「はぁ、さっきから鏡ばっか見て、飯の時くらい落ち着かんか」
「うるさいわね、私にもいろいろあんの。ってかどっかへんなとこないよね?」
「変ってこたぁないが、男か?」
そう言って目の前の中年親父はさびしそうな眼をする。
「そうよー、今日はデートなの。今度家にも連れてくるわね」
でもその胸の内をしってるからこそ嘘はつかない。
要するにまた置いて行かれるんじゃないかと怖がってるだけなのだ。
それにしてもあの奥手の竜児とデートなんて、と思うかもしれないが
昨日こんなことがあったのだ。
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「奈々子ー、高須君とはどこまでいったのよ。あれから結構たつけど。」
「どこまでって言われてもなぁ」
奈々子たちは放課後3人でスドバでだべっていた。
竜児と付き合うようになっても3人の時間は大切にしたいのでここらへんはしっかりとしている。
「え!?まさかもうやっちゃったとか?どうなのよー」
実際はその逆なのだ。やっちゃったどころか手すら繋いでこない。
それどころか名前さえ呼んでもらえないのだ。
ただメールとか電話ではよくはなすし、度々好きって口に出してくれているので
奈々子も我慢しているのだがやはり不満はあった。
「だから言ったじゃん。あいつはそういう奴なのよ。もう押し倒しちゃえばー?」
「もう!お、押し倒すとかはまだはやいわよっ!それにちゃんとデートとかもしてるし」
「えー!あれはデートって言わないよ!二人で学校帰りにスーパー行ってるだけじゃん」
「げっ、さすがにそれじゃダメでしょ。やっぱこうロマンチックなとことか行かないと」
奈々子も分かってはいるのだが、竜児の金銭的な都合も知っているだけになかなか休日デートには誘いづらい。
かといって平日も家事があるのだから夜遅くまでは一緒にいられない。
「しょうがないなあ、はい」
そう言って亜美は2枚のチケットを渡してきた。
「これって……」
それはらくーじゃの1日パスだった。
らくーじゃには少なからず竜児との思い出があるのでまた行きたいとは思っていたのだが。
「どうせ前いった時はチビトラが一緒だったとかそんなんでしょ。
今度は二人で行ってきなさいよ」
「でもこれ結構高い奴なんじゃ?」
「いいのいいの、どうせ撮影でもらった奴だし、ママにゴマすっとこうって考えが見え見え」
そういうと亜美はあ~いやだと言ってアイスティーを飲み干した。
「そういうことならありがたくもらうけど」
「そうそう、もらっておいて。奈々子スタイルいいんだからしっかり水着で悩殺しちゃいなよ。
あっでも忘れないでよね!貸し1だからね!」
「らくーじゃって確かプチシアターとかもあったよね。
デートコースにぴったりじゃん、亜美ちゃんナイス!」
盛り上がる二人に顔を赤くする奈々子だったが
その場ですぐ竜児に電話をして了承をもらうあたり
やはりデートらしいデートがしたかったんだなと自覚するのだった。
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29です。
交際前のみのりと竜児の絡みなどとても簡潔に書いてしまったので
そこについてです。
これは自分個人の見方なのでご了承ください。
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