No.496099 とある科学の自由選択《Freedom Select》 第 八 話 放縦不羈な計略2012-10-14 13:35:24 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:828 閲覧ユーザー数:818 |
第 八 話 放縦不羈な計略
「ねぇ、選ってこんな服着てったっけ?」
「ああ、それか。それはあのあれだ、研究所に忍び込む時着てったやつだな」
ここは長点上機学園の学生寮のある一室。その部屋の中で話している二人の人物は、神命 選と月極 高嶺だ。高嶺が持っているのは全体的に黒いフードの付いた地味な服。
「なぁ、『妹達(シスターズ)』って知ってるか?」
「『妹達』?突然何?」
「知らなかったか?じゃあ第三位の軍用クローンについての噂とかは?」
「あっ、それなら聞いたことがあるー」
「そうか。まぁぶっちゃけアレって本当に行われてたんだよね」
「本当?」
「ああ、最初は『量産型能力者(レディオノイズ)計画』って言う計画で、さっきも言った通り第三位のDNAマップを使って軍用クローンを作ろうって計画だったらしいな。でもその結果は尽く失敗。なんでも出来上がったクローンはオリジナルの1%にも満たない欠陥品だったんだと。で、遺伝子操作・後天的教育問わず、クローン体から超能力者を発生させることは不可能と判断されて、すべての研究は即時停止、研究所は閉鎖され計画は凍結されたらしい」
「そうなんだ。でも、生産されたクローンはそのままなんでしょ?しかも、人体のクローンは国際法で禁止されてるから公にも出来ないし、公になったとしても彼女らに居場所は無いんじゃないの?」
「そうそうそれなんだが、俺も何度かその『妹達』の研究機関に侵入して潰して来たから分かったんだが、奴らはそのクローンを有効活用する方法を見つけたらしい」
「どんな?」
「これがまた面白い話でな、そのクローン達はまた違う実験に投入されることになったんだ」
「その実験って言うのは?」
「この実験はこの学園都市の最終目的である絶対能力者を作る『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』って呼ばれてる。で、そのお待ちかねの実験内容なんだが、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の算出したプランに従い、学園都市で最強の超能力者『一方通行(アクセラレータ)』を絶対能力者(レベル6)へ進化させるってふざけた内容だ」
「絶対能力者?本当にそんなもの出来るの?」
「方法としては『二万通りの戦闘環境で量産能力者を二万回殺害する』とか言うとてもじゃないが正気とは思えないような方法だな。しかも、もう既に約半分ほど順調に進んでいるんだそうだ。笑えて来るだろ?」
「確かに話だけなら嘘っぽく聞こえるけど、実際に行われてるのだから笑えないわね……」
「そうだな。そんで当の本人はつい最近気づいたらしくて、一方通行に直接喧嘩を売ったらしいな」
「結果はどうなったの?」
「もちろん言うまでも無く一方通行の圧勝で、その方法では実験を止められないと悟った第三位は、今大急ぎで研究所を潰して回ってる。最近、飛行船に研究所がサイバーテロに遭ったとかそう言うニュースが流れてたが多分と言うか確実にそれだろうな」
「手伝ってあげたら?」
「お前……簡単に言うけどな、こっちだって結構忙しいんだぞ?まあこの前久々に第三位に会って来ようとしたら疲労感満載の顔で友達と話してたな。とても話しかけられるような状態じゃなかった」
「じゃあ尚更……」
「でも、奴にそんな義理はないし、そもそも初対面でいきなり襲い掛かって来たんだぞ。しかも一方通行って言ったら運動量・熱量・光・電気量等のあらゆるベクトルを観測して触れただけで変換する力だぞ。とても奴に敵うとは思えないな」
「でも選なら出来るんじゃない?」
「確かに俺の能力は一方通行の能力とは相性がいいかもしれないけど、それにしてもリスクが大きすぎる。俺に出来るのは研究施設を潰すのを手助けするくらいか……まぁほとんど情報収集の為だけど。ここであいつに少しでも借りを作っておくのも悪くないかもな。そろそろ研究所の方も、第三位対策に暗部か何かを雇う頃だし」
「じゃあ早速行ってきたら?」
「完全に他人事だな。どうせ高嶺はここで俺が帰ってくるのを待ってるだけだろ?そんなんだから、いつまで経っても高嶺は…………」
「製薬会社からの依頼〜〜?」
髪を弄りながら電話で話す彼女の名は麦野 沈利(むぎの しずり)。暗部組織『アイテム』のリーダーであり、学園都市第四位の超能力者『原始崩し(メルトダウナー)』である。
「それってウチの管轄じゃなくない?まあ別に……」
「でもさー結局水着って人に見せ付けるのが目的な訳だから、誰もいないプライベートプールじゃ高いヤツ買った意味がないっていうか」
この金髪碧眼で『結局』口癖の女子高生の名はフレンダ=セイヴェルン。
「でも市民プールや海水浴場は混んでて泳ぐスペースが超ありませんが」
フードのを被りやたらと『超』を話の中に盛り込んでくるこの大人しそうな少女の名は絹旗 最愛(きぬはた さいあい)。そして彼女の能力は『窒素装甲(オフェンスアーマー)』だ。
「ん——確かにそれもあるのよねー。滝壺はどう思う?」
「…浮いて漂うスペースがあればどっちでもいいよ?」
「そ…そう」
そしてジャージを着たいつも眠たそうにぼーっとしているこの少女の名は滝壺 理后(たきつぼ りこう)。彼女の能力は『能力追跡(AIMストーカー)』。
「はーい、お仕事中にだべらない。新しい依頼が来たわよ」
ぱんぱんと手を鳴らしながら彼女らに近づく麦野は続ける。
「不明瞭な依頼だけどギャラは悪くないしやる事は単純かな」
「やる事って?」
「謎の侵略者達からの施設防衛戦!」
所変わってここはキャンピングカーの中。アイテムのメンバーの四人はこの中に乗り込んでいた。
「発電能力者ねぇ…」
彼女らが見ているのは『sound only』と表示されたモニター。そこからはある女の声が聞こえてくる。
『侵入者の内の片方はその可能性が高いって話ね。通信回線を使ったテロと、電気的なセキュリティに引っかからない所からそう推測されているみたい』
この声が暗部組織アイテムと学園都市上層部とを繋ぐ連絡係となっている。
『てゆーか依頼主はどうもこっちの犯人は特定できてるっぽいんだけどねー』
「目星がついているならなぜこちらから超襲撃しないのでしょう?不意を討った方が超楽勝だと思うのですが」
『「手出しはターゲットが施設内に侵入した時のみ、襲撃者の素性は散策しない事」ってのが依頼主のオーダーよ』
「はぁ、何それ?結局意味分かんないんですけど」
『こいつらときたら私だってやりたくて受けたわけじゃないわよ!!それにこの手の依頼には相手にも色々事情があるんだっつーの!それよりヤバイのはもう片方。こっちの方はかなり厄介っぽいのよね』
「何がどう厄介なわけ?」
『さっきの侵入者の方は休日を除くと夜間しか襲って来ないのに対して、こっちの方は昼夜問わず襲撃してくるのよね』
「でもそれなら超厄介って訳じゃないですよね?襲撃の時間帯は単に学生じゃないってだけかも知れませんし」
『普通侵入するなら昼は避けるでしょ。でもこっちはそんなものお構い無しに平気で突っ込んでくるの。その手口も本当に単純で正面突破。なのにどんなセキュリティにも引っ掛からないの』
「じゃあ相手には侵入に対してよほどの自信とそれを可能にするだけの能力があるのね」
『それだけじゃないわ。一番厄介なのは戦闘時。報告によると研究者側の攻撃は一度も侵入者に当たらなかったらしいわ』
「攻撃が当たらなかったのはその侵入者が単に超避けまくったと言うだけじゃないですか?」
『実際に戦った研究者の証言によると侵入者は特に避けるような動作も無く、全ての攻撃がすり抜けていったらしいのよ。それも生体反応や音源はちゃんとそこにあったのに』
「なんか超気味が悪いですね」
『そして襲われた研究者の死体は何故か無くって、運良く生き残ったヤツによると、皆地面の中に消えていったとか何とか言ってるのよね。で、研究所によっては全員が消えてたり、一人も消えてなかったり、一部だけが消えてたりとバラバラで、これも人的被害が少ない最初の侵入者との大きな差よね』
「地面の中に消える……結局それって何なの?幽霊?」
『それだけ聞くと本当に幽霊に思えるわよね……しかも情報を抜き取るような行為をした後は念入りに研究設備を溶かして回ったそうよ』
「溶かす?」
『ええ、設備が全て超高温で溶かされてるの。もう何の情報も残らないし復旧出来ないくらいにね」
「そもそも何が目的なんでしょうね?」
「最初の方は最近になって活動を始めたみたいで、その目的は実験の妨害工作ってのは眼に見えて分かるのよね。で、問題の侵入者の方は結構前から色々な研究施設を潰して回っていたようで、単に情報を集めてるっぽいのよね。だからこの侵入者同士には何の繋がりもないってのが上層部の考え。でも次狙われれるっぽい場所は二基の内のどちらかの可能性が高いから防衛するのは二箇所』
「でも結局そんな説明受けたら気味悪くて依頼受ける気無くなっちゃう訳なんだけど」
『その分報酬も高いんだから。ほら、ごちゃごちゃ言ってないでちゃんと仕事しろーっ!』
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