シャルルがIS学園にやってきてから数日が経過した
一夏はどうやってシャルルと話そうと考えていたが、うまく話すことができなかった
そのままずるずると日にちだけが過ぎていった
シャルルが来てから始めの土曜日、生徒の多くはアリーナに集まっていた。ほとんどの生徒が6月の終わりに行われる学年別のトーナメントの練習をしている
もちろん、一夏も練習をしようと思ってアリーナにいた。シャルルも一緒にいる
そこで一夏はシャルルに射撃について教わっていた
「一夏は、射撃武器の特性をうまく理解していないと思うんだ。知識として知っているって感じかな?」
「なるほど、そうかもしれない。俺の武器は近接だけだからな」
一夏にとってシャルルの説明は分かりやすいらしい。さすがに生徒会長の楯無には劣るが、先生でもおかしくないレベルと思っていた
シャルルの説明を聞いていると一夏はある人物を見かけた。すぐに声をかけた
「久しぶり、簪さん」
「あ、織斑君……お久しぶり……やっぱり特訓?」
「ああ、そうだな。今月末のトーナメントに向けて頑張らないといけないからな」
「うん、お互いに頑張ろうね……ところでそっちの男の子って最近噂の?」
簪がシャルルに気が付いて挨拶をした。もちろんシャルルも挨拶をする
ヒューバートはシャルルのことをしばらく見た後、何か考えていた
しばらく三人で特訓をしていると周りが騒がしくなった
一夏達はその騒ぎになっている所を見てみるともうひとりの転校生、ラウラの姿があった
彼女はドイツの専用機を装着していた。まだ試験中なので実物を見ることができるのは珍しいことのようだ
彼女は一夏に気が付いた途端、敵意を向けた
「おい、貴様も専用機持ちだな? 私と戦え」
「……俺には戦う理由がない」
いきなり宣戦布告をするラウラに一夏はすんなりとかわす
「私にはある。貴様がいなければ教官は大会2連覇を達成できたことは容易に想像できる。貴様の存在を認めるわけにはいかない」
(……簪からなんとなく話は聞いていましたが随分とくだらない理由ですね)
(一夏、戦うだけ無駄よ。あなたにとって得るものなんて何もないわ)
ヒューバートとジュディスの言葉に一夏は頷く
「悪いけど戦うつもりはない。大体こんな大勢の中で戦う気か?」
「安心しろ……貴様だけを一瞬で潰してやる」
すぐにラウラは武装を展開して、砲撃をかました
その攻撃は一夏には届かなかった。本人はすぐに後ろに下がってかわし、シャルルはシールドで防ぎ、簪もすぐに攻撃ができる体制に入っていた
「随分と沸点が低いね。ドイツの人は」
「貴様……アンティークごときが立ちふさがるとは面白いことをする。そしてそこにいる邪魔なやつも……」
「……こんなに人がいるのに……少しは考えたらどうなの?」
「俺も簪さんの意見に同感だ」
一夏、シャルルそして簪も静かにラウラを見つめる。もちろん、いつでも戦えるように構えている
一方、ラウラもいつでも戦えるようにしていた。空気が重苦しくなっている。誰もがそう思い、すぐにでも戦いが始まると思っていた
しかしその戦いが始まることはなかった。騒ぎを聞きつけた教師がやってきたからだ
興が削がれたのか、ラウラはすぐに引いた
引き締まっていた周りの空気が元に戻った
「ふう、まあ何とかなったか。ありがとう、簪さん、シャルル」
「気にしないで」
「ううん……それに、織斑君ならあれくらい」
簪はそこで言うのをやめた。何かを気にしているみたいだった
結局その日のアリーナの特訓の時間は終了してしまった。そのため、着替えるために更衣室に向かおうとしたのだが、シャルルは後で行くと言う
気になっていることがあったため一夏は少し強引に行動を起こした
「なあ、たまには一緒に着替えないか?」
「ええ!? ご、ごめん! は、恥ずかしいから!」
そのままシャルルは顔を赤めながら更衣室に向かって走っていった
それを見ていたヒューバートが簪に話しかけた
(すみません、簪。少し一夏さんに話があるので先に行ってもらってもいいですか? 数分で終わるので、更衣室の前で待っていてください)
(え? うん……構わないけど)
ヒューバートは簪に事情を話し、先に帰ってもらった。そこで彼は今日初めて会ったシャルルについて質問をしていた
(……一夏さん、あのシャルルという方ですが、いくら何でも恥ずかしがりすぎでは?)
そこで一夏は昨日ジュディスと話したことを話す。シャルルが実は女性なのではないかと? しかしまだ確信はない事
そこまで話すとヒューバートは少し考え、話し始めた
(……確信はないんですね。でしたら簪に話すのはよしておきます。余計なことを言って混乱させるのは良くないですから)
ヒューバートの意見に一夏とジュディスは賛成していた
部屋に戻ると、シャルルはすでにジャージを着ていた
「シャルル、さっきいいお茶をもらったから一緒に飲まないか?」
「うん、いいよ。食事の前だから量は少なくていいよ」
一夏はすぐに準備をして湯呑にお茶を入れた
そのまま持って行き渡そうとしたのだが、手が滑ってしまい、シャルルのズボンにお茶をこぼしてしまった
「ああ、ごめん! 今すぐ服脱いで! シミになっちゃうから急いで洗わないと」
「ええ! でも……」
そのシャルルの態度で一夏は確信した
「……脱げないのか? 女の子だから」
その言葉にシャルルは驚いた。見破られたのだから
「……とりあえず着替えてくるね」
一度シャルルは着替えた後、質問をした
「どうしてわかったの?」
「いや、着替えの時とかにあまりに俺と距離を置いていたからな。少し気になって知り合いに相談したら女の子じゃないのかって言われたんだ。言っておくけどお茶をこぼしたのは偶然だから」
シャルルは観念したのか話し始めた
「僕はね、デュノア社の社長の本当の娘じゃないんだ。愛人の子供……なんだ」
その言葉に一夏は驚く
「二年くらい前にね、僕のお母さんが病気で亡くなった後に引き取られたんだ。まあ、扱いは良くなかったね。実際に父親と話した回数なんて一時間もないし」
一夏は彼女の話を黙って聞いていた。シャルルには見えていないが、ジュディスも聞いている
「その後検査の結果、僕にISの適性があることが分かったんだ。でもそれと同時にデュノア社の経営が悪くなった」
「ん? どうしてだ? 確か、デュノア社ってISの開発ではかなり有名だったはずだよな」
「そうなんだけど、結局作れているのは第2世代、他の国では第3世代なのにね。だからこそ第3世代を作れないと会社の経営が成り立たなくなる」
「もしかしてシャルルがここに来たのは……」
(IS学園に通えば他の国やあなたというイレギュラーのデータが取れる……要するにスパイとして彼女は送り込まれたのでは?)
ジュディスの言うことはほとんど当たっていた。そんなシャルルの言葉に一夏は不機嫌になっていた
「でも、それももう終わりかな? 僕のことがばれたから……」
「どうなるんだ?」
「デュノア社は倒産か他の企業に吸収されるだろうね。僕自身は……牢屋行きかな?」
「……シャルル、お前はそれでいいのか?」
一夏はシャルルに強い感情をぶつけていた
「お前はどうしたいんだ!? このまま牢屋に行く? 冗談じゃない!」
「一夏?」
「親の道具にされてそのままだなんて……そんなの悲しすぎるだろ!?」
「ど、どうしたの? 一夏……?」
「……俺と千冬姉も両親に捨てられたんだ。だからこそ、お前のことがなんとなくだけどわかる気がする」
そんな一夏の言葉にシャルルは驚いた
「シャルル、この学園にいれば三年は大丈夫だったはずだ。その間に何か対策を考えればいいさ」
「……特記事項だね。あれ結構あるのによく覚えていたね」
シャルルは微笑んでいた。ここに来て初めての本当の笑顔なのだろう
そんな彼女を見て一夏も少しは落ち着いた
「……とりあえず、晩御飯食べに行こうか。その後もう少し話そう」
一夏の提案にシャルルは頷いた
食堂に行くと、簪と本音と出会った。そのまま四人で食べることにした
食べていると一夏の携帯に電話がかかってきた
「ごめん、ちょっと」
どうやら友達だったようだ。しかし簪は別のことに注目していた
その電話が終わると簪は一夏に質問していた
「ねえ、織斑君の……今の着信音……もしかして」
「お、簪さんも知っているんだ? あのアニメの主題歌だよ。いい曲だよな」
その瞬間、簪の目が輝いた
そのまま簪と一夏はそのアニメの話で盛り上がっていた
そんな二人をジュディスとヒューバート、本音は温かく見守り、シャルルは良くわからないという感じ、リオンは少し呆れていた
盛り上がっていたのを周りの生徒はいいなという感じで見ていたのはまた別の話
スキット
シャルルについて
夕飯の後、シャルルについて少し話していた
結局しばらくはそのまま男ということにしておき、それを生徒に対して隠す手伝いを一夏はすることにした
そのことでジュディスと話していた。もちろん修業をしながら
「そう、決めたのなら頑張りなさい。でもそれは単なる時間稼ぎよ」
「わかっています。何としても3年の間に見つけてもらいたいです。俺はその手伝いくらいしかできないですけど」
一夏はISを装着しないで、木刀で魔物と戦っていた。
ISを装着していれば数分もかからずに倒せる魔物だが、今の一夏では10分はかかってしまう
「……生身はきついですね。でも」
「ええ、更識のお姉さんが言っていたようにISなしでも身を守れるようになるために頑張りなさい」
ジュディスも同じように魔物と戦っているが、一夏よりも数倍は強い魔物を簡単にかつ楽しそうに戦っていた
(……あのレベルまで行けるようになろう)
そんな風に一夏は思った
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