束の所に厄介になる事数ヶ月。相変わらず司狼が変身したあの姿が何なのかしつこく聞いて来る所で、二人はばったりと会った。織斑千冬に・・・・
「あんたが、束が言っていた『ちーちゃん』て人?」
「束・・・・(ギリギリギリギリ!!!!!)」
「痛い痛い痛い痛い痛い!!!ちーちゃん、痛い!死ぬ死ぬ!」
「死ね。」
(おい・・・・何やってんだコイツら・・・・?)
「うぉっほん!」
わざとらしく咳払いをして注意を自分に向ける。
「まずは、自己紹介と行こう。俺は御鏡司狼だ。ちょっと訳があって彼女の世話になっている。よろしく。」
「私は織斑千冬だ。」
「ちーちゃんはねー、束さんの親友でー、いっくんって弟がいるんだよー。」
「弟、ねえ・・・・(こいつがISに携わっている奴の関係者としたら・・・・弟にも何かが起こるな・・・・)よろしく。織斑さん。」
「千冬で構わん。」
「じゃあ、千冬さん。ちょっと聞くが、ISで、彼女は何をするつもりなんだ?」
「・・・・・正直に言うと私にも分からん。だが、善くも悪くも世界は変わってしまうだろう。」
「女しか起動出来ないんじゃ、男女のパワーバランスが一気にひっくり返るぞ?本当にそれで良いのか?そもそも何でこの計画に乗った?」
「・・・・・こうする事で・・・・・弟を・・・・・一夏を守れる、から。」
「それ本気で言ってる?守る方法なんて他に幾らでもあるだろうに。ワザワザ世界を巻き込む必要更々無いと思うんだけど。そもそも、守るったって何から?」
「それは・・・・」
「何から守るのかすらも分かっていないんじゃ、駄目だな。っ!」
再び耳鳴りがした。
(他の奴も試してみる必要があるか。まずはコイツだな。)
ポケットから
「変身。」
カードデッキを差し込み、変身するとミラーワールドの中に入って行く。
「束、あれは一体・・・?!」
「私も知らないんだよねー。教えてくれないんだもん。でも、あれは絶対ISじゃないよー?前に見たのとは違う奴だし・・・・」
ミラーワールドの中でタイガに変身した司狼は、白召斧デストバイザーを肩に担いで気配が消えた所を見回していた。すると、後ろから二足歩行型のカミキリムシの様なモンスター、ゼノバイターがブーメランの様な物を投げつけて来る。デストバイザーでそれを叩き落とすと、それを拾って投げ返す。その間にカードを装填し、デストバイザーも時間差で投げつけた。
『フリーズベント』
『アドベント』
現れた契約モンスター、『吹雪の白虎 デストワイルダー』の両腕と同じクローが装備され、挟み撃ちにしながら硬直して動かないゼノバイターを痛めつける。デストクローで前後から刺し貫いた所でデストバイザーを拾い上げると、デッキに描かれたマークと同じカードを装填した。
『ファイナルベント』
デストワイルダーが満身創痍のゼノバイターを地面に叩き付け、クローを構えるタイガに向かって引き摺って行く。十分に近付いた所で地面から掬い上げ、デストクローを突き立てる必殺の『クリスタルブレイク』を発動した。ゼノバイターの死体から現れたエネルギーを捕食すると、デストワイルダーはどこかへ去って行った。
「ふぃー・・・・」
デストバイザーをくるくると回しながらミラーワールドを出ると、千冬が司狼を睨み付けながら彼を問い詰めた。
「あれは一体何だ?どうやってあの中に・・・」
「この世界は一つだけじゃない、って事さ。そこを行き来出来るのは現在俺だけだ。」
眼鏡を押し上げながらそう答えた。
(それはそうと・・・・ISの事はある程度束から聞いた・・・・これは恐らく兵器転用されるだろうな・・・・こんな危なっかしい物を作ったんだったら。それに、もしあそこまでのぶっ飛びキャラなら・・・・世界中継でISの力を見せつけようとするだろう。その為なら世界も巻き込みかねない・・・・いや、世界中に広まったのも世界を巻き込んだから、なのか?まあ、今は泳がせておくか・・・・いざとなれば、
「それはどう言う意味だ?」
「それはねー、どう言う訳か鏡の中に私達と文字通り鏡合わせの世界があるんだよー?彼しか中に入れないって言うのも本当だよー?私も助けてもらったしー、今はメイドさん?執事?みたいな感じで雇ってるのだー!」
(その割に給料が糞高いんだけどな・・・・・日給+小遣いで十万ちょっとってのはどうよ・・・・?まあ、俺もその金で結構助かってるし良いか・・・・デッキも全部量子変換して出し入れが楽になったし、ビームガンバージョンのマグナバイザーも作れたし、御の字だ、御の字。)
「まあ、そう言う事。」
適当に相槌を打つ。
「千冬姉!」
「一夏・・・!家で待っていろと言っただろう?」
「ごめん・・・・でも、遅いからどこに行ったのか心配になって・・・」
「あー、いっくんだー!!」
いつの間にか一夏の背後に現れた束は後ろから彼を抱きしめ、頬擦りを始めた。
(あれが、織斑一夏・・・・近い内に渡しておく必要があるな。)
「ちょ、束さん離して!って、あの人は?」
「ん、まあ、束のハウスキーパー兼世話係の御鏡司狼だ。よろしく。」
「織斑一夏です。こちらこそよろしく。」
「私達はそろそろ帰る。ではな。(御鏡司狼か・・・・覚えておこう。)」
「ああ。じゃあな。(タイミングが肝心になるな、デッキを渡すのは・・・)なあ、束。一つ聞きたい。お前がISを作った理由ってのは、まさか
「ギクッ・・・・」
「やっぱりそうか・・・・まあ、俺としては別に構わないがな・・・・・契約内容、忘れるなよ?」
「分かってるよー、私のお世話とミラーワールドの事を教える代わりにISのコアをあげるって奴でしょ?」
「しらばっくれて欲しくない為の保険だよ。いざとなればミラーワールドにいるモンスターの餌にすれば良いだけだからさ。さてと、俺は食材を買って来るから先に帰ってて。」
それだけ言うと、近くにあるスーパーに向かった。だが、どう言う訳か、その中に織斑姉弟がいたのだ。
「(良く会うねえ・・・・)さてと、今夜はシーザーサラダでも作るかねえ。」
鶏肉の笹身を取り、レタス、シーザードレッシング、クルトン、そしてパルメザンチーズを持って来たバッグに放り込むと、織斑姉弟が出たのを見計らって二人を遠巻きに尾行した。すると、再び耳鳴りがした。交差点にある鏡の中で二足歩行の縞馬型モンスター、ゼブラスカル・アイアン(以後ゼブラスカル I)が写っていた。
(狙いはあの二人か。丁度良い。織斑一夏に渡すとしたら、これだな。デモンストレーションには持って来いだろう。)
左手首の腕時計が一瞬光り、司狼の手には蝙蝠のレリーフがある黒いデッキが握られていた。スーパーの窓には巨大な蝙蝠、『闇の翼 ダークウィング』が羽搏いている。ゼブラスカル Iをはね飛ばし、一声鳴くとどこかへ消えて行った。
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束のラボに転がり込んだ司狼は・・・?