その女は、朦朧とした意識の中で、自分に必至で呼びかける少女を見ながら思った。自分は馬鹿らしい事をしていたな、と。ただ自分の愛娘に会いたい、ただそれだけで一人の少女の人生をメチャクチャにし、あげくの果てには一つの世界の存亡を危ぶめた。万が一このまま目的地にたどり着けても、そのまま自分は死を迎えるだけであろう。
落ちたら最後、二度と上がれない虚数空間に落ちながら、最後にこう思った、
(フェイト、これからは幸せになってね)
彼女の名はプレシアと言った。この後から有名になる「プレシア事件」の首謀者である。
この時彼女は気づいていなかった、偶然開いた異空間の扉の中に落ちて行ったことを。
「あーあ、お腹空いたな。」
やわらかい日差しの降り注ぐ森の中を、変わった格好をした一人の少女が歩いていた。スクール水着のような服の上に豚を彷彿させる着ぐるみのような装備を身に着けた彼女はデジモンであり。名前は「チョ・ハッカイモン」である。
お腹が減るとすぐに狂暴化する性格を変えるため日々修行を重ね、今では腹八分目までは我慢できるようになっている。
彼女は偶然、倒れている人影を見つけた。
(だいぶ脈がうすい、息もかすかだし、人間の世界での不治の病にかかってるな。)
倒れている女の脈拍や呼吸を確かめながらチョ・ハッカイモンは思った。そして周りを見回すと、特殊な液体で満たされ、中に少女が一人浮かんだケースが転がっているのを見つけた。
「こんなかの子供はもう死んでるな。でもなんでこんなとこに?」
チョ・ハッカイモンは一応考えたが、何も浮かばないので、
「しょうがない、サンゾモンさんの所に持っていこう!」
と言う事になり、倒れている女と謎のカプセルを担ぎ上げたチョ・ハッカイモンは、駆け足で遠くに見える寺院のような建物へ向かっていった。
彼女が担いでいったのは、元いた世界では死んだと思われているプレシア・テスタロッサだった。
チョ・ハッカイモンにより担ぎ込まれたプレシアは、その後しばらくしてから目覚めた。驚くことに今まで死に掛けだったとは思えない程に気分は清々しく、所謂”生き返ったような気分”だった。
「お目覚めになりましたか。」
自分の寝ている布団の傍に座っていた、僧服を身に着けた美しい女性が訊いた。
「…ええ、まあ、」
プレシアは簡単に返した。そして、ここはどこで、自分はいったいどうなったのか、と考えた。すると、
「申し遅れました、私は「サンゾモン」ここはデジタルワールドの「シュラインゾーン」です。」
プレシアが訊くよりも早く、サンゾモンが答えた。
(でじたるわーるど?しゅらいんぞーん?)
聞いたこともない単語を沢山並べられたプレシアは混乱した。元々自分は「ジュエルシード」を使って次元震を発生させ、その時の衝撃で空間に穴をあけ「アルハザード」へ行こうとしたのだ。
「ああ、それについてはこれから詳しくお伝えします。まずは…」
相手が混乱していることを悟ったのか、サンゾモンは詳しい説明を行おうとした。その途端、勢いよく扉が開き、誰よりもプレシア本人が驚く人物が入ってきた。
「ママー!!」
元気よく入ってきたのは、綺麗な長い金髪の髪を二纏めにした少女。見た目はフェイトと瓜二つな彼女の名は「アリシア」かつての事故で死んだ、フェイトの姉にあたる人物である。
「え、アリシアなの?なんで?」
プレシアは目を疑った。もう二度と見れないと思っていた愛娘アリシアが元気に動き回る様子を自分は見ているのだ。これは夢なのではないかと思い何回か自分の手の甲を抓ってみたが、紛れもなく現実に起こっている事だった。
ふと傍にいるサンゾモンを見ると、
(あ、えーと、これから詳しく説明します)
と言いたげな顔をしていた。
「ああ、ここにいやがった。」
続けて、全身黒い毛で覆われた、サルのような男が部屋に入ってきた。プレシアが、豊臣秀吉はこんな感じの人だったんだろうな、と考えていると。
「どうしたのですか、ゴクウモン?あなたにはアリシアの面倒を見るように言ったはずですが。」
怒っている感じはないが、それでも自分に後ろめたい事があれば気圧されてしまいそうな口調で、サンゾモンは入ってきた男に訊いた。
「どうしたもこうしたも、どこで聞きつけたのか母親が起きたって聞いた途端、会いに行く、って言って聞かなくて、こんなに早くここを嗅ぎつけるとは。」
ゴクウモンと呼ばれた男は、息を切らしながらサンゾモンに言った。
「おじさんだらしないなぁ。」
アリシアがゴクウモンにこう言うと、
「あんまりおいたがすぎると、おっちゃん怒っちゃうぞ。」
と、返された。その途端、
「それはやだ!!」
アリシアは即答に近いタイミングでゴクウモンに言った。
プレシアは、アリシアの様子を見れたのは良かったが、話が進まないので、
「アリシア、ママはこれからこの人と話があるの。だからしばらくはこのおじさんと一緒にいてちょうだいね。」
と、アリシアに言い聞かせた。
「……分かった、行こうおじさん。」
アリシアはしばらく考え込むと、しぶしぶ了承したようで、ゴクウモンと部屋から出て行った。
「おじさんを困らせないようにね。」
プレシアは最後にこう言っておいた、
「さて、それでだけど。」
プレシアがサンゾモンに言うと、
「分かりました、ではこれからこの世界について説明しますね。」
サンゾモンはデジタルワールドの説明を始めた。
デジタルワールドとは、人間がインターネットを普及させるより前から存在する、あらゆる事物がデータで構成された世界であり。人間のインターネットは、デジタルワールドに存在する”使われていない場所”を利用した物であること。
元々は人間界同様に一つの世界だったが、しばらく前にバラバラに分解し、今では土地の種類ごとに分かれた状態になっており、ここには寺社仏閣やそれに準ずる施設が集まっているため「シュラインゾーン」と呼ばれていること。
「それは分かったけど、どうして私の病気が治っているの?それにあの子が生き返ってる理由は?」
次にプレシアはこう訊いた。
「私のデジコアには、あるゆる難病を完治させ永遠の命を与える力があるのです。あなた様とアリシアに少し分け与えたのです。」
おかげで少し寿命が縮みましたけど、とサンゾモンは笑顔で言った。
「最初は勝手なことをしてしまったかと思ったのですか、」
サンゾモンはこう言っているが、プレシアに取っては願ったり叶ったりだった。元々、彼女を生き返らせるためにアルハザードを目指したのだ。結果的にたどり着いた場所は違ったが、結果オーライと言う事になる。
しかし、問題はこの後である。彼女は最後に自分に「妹がほしい」と言った。彼女にとって妹に当たる人物がいて、自分がその子にひどいことをしていたと知った時、彼女はどう思うだろうかと。
「よろしければ、私が話を聞きますが。」
サンゾモンが話しかけてきた。
プレシアはふと外に目をやった。外では、ゴクウモンと一緒にバスケットボールのコートと思われる場所でサッカーボールで遊んでいるアリシアが目に入った。
「ええ、聞かなければ良かったと思わないならね。」
プレシアはこう告げて、これまでの事を簡潔に話した。
ある時、死んだ娘を蘇らせようと、本人の遺伝子を培養し一人の少女を生み出した。見た目や声は一緒だったが、性格や癖はまるで別人だったために、彼女を娘と扱わず、日々虐待と言っても過言ではない接し方をしていた事。
そして、失われた技術が多く揃うと言われる世界アルハザードを目指し行動を起こしたが、結局最後はこれまでひどい扱いをしていた自分の娘に止められてしまい、その後虚数空間に落ちて今に至る事を。
プレシアが話す間、サンゾモンは嫌な顔をせず最後まで聞いた。そして、彼女が話し終えると、
「そうなのですか。」
と、言った。そして、
「大丈夫でしょう。あなたがその事をアリシアに話した後、機会があればその娘も同じように娘と扱ってあげれば。あなたが目覚めるまであの子と何回か話ましたが、アリシアはとても聡明で寛容の心を備えた方だと分かりましたから。」
と、プレシアに言った。
「そう、機会があるならね。」
プレシアがこう呟くと、
「そういえば、これからについて何かあては?」
と、サンゾモンが訊いた。当然ながら、今のプレシア母娘にこれからのあてが有るはずはない。
「最近はバグラ軍なる組織がデジタルワールドの各地を侵攻していますし、よろしければこちらにとどまりませんか?」
サンゾモンはプレシアにこう告げた。なので、プレシアはアリシアと一緒に、元の世界に戻る算段が付くまで、シュラインゾーンにとどまることになった。
その後、プレシアはデジタルワールド内で科学者となった。バグラ軍に対抗する手軽な手段を模索するため、お忍びで各地を回り古文書などを調べ、ちょうどデジタルワールドにタイキ達がやってくる少し前にデジクロスについて発見し、それを可能にする機械「クロスローダー」の仕組みを考え出した。しかし何かの皮肉か、その技術は何故かバグラモンの手に渡り、結果的に「ダークネスローダー」制作の参考になってしまったらしい。
他にも、シュラインゾーンの中では医者としても活躍し、多くのデジモンから「プレシア先生」と親しまれるようになった。
アリシアは、ジェネラル兼戦士としてシュラインゾーンで育てられた。何故かと言うと、サンゾモンのデジコアの力で復活した彼女は、少しばかりであるがサンゾモンの力が使えたばかりか、常人を上回る運動能力とある程度の魔力を得たので、それを皆の役に立てたいと皆に言ったのだ。言うまでも無くプレシアは反対したが。
それでも、アリシアは日々努力を続けてたくましく成長していった。
「えーと、これは5の√8だよね。」
「そうじゃぞい、でもどうせなら10の√2の方が正しいんじゃマキ。」
プレシアから怠るなと言われた勉強については、かつて人間の子供と一緒にデジタルワールドを旅したことがあるというデジモン「ボコモン」から教わり。
「えーと、目ばかりを頼らず心の目を頼る。」
「そうそう、その間にも状況把握は怠るなよ。」
武術に関しては、ゴクウモンやサゴモンの指導を受けた。
そして、彼女に取ってパートナーと呼べるデジモン「ギルモン」に出会った時、シュラインゾーンに危機が訪れた。
これまではデジタルワールド内で唯一平和だったシュラインゾーンだったが、ある時バグラ軍の将「タクティモン」が大軍を率いて攻めてきたのだ。軍の中にはドルルモンもいた。
ゴクウモンを始めとする、戦闘能力のあるデジモン達が必至で応戦したが、あっという間にバグラ軍の兵士達にやられてしまった。
「うわぁぁぁ!!」
「ちっ、チョ・ハッカイモンでもだめか。」
たった今、皆の中でも特に若く力も強かったチョ・ハッカイモンがドルルモンにやられた。
「どうしよう、とんでもない事態に、」
アリシアは心の中で思った。自分もこれまでずっと戦闘訓練を重ねてきたが、教え主であるデジモン達がやられた以上、自分が勝てる道理は無い。ギルモンも力自体は強いが、それでも日頃から実践を繰り返すバグラ軍のデジモンには勝てないだろう。
「悪しき者たちよ、ここは御仏に護られた神聖な場所です。」
すると、突然どこからかサンゾモンが現れ、その途端バグラ軍の兵士達が何かを避けるように動き始めた。サンゾモンの「無限弾幕心経」である。これにより、バグラ軍の兵士の目には、多数の数珠が襲い掛かってくるように見えているのだ。
「猪口才な。」
しかしタクティモンは平気なようで、持っている刀を地面に突き立てた。その瞬間、大きな衝撃波が発生し、サンゾモンは大きくふっ飛ばされた。
その様子を見ながらアリシアは心の中で怒っていた。ここのデジモン達は何もしていない、ただ普通に平和に暮らしていただけなのだ。それなのに勝手な理屈をつけて攻撃をしかけてくるバグラ軍に。
(この力、前にも)
アリシアの隣のギルモンは、アリシアの中から溢れる力を感じながらこう思った。
「アリシア、一緒に戦おう!!」
ギルモンはアリシアにこう告げた、
「アリシアが一緒に戦おうと思えばできるはずだよ。」
アリシアは、ギルモンの言葉を聞きながら思った。自分だって戦士なのだから、戦わずしてなんとすると、
「うん!行くよギルモン!!」
そして、母親のプレシアの作ったクロスローダー初号機を掲げた、
「大丈夫か?」
「早く安全な場所へ。」
ふっ飛ばされたサンゾモンを担ぎながら、プレシアと彼女のパートナーである、隣の紫の人型のドラゴン「ストライクドラモン」は言った。
「にしても、あれは何だ?」
ふと、遠くの戦場を見たストライクドラモンはプレシアに言った。その場所からは、とてつもない光が発生していた。
(アリシア)
様子を見ながらプレシアは思った。
「うわぁぁぁ!何が起こったんだ!!」
ゴクウモン達は勿論、バグラ軍側も驚いた。アリシアが不思議な機械を掲げると同時に、彼女とギルモンを巨大な光が包んだ。そして、その光が一つになると。
「ギルモン、超進化!!」
ギルモンは背中には真紅のマントを身に着けた騎士の姿に変わった。
「デュークモン!!」
その様子を見ていたタクティモンは、
「何?!一瞬で進化した?馬鹿な、私がこの姿になるのにどれほどの年月を費やしたか。」
と、驚いた。
「うおぉぉぉ!!」
デュークモンは右腕に装備した聖槍「グラム」を構えて突進した。
「くっ!」
タクティモンは自分の刀「蛇鉄封神丸」で受け止めた。
「な、なんて力だ。」
遠くで様子を見ていたゴクウモン達は、
「すごいな、あのデュークモンとか言う奴、タクティモンと互角に戦うなんてな。」
と、思っていた。
「というか、アリシアはどこいった?」
周りを見渡しながら、黒い河童のようなデジモン「サゴモン」が言った。
その時である、突然巨大な岩が降ってきた。
「えええぇぇぇぇ!!??」
デュークモンとタクティモンの戦いの衝撃で飛んできたことは簡単に予想できたが、それでも皆驚いた。
岩が地面に落ちる瞬間、デュークモンの槍が飛んできて岩を砕き、細かくなった岩をデュークモンの盾「イージス」が防いだ。
「大丈夫か?」
その場に居合わせた皆にデュークモンはこう訊くと、すぐさまタクティモンに向かって行った。
「あいつ、もしかしてアリシアか?」
皆一様にこう思った、
そういえば、人間とデジモンが合体することで、今までにない力が生まれたという伝説があったっけ、と
「ファイナルエリシオン!!」
デュークモンはイージスを構えると、そこから聖なる光を迸らせた。
「壱の太刀!!」
タクティモンは自分の刀を地面に突き立て、発生させた衝撃で光のエネルギーを切り裂いたが、軌道をそれた光は自軍の兵士達の元へ飛んで行った。
「ロイヤルセイバー!!」
「鬼神突!!」
デュークモン、タクティモンは決着を付けるため、それぞれの得意技をぶつけ合った。そして、二つの影が通過した後、タクティモンは背中に装備した銃を使って、花火のようなものを打ち上げた。
「信号弾か!黒、白、黒、一時撤退だ!!」
上空を見ていたドルルモンは、自軍の兵士達に叫んだ。そして、兵士達を逃がしつつ後退を開始した。
最後にタクティモンは、鎧の傷が付いた部分を押さえながら。
「この痛み、決して忘れぬ。」
こうデュークモンに言い残して、その場を去って行った。
「やったか。」
デュークモンがこう言うと、デュークモンが光に包まれ、中からアリシアとギルモンが出てきた。ギルモンはともかく、アリシアは疲労困憊のようで、出てくると同時に倒れた。
「まったく、大した奴らだな。」
二人の元へ駆け付けたゴクウモンは言った。
「とにかく、今は休ませてあげよう。」
ギルモンをチョ・ハッカイモン、アリシアをサゴモンが担いで、皆はサンゾモンのいる寺へ戻って行った。
この後、シュラインゾーンのコードクラウンは「ダメモン」に盗まれてしまったが、相変わらず平和なゾーンとして存在し続けた。
バグラ軍統合後は「サイバーランド」の一部になったが、プレシアがサンゾモンの力を再現する結界を開発し、寺の存在を「スプラッシュモン」や「ドリッピン」達にばれないようにしていた為、唯一平和な場所となった。
その後、彼女たちもタイキとある事件に関わることになるが、それはまた別の話。
カットマン
「カットマンと。」
モニタモンズ
「モニタモンズの。」
全員
「デジモン紹介のコーナ―!!」
カットマン
「さて、今回のテーマはグレイモン。グレイモンは恐竜型のデジモン。必殺技は、灼熱の火炎を浴びせる「メガフレイム」頭の角で突進する「ホーンストライク」しっぽの刃物で相手を斬る「ブラスターテイル」だ。」
モニタモンA
「とても狂暴性が高く、同族のデジモンですら食い殺す狂暴なデジモンですな。並大抵のジェネラルでは使役するのは不可能ですな。」
モニタモンB
「ちなみに、かつて登場したオレンジ色のグレイモンと区別をつけるため、ゲームではオレンジ色の方は「グレイモン レジェンド」と呼ばれていますな。」
モニタモンC
「レジェンドと今のグレイモン。どっちが強いのかな。」
全員
「それじゃあまたね。」
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