No.488312 いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生したたかBさん 2012-09-25 01:54:51 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:7831 閲覧ユーザー数:6945 |
第六十八話 茶碗に盛られたご飯もナイフとフォークで食べるよ!
高志達がモービディックと戦っている頃。
リインフォースの砲撃を受けたシュロウガはその黒騎士然とした鎧の所々がボロボロにしながらも何とか受け切り、海に落ちることなく浮遊し続けていた。
「…障壁の前後に転移陣。さすがに防げないな」
「よく言う。…あの砲撃を受けてまだ立てるか」
アサキムが自嘲めいたことを言うがリインフォースにはもう、余裕は無かった。
もうすぐ、はやてとの逆ユニゾンがきれる頃だ。
「…さすがにこれ以上は僕でも危ないな」
「だったら今のうちに捕まえてやる!」
アサキムの言葉を聞いたヴィータの一言がまずかった。
彼女は弱ったアサキムを一気に取り押さえようとしてグラーフアイゼンを振り上げ、アサキムに突撃していった。
彼女の言葉を聞いた瞬間。
魔力が高まる音を聞いたのはこの場ではリインフォースだけだった。
「…『捕まえる』?この…太極に捕らわれている僕を」
ギィイイイイインッ。
「やめろ!ヴィータ!」
リインフォースはヴィータを止めようとして彼女とアサキムの間に割って入ろうと高速スピードで止めに入る。
その瞬間。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!
海しかない世界でひときわ大きな爆発音と、その辺り一帯の海の水分を全て蒸発させてしまうのではないかと熱が発生した。
「はやて!ヴィータ!リインフォース!」
シグナムとフェイトが呼ぶ声が周りの者達にも聞こえるようになった時、爆発のあった空間には体中のやけこげた姿のリインフォースと抱きかかえられたヴィータの姿。
「…ぐ。無事かヴィータ」
「リインフォース!なんで!?」
自分を庇ってダメージを受けたのだと理解したヴィータは慌ててリインフォースを抱きしめ返す。
驚きの感情が彼女を覆っていたはずなのに背中から発せられた殺気に彼女は背筋を凍らされたかのように感じた。
「…これ以上僕を『縛る』というのか?…冗談でも笑えないね」
今までにない程のアサキムの怒りとさ殺気の入り混じった声を聴いた全員がその場に凍りついたかのように動けなくなった。
「…そんな。あの砲撃はトリプルブレイカー並の威力なのに」
「…あれで、全力だったわけでは無いというのか」
シャマルは時間を巻き戻しているかのように壊れた装甲が再生していくアサキムを見て怯え、シグナムは先程発生した大爆発を巻き起こしただろうアサキムからは一向に衰えを感じさせないことに。圧倒的な戦力差を見せつけられ、歯を喰いしなる。
「化け物め」
ザフィーラは消耗しきっているリインフォースの前に移動して、彼女とヴィータを守るように立ちはだかる。
そんな彼を嘲笑うかのようにアサキムが動いた。
そう知覚したのは彼の持つ剣がヴィータに振り降ろされる直前だった。
「…。決めたよ。鉄槌の騎士。君はここで『悲しみの乙女』の糧になれ」
[ソニックムーブ]
赤黒い剣閃と金色の光が交差した。
アサキムの持つ剣が振り降ろされた空間には赤黒い数滴の血と金と銀色の美しい髪が数本、宙に舞っていた。
「…テスタロッサ!」
「大丈夫。かすっただけだから」
リインフォースとヴィータはフェイトが助けてくれたことよりもアサキムの攻撃を受けたことを心配して声をかけた。
フェイトはそれを心配しないでと笑いかけたが、彼女のすぐ後ろにはアサキムがいた。
「…よそ見をしている暇はあるのか」
「っ。バルディッシュ!」
[カートリッジロード!]
「テスタロッサ!」
「主!」
近くにいたザフィーラに目もくれずヴィータに照準を絞って追撃をするアサキム。
リインフォースとヴィータの二人を抱えた状態で回避徹するフェイトだが、その速度はだんだんと遅くなっていく。
度重なる連戦と、アサキムの持つスフィアが彼を回復させていく。その為、こちらは消耗するがあちらは好調になっていくだけだ。
他の騎士達も彼らを追うが、この二人の速度には追いつけない。
そして…。
「…霞となりて散れ!」
フェイトの目の前に現れたアサキムが剣を振るう。
フェイトの目にはその動きが走馬灯のように見えた。
(…私は。…また守れなかったのかな)
フェイトの目から希望の光が消えかけた…。だが、その目に入り込んできたのは絶望だけじゃなかった。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
背中に己を砕かんばかりの炎の翼を持ち、今も涙を流しながら、それでも家族を守り抜くと吠える獅子の姿。
「アサキム!!」
『傷だらけの獅子』が、少女達の前に現れた。
モービディックを倒した後、はやて達がアサキムに襲われていると聞かされて急いでそこに転移するとリインフォースとヴィータがフェイトに抱えられてアサキムから逃げている姿があった。
それを見て飛び出そうとしたアルフやなのは。
だが、その二人よりも飛び出したのがガンレオンを着込んだ高志だった。
「アサキム!俺はあいつを倒したぞ!だから、
マグナモードで激痛に襲われているにも関わらず、高志は冷静に。いや、『本能』で悟った。
今まで戦ってきたアサキムは
自分達ではスフィアの力を使いこなしているアサキムには勝てない。という事を…。
せめて、自分とリインフォース。なのはやフェイト達などの管理局組。守護騎士達全員が全快状態でなければ勝てない。
いや、戦うことも出来ない。
「………いいだろう。君は一段と『傷だらけの獅子』を。そして『悲しみの乙女』は可能性を見出した。それに免じてここは引くよ」
ガンレオンのマグナモードの圧倒的パワーとスピードに押されて、フェイト達がいるところから少しでも離れようとアサキムを押し出している形でその場からどんどん離れていく。
「…悪いな。お前も大変なのに」
「気にすることはないよ。所詮君も僕も同じ存在なんだから。長い時の流れの中で君ほどのリアクターは見たことが無いからね。強く、儚く、誇り高い、寂しがり屋の獅子。君が生きている方がスフィアは集まってくるかもしれないからね。ただし、これは貸しだ」
「何を要求するんだよ?」
「簡単さ。『僕以外に殺されるな』。君は僕の物だ」
ぞぞぞっ。
「やめろ!お前!殺気と悪寒を感じてしまったじゃねえか!」
腐った女が聞いたら「アサ×タカ!ううんっ、タカ×アサもいいわね!」て、叫んでいるだろう。
「…それじゃあ、僕は下がるよ。今回は来なかったが今度は『偽りの黒羊』が現れるだろうさ。それまでは僕は手を出さない。せいぜい静養することだね」
アサキムはそう言うと、シュロウガを鳥型に変形させ、超スピードでアースラが把握している空域から離脱していった。
それからしばらくして、高志はマグナモードとガンレオン戦闘態勢を解く。
その高志をアルフが高志を受け止める。
高志は相変わらず苦悶の表情を浮かべているが、戦闘が終わったのだと安心しきった顔でもあった。
「…ここは一度アースラに戻ってからにしよう。とりあえずみんなアースラに戻ってくれ」
クロノの言う通り、なのは達や守護騎士達はアースラの中に戻って現状を確認している。
闇の書の欠片は見当たらない。どこかで暴れているという情報もない。だが、何があるか分からないのでしばらく待機という形になった。
その待機の間になのはとリインフォースはクロノとシグナムとザフィーラからお説教。
はやてはシャマルに付き添われて医療室で看病中。
そして、高志はというと…。
「…ふ。…好きにしろよ。羽箒でくすぐるか?それとも刺激成分の入ったゲル状のクリームでも塗るのか?好きにすればいいじゃないか」
はやて達とは別の医務室。その部屋の中にあるベッドの上で、マグナモードの反動で動けなくなった俺はまさに、まな板の上の鯉状態だった。
マグナモード使用後は必ずと言っていいほど(テスタロッサ一家から)辱めを受ける。これはお約束になりつつある。
「いえ、今回ばかりはしないわよ。あれだけのことしたんだし…」
「え~。やらないの~?」
アリシアの手には何本もののきゅうりが握られていた。
そのきゅうりで俺に何をしようというのだ?
穴埋めには絶対使うなよ!
「せっかくきゅうりでお兄ちゃんの敏感になった肌の上を転がせて、何とも言えない痒さにもだえて欲しかったんだけどな」
「それで体を掻こうと動かした瞬間に俺が悶えるのが狙いか?」
「そんなことより食べ物で遊んじゃダメだよ」
アリシアが両手いっぱいに持ったきゅうりをフェイトに取り上げられた。手の中に残った一本のきゅうりを丸かじりする。プレシアだけの育児だったらこんな食べ方はしない。
この食べ方は『お兄ちゃん』で男である高志の食べ方である。
「どこでそんな食べ方を覚えたのアリシア?」
「お兄ちゃんが食べているところ見て」
アリシアの言葉にプレシアは頬に手を当てて俺の方を見る。
「お仕置きが必要かしら?」
「アリシア?この野菜は何ていうんだい?」
「なs」
アリシアはアルフの質問にきゅうりを齧りながら、ごそごそとビニール袋から別の野菜を取り出そうとしたところで俺は泣き叫ぶように許しを請う。
「僕が悪かったです!これからはお行儀よく食べるから勘弁してください!」
お仕置きが無くなるというのなら、俺は茶碗に盛られたご飯もナイフとフォークで食べるよ!
だから、JAに怒られるような野菜の使い方はやめましょう!
お野菜は経口摂取で栄養を得る物だよ!
少なくても俺はそうだよ!
「まあ。冗談の九割はおいといて…」
まずい。俺の貞操がこのままでは…。
「タカ。…いい加減
「…あ~。やっぱり?」
いきなりシリアスに持ってくるのは勘弁してほしい。だけど、そうせざる得ない状況でもあるんだよな…。
少なくても、今回の一件で
「? 何がばれるの?」
プレシアの言葉に首を捻るフェイト。
そんな彼女に対して俺は心配させないように作り笑いをしながら彼女に退室を願った。
「悪いけど、フェイトとアルフ。…アリシアも席を外してくれない?」
アリシアも関係しているけど…。下手に話を聞くよりは聞かない方が得策だ。
プレシアは待機状態のガンレオンを手の中で転がしながら扉の向こう側に目を向けた。
「…ねえ、タカシ。私は」
「なんか言ったかフェイト?」
「…ううん。なんでもないよ。…行こう。アルフ。アリシア」
フェイトは何か言いたそうだったが何も言わずにアルフとアルフに連れられていくアリシアと一緒に退室していく。
そして、彼女達三人と入れ替わるように病室に入ってきた一人の女性に声をかけられた。
「…何がばれるのかしら?詳しく話してくれないかしら?」
リンディ・ハラオウン。
俺とリインフォース。そして、アサキムに共通する仮説にたどり着いたことのあるアースラの艦長。
「もう感づいているんでしょう、リンディ?」
「一応、言質は取りたいからね。これでも一つの船を預かるものとしてのお仕事をこなさないと…」
「今から話すことについて口外しないなら話します」
「……私で出来る範囲でならね」
「駄目よ。絶対に口外しない。周囲の人間に知られないと最大限の働きをすると誓いなさい」
…プレシア。
一応、俺達保護を受けている立場だからね。
…まあ、分からないでもないけど。
今から話すことを認識すれば管理局。いや、今を
リンディもそれが分かっている。だけど、違うかもしれないと思いたいからこそ俺達に聞きに来た。いや、知りたいことがあったんだろう。
「…それが犯罪でないのならね」
「…返答に困る言葉ね。でも、私達自身はそちらから何かしない限りは協力を惜しまないわ」
「…いいわ。私が知りたいのはアサキムについてよ」
人の上に立つ人間。いや、誰かを守るという使命を持つ人は辛いね。
そして、はやてやリインフォース。守護騎士達がこの場にいなくて助かった。
「…アサキム。アサキム・ドーウィンは死ねない化物です」
何故なら俺は最悪の対処方法を言わなければならないから…。
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