No.487341 fortissimo//Zwei Anleihen in Niflheimr 4話~あなたを、強く想う~2012-09-22 21:25:41 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:683 閲覧ユーザー数:683 |
「チーズケーキと苺のショートケーキ、どっちがいい?」
「う~ん・・・じゃあ、苺ので」
私はあの後、いっくんのお部屋にお邪魔していた。
相変わらず男の子の部屋とは思えない綺麗さだ。
掃除がとても行き届いてる。
「紅茶入れてくるから、ちょっと待ってろ」
「うん、ありがと」
いっくんがそのまま部屋を出ていく。
・・・気分は乗らないけど、エロ本探しでもしよ。
うーん・・・やっぱり何だかんだベッドの下にあるんじゃないかなぁ。
私はいっくんのベッドの下に上半身を突っ込む。
見たところはないけど・・・。どこかにあるはずなんだけどなぁ・・・。
脇腹フェチのいっくんらしいエロ本が・・・。
もしかしたらエロアニメ!!?二次元派だったのかいっくん!!?
「何やってんだ」
フニュッ 脇腹を優しく誰かに掴まれた。
「ふにゃぁぁぁーーーーー!!?」
いやー!この声はいっくん!?やっぱり脇腹フェチだったーー!
「もう一度訊くぞ。何してんだ」
「・・・エロ本探してました」
「・・・アホか」
「う~、どこにあるの~」
「そんなものない」
嘘だ。絶対・・・絶対どこかに隠してあるもん。
で、でも今日はこのくらいにしといてあげよう。
べ、別に身の危険を感じるからとかそういうんじゃないんだからね!!
私は渋々、ベッドの下から上半身を出す。
我ながら間抜けな姿だと思った。
「いっくん、そういうの興味ないの?」
「ない。どうでもいいんだよ・・・。ほら、紅茶」
「あ、ありがとう。んーじゃぁ、好きな人とか・・・いないの?」
いっくんは一瞬悩むような表情を浮かべたが、すぐにこう答えた。
「わからないな」
「えー、何それ卑怯じゃーん!」
私はブーブーと唇を尖らせて、いっくんにブーイングを浴びせる。
いっくんも年頃なんだし、好きな子の1人や2人いてもおかしくないと思うんだけどなぁ。
「教えてよ~。せめて、いるかいないかだけでも教えてよー」
「だから自分でもわからないんだ。この気持ちが恋なのか・・・違うのか」
「・・・ぷぷっ。い、いっくん・・・キザ・・・ふふふっ」
いっくんが似合わないキザったらしい台詞を発したせいで私はこらえきれず
吹き出してしまった。
「・・・あーいーなー」
「やー!?い、いっくん!?目!目がすわってるよ!!?怖い怖いやめて近寄らないでぇー!!」
「・・・まぁ確かにキザったらしかったな。で、お前はいるのか?好きな人」
「私?・・・うん、いるよ」
「翔さんか?」
・・・やっぱりわかっちゃうかぁ。・・・当たり前か、ハハ。
「それは・・・妹としての好きか?それとも・・・」
「それもあるよ。でもね。・・・多分、異性として好きなんだよ」
隠しようのない事実。私はお兄ちゃんが好きなのだ。
兄として。・・・1人の男の子として。
「・・・そうか」
「・・・軽蔑する?」
妹が兄に恋をする。世間一般ではこの感情をタブーと称すのだろう。
絶対に抱いてはいけない感情。
ずっと秘めていた想いはいっくんにあっさり見破られてしまった。
軽蔑されてもおかしくない感情を知られてしまったがいっくんは―――。
「するわけないだろ。見くびるなよ」
そう言ってくれた。
「世間体的には確かにまずいかもしれない。けどな、『好き』って感情は止まれないだろ?
世間体気にして、お前はその感情を殺せるのか?」
「・・・ううん」
出来ない。出来るわけがない。例え世界が敵にまわってもこの感情だけは消せやしない。
それほどまでに強い想いなのだ。
「それでいい。人を好きになるってのはそういうことだ。
その相手が偶然兄だったってだけだ。恐れるな・・・なんて無責任なことは言えないが、
誇りはもっとけよ。自分の気持ちに」
「・・・・・・うん、ありがと」
「応援してるよ。お前の恋」
いっくんは優しすぎると思う。お兄ちゃんがいなかったらいっくんのこと好きに
なってたかも。・・・なんて。
「さ、早いとこ紅茶飲めよ。冷めるぞ」
「うん。じゃあ、いただきまーす」
ありがとう、いっくん。
・・・
・・・・
・・・・・
俺は、うまく笑えていただろうか。
・・・ていうか俺あれから何したっけ。
確か家に帰って・・・。逢菜の作ってくれた飯食って。風呂入って。
・・・で・・・。・・・思い出せねぇや。
・・・駄目だな俺。多分あいつを悲しませた。苦しませた。
最悪だ。・・・どうにもならねぇ。
思考にモヤがかかり、うまく頭がまわらない。
もう、寝てしまおう。そうすれば・・・きっと楽に。
ガチャッ
「・・・逢菜・・・か?」
・・・
・・・・
・・・・・
「お兄ちゃん?」
私は自分の枕を持って、お兄ちゃんの部屋の扉をくぐった。
お兄ちゃんは心底驚いたような表情を浮かべている。
「・・・どうしたんだ?逢菜」
・・・深呼吸を1回。大丈夫。いつもの自分で行こう。
お兄ちゃんのことが大好きな・・・私で―――。
「お兄ちゃん・・・一緒に、寝よ?」
「・・・え?」
そりゃ驚くだろう。小さい頃は一緒に寝たりしたけど今はめっきりだもん。
急にそんなこと言われたら驚くよね。
「・・・逢菜は甘えん坊だな。ほら、来いよ」
でも、お兄ちゃんはいつものような太陽のように眩しい笑顔を見せてくれた。
・・・いつものお兄ちゃんだ。
「うんっ、ありがとっ!えへへ、お邪魔しま~す」
私はお兄ちゃんの布団の中に素早く潜り込み、お兄ちゃんにキュッと抱きつく。
それを受け入れるようにお兄ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれた。
・・・・・・。
「・・・ねぇ、お兄ちゃん」
「・・・ん?」
「お兄ちゃんは・・・今、楽しい?」
「・・・どういう、意味だ?」
「そのまんまの意味だよ」
「・・・そっか」
お兄ちゃんは一瞬憂いのある顔を見せたが、すぐにその表情を消し去り、
私の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。
「楽しいよ。お前や一樹・・・皆と過ごす日常は俺にとってかけがえのない宝物だ。
ずっとこんな日常が続けばいいなって思ってる」
「・・・そっか。えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな」
・・・けど。
「じゃあ、何で・・・今日、お兄ちゃんは1日浮かない顔をしていたの?」
「っ・・・」
お兄ちゃんはわかりやすく表情を歪め、気まずそうに私から視線をそらした。
「・・・ねぇ、お兄ちゃん」
「・・・ん?」
「つらかったり苦しかったりしたら・・・遠慮なく私に言ってね」
「・・・言うって・・・何を?」
「私に打ち明けてもいいよってこと。1人で抱え込まないで、私のこと頼って。
・・・頼りないかもだけど。苦しみも喜びも・・・全部全部・・・今まで共有
してきたじゃん。今更、こんなこと言わせないでよ・・・」
「・・・悪いな。逢菜。気、遣わせて」
「・・・まったくだよ。お兄ちゃんの馬鹿」
「うっ・・・手厳しいな。許してくれよ」
「つーん。許してあげないもーん」
「許してくれたら何でも言うこときいてやるぞ?」
「・・・ほんと?」
「じゃあ、お兄ちゃんが今、何に悩んでるかきかせてよ」
「っ、そ、それは・・・」
「うーそ。それは話したくなったらでいいから。無理に聞こうとはしないよ」
「・・・助かる。悪い、逢菜」
「・・・その代わり、ずっと私の側にいてねお兄ちゃん」
「・・・あぁ。約束する」
・・・
・・・・
・・・・・
翌日―――。
俺は屑野郎に言われた通り、放課後に再び
朝、目覚めたとき、ポケットに入れてあったマホウが消えていたということは
俺が無事に『
俺が機関内部に入ると、気の良さそうな、あの屑野郎より10歳ほど若い
青年が話しかけてきた。
「お待ちしておりました。工藤翔さん・・・で相違ないですね?」
「・・・はい」
「ようこそ、
ご案内致します。どうぞ、こちらへ」
俺は言われた通りその青年の後ろを静かに追いかける。
後ろ姿にも関わらず、その背中からは何故か『大きな決意』なるものが
何となく伝わってきた。
「・・・本当に、よろしかったのですか?」
「・・・何がですか?」
「『
「・・・そうしないと、俺の大切な人が傷つきますから」
「差支えなければ、その大切な人と言う方・・・教えていただけますか?
家族ですか?恋人ですか?」
「妹・・・です。たった一人の・・・大切な家族なんです。
自分の命よりも大切なんです」
何故だろう。この人にこんなことを言う義理はないのに。
言葉があふれてくる。この人にはどこか人を安心させてくれる不思議な魅力がある。
「妹さん・・・ですか。・・・なるほど。気持ちは痛いほどわかります。
かつては私も・・・。いえ、忘れてください。出しゃばってしまい申し訳ありません」
「い、いえ・・・」
何を言うつもりだったんだろう?・・・もしかして・・・この人も・・・。
「さ、着きましたよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いえいえ。では、私はこれにて」
青年は俺にくるっと背を向け、そのまま闇の中へ溶けていった。
・・・さて。
「来たか」
目の前を見据えると気色の悪い笑みを浮かべながら俺を見つめる屑野郎が、
そこに立っていた。
「ここを訪れたということは・・・無事『
ようだな。おめでとう。心より祝福の言葉をおく・・・」
俺はやつがすべてを言い切る前に奴の顔面にストレートを一発ブチ込んでやった。
もう我慢の限界だった。こっちはなりたくもない
むりやりさせられたんだ。
これくらい許されてもいいだろう。
俺の拳を受け、大きく吹っ飛んだ奴は口元の血を拭いながらフラフラと立ち上がる。
「く・・・くっ・・・くくくくくくくくくく・・・」
奴は何がおかしいのか、その不気味な眼球に何本もの血管を張り巡らせながら
俺を真っ直ぐに見つめる。
「・・・素晴らしい」
「・・・何?」
自分が殴られておいて「素晴らしい」・・・だと?皮肉か?
こいつ、もう一発ぶん殴って喋れなくしてやろうか。
「今の一撃・・・。僅かながら魔力が宿っていたぞ」
「―――ッ!!」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が俺を襲う。
頭がグワングワンと揺れて、思考が定まらない。
「くく・・・無意識とはいえ・・・。中々どうして・・・『
才能があるみたいだな、翔よ」
「っ・・・・・・」
今度こそ本物の皮肉だ。
「もはや私から教える事はない。あとは本物の
さっきお前といた、竹花浩太郎という男・・・。
やつは現在、
奴に話を通しておいてやるから、奴から戦闘の基礎などを学ぶといい。
ここで少し待ってろ」
そう言うと奴は先ほどの青年が去っていった方向に足を踏み出し、
青年同様闇の中へ消えていった。
・・・
・・・・
・・・・・
「お待たせしました、翔さん」
「あ、いえ」
しばらくすると先ほどの青年・・・竹花さんが俺の目の前にやってきた。
「ではこれより、
心の準備は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。お願いします」
「・・・よい目つきです。では、『
「アイ・・・スペース?」
「えぇ。人間が誰も存在しない、この世界と密接の関係にある・・・されど、決して交わる
ことのない並行世界のことです。そこならば心おきなく特訓ができるでしょう」
「・・・わかりました。それで、どうやったらその『
「はい。『
翔さんは、マホウの具現のさせ方は存じていますか?」
「いえ、すいません・・・まだ」
「わかりました。ではマホウの具現のさせ方ですが・・・。
何、とても簡単なことです。そうですね・・・。
翔さんの場合は、妹さんのことがいいでしょう。
妹さんのこと強く想ってください。守りたい・・・愛している・・・
何でも構いません。とにかく強く想ってください」
「強く・・・」
「えぇ。そして、次の言霊を唱えてください。
『
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4話です。すれ違う逢菜と翔。しかし翔にとって、それはすべて逢菜のため―――