庭に、管理するものを作り出した。原初に吸い込んだ泥を塗り固め、自らの姿に近い者、人間を作り出した。
だが不純物の多い泥は、完全なる管理者を作り出すことができず、彼らは欲望に従って戦を始めてしまった。
アドナは悲しみ、清らかな水源に育った樹木の枝から、完全なる管理者を新たに作り出した。これが精霊人となった。
しかし人間たちの争いは、新たなる管理者である精霊人にも、止めることが出来なかった。
やがて精霊人も人間を避けるように、生まれた森へと戻り、人間たちは争いを続けた。
アドナは疲弊し、最後に生まれた名も無き神と共に、海の奥底で眠りについた。
自らが目覚める日までに人々が改心をしていなければ、末神とともに断罪を下す事ために。
眠りにつく前、無用な争いを続ける人間たちを監視するために、最後に自らの代行者を作った。
代行者は人間と精霊人の中から、最も意思が強く、生きることに執着を持った者たちを四人選んだ。
四人の代行者たちは、再びアドナが目覚めるまで、世界の監視と管理を司ることとなった。
生きる意志がある限り、代行者は生き続けることが出来た。生きる意志の無くなった代行者は塵へと戻り、新たなる代行者が生まれた。
人は彼らを死なずの人、不死人と呼んだ。
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世界観の基盤となる創世神話を掲載します。
掲載し忘れてたなんて言えない。
多神教的に作ってあります。1117字。