No.497834

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

最悪の『万が一』

2012-10-19 16:33:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:883   閲覧ユーザー数:850

「うおおおっ!」

 

 

ガキンッ!

 

 

ブレードとブレードがぶつかり合って火花が散る。

 

今俺が相手をしているのは整備科の人の誰でもない…

 

「いい踏み込み! 流石ね! でも!」

 

 

ダダダダッ!

 

 

「くっ…!」

 

楯無さんだった。楯無さんはマシンガンから弾丸を連射して俺の動きを止めて距離を取る。

 

「おねーさんには通用しないぞ?」

 

小首を傾げてくる楯無さんに俺は口を尖らせる。

 

「まったく、なんなんですかそのISは。ラファール・リバイヴの改造機かと思ったら打鉄のブレードまで装備していて、おまけにラファール以上に速いし装甲が堅い」

 

「ええ。薫子ちゃんたちが改造したんだもの。凄いに決まってるわ。ラファール・リバイヴに打鉄の武装を追加して装甲強度を高めた、その名も《スーパー・ラファール》!」

 

「スーパー…ラファール……?」

 

ネーミングセンスについては触れないでおくことにする。

 

(ラファール・リバイヴと打鉄のいいとこどりってわけか。速いし堅い…おまけに訓練機がベースだからクセが全くない。それにBRFが意味ないし、なにより…)

 

試合が始まって少し経つ。大体の向こうの機体特徴は把握したつもりだけど……

 

「使ってる人が強烈すぎるっつーの…」

 

独り言を呟き、ビームカノンをコール。ロックオン対象はもちろんスーパー・ラファールだ。

 

「あら、今度は遠距離戦?」

 

楯無さんは浮遊するシールドアーマーを前に展開して防御の体勢をとる。

 

「いけっ!」

 

トリガーを引くと砲口から深い赤色の高出力ビームが飛び出した。

 

 

バリバリバリバリ!

 

 

シールドアーマーに激突したビームは激しいスパーク音を轟かせながら四方八方に散らばる。

 

(やっぱり通らないか……だったら!)

 

ビームカノンの砲口を少しだけ下げて地面に当てる。

 

「むむ?」

 

楯無さんの周りに土煙が立ち込めた。

 

俺はその土煙の中に飛び込み、楯無さんの背後を取った。

 

(食らえ!)

 

ブレードを振り下ろすと、手応えがあった。

 

「…ざんねんでした。ハズレよ」

 

「!?」

 

直後、背中に連続した衝撃が走った。アサルトライフルによる銃撃だ。

 

「ぐあっ!」

 

よろけたところに追い打ちの斬撃が来た。直撃を食らった俺は数メートル吹っ飛んで地面に転がる。

 

「狙いは良かったけど、そんな手に引っかかるほど私も弱くないのよね」

 

言いながら楯無さんは土煙が晴れた地面に突き刺さった打鉄のブレードを抜いた。

 

(やられた…! 俺がさっき攻撃したのはアレか!)

 

ギリ、と奥歯を噛み締めて立ち上がる。

 

(エネルギーはまだ大丈夫…だけど流石にこっちが不利だぜ……!)

 

せめてこのクローアームが使えればまだ可能性はあるけど、そんな都合よく動いてくれるわけがない。

 

「さてと、そろそろフィニッシュと行きましょうか」

 

言うと、スーパー・ラファールの腰の装甲がガチャガチャと動いて二本のサブアームが姿を現した。

 

二本のアームはそれぞれ打鉄のブレードを握り、楯無さんは自分の両手にマシンガンとアサルトライフルを構える。

 

「本気ってわけですか……」

 

「まあね」

 

クス、と笑った楯無さんは、次の瞬間には目の前に迫っていた。

 

「……ッ!」

 

咄嗟にガードをする。

 

「遅い!」

 

 

ダダダダッ! ガキンッ! ズバッ!

 

 

「うっ…うああっ!」

 

しかし弾丸と斬撃が同時に襲い掛かり、セフィロトのエネルギーが急速に減っていく。

 

(ここまでか…!)

 

覚悟を決める。そこで変化が起きた。

 

装甲の継ぎ目から、青い光が漏れている。

 

『……誰ダ…』

 

ふと声が聞こえた。頭に直接響くような、そんな声が。

 

『我ヲ呼ブノハ…誰ダ』

 

今度ははっきり聞こえた。けど、声がはっきりしていく度に、意識が遠のいてく。

 

『我ヲ呼ブノハ……誰ダ!!』

 

さっきから声はどんどん大きくなる一方だ。

 

 

―――――エネルギーパーセンテージ問題無し―――――――

 

―――――操縦者身体状態、良好――――――

 

―――――全システム稼働確認――――――

 

 

ウインドウに様々な情報が流れていく。そこで俺はハッとした。

 

(マズい、これは――――!)

 

 

―――――サイコフレーム、起動――――――

 

 

そこで俺の視界は真っ黒に塗り潰された。

 

 

「ついに起きたわね…『万が一』が……!」

 

楯無は、自分の頬を汗が伝うのを感じた。

 

彼女の目の前には、青い光を鼓動のように明滅させているセフィロトを身にまとった瑛斗がいる。しかしその顔はフェイスマスクに覆われ、表情は分からない。

 

「グゥゥゥ…」

 

セフィロトの両手のクリアブルーのパーツが、瑛斗の手を覆いかぶさるように包む。それと同時に背中の突起が飛び出し、クローアームに姿を変えた。

 

 

「ガアアアアアアッ!!!!」

 

 

発せられたその咆哮は、衝撃波となってアリーナ全体と楯無を襲った。

 

ビリビリと伝わる衝撃を楯無は何とか堪え、瑛斗から距離を取る。

 

(今度はこっちが不利ね…)

 

楯無はスーパー・ラファールから降り、その瞬間に専用機のミステリアス・レイディを再展開した。

 

「ダメ元だけど…瑛斗くん! 私が分かる!?」

 

呼びかけるが、返事はない。

 

「ガアァッ!」

 

その代りに右手のクローアームから五本のクローが射出された。

 

「うわっと!」

 

回避すると、瑛斗は高速でこちらに突進してきた。

 

「やっぱり、サイコフレームに呑まれてるのね!」

 

ランスを構え、仕込みガトリングから弾丸を飛ばす。しかしそれは簡単に躱され、一気に目の前まで距離を詰められた。

 

「ヤバ―――――」

 

攻撃が来ると直感したが、攻撃は来なかった。

 

「グオオォォッ!!」

 

「え!?」

 

瑛斗は楯無を素通りし、大きく飛躍してアリーナから飛び出していったのだ。

 

「一体どう――――――」

 

そこで楯無の脳内に今考えられる最悪のケースが浮かんだ。

 

(まさか…! 瑛斗くんの……セフィロトの狙いは!)

 

「マズイことになったわよ…!」

 

楯無も上空に舞い上がり、急いで瑛斗の後を追った。

 

「え…? なに? なんなの?」

 

「急に二人ともどこか行っちゃったけど……」

 

「なんだか、ヤバそうじゃない?」

 

シン、と静まり返った第三アリーナに取り残されたIS学園生徒たちは囁き合うように話し合う。

 

『第三アリーナにいる生徒全員に通知します。これから指示があるまで、絶対にここから出ないでください。繰り返します。第三アリーナにいる生徒は絶対にここから出ないでください』

 

IS学園の教職員のアナウンスが響く。

 

ざわざわとにわかに騒がしくなる観客席の生徒たち。

 

しかし、シャルロット、ラウラ、簪が座っていた座席に彼女たちの姿はなかった。

 

 

作者より

 

瑛斗が暴走という不足の事態のため、今回のラジオISGはお休みとさせていただきます。

 

ですが質問等は絶賛受付中でございますので、これからも、瑛斗たちに答えて欲しい質問をどんどんお送りください!


 
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