第5話 蜀王、劉璋
反董卓連合が解散してから1ヶ月ほどが経つ。
「…………」
「……」
蜀では流行病が流行っており、劉焉も流行病にかかっていた。
一刀達はその見舞いをしていた。
「儂はもう……ダメだ」
「父上、いくら流行病だからってそんな弱気なことを……」
「いくらなんでも無理なのはもう分かっている………」
「お館様!」
「そう怒鳴るな厳顔、命はいずれ朽ちる。それは人間でなくても言えることじゃ…」
「そんな……」
「璋よ」
「はっ!」
「お前の姉達はお前が幼い時に皆死に、儂の子供で残っているのはもはやお前だけだ。
この国はお前が継げ……」
「……はい」
「黄忠、厳顔、魏延」
「「「はい」」」
「お前達にはわざと璋から遠ざけていたが儂がいなくなる以上、その必要はないな。
これからはお前達が璋の手助けをしてやれ」
「「「分かりました」」」
「張任、法正、黄権」
「「「はい」」」
「言うまでもないだろうが、お前達三人は璋の幼馴染だ。
これからも璋を支えてやってくれ」
「「「はい!!!」」」
「璋」
「? はい?」
また呼ばれたので一刀は少し戸惑う。
「何故儂がお前を真名で呼ばないか知っておるか?」
「いいえ」
「正直に言う。儂はお前が嫌いだった」
「え……」
「お前には儂にはないものを持っておる。それは当然と言えば当然だ。人はそれぞれ違うのだからな……。
しかしお前は儂が持ってないものをたくさん持っていた。
単純な力、人望、洞察力……、そして………優しさだ」
「…………」
「儂はそれを羨み、妬んでいた。だがそれでもお前は儂の子供だ。どこかで子がかわいいと思っていたんじゃろうな……」
「父上…」
「璋、いや、一刀、お前なら……お前ならこの大陸を制覇できる。
儂はそう信じている。勝て! そして生きろ! 一刀!!」
そう言って劉焉は息絶えた。
「父上! 父上!」
一刀が劉焉を揺らすが、劉焉は反応しない。
「父上……」
一刀は涙を流す。
一刀だけではない、その場にいた将全員である。
しかし………。
「!?」
一刀は頭を抑える。
「一刀様!」
「一刀!」
(なんだこれ?)
一刀の頭には文字が横切る。
そしてすぐに一刀は頭から手を離す。
「一刀!」
「若頭、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
一刀は立ち上がる。
「父上、俺は……俺の意思でこの国を……大陸を制覇してみせる!(しかし……あれは一体……)」
それから数日後、一刀は正式に蜀の王になった。
「一刀様」
「うん」
一刀は玉座に座る。
「お館様、これからどうするのでありますか?」
「そうだな……、しばらくは様子見だ」
「様子見?」
「俺が王になったことは世間にも思ったより早く浸透したり、理解してくれた。
それでもやはり国内はまだ混乱してるところはあると思う。
まずはその混乱をなくす。そのためにも様子見だ。
それに俺の予測だと……大陸で動きがあると思うんだ」
「大陸に動き?」
「正確にはどこかの勢力が大きく動き出す。なんとなくだけど、そんな気がするんだ」
『分かりました』
一刀達蜀勢はしばらく様子見をすることを決めた。
そして一刀の言う通り、大陸では動きがあった。
まずは袁紹が公孫賛を攻め、公孫賛は敗走。劉備の元へと逃げのびた。
その袁紹はと言うと次に曹操の領地を襲ったが、結果は敗北。袁紹の領地は曹操のものへとなり、袁紹も配下の顔良、文醜とともにどこかへと逃げて行った。
ほぼ時を同じくして、袁術の下としていた孫策達は反乱を起こし、結果、反乱に成功。
袁術も袁紹と同じように配下の張勲と共にどこかへと去っていった。
それから数日が経とうとしていた。
「…………」
一刀は町を見て回っていた。
「劉璋様!」
一刀の姿を見ると皆が恐れ多いと思い、跪く。
「やめてください、俺は王でもそこまで謙遜されたら……」
一刀はどうも慣れないようで頭を下げるのをやめてほしいと懇願する。
「少しは王としての自覚を持ったら? 一刀」
そこに千歳がやって来る。
「千歳」
「一刀様って呼びなさい、千歳」
そこ美咲、綾もやって来る。
「別に公の場じゃないんだから……」
「ダメです、あなたはもはや王。公も私も関係ない……」
「関係なくない。公だと確かに大事だけど、今はまだ私事だ」
「ですが……」
そんな時、ざわめき声が聞こえてくる。
「何だろう?」
「行ってみましょう」
一刀達はそのざわめいている場所へと向かう。
するとそこには天和達張三姉妹ともめている二人の女性がいた。
「どうしたんだ?」
「あ、一刀~」
「姉さん、今はもうこの人は王なの。一刀様って言わないと……」
「構わないよ、公の時だったらともかくまだ私の時だ」
「じゃあ一刀、あいつらどうにかしてよ」
「うん?」
地和に言われてもめてる相手を見てみる。
その相手はなんと袁術と張勲だった。
「お前達は!」
「ああ、お前はあの時の!」
「なんであなたがここにいるのですか?」
「控えろ貴様ら!」
「ここに居られるのは蜀の王、劉璋様であらせられるぞ!」
千歳、美咲、綾が公の時の状態になり、たんかを切る。
「何じゃと!?」
「ここは蜀だったのですか!?」
「知らなかったの?」
「孫策から、逃げて逃げて、やっとたどり着いた場所がまさか既に王がいたとは……」
「いや、今の情勢でもう支配されてない土地はないと思うぞ」
「そんな………」
袁術と張勲は膝を落とす。
「それでわらわ達はどうなるのじゃ?」
「ひぃ~、殺さないで下さ~い」
袁術と張勲は互いに抱きつきながら泣く。
「………」
「どうしますか、一刀様?」
「…二人とも、とりあえず顔をあげてくれ」
「「?」」
袁術と張勲は顔をあげる。
「二人とも、働く気はあるか?」
「働く気はな……」
「はい! あります!」
袁術が言おうとしたのを張勲が防ぐ。
「七乃! 何を……」
(落ち着いてください、美羽様)
張勲は袁術に耳打ちする。
(美羽様、もしここで働く気がないって言ったら、きっと私達殺されちゃいますよ~)
(なんじゃっと!)
(あくまで可能性ですよ。けど、もし働くことが出来ればお金も得られて蜂蜜水を買うことだってできますよ)
(蜂蜜水が買える!?)
(はい!)
「よし、働くぞ! 七乃!」
「決定だな」
一刀は働かせることにした。
「まあ詳しい話は城でしょう。天和達も一緒に来てくれ」
「? うん、分かった」
こうして一刀は張三姉妹と袁術、張勲を城に連れ帰った。
城に戻った一刀は袁術と張勲を天和達のお付き(要はマネージャーとたまに歌手)にすることを皆に伝え、いすわせることにした。
それからまた数日が経った。
玉座の間には蜀における主な将が皆揃っていた。
「お館様、方針が決まりましたかな?」
桔梗が尋ねた。
「ああ、そのために皆に集まってもらったんだ」
「それでどうするのですか? お館様」
焔耶も尋ねる。
「まず結論から言おう。俺達の基本方針は防衛のみだ」
「え?」
「防衛……、どこかに攻めるなどしないのですか?」
「しない」
「それはなぜ?」
「聞きたいか?」
『是非』
皆が声を揃えた。
「ならば言おう、俺は人が死ぬのを見たくないからだ。
戦が始まれば必ず誰かが死ぬ。戦と言うのはそう言うものだと言うのは分かっている。
分かっているけど、嫌なんだ。戦って得るものは確かにあるだろう。けれどそれ以上に失われるものの方が多いうえに大きい。
その失われるものと言うのは……」
「命……ですね」
綾が先に述べた。
「そう、命だ。命は何よりも代えられない大切なもの。それが失われる悲しみを俺は知っている。
そして俺がどこかを攻めることになれば攻められる方に必ず死人は出るし、こちらにも死人は出る。
少し前の反董卓連合の時、こちらに死者が出なかったのは奇跡と言っていいが、それはもう今後は起こらないだろう」
「ですが、誰かがここを攻めてきた時は……」
「さっきも言ったように基本方針は防衛、つまり守ることはする。振りかかる火の粉を払うのは当然だからな。
けどこちらから手を出すことはまずしない。もし俺が基本方針を曲げてまでそれ(侵略)をするのなら、それは失われる命をそれ以上増やすことをしないようにするためだと思ってくれ。
だがそれはあくまで最後の手段、俺は出来ればそれだけは取りたくない」
一刀はとても悲しそうな顔をする。
「もし、俺のこの方針に従えない人がいるなら、出て行ってくれ。止めることはしない」
『………』
皆が黙り、そして口を開く。
「何を言ってる、一刀」
いつもは公の場では様付けをしている綾が珍しく呼び捨てで一刀を呼ぶ。
「私達がそれに反対すると思う?」
「私達の付き合いはそんなに短いものじゃない。私達は……」
「「「幼馴染でしょ」」」
綾、千歳、美咲が声を揃えた。
「お前達……」
「だから出ていくことなんてしない」
「そうか……、それでお前達は……」
一刀が紫苑、桔梗、焔耶に尋ねる。
「私も反対しないわ」
「うむ、大暴れできないのが少し不満と言えば不満だが、お館様が決めたことじゃ、反対せん」
「私も桔梗様と同じです、お館様」
「そうか……」
一刀は涙を流す。
「ありがとう、本当にありがとう…………」
「お館様、その涙はもったいない」
「一刀、最近涙もろくなっているからな…」
「その涙もろい主を……」
「支えないとね」
一刀とその家臣達の絆は思ったよりも深いのであった。
おまけ
作者「第5話だ」
一刀「その前に言うことがあるんじゃないのか?」
作者「そうだな。第4話でのコメントについての俺の意見だ。
俺の中じゃ、てか、この作品だと「皇帝の血=劉家の血」ではないんだ。
恋姫本編でも劉備はそこには全然触れてないだろ。アニメでもそこまで重要視してない」
一刀「そこは大事な要素じゃないしな」
作者「もう少し言わせろ。
とにかくだ。だから劉焉ならびに劉璋にそこまでかしこまる理由がないんだ。
それに華琳はともかく麗羽がそこまでかしこまる姿なんか全然想像できない。それに麗羽はあんな風にバカな感じだからいいのだと俺は思う。
みんなが何を言おうが、基本俺は自分の考えを貫く。
それに一応は最後まで書いたんだ。細かいところはともかく、劉璋の血筋となると大幅に書き直すことになるし、そこまでのモチベーションは今の俺にはない。だからこのままでいく。
謝らないし、答えも聞いてない」
一刀「すごい自分勝手だな」
作者「よく理解しているし、治す気もない」
一刀「たちわる」
作者「まあそれと第4話のおまけでも言ったが『ソードアート・オンライン』風のものも書いたから興味ある人はぜひ読んでみてください。
それでは!」
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この作品は作者が最近見かけている「転生もの」の影響を受けて書いたものです。