「余は四歳児をやめるぞ!アンナーッ!」
「お誕生日おめでとう御座います、つきましては、来週から奥様より直々の戦闘訓練のご予定が追加されます、よかったですね」
「ど う し て こ う な っ た」
「本気で解りませんか?少しお考えになられれば理解していただけると思うのですが・・・」
・・・・・・・・・・・・決闘の後の話を少しだけしよう
―――決闘に勝利し、自室に戻ってすぐ、余の意識が途絶えた
身体と魔力をあれほど酷使するには、まだ幼すぎたということか
身体のほうは全身にガタがきており、指一本一ミリ動かすのにすら、激痛を伴った・・・と言うか、ほぼ全身の骨に罅が入っていた。
骨の罅は家お抱えの水のメイジにある程度治療してもらい、後は自分で治療した。
聞いた話なのだが、余と姉上の決闘を見に来ていた見物客達の感想は、賛否両論が激しいようである
曰く、「武器と言うものは、持ち手、使い手によってあれほど違うものなのか」
曰く、「公爵家から武器を持つ恥知らずが出た」
曰く、「あの魔法の使い方、実に興味深い」
曰く、「異端審問に懸け―うわなにをするやめ――」
曰く、「天才とはこういった者のことを指すのか!」
と、まあ、余に対する感想はこんなところか
「なあ、アンナ」
現実逃避の材料がなくなってしまった・・・何か、何か他には・・・!
「せっかく残念な天才を演じておられたというのに、残念でしたね、ふふっ」
・・・あれっ?
「アンナ、そなたの言葉と表情が一致しないのだが、何か心当たりは?」
心なしか、アンナの笑顔が怖いような・・・
「まさか、ネロお嬢様が「残念な天才」に見えるよう、精一杯手助けさせていただいたというのに、そんな私の努力を水の泡にしてしまったネロお嬢様に対するあてつけなど、そのような畏れ多い事、私にはとてもとても・・・」
あ、あれぇ~~?超イイ笑顔なのだが
「滅茶苦茶根に持っているではないかー、やだー」
「いえいえ、ただ少し、容(かたち)は違えどネロお嬢様にも私の苦労のほんの一片くらいは知ってもらおうかと思いまして、奥方様に提案させていただきました。」
おい おい!
「それを人は根に持っていると言うのだ!と言うか、何故そなたが母上に提案することが出来るのだ!」
進言するどころか、普通にその進言がまかり通ってることに驚きを隠せぬわ!
しかも五歳の誕生日プレゼントとしてだぞ!?五歳の誕生日プレゼントとして、彼の烈風のカリンの実戦訓練だぞ!?物騒すぎるのにも程度があろう!
「私が一番ネロお嬢様と接していますので、こと誕生日プレゼントに関しては、私にも提案する権利がありますというか・・・お嬢様が魘されながら強くなりたいと寝言でつぶやいておられた、と奥様にうっかり話してしまいまして、奥様もそういうことなら、と・・・テ、テヘ・・・?」
いやいやいやいや
「そんな物騒なうっかりなど要らんわ!・・・それにここ1年ほど、夢を見るほど深く眠れた覚えは無い・・・ぞ・・・あ゛っ、いや、その・・・」
こ、これ、は・・・二年ぶりに地雷を踏んだ・・・か?
ふ、ふむ、表情は変わらず笑顔のまま、セ、セー・・・フ?・・・いや、目が笑っていない!?と言うことは―――
「最近夜中に物音がすると思えば、そうですか、そんなに前から・・・良いでしょう、この事は
あ、アウトですかそうですか
「ふ、ふふふふふふふん!ははは母上のききき恐怖ななどと、とうに乗り越えた・・・ぞ・・・?」
どうしよう、余の予想を軽く超えてきそうな気がする、母上マジ母上、生きるチートとはこの事か
「―――それは良う御座います、では、来週からの訓練にて、私も参戦させていただきます・・・ご安心を、ヴァリエール家当代一の【暴れん坊】であらせられるネロお嬢様のお世話を任される身、ですので多少ではありますが、荒事の心得が御座います」
あれ、何故だろう、余の目がおかしくなったのだろうか・・・?
アンナの背後にラスボスより強いエレベーターガールの形をしたパワーヴィジョンが・・・
目を擦ってもう一度アンナを視認する・・・うむ、問題なし
パワーヴィジョンは確認出来ず・・・問題は無い、無いったら無い・・・無いといいなあ・・・
「と、まあ、一週間後の決定事項はともかく、ネロお嬢様は何故、深く眠れないか、原因に心当たりは・・・あるようですね、畏れながら、差し支えなければ、私に話していただけませんか?」
ぬぐっ・・・
「う・・・むぅ・・・そ、その、だな、アンナが、その、何処か遠いところに行ってしまうのではないかと不安になってだな、その、何だ、安心して眠れないのだ」
・・・余自身の事ながら、なかなかに恥ずかしいことではあるが、これもまた余の内の真実である
「ぐぶふっ・・・」
「ぴぃっ!?ア、アンナの目と鼻と口から血がっ!?」
こ、怖っ!?笑顔のままでそれは怖い!超怖い!だ、誰ぞ水魔法を使える者は!
・・・あ、余も使えたな、スクウェアで
「ま、待っていろ、今余が回復魔法を・・・!」
「い、いえ、ご心配なく、これは血ではなく、溢れ出た忠誠心ですので、私の体調や命にこれといった負担は御座いません」
「く、口から赤い液体を撒き散らしながら喋るな!怖いわ!」
いくら余でも、これだけ怖くては涙目くらいにはなるのだぞ!
「おっと、失礼いたしました」
そういうや否や、懐からハンカチを取り出し、何時以来かの、一瞬で顔を元に戻す技能で、溢れ出た忠誠心を綺麗に拭き取った
「うっ・・・ふぅ、ネロお嬢様、案外子供らしい所もあるのですね、少し安心しました」
「まだ子供だからな!5歳児だか・・・?」
おいまていまの間は何だ、明らかに何かこう、今の余に対して抱いてはいけない名状しがたき劣情のようなものを―――いや、何でもない
何でもないのだ、有ったら有ったで余の貞操が危なそうではあるが、い、いや、考えるな、それはフラグだ・・・!
そうだ、こんな時こそ安価神の加護を活用―――
1、聞いてみる→難易度:あきらめろ BAD?END
2、このまま考えてみる→難易度:フラグ乙 BAD・・・?END・・・?
3、三十六系逃げるにしかず→難易度:人の話は最後まで聞きましょう・・・? 余のお尻がEND
4、こうなったら禁忌を冒してでも逃げる!→いくえふめい
5、露骨に話題を変える→余の寂しがり発現を暴露される可能性・大
・・・アンナよ、いったいそなたは何処に向かっているのだ・・・?
Tweet |
|
|
4
|
2
|
追加するフォルダを選択
ネロ、地雷を踏み抜いたり墓穴掘ったりするのこと。
相変わらず下手だな・・・俺ェ・・・