高須竜児は焦っていた。
あることをしようと決意をしたはいいが、その人を呼び出すことすら出来ていなかったからだ。
朝は不意をつかれたせいで頭からそのことが素っぽぬけ、
休み時間は元気のない大河が気になりご機嫌とり。
昼休みには教室から完全にいなくなっていた。
そして無情にも帰りのHRを迎えてしまったというわけだ。
「起立!礼っ!」
メガネの学級委員長の一言で皆は思い思いに帰宅準備を始める。
竜児の探し人もいつもの仲良しトリオでさっさと帰ろうとしてしまっていた。
「あっ!おい、香椎!まってくれっ」
「あっ、高須君。どうしたの?」
「あ、えと、その・・ちょっと時間いいか?」
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「それでおはなしって何?今日はちょっと麻耶とかと約束があるからあんま長くは無理だけど」
「わ、わざわざすまん!どうしても言っておきたい事があって」
竜児は今まで自分で何かを決めるということをしてこなかった。
まわりのため、母のため自分のことは二の次で生きてきた。
だから怖かったのだ。はじめて自分で考えて行動する、時間をおいてまた流されるのが怖かった。
「夏休みのこと覚えてるか?あの時返事を待ってほしいって言ったよな」
「もちろん覚えてるに決まってるじゃない、もしかして話しって」
「あ、ああ。そのことだ」
ついに来ちゃったか……
奈々子は自嘲気味にほほ笑んだ。
みのりはけじめをつけると言ったのだ、自分も好きだとつたえたのかもしれない。
亜美も自分の気持ちに向き合うと言った、どうあがいても勝ち目は薄いだろうなと昼休みから考えてはいたのだ。
「じゃあ、聞かせてほしいな。」
でもここで逃げたら竜児をこまらせることになる、その一心だけで奈々子は微笑んでいた。
「お、俺は今まで誰にも告白とかされたことなくて、されるとも思ってなくて。
あの時は櫛枝のこととか重なっちゃって返事できなかったけど」
「俺も香椎のこと好きだ、一緒にいて安心させてくれる香椎が好きだ。
こんな俺でよければ宜しくお願いしたい」
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