No.500440

【デジナミ】ハロウィン・カプリッチオ【ハロウィン】

やっと出来た・・・明け方投稿失礼します。
キャラ指標というか、ハロウィン小話みたいな具合で。
本当はシンジまで入れようと思っていたのですが、
長くなりそうだったので今回は真宮兄妹のお話。
少し眠い状態で書き続けてたので文章おかしいところがある可能性が・・・気がついた箇所があれば後から手直しするかもです。

続きを表示

2012-10-26 03:46:04 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:836   閲覧ユーザー数:810

[リアルワールド:side 三谷 星也]

 

「あれ、三谷さんじゃないか」

休憩室で新聞を広げつつコーヒーをすすっているとがちゃりとドアの開く音。

視線をやればそこにいたのは、デジナミワールドオンラインの総責任者、真宮創佑だ。

湯気の立つプラスチックのコーヒーカップと赤いクロスローダー型デジヴァイスを

片手に佇んでいる。

その二つを持ったままドアを開けたのかと思うとどうでもいい所でこの男は器用なのだなと感心してしまう。

「真宮君か」

「おう。…ってか、ハロウィン実装はもう終わったのか?開発室からゾンビの呻き声みたいなのが聞こえるが…」

「実装工程はもう終了してる。が、ちょっとしたバグがあってな…」

「ダメじゃねぇかそれ。三谷さんPGの知識俺らよりあるんだから手伝ってやれよ…」

ジト目で言ってコーヒーを一口。

「断る」

結論からばっさりと言い捨てると、創佑の顔が「即答!?」と告げていた。

目は口程に物を言うと言うがこの男の場合は顔全体が大体物を言っている事が多い。

まあ今回この表情をさせたのはもちろん自分の言葉足らずのせいではあるが。

「相変わらず芸人みたいだね君は」

「芸人みたいって何!?」

表情とリアクションが芸人だ。と言いたかったが、飲み込んだコーヒーと一緒に喉の奥に流れてしまった。

「手伝う必要はないだろう。バグを出してるのが神代君が出した案の部分だし」

「あー…そういう事か」

前回、ハロウィンイベント用の仮装はある何人かのユーザーを除いてランダム配布だったが、

今回はブティック方式に変更となっている。ユーザーから自分で選びたいと言う声が上がったから

ではあるが、実際のブティック案を出したのは神代暁良である。

確かに企画の立案を行い、リサーチにリサーチを重ねてアパレル業界へのアプローチとタイアップを勝ち取った情熱は

賞賛に値するだろうし、今回タイアップしたブランドをスポンサーに取り込むんだのは彼の功績だ。

「ブティック部分にスポンサーから直前に注文があって、変更したらバグが出た。まあよくある話だろう」

他の部分に関しては全てデバッグは終了している。自分が手を出す事は容易いが、自分で持ち出した案の

部分だ。最後まで己自身で何とかすべきだろう。

「終わりそうなのか?」

「……」

何も答えず、新聞をめくる。

「まあそうだな。三谷さんが今ここにいるって事はきっちり終わりそうだって事だよな」

自分の行動を見てか、勝手に納得する創佑。

間違った解答ではないので否定は返さなかったが。

「何故そう思うんだい?」

その答えを導き出した胸中を知りたくなって、思わず言葉を紡いだ。

「え?あいや…三谷さんって見た目より冷たい人じゃないだろ?本当にヤバい状況なら

ちゃんとサポートするってイメージがあるからさ」

事実、俺は何度もそれを見てるし。と、付け加えて肩を竦める。

「へえ、見た目は冷たく見えるのかい?」

「い、いやいやいや!なんて言うか、その、そう!クール!クールに見えるんだよ!」

「ふーん…」

「やめて!そんな怖い目で見ないで!他意は、他意はないから!!ホントないからいやマジで!!」

両腕で一生懸命顔を隠している総責任者殿を見ながらつくづくよく仕事仲間を見ているのだなと

胸中でごちる。全く持って有能なのか無能なのか判断を付け難い。

白黒どちらの判断も出来ないこの男にちょっともやっとした感情が浮かんだのでどうしてやろうかと

思っていると休憩室のドアが再びバタン!と大きな音を立てて開いた。

「お、終わった……長い戦いだっ…」

「え…ちょ、ちょっと待って!!暁良?!暁良!?大丈夫かおい!!え、衛生兵!!衛生兵!!」

「落ち着け真宮君。疲れただけだと思うから大丈夫だよ。仮眠室に運ぶよ」

「わ、分かった!」

倒れ伏した神代暁良の上半身をぐっと持ち上げると、真宮が足を持ち上げる。

そしてそのまま仮眠室へと貨物を運搬するかのように運んでいったのだった。

――無論、廊下ですれ違う人に奇異の目で見られながら。

 

 

[デジナミワールド:side ハウンド]

 

ハロウィンイベント実装メンテナンス終了したその日の夜。

早速クレセントゾーンにあるハロウィンタウンに行こうとハウンドはデジナミワールドへログインをする。

秋めくクレセントゾーンは鮮やかな紅葉と共にハロウィンの雰囲気もまとっており、

少々ミステリアスな空気が流れていた。

「よっと…」

「はーーーちゃーーーん!」

 

ばふっ

 

降り立つや否や視界が真っ黒に染まりあがる。

「はーちゃん!おかえり!おかえり!ハナいい子にしてたよ!」

「…分かったから顔から離れてお願い」

がっちりとハウンドの頭を抱きしめて甘えてくるマーヤモンことパートナーのハナ。

無邪気で悪気がないのはもちろん知っているがさすがに顔面に抱きつかれるとさすがに息苦しい…

と思う。画面向こうの出来事なので実際苦しい訳ではないのだが。

べりっとハナを剥がずと、「息がくすぐったーい」と無邪気に笑いながら体を捩っていた。

「さ、それじゃあハロウィンタウンに向かいましょうか。とりあえず仮装衣装を選ばないと」

期間限定ダンジョンやフィールドに入る為には仮装が必須条件となる。

今年はどう言う服が用意されているかはわからないが、当たり障りのない衣装を選ぼうと決意を固めたのだった。

 

ハロウィンタウンの仮装用ブティックに着いたのはいいが、問題が浮上した。

「あれ……あの人」

「どうしたの?はーちゃん」

「ん……」

ブティックの中に立つこげ茶色の髪の背の高い人影。ハウンドにはどこかで見覚えがあった。

考え込み、ややあってからふっと顔を上げてぽん、と手を打った。

「思い出したわ。兄さんの職場の人よ」

「はーちゃん、あのお兄ちゃんと会った事あるの?」

「ええ…」

目を瞑り、今一度しっかりと記憶を呼び覚ます。

「飲み過ぎた兄さんを送ってきてくれたのよ」

「飲み過ぎた?」

オウム返しに呟いて小首を傾げるハナ。

愛らしい仕草にはぐっと来たが、肝心の問いは説明するつもりはない。

長くなる事が目に見えてるからだ。

「えっと…セイヤさんね」

兄の職場の人の名前を確認し、さてこれからどうしようと考え込む。

苦手とかそう言う訳ではないが、さすがに顔を見知った相手に仮装を選んでいる姿を見られるのは恥ずかしい。

無論、相手は兄と同じGMである事は予測がついているので見ようと思えば自分の選んだ服等は

簡単に見れるだろう。それは理解しているし、しょうがないと思っている。

しかし、目の前で選んでいる姿を見られ、ダイレクトに感想を返されるのはさすがに耐え難い。

それが例え無言でも、何となく空気で読み取れる。

「さすがに…選んでる所は見られたくないのわね…どうしよう」

「はーちゃん見られたくないの?」

顔を覗き込むように呟くハナ。

「え?ええ・・・さすがに恥ずかしいわ」

「そっか…なら、ハナが服を選んで持ってきてあげる!!」

「えっ」

思いもよらない提案に頷いてしまったハウンドだが、後々考えてみれば時間をずらせばよかったのだ、と

後悔するハメになるとはこの時は考えてすらいなかった。

 

「はーちゃんこれどう?」

 

「これ可愛いの!」

 

「大人っぽいのー」

 

「…ハナ!あの、あのね…!もうちょっと…!」

三回目で見せられた衣装に思わず赤面する。

持ってきた衣装は露出度満点なウェヌスモンの衣装だ。

さすがにこれは着れない。そこまで勇気はないし羞恥心が打ち勝つ。

「でもはーちゃんスタイルいいから似合うと思うの」

「む、ムリムリムリムリ!!こんなのムリ!恥ずかし過ぎて顔から火が出るわよ!」

「はーちゃん顔から火が出せるの!?」

「そう言う事じゃなくって…!さすがにこれはムリよ!別の服を選んできて!」

「むー…いいと思ったのにー」

むくれながらまた別の服を選びに戻るハナ。

当のハナは既に魔法使いの格好を決めているようで、仮装済みである。

「全く・・・しかしあの格好をする人なんているのかしら…」

「あの格好ってどの格好だい?」

「それはもちろ…えっ!?」

腕を組んで溜息を吐いている所に後ろから声が掛かり、振り返ってみればこげ茶の髪の背の高い青年の姿。

隣にはピコデビモンがぼーっとしたままの表情で浮かんでいる。

「やあ、どうも。真宮君の妹さんだよね?…えっと」

「ハウンドです…あ、兄がお世話になっております…」

にこやかに微笑みながら手を振るセイヤに笑顔で答える。が、顔は引きつっているだろう、と

手に取るように分かった。

「こちらこそ、真宮君には色々とお世話になっているよ」

さっきのやり取りの時に大きな声を出しすぎたのか、とぼんやりと思う。

どうしよう、これなら後で服を見に来ればよかった。もっと冷静な判断をするべきだったと

思っても後の祭りである。

「で、さっきのあの格好ってハロウィンの仮装の事かい?」

「あー!えっと、その…!」

どうしよう、どうしようと頭の中で色んな考えが駆け巡るがテンパり過ぎている為か案の形を成さない。

日頃は冷静で、バトルの最中の判断力も申し分ないのにこう言った不測の事態には滅法弱いのが

ハウンドと言う人間であった。

「はーちゃん!次の服選んでき…」

目の前がぐるぐると回り始めたその時に、無邪気なパートナーの姿。

「あ、あ!やっと戻ってきたのね!ハナ!」

とりあえずこの場をエスケープしたいとそんな考えばかりが頭を巡り、服を抱えたハナをがばっと抱え込む。

「あの、あの!セイヤさん!ご、ごめんなさい!友達から連絡が来たから行かなきゃ・・・!

これからも頼りないですけど兄を宜しくお願いします…!そ、それじゃ!」

持ってきた服を見る事もなく、そのままダッシュで走り去って行く。

どこに向かって走るなど考えは一切なく、何も考えず突っ走って、ある程度の所で止まる。

そしてふと気がつく。ハナがどんな服を持ってきたのか見ていなかった事に。

「あ、ハナ…貴方、次どんな服を持ってきたの…?」

「ぷはー苦しかった」

ハウンドの腕からようやっと開放されたハナは大きく息を吸って呼吸を整える。

そして、満面の笑顔で服を差し出した。

「ウィッチモンの服だよ!魔法使いだからハナとお揃いだね!」

「ウィッチモンか…まあ…いいか…」

嘆息を一つ。そして服を受け取るとデジヴァイスにハロウィンコスチュームの登録をして、着替えた。

「はーちゃん似合うー!」

「悪くはないわね。それじゃ、ハロウィンイベントを堪能しましょうか」

「お菓子食べたーい!」

仮装しているユーザーで溢れ返っているハロウィンタウンに、二人は溶け込んで行った。

 

「イナクナッタ」

「そうだね。…しかし、まぁ…騒がしい所は真宮君にそっくりだ」

クツクツと笑い声を漏らし、二人もまた、ハロウィンタウンに消えていった。

 

 

 

 

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 10月×日 シャウトモン

 

オイラがデジナミワールドでのんびりしてた間、兄貴達は大変だったみたいっスね~

ハロウィンイベント実装でバグのトラブルがあったとか。

しかし、バグが残ってるのに処理を手伝わないなんて、三谷は職務怠慢じゃないスか!?

って兄貴に言ってみたらそうでもないみたいっス。

どうやらある程度までは手伝ってて目処が立ったから休憩してたみたいっスね~

うーん、オイラには三谷の考えてる事はよくわからないっス。

そういえば、イベント実装メンテ終了後に倒れた神代は、仮眠室で休憩を取ったら

復活したみたいっス。

大事にならなくてよかったっス!

 

 

 10月×日 ハナ

 

今日からハロウィンイベントだよ!

だからイベントで遊ぶためにハナとはーちゃんでお洋服選びに行ったんだけど、

そこにくーちゃんのお仕事場で一緒の人がいて、はーちゃん凄く

恥ずかしがっちゃったんだよ!

だからばれないようにハナが洋服選びに行ったんだけど

選んでたのばれちゃったみたい・・・なんでだろ?

あ、お洋服はウィッチモンのお洋服にしたよ!ハナも魔法使いでお揃い!

いいでしょー!

 

 

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