No.498708

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

乱入者、激突

2012-10-21 17:13:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:905   閲覧ユーザー数:858

時間はほんの少しだけ巻き戻り、第一アリーナ。

 

「たああああっ!」

 

「………!」

 

ここでも、激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

鈴の駆る甲龍の双天牙月が梢の駆るフォルヴァニスのソードと激突する。

 

「この前のは途中で中断されたけど、今度は!」

 

そこで鈴は牙月をバトンのように回して梢のソードを弾き、衝撃砲の砲口を開いた。

 

「ちゃんと勝たせてもらうわよ?」

 

 

ドンッ!!

 

 

「…ッ」

 

衝撃砲の直撃を受けて吹き飛ぶ梢。

 

「一夏っ!」

 

「了解!」

 

そこに一夏が追い打ちをかけんと雪片弐型を振り上げた。

 

「だああっ!」

 

 

ガギンッ!

 

 

しかし、その攻撃は梢には届かず、弾かれた。

 

「やらせません!」

 

「蘭か!」

 

一夏の前にフォルニアスを展開した蘭が立ちはだかり、リフレクト・ウォールが発動したのだ。

 

「梢ちゃん!」

 

「…うん」

 

フォルニアスの肩越しにレールガンの砲口が覗き、一夏は回避の姿勢を取った。

 

「チッ!」

 

「…甘い……!」

 

一夏の避けた先では梢はレーザーガンの引き金を指にかけていた。

 

「しま――――!」

 

回避が間に合わず、白式の装甲をレーザーが叩いた。

 

「…もう一撃」

 

逆に一夏を追い詰めた梢は右手の電撃掌、ボルテック・フィストを起動して一夏に迫った。

 

そこに鈴が投擲した牙月がブーメランのように回転しながら飛来した。

 

「危ないっ!」

 

いちはやく察知した蘭はフォルニアスに積まれたミサイルを発射して牙月を止めた。

 

「一夏、大丈夫!?」

 

牙月を回収し、鈴はそのまま一夏とともに梢たちと距離をとる。

 

「ああ! まだまだいける!」

 

一夏は頷いてから並んで立つ蘭と梢を見やった。

 

「それにしても、厄介だな」

 

これまでの戦闘を思い起こし、鈴はつぶやく。

 

「蘭があの戸宮って子の近くにいると攻撃が弾かれる・・・・・」

 

「って、ことは…」

 

一夏はそこまで言って、目だけを動かして鈴の顔を見る。鈴はそれに応えるように小さく笑った。

 

「…単純すぎるけど、そうするしかないわね!」

 

鈴は一気に加速をかけて飛び出し、蘭に迫った。

 

この時、リフレクト・ウォールの条件を一夏と鈴は把握していなかったが、蘭と梢が近くにいると攻撃が通用しなくなるとはなんとなく理解していた。

 

「蘭! アンタの相手はアタシよ! 覚悟しなさい!」

 

「きゃあ!」

 

蘭に体当たりをかけて梢と無理矢理距離を離させる。

 

「……………」

 

梢もそれを追いかけようとするが、後ろからのロックオン警報によって動きを止めた。

 

「悪いけど、戸宮ちゃんの相手は俺だ」

 

振り返ると第二形態雪羅を発動し、追加武装の《雪羅》を構えた一夏が立っていた。

 

「…分かった」

 

梢は無言のまま右手のソードを構えた。

 

「行くぞっ!」

 

梢は雪羅からの高出力レーザーを縦回転飛行で躱し、一夏に接近する。

 

「はああっ!」

 

雪片弐型から発せられるエネルギー刃が眼前に迫った。

 

「………」

 

梢は腕に意識を集中させ、肘部分のブースターによるさらなる加速でそれを躱す。そして左手に構えたレーザーガンを一夏に向けた。

 

バババッ!

 

連射されたレーザーは確実に雪羅のエネルギーを削っていく。

 

「やるな! けど!」

 

一夏はその攻撃に怯むことなく踏み込み、横なぎに雪片弐型を振るった。

 

「であああっ!」

 

 

ドガァン!!

 

 

直撃はなんとか避けたが、斬撃の凄まじい威力に耐えきれず、梢は大きく吹き飛ばされた。

 

「……………」

 

体勢を立て直したところで、横に何かが飛来した。蘭だった。

 

「うぅ…」

 

装甲はボロボロで、見れば鈴が勝ち誇ったように双天牙月を肩に担いでいた。

 

「鈴、やり過ぎだぞ」

 

流石に可哀想に思った一夏はプライベート・チャンネルで鈴に回線を開いた。

 

『なによ、それに蘭のやつ結構頑張って応戦してきたんだから』

 

鈴は唇を尖らせながら一夏の隣に立つ。

 

「…梢ちゃん、結構ヤバいかも……」

 

「……………」

 

梢の手を借りて起き上がった蘭は、苦々しい表情でささやいた。

 

そこで、フォルヴァニスに通信が入った。

 

『梢、苦戦しているようだな』

 

通信相手の顔は映らないが、声は梢に指示を出していた男の声であった。

 

「……………」

 

『これより、計画を実行する。アクセスしろ』

 

(…来た。この時が……)

 

梢は覚悟を決め、フォルニアスの肩に手を置いた。

 

「……蘭」

 

「? どうしたの?」

 

涙を溜めた瞳を蘭を向ける。

 

「…ごめんね……」

 

「え―――――」

 

 

カッッッ!!

 

 

フォルヴァニスのヘッドギアから水色の光が溢れた。それに呼応するように、フォルニアスの装甲が赤色に輝きだした。

 

「な、なんだ!?」

 

一夏は目の前で起きた現象を理解できず思わず言葉を漏らす。

 

「あの光は…!」

 

鈴は蘭と梢を包みこむ輝きに嫌な見覚えがあった。

 

(まさか…でも、そんなことって!)

 

光が収縮する。はじめに中から出てきたのは、紅い機体色のフォルニアスだった。しかし、様子がおかしい。

 

「蘭、だよな…?」

 

一夏と鈴の前に立つフォルニアスは彫刻のような人型のフェイスマスクで顔を隠し、赤い光が滲み出ていた。

 

しかし、もっとも目を引くのはその全身にフォルヴァニスの武装を装備している部分であった。

 

「……………」

 

隣に立つ梢の身は最低限の装甲だけに包まれ、頭部には水色の光を明滅させるヘッドギアを着けただけだった。

 

「合体した…?」

 

「あ、アンタ! 蘭になにしたの!」

 

鈴は梢を指差し、叫ぶように問いかけた。

 

鈴の問いに、梢は涙を流しながら答えた。

 

「…これが、フォルニアスの本当の姿……」

 

「本当の…」

 

「姿ですって……?」

 

そこで、フォルニアスが動いた。超高速で鈴に接近し、フォルヴァニスの武装であるボルテック・フィストを叩き込む。

 

「あああっ!!」

 

吹き飛ばされた鈴は壁に激突する。

 

「鈴っ!」

 

援護しようとした一夏に振り返り、レーザーガンの砲口を向けた。

 

 

ドガァッ!

 

 

「ぐああっ!」

 

数段跳ね上がった威力のレーザーが一夏に直撃した。

 

「く…戸宮ちゃん! 蘭に本当に何をしたんだ!?」

 

一夏の問いに、梢は諦めたような笑みを浮かべて答える。

 

「……《フォルヴァ・フォルニアス》」

 

「え?」

 

「…フォルヴァニスは……フォルヴァ・フォルニアスの攻撃用武装を集めたIS。フォルニアスは……フォルヴァ・フォルニアスの防御用武装を集めたIS…」

 

「なあ頼む! 分かるように言ってくれ!」

 

「…フォルヴァニスとフォルニアスは…二つで一つ」

 

そして梢はへたりこんだ。

 

「…もう…止まらない……蘭は…!」

 

そこで一夏に通信が入った。

 

「楯無さん? どうしたんです? 今こっち――――」

 

『一夏くん! 気を付けて! そっちに―――――!』

 

「!?」

 

楯無の言葉の直後、一夏は嫌な予感を感じて、梢を抱きかかえてその場から瞬時加速で離脱した。

 

 

ドガァァァァン!!

 

 

刹那、何かが一夏のいた地点に落ちてきた。

 

「な…!」

 

一夏は戦慄した。立ち込める土煙の中から出てきたのは・・・

 

「セフィロト…! 瑛斗か!?」

 

漆黒の装甲に身を包み、内側から青い色の光を放つ、セフィロトを身に纏った瑛斗であった。

 

 

「グオオオオアアアアアアアアァァァァァァッッ!!」

 

 

瑛斗の咆哮が、大気を震撼させた。

 

『緊急事態発生! 生徒はその場を動かないように!』

 

緊迫したアナウンスが鳴り響く。それに煽られるように観客席から悲鳴が上がる。

 

「………」

 

フォルヴァ・フォルニアスを身に纏う蘭は、瑛斗の前に立った。

 

「ガアアァッ!」

 

クローアームを構えた瑛斗は、蘭に突進する。

 

 

ドッッッ!!!

 

 

激突する二人の周囲に、衝撃波が起こった。

 

「…な、なに…あれ……」

 

ぶつかり合う二機のISを見ながら梢はつぶやく。

 

「やっぱり…!」

 

一夏の横にミステリアス・レイディを展開した楯無が降り立った。

 

「楯無さん! どうして瑛斗は暴走してるんですか!」

 

「いい、一夏くん、よく聞いて。フォルヴァニスとフォルニアスにはサイコフレームが組み込まれてるの」

 

「そんな…」

 

一夏は梢を見るが、梢は気まずそうに目を伏せた。

 

「サイコフレームが、別のサイコフレームと反応する場合があるのは瑛斗くんから聞いてるわよね」

 

「はい…でもなんでさっきから瑛斗は蘭とだけ戦ってるんですか?」

 

「確かなことは分からないけど…私たちのやることはただ一つよ」

 

「あのバカ二人を止めるのよね?」

 

鈴が一夏たちのもとへ戻ってきた。

 

「鈴、平気か?」

 

「アレくらいどうってことないわ」

 

「…どうやって、止めるの……」

 

震える声に一同は梢の方を見る。

 

「…フォルニアスが完全体になったら…もう止まらない……!」

 

「どういうことなの?」

 

「…プログラムが組み込まれてる…《コード・ベルセルク》が」

 

「ベルセルク?」

 

「…敵対勢力を殲滅するための無差別攻撃プログラム…マーシャル社が極秘で作り上げた……完全撃滅システム…!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

そこで鈴が梢の言葉を遮った。

 

「それじゃあなによ? 蘭はそれを分かっててああなってるっていうの!?」

 

梢は首を横に振った。

 

「…蘭は、何も知らない…今の蘭には多分、意識は…ない」

 

「そんな…!」

 

「とにかく、まずはあの二人を止めてから。話はその後じっくり聞かせてもらうわ」

 

『お姉ちゃん!』

 

楯無に通信が入った。簪からである。

 

『瑛斗はいまどこに…!?』

 

「いま目の前にいるわよ、結構ヤバい状況よ」

 

『我々もすぐに到着します』

 

ラウラとシャルロットも通信画面に顔が映し出され、その言葉通りすぐに一夏たちのもとへ降り立った。

 

 

ドガァンッ!

 

 

「一夏!」

 

「一夏さん!」

 

「お兄ちゃん!」

 

防護壁の一部を破壊して箒、セシリア、マドカがISを展開してアリーナに飛び込んできた。

 

「瑛斗…」

 

シャルロットが激突を続ける瑛斗を見てつぶやく。

 

「先生たちが来るまで持ちこたえる。そうすれば―――――」

 

「残念だけど、それは望めそうにないわ」

 

ラウラの考えは楯無によって否定される。

 

「どうして……?」

 

「本音から通信が入ったの。システムにハッキングがかけられてるわ。先生たちが待機してる場所からの緊急経路が遮断されてるらしいの」

 

そんな…という簪のあと、梢がつぶやいた。

 

「…最低でもニ十分は足止めされる…」

 

「これもアンタがやったの!?」

 

鈴が食って掛かるが、

 

「……………」

 

梢は俯き、黙ったまま答えない。

 

 

ドゴォォン!!

 

 

前方で轟音が鳴り響いた。

 

「グアアァァッ!!」

 

土煙から飛び出した瑛斗は再び蘭とクローアームとブレードを激突させる。

 

「とにかく今はあの二人を止めるのが優先されるわ。一撃必殺の攻撃ができるのは一夏くんよ。とどめはお願いね」

 

「はい!」

 

楯無の言葉に一夏は頷く。

 

「それと…梢ちゃん、あなたはここにいて。逃げようとしても無駄なのは、あなたが一番分かってるだろうけど」

 

「……………」

 

梢は頷きもせず、ただ俯くだけである。

 

「行くわよ! 被害を最小限に抑えるの!」

 

一同は激闘を繰り広げる瑛斗と蘭の周りに散り始める。

 

「……………」

 

ただ一人梢だけは、その場を動くことができなかった。

 

 

前回同様、瑛斗が暴走中のためラジオISGはお休みです。

 

しかし、この騒動が一段落したらラジオISGスペシャルをやる予定ですので、ガンガン質問送ってくださいね。


 
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