No.496553

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

ふう……どうも皆さん、作者の菊一です。一ヶ月と十日間ほどおまたせしましたがなんとか続けていけてます^^;
まあこのまま行くと臨海学校の福音事件はいつあがるんだよ、って話ですがね^^;(少なくともメインヒロイン全員登場の話は今年中には終わらせたいですね^^;願望ですがw

さて、10月に入りいきなり寒くなって参りました、読者の皆さんも風邪とかを引かないように気をつけて!
ではどうぞ~

2012-10-15 19:57:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1423   閲覧ユーザー数:1342

 

外伝・第二話 金髪の少女と白髪の少年

フランスの大都市の郊外のとある病院の集中治療室、そこには日本人の少年が体の半分以上を包帯で包まれた状態で横たわっていた。

白髪だがとても長いその髪はベッドの四方に広げられベッドから垂れており、本来腕に刺すであろう点滴の針はシーツの中に続いており、どこに刺してあるのかうかがうことは不可能だ。それ以外にも様々な機器から伸びたコードがシーツの中に繋がっており、おそらくシーツをめくるとそこにはコードに覆われた少年の姿があるだろう。

それが現在、この集中治療室に寝ている少年、一ノ瀬秋葉の現状である。

 

六月半ば。俺は今冬姉の押す車椅子に腰掛けながら辺りの風景を見渡す。

「……気分がいいですね」

「そうだな。ここが病院で、お前が重病人ということがなければ、だがな」

そう。とてもいい天気で気温も高すぎず低すぎず……しかし背後には白くて高い建物――病院がそびえ立ち、俺の体は入院患者が着る服を着ている。しかしその両腕の袖口からは手はおろか腕さえも出ていかなかった。そう、この病院になぜ俺がいるかというと数か月前に冬姉が出場していた第二回モンド・グロッソの大会当日に俺が重傷を負ったからである。

俺が重傷を負ったのは、ある事件に介入し俺の油断が招いた結果だった。そしてそれには夏も関わっており、冬姉はそんな俺たち二人を心配して決勝戦を放り出してISを纏ったまま駆けつけてくれた。結果、俺はすぐさまドイツの病院に、夏は保護され無事に日本へと帰国した。夏は俺の状況も知らないし、長年夢見てた実の姉の晴れ舞台を見るどころかそれ自体を自分の手で潰してしまったという自責の念に囚われ数週間学校を休んだらしいが冬姉の励まし――どちらかというと愛のムチ的な方だが――により見事復帰した。

俺はというと、なんでもドイツでは生命維持装置の予備が無いらしく、更に危険な状態であるらしく、俺をすぐさまフランスへ移送したらしい。しかし実際にはそんな事はなく、生命維持装置の予備は当然の様にあった。しかし政界のトップに名を連ねる要人の一人が病に侵されており、いつ倒れても使えるようにストックしてあったらしい。しかもそれを交換条件に大量の金が医者たちの元に行く手はずになっていた。しかも危険な状態であるにも拘らずフランスへと移送したのは要約すれば『うちの国で起きた事件だがどこの組織が起こして、その事件に他国の者が無断に介入しただけなのに、その尻拭いをこっちに押し付けるな!……あ、でももちろん情報提供の代償はキッチリもらいますから』という事らしい。結果俺という面倒事の種はフランスへ、冬姉に事件を伝えた代償として冬姉に強引に一年間の郡での教官の強要。もちろん断れるはずもなく済し崩し的に引き受けることとなった。

この事を知ったのはフランスで俺が目を覚ましてから数日の事だった。そしてなんでもドイツの政界の要人は俺が運び込まれる数時間前に病の完治が確認され、その記者会見中だったのだという。さらに調べればそのもっと前に生命維持装置を貸してもらえず死んだドイツ国民の幼い子供が一人いたらしく、結果は装置があれば助かった命だったのに見す見す見殺しにしたということだった。

この事から俺はフランスには感謝を多少は感じているが、ドイツには憤怒と過去に類を見ない嫌悪感を抱いていた。

第一ドイツがしたことは大きなお世話、というものである。ドイツより先に夏がさらわれ、監禁されている場所を発見した俺は敢えて冬姉に伝えなかった。大会の決勝戦に集中してもらうためだ。しかしドイツはそんな事などつゆ知らず、態々夏の監禁場所を教えてしまった。そもそも少し考えればおかしいことは明白だ。ドイツはこの情報を教えて何のメリットがあるのか?ドイツはどうやってその情報を得たのか?夏をさらった組織はどうやって大会を見に来てた夏を簡単にさらえたのか?その他もろもろをまとめて考えるとドイツの中にその組織の人間、あるいは絡んでいる人間がいるのだ。そして最悪のパターンはドイツのトップに値する人物数人がその組織に関係している人間、というパターンだ。

……しかし、まあいい。その内ドイツに問い詰める機会があるだろう。いつまでもそんな裏工作が続くと思うなよ?こちとら世界の大天災……もとい大天才と肩を並べるほどの人間なんだからな……その気になればドイツという国を地図の上から消すことすらできるんだぞ……

そんな事を車椅子に腰掛けながら思い出していると道の反対側から駆けてくる特徴的なフリルのドレスにうさ耳を付けた女性が……

「ちーーーーーちゃーーーーーっん!!!」

敢えて俺の心配ではなく冬姉の名前を呼ぶところがこの人――束さんらしいと言えばらしい。曰く『しゅうくんはほぼ無敵に近いし、なんといっても私のラブラブパワーから作られるセンサーが君の状態を逐一こまっかく知らせてくれるから大丈夫なのだよ!』らしい。

実際束さんのスキンシップは冬姉よりか俺に向けてはすごい激しい時があり、束さんにしてみれば俺をもはや異性としてしか見ていないようなのだが、冬姉のスキンシップが終わった後、重体の俺にも同じように強く抱きしめるものだから逆に殺されそうで怖い。愛しさ余って憎さ百倍、ってか?……違うか。

そんなスキンシップが終わった後、俺と冬姉と束さんは再び歩き出した。先日やっと集中治療室から出られて、昨日の夜の検診の時に「まあ昼間、あまり激しくないぐらい……病院の敷地内を散歩するぐらいなら問題ないでしょう」と担当医の先生と看護婦さんに言われたため今日は久々の外出というわけなのだ。しかし面白いもので昔この世界での両親を失った交通事故の怪我も、剣術で真剣で誤って自身に出血多量の大怪我をした時も、今回の事件も、結果的に死んでもおかしくないというのに俺は生きている。しかもすさまじい回復力というオマケつきで。たぶん神様が生き返らせてくれた時にそういう特典を付けてくれたんだろうけどな……しかしこの場合そもそもそういう事故や事件に巻き込まれないという特典はついてないのか?という考慮はされない。その辺は俺の性格や人格にもかかわるからな。今回のこの事件だって俺が無謀にも一人で突っ込んだりしなければこんな大怪我は追わなかったであろう。その辺は集中治療室から出てきて話せるようになった後冬姉からこっぴどく言われた。

そんな事を思いながら歩いて(実際には車椅子に乗ってるんだが)いると丁度木の陰のところにベンチがあり、俺はそこで少し休むことにした。

冬姉に抱えられてベンチに移動(この時束さんか冬姉のどっちがベンチに俺を移動させるかでもめたのだが束さんよりかは幾分か冬姉の方が常識人だったので俺が冬姉を選択した)して腰を下ろした。

「それじゃあ秋葉、私はこの馬鹿と飲み物でも買ってくるからゆっくりしながらちゃんと待ってろよ」

「ううっ……酷いよ、ちーちゃん」

「うるさい、行くぞ束」

俺はそんな二人に苦笑いを返しながら見送った。

その時、俺は不意に思った。『ああ、こんな体じゃあ前は普通に手を振れたのに……今はそれすらできないのか』と。

「……あの、どうかされたんですか?」

そんな事を思っていると、頭上から声を掛けられた。

見上げるとそこにいたのは灰色のブレザーの制服に身を包んだ長い金髪をした少女だった。

恐らくはたから見ると俺は悲しんでたように見えたから声をかけたんだろう。

「……いや、ちょっと物思いに耽ってただけだよ」

「そうですか」

少女はそう言うと俺の隣に腰掛けた。花束を持っている所を見るとども誰かのお見舞いに来たようだ。

「誰かのお見舞い?」

「うん……私の、お母さんなんだけどね……」

少女はそこまで言うと少し悲しい顔をした。恐らく長く入院しているとか、不治の病とかなのだろう。

「じゃあ早くいかなくてもいいのかい?」

「うん、なんていうか会いづらいんだ。お母さんは毎日私が来ているからそんな私の心配ばっかりして……自分が病気っていう事も隠して」

「う~ん、まあそれが親っていうもんじゃないかな?子供に無理をしてほしいって思う親は居ないだろうし。けど君がお見舞いに来てくれるっていうのは同時にうれしくも思ってると思うよ」

俺は「はっはっは……」と少し笑うが、少女はまだ「そうかな?」と悩んでいるようだった。

「……じゃあ、あれだ。今日は友達を連れてきたっていう事にすればいい。俺を友達として紹介するためにお母さんに会いに来た、これなら流石に大丈夫だろう?」

「ええっ!?でもそれじゃ君に悪いよ!?」

少女は慌てて拒否するが俺は続ける。

「いや、実は俺も入院してるんだけど、見て分かるように俺日本人だしそうそう遠くまではいけないんだ。だから身近なところで知り合いが出来るのは結構うれしいんだよ」

「……じゃあ折角だし……お言葉に甘えさせてもらおうかな?」

少女は少し照れ笑いすると、そう答えた。

「さてと、じゃあ自己紹介だな。俺は……秋人(アキト)だ。秋って呼んでくれ」

「うん、私はシャルロット。シャルロット・デュノアって言うんだ」

「シャルロット、か。いい名前だな……もう少し待っててくれ。そろそろ俺の知り合いが戻ってくる頃――戻って来た」

俺がシャルロットと話していると冬姉が飲み物を持って帰ってきた。しかしその隣に束さんの姿はない。

「またせたな」

「おかえり、冬姉……束さんは?」

俺は早速疑問に思ったことを話す。

「ああ、束ならお前から預かっていたメモリーを渡すと自分のラボにすっ飛んで行ってしまったぞ?アイツに何を渡したんだ?」

冬姉は飲み物の入った缶を開け、ストローを入れて差し出してきたため、俺は口を付ける。

「ん……まあ義肢の件でね。で、冬姉。こちらの女の子はシャルロット・デュノアさん、ついさっき知り合って友達になった。シャルロット、こっちが俺の友人の姉で俺からしてみれば義理の姉でもある織斑千冬さん」

「はじめまして。さっき秋人君の友達になりました、シャルロット・デュノアです」

シャルロットは律儀にお辞儀しながら挨拶したが、冬姉はシャルロットが口にした俺の名前に少し疑問を浮かべて俺も見たが、俺の目線から察したのか普通に返した。

「こちらこそ、フランスにずっといるわけではないが少し長い期間滞在しそうでな、私も用事があって少ししたら発たないといけないから、秋と仲良くしてやってくれ」

「はい!」

それから暫くして冬姉とシャルロット、俺の三人は話しながらシャルロットのお母さん――エリーゼさんというらしい、その人の病室に向かった。

「……着いたよ。じゃあ私が先に入るから、呼んだら入ってきて」

「了解……っていっても実際に動かすのは冬姉だけどな」

苦笑いしてからシャルロットは病室に入っていった。

「……………」

「………」

扉が開いていうんだが、詳しい内容までは聞き取れずシャルロットと女性の声が小さく聞こえるだけだった。しばらくして「入ってきて!」とシャルロットの声がしたので冬姉に促して、入っていく。

部屋の中は小さな個室になっていて、ベッドに白い肌で細身の金髪長髪の女性がいた。微笑んでいる顔が綺麗な人だった。恐らくこの人がシャルロットのお母さんなんだろう。

「……どうも、はじめまして。秋人っています」

「はじめまして、私の名前はエリーゼ・デュノア。娘のシャルロットから貴方の話は聞いたわ。シャルロットと仲良くしてやってね」

エリーゼさんからは十人が見れば十人とも病気だ、と答えそうなほど病弱な様子でかなり前から長く入院しているようだった。

「それにしてもシャルロットったら……私は大丈夫って言ってるのに毎日来るのよ?秋人くんもシャルロットが迷惑じゃない?」

「ちょっとお母さん!!」

エリーゼさんの言葉にシャルロットが顔を真っ赤にして止めようとする。俺はその様子を見て少し笑い、冬姉は恐らく苦笑いしているだろう。

「いえいえ、シャルロットはとても優しいですから。それにエリーゼさんのお見舞いに毎日来るのは本当に心配しているからですよ。俺から見てもエリーゼさんがとても大丈夫なようには見えませんから」

「あら、私の方からしてみれば秋人くんの体の方も心配なんだけどね?」

エリーゼさんがすかさず反論してくる。

「……これは一本取られました」

仕方がないので頭を下げる。そんな事が切っ掛けでシャルロットとエリーゼさんの二人と仲良くなり、毎日シャルロットが迎えに来て俺を含めた三人で病室で話すようになる。冬姉は予定通りドイツに教官として行ってしまい、束さんからはしばらく連絡がなかった。

 

「秋!いる!?」

「……一人じゃまともに動くことすら無理なのに毎日毎日来る度に聞くな。素でやってるから構わんが、俺の状態を知ってる分ちょっとしたイジメに近いぞ?」

あれからシャルロットはエリーゼさんの部屋に行く前に俺の病室に来て運んでくれるのだが……如何せん心配性と言っても過言じゃないほどに毎日の第一声が俺がいるかどうかなのだ。動けないのにどうやっていなくなればいいのやら……ああ、泣きたい。

「えへへ、だって秋と一緒にいるとなんでか落ち着くんだもん」

俺のベッドの横に車椅子を寄せてシャルロットは俺を抱えて乗せる。前にこの場面を看護婦さんに見られて「まるで赤ちゃんを運ぶ母親みたいね」と言われてマジで泣きそうになったことがある。まあ看護婦さんに悪気はないんだろうし、絶賛芋虫状態な俺だし……ママは小学四年生ならぬママは中学二年生、ってか……何を考えてんだろうね、俺。

「……秋、今何か変なこと考えてなかった?」

「只の自己嫌悪だ、シャルロットが気にするようなことではない」

冷めた目で見てくるシャルロット。それを余裕で返す俺。まあ間違ってはいないので大丈夫なはずだ。シャルロットは自分の思ってた事より少し重そうな俺の返事に「そう、でもあんまり思いつめないでね?」と言って俺が乗った車椅子を押していく……ああ、早く自分で歩けるようになりたいね。

暫くしてエリーゼさんのいる病室の前まで来たところでエリーゼさんの病室から一人の男性が出てくるのが見えた。見た感じどこか悲しんでいるような感じで俺たちの横を通り過ぎて行った。

「シャルロト、今の男性誰だかしってるか?」

「ううん、私も初めて見る人だった。多分お母さんの知人とかだよ」

「……かもな……」

この時俺は何処かでその男性の顔を見たような気がして後々デュノア社の社長のアルフレッドさんと知った。

兎に角、俺とシャルロットはその男性を余り気にもせず、病室に入っていった。

「お母さん、またお見舞いに来たよ」

「どうもエリーゼさん、お具合どうですか?」

俺達二人が声をかけるとエリーゼさんは微笑んで答える。

「ありがとうシャルロット、秋人くん、私の方は大丈夫よ」

それから俺達三人は少し楽しく話していたが、ふとエリーゼさんが「シャルロット、下の売店へ行って何か飲み物を買って来て」と言ったのでシャルロットはお金を受け取り売店へと向かい、部屋を後にした。

するとエリーゼさんが俺に話してきた。

「……秋人くん、実は君に話しと頼みごとがあるの」

「……何でしょうか?」

エリーゼさんが真剣な表情で緊張した声だったので重要なことだと思い、俺もしっかりと聞き取る体勢で向き直った。

「……実は、私はもうすぐ死ぬわ」

「!……いきなり何を?……」

「残念ながら、冗談ではないわ……正確にはもういつ死んでもおかしくない、といったほうが適切ね」

エリーゼさんは少し俯きながらも話し続ける。

「その時が一週間後か、一年後か、もしかしたら十年後や十五年以上先かもしれない。でも逆に十分後か、一分後か、こうしてる間にも私は死んでしまうかもしれない。だから君に頼みたいことがあるの」

「……その頼みごとというのは?」

俺は生唾を飲んだ。当然だ、俺にとってシャルロットとエリーゼさんと過ごした日々はとても嬉しかったし、とても楽しかった。永遠に続くこととは思ってなかったがまさかこんな結末を迎えるとは思っていなかった。俺はエリーゼさんの言葉に「治る方法はないんですか!?」と言いかけた時に、部屋の前ですれ違った男性の表情を思い出した。恐らくあの男性もこの話を聞いたのだろう。そして他人にこの話をするということは治る見込みはほぼ無いということだ。俺は結果的に頼みごとの内容を聞くことにした。

「頼みというのはね、シャルロットのことなの。私が死んだらあの子は引き取られるわ。その引き取る人の事は答えられないから伏せさせてもらうけど、可能性としてシャルロットがその家庭でもしかしたら虐待を受ける可能性があるわ」

「な、なんでそんな場所に引き取られるんですか!?」

俺はエリーゼさんの言葉に驚愕し、立ち上がろうとしたが現在芋虫状態の俺にそれは不可能であり、危うく転がり落ちそうになった。

「大丈夫、虐待するといってもその引きとった本人ではないわ、正確には引き取った人の家族によ……あの人は絶対そんなことはしないわ。そこで君に頼みたいのは……あの子を裏切らないこと、よ」

「……裏切らない?」

「そう、あの子がたとえ私が死んでも生きる目標として、そして精神的に壊れないように。信じる相手として、生きる目的として、心の拠り所として、そういう存在に君にはなってほしいの。もしかしたらこの先会えないかもしれないし、難しいことだとは思うわ。でもお願い、あの子にとって大切な存在になって欲しいの……」

「………………」

俺はその時、即答することができなかった。当たり前だ、俺にはそんな人の心の拠り所になるような存在になれるようなすごい人物なはずがない。確かにISを作り、超人的な何かを持っていても、それだけだ……しかしそこまで思った時にふと夏のことを思い出した。夏だけじゃあない、春華も、冬姉も、箒も、束さんも、俺に深く関わっている人物に対して俺は助けてもらい、助けてあげたりもした。詰まりはそういうことだろう。シャルロットが困っていれば助けてやり、危機に陥っていたら駆けつけてやればいい……簡単なことなのに、何を悩む必要があったんだか。

俺は少し笑うと、笑顔だが真剣な眼差しで答えた。

「わかりました、自分に出来る限りではありますが、そんな存在になって見せます」

「……ありがとう、死ぬ前にあなたに会えてよかったわ。これで思い残すことはないわ」

「……だからと言って今すぐには死なないでください」

俺がそう言うとエリーゼさんは微笑んでいった。

「大丈夫よ……そうね、せめてあのこのウェディングドレス姿ぐらいは見たいわね」

「ふむ、じゃあ相手を早く見つけないといけませんね……」

「あら、相手は案外すぐ近くにいたりするものよ?」

「ほう、シャルロットほどの人物の一生の男だ。そいつは幸せものだな、顔を拝んでやりたいねぇ」

俺は笑いながら言う。

「秋人くんは鈍いわね……シャルロットが好きなのは「それ以上いっちゃ駄目ぇっ!!!」あら、意外と早かったのね?」

エリーゼさんが喋ってる途中に駆け込んで遮ったのは飲み物を買って帰ってきたシャルロットだった……取り敢えず飲み物が床に散らばってるんだが。

「もうっ!お母さんってば!秋に変なこと言わないでよっ!!」

「あら、私はただシャルロットの未来を心配してるだけよ?」

「そうだぞシャルロット。エリーゼさんに早く自分の花嫁姿と婿さんを見せたいとは思わんのか?」

俺とエリーゼさんの攻撃にシャルロットは真っ赤になり、恥ずかしさの余り俯いてしまった。

「う~……そりゃそうだけど……まだ心の準備っていうのが……」

「……その心の準備とやらは早くしたほうがいいぞ」

俺の呟きにエリーゼさんは鋭い視線を送ってきたが俺は「大丈夫、バラしませんって……ただ発想によっては……ってなかんじです」という意志を送るとエリーゼさんは少しホッとしたがまだ少し警戒していた。

そんな事を知らないシャルロットは素朴な疑問を投げてくる。

「それってどういうこと?」

「詰まりは、男はそんなに待ってくれないってことさ。今の俺達だってそうだ、いつか俺はこの病院を出て日本に帰るだろうし、エリーゼさんだって年老いて何時かこの世を去るだろう?だから想い人がいるんだったらさっさと思いを伝えたほうがいいのさ。まあ後はシャルロットが決めることだし、俺には関係無さそうだ。ただなシャルロット……お前がどう思ってるかは解らないが、お前が悩んだり、立ち止まったり、危機に迫ったときは俺を思い出せ、俺が傍にいると思って頑張るんだ。そしたら俺は絶対に手を貸してやるし、お前を救ってやるさ……それに俺に会いたいなら猛勉強してIS学園に入学すればいい。そして長期休暇を利用して俺を探し出せばいいさ……ただ、本当に忘れるなよ……時間は進んでいる、人に振りかかる出来事や、人の心はずっとそのままって言うことはないんだからな」

「……うん、わかったよ」

シャルロットは顔を上げ、俺に向かって笑顔を送ってきた。俺は同じように笑顔でそれに答えた。

 

暫くして俺は病院から去り束さんと協力の下、義肢を無事装着し、リハビリをして免許を習得、日本に帰国した。恐らくシャルロットはその後エリーゼさんの死を体験し、デュノア社の社長に引き取られ、辛いことがある度に俺を思い出しながら耐えて、IS学園に来たんだろう……

 

「……んあ……いけね、少し眠っちまった……」

俺は時計を見てそろそろ授業が終わる時間だったので立ち上がり大きく伸びをした。

……シャルロットの大切な人、ね……正直キツイよな……

俺はエリーゼさんとの病院での話とこの前のシャルロットとの告白の話を思い出していた。

……恐らく俺が告白を承諾すれば上手くまとまるんだろうが……シャルロット、だから言っただろ?早くしろ、って。時間は止まったり待ってはくれねえんだからさ。

俺は歩き始め、階段を降り始める。

……とはいえ、それは俺にも言えることか……そろそろ鈴にも返答しないとアレだろうしな……コレ以上惚れられても困るしな、夏休み前には決めねえと……はあ、マジで面倒臭え……

俺はそう思いながら教室に向かうのであった。

 

 

 
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