No.487141 デジモンクロスウォーズ 絆の将と魔道の戦士超人カットマンさん 2012-09-22 10:01:57 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:1339 閲覧ユーザー数:1330 |
その日、タイキはアインハルトと一緒に街中を歩いていた。その理由を説明するには、昨日の晩にさかのぼる。
昨日の夜七時頃の事である。タイキが自室に戻った時、彼の部屋に机の上に紙が置いてあった。そこには、「用があるので七時半に宿舎の前にきなさい アインハルト」と書かれていた。
なので、タイキが言われた通りの時間に宿舎の前に行くと、顔を赤くしてブツブツ何かを言っているアインハルトがいた。
「あの、アインハルト?」
タイキがこう訊くと、
「アインハルトで…ああ、合ってるか。」
アインハルトはタイキが来たことに気が付いたようだ。
「タイキ、明日なんだけど、私と……」
アインハルトは単刀直入に言おうとしたが、重要な部分をいう事を憚られてしまった。
(ええいアインハルト頑張りなさい!あなたは覇王なの、これくらいできずにどうする)
そして、心の中のアインハルトに叱咤されていると、
「あのさ、明日何?」
と、タイキが訊いた。
「……明日私とデートしてください!!」
次の瞬間、アインハルトは何かを捨てたような勢いでタイキにこう言った。その瞬間、顔全体が真っ赤になったが、
言われたタイキも、
は、何言ってんのこいつ、
と、言いたげな表情になっている。
「えと、あの、別に何か邪なことがあるわけじゃないんです!実は、」
アインハルトは大慌てで事の次第を説明した。
次の日に機動六課に査察が来るうえに、査察をよこすのは機動六課を目の敵にしている地上本部総司令レジアス・ゲイズなので、タイキの存在が公になると部隊の存亡が危うくなるので、タイキには明日一日正当な理由で町に言っててほしい事を
以前の休みのときは、タイキは全然休みらしくなかったので、この日だけのんびり遊んできてくれとも言っていた、とも伝えた。
「なるほどね、確かにワイズモンからレジアスについては聞いてるよ。でもなぁ。」
タイキはこう言ってアインハルトを見た。口に出しては言えないが、自分がアインハルトを連れて町をうろついていたら色々まずいんじゃないか、と思ったのだ。
「その点については問題ありません。」
タイキの考えを察したのか、アインハルトは、
「武装形態。」
と言って、自分の魔力を高めた。すると、アインハルトの容姿がタイキと同い年くらいに変わった。
「この姿なら問題はないでしょう。」
確かにこれくらいなら問題はない。
「とにかく、明日は午前九時にここへ来ること、分かりました!」
アインハルトはこう言うと、そのまま去って行った。タイキはアインハルトの語気に圧されて、断ることができなかった為、明日一日のアインハルトとのデートが決まったのだ。
そして今に至る、
「居づらい。」
タイキは心の中で思った。建前の上ではデートなのに、さっきから何も会話が無いのだ。
「なあアインハルト、デートはいいけど、予定は決まってるの?」
タイキはとりあえずアインハルトに訊いてみた。しかし、アインハルトは何も答えなかった。何故なら、
「何しよう。」
アインハルトも今回の事を勢いで決定してしまった為、今日一日何をして時間をつぶすか考えていなかったのだ。
それでも、タイキと一緒でさっきから何も会話が無いのはつらいと感じたのか。
「タイキはデートの時何をするのかってわかりますか?」
と訊いた。
「えーと、服や入って服見たり、シネコンで映画見たりするんじゃない。後は見晴らしのいい展望台とかに行って色々話したり。」
タイキはとりあえず自分の知識にある、デートという行動でよく行う行動を言ってみた。
「じゃあ、それで行きましょう。」
アインハルトはタイキが言い終わるや否やこう言った。
(え?)
タイキは驚いた、まさか今回何するか一切考えてなかったのか、と。
「ちょうどあそこに服屋さんがありますね。」
アインハルトの指さす方向には、そこまで大きくない地元の人がよく来るようなブティックがあった。
「しかし、我らはなんでこんな事を。」
タイキのデートする様子を、まるで浮気の調査をする探偵のように調べる緑色の影があった。タイキがこの世界に来るにあたって、天野ネネのクロスローダーから移籍したモニタモンである。
「仕方ありませんな。はやて殿に頼まれたのですから。」
「そうだね。」
三人はそれぞれ、映像録画用カメラ、集音マイク、手帳を持っているが、やる気はまるで無いようで全然使っていない。
「それにしても、本来デートという行動には甘ったるい雰囲気が付くものですが、あそこまで清々したデートはありますかね。」
タイキとアインハルトのやり取りは、若いバカップルのような雰囲気は一切なく、いうなればもうすぐ結婚二十年を迎える夫婦のようだ。
「これはどうでしょうか?」
「いや、こっちの方が似合うんじゃないか。」
このやり取りにも、本来なら騒がしさが付くものだが、二人は落ち着いた雰囲気で品定めをしており。若者が着るような派手なデザインの物ではなく、落ち着いた色合いの素朴な服ばかりを見ている。
「あの二人はあんなんでいいのでしょうか?」
モニタモンの一人がこう言ったが、残るモニタモンは何も答えなかった。
最後に、モニタモン達はそろって大きなため息をついた。
時計が十二時を指そうとした時である。何故か二人の腹が同じタイミングで鳴った。
「ハハハ、飯にするか。」
と、タイキが言うと、
「それじゃあ、あそこに行きましょう。」
アインハルトはこう言って、海沿いに立つ小さなイタリアン料理の店を指さした。
「おお、イカ墨パスタがあるじゃねえか!」
何故かシャウトモンがクロスローダーから飛び出し、メニューの書かれた看板を見ながら言った。
(そういえばアイツ、前に一回人間界に来たけど、そこでイカ墨パスタ食い損なったんだよな)
タイキは昔を思い出しながら思った。そういえばこの時、シャウトモンはオメガシャウトモンに進化できるようになったんだ、と。
「アインハルト、僕もお腹空いたよ。」
そして、アインハルトのクロスローダーからもテリアモンが飛び出した。
「ちょ、テリアモン。」
アインハルトは突然の事に驚いたが、
「いいじゃん、皆で入ろうぜ。」
タイキはこう言って、店の扉を開けた。
「しかし何なんでしょうか、あのまるで友達同士で来たような雰囲気は。」
デートの様子を遠くから見ていたモニタモン達は、近くのコンビニで買ったジャムパンを食べながら様子を窺っていた。
タイキは普通に大盛りのイカ墨パスタを食し、シャウトモンは念願のイカ墨パスタだったらしく、
「うめぇー!!」
と、叫びながらぱくついている。
アインハルトとテリアモンはトマトソースのパスタを食しており、時折行儀の悪いテリアモンを注意している様子は、さながら姉と弟のようだった。
「しかし我々の食事ももうちょっとどうにかならなかったんですか?」
モニタモンの一人が訊くと、
「こんな場所じゃ普通に幕の内弁当は食べられないでしょう。」
別のモニタモンが言った。彼らは電柱の上にしがみついており、通りかかる人は皆、
「何だこいつら?」
と言わんばかりの表情になって通り過ぎていく。
(すげぇハズイ)
モニタモン達は一様にこう思っていた。
食事を済ませたタイキ達は、海のよく見える公園にやって来ていた。
「そういえば、アインハルトはどうやってテリアモンと出会ったんだ?」
海を眺めながら、タイキはアインハルトに訊いた、
「テリアモンとの出会いですか。」
アインハルトは、ちょうど今から一年前の事を思い出しながら言った。
テリアモンは、自分が家で特訓していた時に、突然家のコンピュータからクロスローダーを持って現れたのだ。クロスローダーがあればデジタルワールドに帰る事もできたはずなのに、テリアモンはあえてそれをしなかった。彼は、
「アインハルトがかつての友達に似ている」
とアインハルトに言ったのだ、
「かつて世界の危機になった時、最後まで助けようとしたけど結局倒すしかなかった友達がいたのだと言うんです。それが私の記憶の中にある”ある人物”の記憶と似ていて。」
アインハルトがここまで話したところで、
「ある人物って?」
タイキが再び訊ねた、
「私の先祖である「覇王イングヴァルト」の事です。」
と、アインハルトが答えると、
「お前の先祖って王様だったのかよ!」
シャウトモンが驚きの声を上げた。デジタルワールドの王を目指す彼にとって、王様の話はきになるのだろう。
「はい、私は断片的ではありますが、その覇王の記憶を受け継いでいるんです。」
アインハルトは、途切れ途切れではあるが、うまくつなぎ合わせれば自分の記憶として思い出せる、とも言った。
そして、覇王イングヴァルトの話を始めた。
かつて、この世界がミッドチルダと呼ばれるようになるより遥か前、シュトゥラの王家の跡継ぎとして生を受けた「クラウス・G・S・イングヴァルト」は、列強の王達を制することで無双の強者となり、政の面でも民を思いやる善政者として歴史に名を残すことになった。それでも、彼が望むものは手に入らなかった。
「その、覇王が最後まで手に入れられなかった物ってのは……?」
シャウトモンがこう言うと、
「本当の強さです。大切な者を守れる強さ。」
アインハルトはこう言って、
「彼には同じように武の道をたどる友がいたのですが、その人は自らの運命で命を落とし。何の皮肉かそのために彼は強くなったんです。」
と、説明した。
「だから、自分の拳を受け止められる相手を探して。」
と、タイキが言うと、
「はい、もう守るべき民も国も無い今、強さを知るにはそうするしか。」
と、アインハルトが言った。
「何も一人ですることは無いと思うぜ。困ったなら周りを頼ってもいいじゃん。」
シャウトモンはアインハルトにこう言った。
「実際テリアモンは、お前に頼ってほしいはずだぜ。」
シャウトモンがこう言うと、テリアモンは一回頷いた。
「それに、俺たちだっているんだから。」
タイキからこう言われた時、アインハルトの中で何か熱いものがこみ上げてくる感じがした。その時である、
「おーい、タイキー!」
遠くから声がした。見ると、白いスポーツバッグを持った少年がこちらに手を振っていた。
「ああ、ケビン!!」
彼は、かつてタイキにバレーボールの試合の助っ人を頼んだケビンだった。
「お前はこんなとこでなにしてんの?」
ケビンに訊かれたタイキは、
「ああ、散歩だよ。」
途轍もない適当さを誇る答えを出した。
「そうなんだ、また何かあったらよろしくな。」
ケビンはタイキにこう言うと、早く帰らないと弟にテレビを取られて録画したドラマが見れなくなる、と言いながら去って行った。
(誰からも頼られ、誰であっても必要に応じて頼る、か)
タイキの様子を見ながらアインハルトは思った。
そして、機動六課に今まさに査察が入っている時も、二人はあちこちを回って色々楽しんでいた。
最後に、タイキが行きたいと思っていた中華飯店で夕食を取ることにした。
「あの、今日はありがとうございます。」
アインハルトは顔を赤くしながらタイキに言った。
「いいよ、俺も楽しかったし。」
タイキは笑いながらこう言うと、
「それでだけど。」
突然真剣な口調で言った。
(え?)
アインハルトは驚いた、そしてタイキは、
「これからの事なんだけど。」
と、アインハルトに言った。
(え、ええ?)
アインハルトは顔中真っ赤になりそうなので、とりあえずうつむいたままになった。
「これからとても厳しい戦いが始まると思うんだ、だからアインハルトにも力を貸してほしんだ。」
しかし、予想に反してタイキはこうアインハルトに言った。
(なんだ、そんな事か)
アインハルトは、若干がっかりした所もあったが、
「分かりました、協力します。」
と、タイキに言った。
(格闘技に関してだけじゃない。ここで引き下がったら一生彼には勝てないかも)
アインハルトは心の中でこう思ってもいた。しかし、自分の協力を取り付けられたのがよほど嬉しかったのか、喜んでいるタイキを見ながら思った。
(覇王の力、しっかり役に立ててくださいね)
カットマン
「カットマンと。」
モニタモンズ
「モニタモンズの。」
全員
「デジモン紹介のコーナー!!」
カットマン
「さて、今回のテーマはチビカメモン。こいつは普通より小柄で、ヘルメットも目を覆ってないから「チビ」と呼ばれているけど。実際のカメモンはサイボーグ型のデジモン。必殺技は「メットタックル」「コーラガード」だ。」
モニタモンA
「マウスのような形をした甲羅は頑丈で、どんな攻撃でも防げますな。」
モニタモンB
「普通のカメ同様に手足を甲羅にひっこめることができますが、頭は入れられないのですな。」
モニタモンC
「頭隠して尻隠さず?」
カットマン
「ちなみに、亀の甲羅は骨が変化した物であって、間違ってもあの敵キャラクターみたいに脱げたりはしないんだ。」
全員
「それじゃあまたね。」
次回予告
なのは、フェイト、はやてと共に聖王教会へやって来たタイキは、これからの運命を決める予言、そして機動六課設立の理由を耳にする。
次回「戦いの予兆」
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第十三話 タイキの初デート?