No.493568

IS~音撃の織斑 四十七の巻:装甲の総攻撃

i-pod男さん

お待たせしました。時間が空き次第どんどん投稿して行きます。少し短めです。

2012-10-08 04:30:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3375   閲覧ユーザー数:3263

アームド状態になった二人はそれぞれ攻撃を開始した。荊鬼はアームドセイバーを石動鬼に渡して大型の魔化魍を任せ、自分は背中の音撃棒を使って夏の魔化魍の群れを攻撃し始めた。その間にも、片目を潰されたオロチは怒り狂いながら暴れ続ける。

 

「なんて数だ・・・・」

 

「もう少しだけ持ちこたえろ!ヒビキ達が直ぐに来る!それまで我慢だ!」

 

「はい!!音撃打、不浄覆滅(ふじょうふくめつ)の型!!」

 

炎零天を地面に設置し、広範囲に渡って清めの音を地面に流し込み、それがかなりの数を減らして行った。

 

「鬼神覚声!はぁぁぁぁぁ・・・・・・・ハアアアッ!!!」

 

荊鬼よりも強い清めの音がまるで津波の様に魔化魍の群れを掃滅して行き、残るは白狐と紅狐の群れ、そしてオロチとなった。

 

「音撃射、疾風一閃!」

 

「音撃射、旋風一閃!」

 

そんな時、威武鬼と羽撃鬼がケシズミカラスに乗って空中からの攻撃を始めた。同じく同乗していた凍鬼は飛び降りて荊鬼と同じ様に烈凍を地面に設置した音撃鼓に叩き付けて清めの音を流し始めた。

 

「イブキさん!!ハバタキさんも!!」

 

「待機していた所で、更識家の前当主が警告にきました。援軍を直ぐに寄越す様にと!」

 

「それで、全員が集合した!一気に片付けるぞ!」

 

「音撃拍、軽佻訃爆!」

 

「音撃打、業火絢爛!」

 

歌舞鬼、煌鬼の音撃も加わり、清めの音が更に強まる。

 

「まだまだこれからだ!」

 

「西鬼、轟鬼、続け!」

 

「はい!」

 

「張り切って行くで!」

 

轟鬼は音撃弦を深々と地面に突き刺し、西鬼は烈節をトライアングルに組み替え、音叉で叩き始めた。

 

「音撃斬、雷電激震!」

 

「音撃響、偉羅射威!」

 

大量に発生した白狐、紅狐の大群は瞬く間に全滅する。残るは、オロチのみとなった。

 

「よしと、残るはオロチだけだな。荊鬼、行くぞ。」

 

「はい。」

 

石動鬼はアームドセイバーを渡し、荊鬼と響鬼は並んだ。管の鬼達は全員巨大化したディスクアニマルに乗ってオロチを地面に落とそうとする。太鼓の鬼達も烈火弾を放って援護した。だが、やはり最強の魔化魍である為、ダメージはあまり与えられなかった。

 

「ちょ、イスルギさん、何やってるんですか?!」

 

そんな時、どうやってそこに辿り着いたのか、石動鬼が潰した片目に突き刺さったままの斬劉雷火を掻き鳴らし始めたのだ。体内に高威力の清めの音が直接流し込まれ、オロチは苦しみ始めた。石動鬼の全身全霊の魂を込めた音撃だ。

 

「今だ!やれ!俺ごと、コイツをぶった切れ!!」

 

「な・・・?!」

 

「そう言う事か・・・・イバラキ・・・・やるぞ!」

 

「ちょ、ヒビキさんまで?!」

 

 

荊鬼は何が何だか分からなくなっている。自分の師匠が、生きていると言うのにオロチ諸共に自分を倒せと言っているのだ。

 

「あいつがああまでして体を張ってるのは、お前の為なんじゃないか?それに見ろ。」

 

石動鬼の体は、少しずつ消滅していた。

 

「まさか・・・反魂の術・・・?!」

 

「そうだ。あの人は、もう既に死んだんだよ。だが、オロチを倒す時位は、弟子の側にいてやりたかったんじゃないかと、俺は思う。俺は独学で鬼になったから、そこら辺は良く分からないけど。でもあの人がお前に取って父親らしい存在だった様に、お前はあの人に取って息子みたいな存在だったんじゃない?」

 

アームドセイバーを握っていた腕が震える。

 

(俺は・・・・・俺は・・・・・・!!!)

 

「分かりました・・・・師匠・・・・」

 

「「鬼神覚声!!ハァァァァ・・・・・・・はああああああああああああ!!!!」」

 

鬼の文字を斬撃に変え、×字型にオロチを切り裂いた。変身を解いた一夏は直ぐにその残骸に向かって走って行き、そこに倒れている市を助け起こした。

 

「師匠・・・・」

 

「良くやった。それでこそ、お前は・・・・本当の鬼になれた。これで俺も、安心して逝ける。俺にガキがいたら、お前がそうだったかもな。俺が父親なんて柄にも無いが、そう言える。俺はお前を誇りに思ってる。」

 

市は立ち上がって一夏に向き直る。

 

「一つ頼みがある。女々しいかもしれないが、俺の事、忘れんな。今まで経験した事も。全部だ。」

 

「・・・・はい!」

 

「どうした、その顔?男が泣くなよ、みっともない。」

 

「泣いてません!雨です!」

 

事実、雨が降り始めていた。そして、一夏は泣いてはいたが、運良く雨がそれを誤摩化してくれる。

 

「そうか。そうだな。雨か・・・いい気分だ・・・・お前の作ったつまみでゆっくり一杯やって、風呂に入ったら、眠りたい。そんな気分だ。」

 

「幾らでも、作って・・・・・・あげます。」

 

一夏は自分を救い、今まで育ててくれた『父親(師匠)』に向かって深く頭を下げた。それを見て、市は口角を片方だけ吊り上げ、その頭をガシガシと乱暴に撫でる。頭を上げたその時には、斬劉雷火と音響がそこにあるだけだった。一夏は歯を食いしばって喉の奥で嗚咽を溜め込んでいた。

 

「父・・・・さん・・・・・!」

 

他の鬼達も顔だけ変身を解き、合掌して黙祷を捧げる。

 

「あいつは、立派な鬼だったな。」

 

「そうっすね。」

 

一夏は立ち上がると、斬劉雷火を掻き鳴らした。その場を清める為の儀式の様に。それに答えるかの様に、他の音撃戦士達も各々の音撃武器で演奏を始めた。まるでその場に残留する邪気を祓うかの様な清らかな音が響き渡り、演奏を止めた後も、その音が耳に残った。

 


 
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