No.484471

真恋姫†夢想 弓史に一生 第四章 第八話 特訓

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

TINAMIに投稿を始めて二ヶ月。

全部で四十八話の投稿が終わりました。

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2012-09-16 00:57:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2655   閲覧ユーザー数:2318

~賈駆side~

 

「ご馳走様。美味しかったわ。」

 

「ありがとうございました~!!!!」

 

 

ボク達はその屋台から出て行く。

 

 

思えば、朝廷内のごたごたで洛陽に呼ばれる機会が増えたため、洛陽に拠点を置いた。

 

涼州から引っ越してきたのが二年前で、落ち着き始めたのがつい最近……。

 

 

ボクも疲れてはいるが、月も休み無く働いていた為、目に見えて疲れている。そんな親友の姿を見てると心が痛い…。でも、これは月のために大事なこと。月の理想のためにはこの機会を逃しては駄目なの!!

 

 

そんな中、昨日霞から美味しい御飯を食べさせてくれる店があるという報告を受けた。

 

落ち着いてきたこともあり、少しくらい休ませてあげたいときに、訪れたその報告。美味しい御飯を食べれば少しくらい月も元気になるわよね…?

 

 

 

私はその職人を呼びつけようと思っていたが、月がそれを否定した。

 

 

「詠ちゃん…。職人さんにわざわざ来てもらうのは…申し訳ないよ~…。」

 

「じゃあどうするって言うのよ、月?」

 

「私達が…行けば良いと思うよ…?」

 

「駄目!! そんな…月を危険な目にあわせられないわ!!!」

 

「詠ちゃん…。私のために言ってくれてありがとう…。でもね…私もこの町を治めるものとして…町の様子を見てみたいことも事実なの…だから…駄目?」

 

 

そんな可愛らしく首を傾げられたら無碍にすることは出来ない…。

 

うぅ~…月はこういう時一度言ったらそれを変えることは無い。意見を変えないというのは、上に立つものとしては大事なことだと思うのだが…今はそれが妬ましくも思う…。

 

でも、そんな親友の願いを叶えてあげたいと思うボクも、大分月に対しては甘いんだろうな…。

 

 

「ゆっ…月がそう言うなら…。でも、一緒に霞と恋にも来てもらって、周辺の警護をしてもらうわ!! それが条件だからね…。」

 

「ふふっ…。ありがとう…詠ちゃん♪」

 

 

屈託の無い笑顔を向けられると心が安らぐ。

 

ボクの親友はそんな人の心を癒すことに関しては他の追付いを許さない。それが月の魅力だからね!!

 

そして、月の仕事が空いてる日を選んで、ボク達は霞の言う店に向かう。

 

 

「ねぇ霞。その店ってどんな料理を出すの?」

 

「う~ん…そやなぁ~…。ウチが見たことも無い料理って言うんは確かやで。」

 

 

霞は色々なところを旅してきたことがあるらしく、この大陸の色んな料理を知っていた。その霞を以ってしても知らないとは…まさか!!五胡関係!!

 

 

「ちょっと!!霞!! 五胡関係の店なんて危なくて月を連れてなんていけないわよ!!」

 

「うん? いやっ、五胡は関係してないと思うで。そこの店には普通にウチらも知ってる料理もあったし…。蛮族やったらそんなん知ってるわけ無いやろ?」

 

「うっ…。そうだけど…。」

 

「それにや…。たかが料理人やろ?ウチらが居るんやから大丈夫やって!!」

 

 

まぁ、あんた達がいるから最悪の展開にはならないでしょうけど…。

 

 

「おっ、あれやあれや!! ちょっと待っててな。今、席空いてるか確認してくるさかい…。」

 

 

そんな話をしてると、霞が急に声をあげた。

 

霞は屋台の中を覗くと店主さんと話をしている様子。

 

と言うか、てっきり飲食店街にある店かと思いきや、こんな広間の屋台とは…。

 

霞もなんでこんなところに連れてきたのかしら…。これじゃあ期待できそうに無いわね…。

 

もしかして中は違うのかしら…。

 

 

 

 

しかし、この店の様式は少し面白い。

 

他店には無い開放的な席を設けて、そこで食事をとることでより一層、御飯を楽しむことが出来るのだろう。成程、ただの馬鹿がやってる店ではないと言うわけね…。

 

はっ…いけないいけない…。軍師としてこういうことを見てしまうのは癖なんだと思う…。

 

でも、今日はせっかくの休みなのだから仕事は少しの間忘れて美味しいものを楽しもう。

 

美味しければ…良いけど…。

 

 

「お~い、月、賈駆っち、恋、ねね。空いてるから入ってきて良いで!!」

 

 

そう言う霞の声を聞き、屋台の中に入っていく。

 

見た感じ普通の屋台…。

 

 

「うわ~…。屋台で御飯なんて久しぶりだね、詠ちゃん!!」

 

 

親友のその言葉を聞くと、それだけボク達が忙しさに忙殺されてきたのだと思った。

 

しかしそれよりも……。

 

 

「何よ、霞!! 美味しい店があるなんていうから来てみたら、ただの屋台じゃない!!」

 

 

まずは、ボクが第一に思ったことを告げる。

 

その後霞たちに「大事なのは見た目やのうて味やで!!」と言われて、押し黙る…。

 

確かに…その通りね…。

 

そう思ってると店主がニヤニヤしながらボク達を見ている。

 

まさか!!

 

 

「ちょっと!!そこのあんた!! 何、月に色目使ってんのよ!!」

 

 

こいつ今、月をいやらしい目で見ていた!!まったく、男なんてどいつもこいつも!!

 

ボクがそんなことを思っているとなにやら目の前では、店主と給仕係らしき女の人が…抱き合ってる!!

 

ちょっと!!ボク達の目の前でなにやってくれてんのよ!!

 

 

「ちょっと!! お客待たせて何そこでイチャイチャしてんのよ!!この色欲魔!!」

 

 

ボクの言葉で我に返ったのか、顔を少し赤くしながら店主はボク達の方に向き直った。

 

この後ボク達は、めにゅー(?)と言う名の採譜から料理を選び、出来上がるのを待った。

 

まぁ、どうせ恋がいるのだから、全部頼むんだけどね。

 

そうこうしている内に一品目の料理が出された。

 

見た目、香りは美味しそうで食欲をそそる。まず、ここは合格ね!!

 

でも、見たことも無い料理であることは確か…。この料理は一体…。

 

 

「おぉ~…。酢豚や~!!!」

 

「えっ!? 霞、この料理を知ってるの?」

 

「あぁ。この前ここで初めて食べたんやけどな…メッチャ美味いんやで!!」

 

 

そう霞が言うので、おそるおそる箸を伸ばし、一口食べる。

 

 

「んっ!!!? …美味しい…。」

 

 

隣を見ると、月も目を丸くしている。それだけこの料理が美味しかったのだ。

 

使っているのは味からして豚肉かしら…? 程好く火が通っていて、柔らかくて、下味がついてる分しっかりとした味わい…。野菜はシャキッとしていて、歯ごたえが良く、味付けは甘酸っぱい…。

 

たった一品だけで、ボク達の心を掴んだこの店主の料理…。

 

この店主…やるわね…。

 

食事が終わった後、一波乱あって今の状況になっている。

 

 

 

……まさかボクとあろうものが人の真名を呼んじゃうなんて…食事で気が緩みすぎてる証拠だわ…。

 

 

 

彼らはボク達に雇ってもらいたいと言ってきた。

 

まぁ、確かに今は人が欲しいところだし、県令をしていたのなら兵を率いることぐらいは出来るだろう。

 

でも、だからと言って無駄な死体を増やすことなんてしない。

 

ボクだって…人の死を見るのは怖いのだから…。

 

 

「賈駆っち!!ウチ戦ってみたい!!  …さっきからこの娘の槍が気になってしょうがないんよ~。」

 

「ちょっ!!霞!! ……まぁ、雇うにしても力は見なきゃいけないわね…。勝負は…明日で良い?」

 

 

こうして、明日彼らの力を見ることとなった。

 

まぁ、霞相手に勝てとは言わないけど…善戦ぐらいして欲しいわね…。

 

 

 

~聖side~

 

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「さぁ、次だ!! 早く立て!!」

 

「ひっ…聖…。もう…やめないか…?」

 

「だからさっきから言ってるだろ? 一本でも止めたらやめても良いぞって。」

 

 

今俺と一刀は特訓中。

 

……ん?誰のって? そりゃ一刀でしょうよ…。

 

一刀は確かに武官として雇ってもらうわけじゃないから、別に鍛えなくても良いんだけれど、将来的に一将としてなってもらうために最低限のことは出来るようになって欲しい…。

 

 

因みに今行ってるのは、俺が30m程離れた位置から鏃を潰した矢を射て、それを一刀が止めること。

 

 

えっ?無謀だって? …俺蓮音様のとこでこれやったよ?

 

特訓開始から二時間ほど…。

 

一刀は全身に矢を受けて満身創痍…。しょうがない…次で最後にするか…。

 

 

「ほれっ、構えろ!! これが出来なきゃ戦場で矢に射られて死んじまうぞ?」

 

「死にたくわ無いけど…そろそろ限界かも…。」

 

「さぁ!!矢の軌道をしっかりと追え!!」

 

 

そう言って矢を射る。

 

初めに比べれば大分矢の軌道が見えてるように思える。ただ、それに体がついていけてない。こればかりはこの速さに慣れるしかないと思うのでアドバイスも出来ない…。

 

俺の放った矢はうなりをあげながら一刀に迫る。

 

一刀も矢の軌道を予測し、手を動かし始める。

 

 

「っ!!?」

 

 

そして気付いてしまった…その矢の向かう先を…。

 

えっ?それはどこかって? そりゃあ勿論、鏃を潰してあるからといっても衝撃はあるものでして…そりゃ当たったら衝撃はなかなかのもので…これで最後にするってことで、ドSな俺は一刀に、止めれなかったら最大のダメージを与えたいわけで…男には最大の弱点があるわけで…。

 

 

「いいいいいいぎゃぎゃぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!?????????」

 

 

断末魔の叫びが聞こえるわけで…一刀が男でなくなったかも知れないわけで…。

 

俺知らねぇ…。

 

 

 

 

「♪~~~最初からあなたの幸せしか~~~見つからないように横から背中押すから~~~♪~~~私が一番聞きたくない話なのに~~~会えなくなるよりはまだ少しだけマシだから~~~」

 

 

 

「んっ…!?」

 

「おっ!?起きたか?」

 

「あれ…俺は…。」

 

「あぁ…お前の息子に矢が当たって、そのまま気を失ったんだ…。」

 

「はっ!!?そういえば!! …良かった…潰れてない…。」

 

「そうか…男であることは守れたか…。良かったな!!」

 

「お前が狙わなきゃ良かっただけだろ!!」

 

「てへっ!!?」

 

「てへっ!!? じゃね~!!!!」

 

「そう怒るなって…。」

 

「はぁ…そう言えばさっきの曲は…?」

 

「何だ知らないのか? 俺の好きな曲なんだが…。」

 

「ゴメン…あんまり曲知らなくてさ…。」

 

「まぁ別に良いさ…。そういえば一刀。お前も俺達と仲良くなったんだから、皆を呼び捨てで呼べばどうだ?」

 

「…良いのかな。」

 

「良いんじゃないか? 皆、それぐらいお前に心を開いてるって。」

 

「そうなのか? 心を開いてくれてるのは嬉しいな。」

 

「…あくまで仲間としてだけどな。」

 

「…分かってるよ…。」

 

「さて、今日はこれで終わり!!ちゃんと冷やしとかんと使い物にならなくなるかも知れんぞ!!」

 

「えぇぇ!!?? まじで!!」

 

「そうかもしれんって話だ…。」

 

一刀は走っていった…そりゃもう必死に…。

 

 

 

~天和side~

 

その頃、弘農付近のとある邑では…。

 

 

「はぁ~…。今日も疲れた~…。」

 

「ちぃも…くたくた~…。」

 

「お疲れ様、姉さん達。今日も少しだけどお客さんが増えていたわ…。」

 

「だよね、だよね~♪ 最近人が増えてきてるもんね~♪」

 

「ようやく私達にも追っかけが付いてきたってことね。」

 

「この調子なら~しばらくしない内に、また聖と一緒に居れるよね?」

 

 

その言葉に、三人で顔を見合わせる。

 

自分達のせいで迷惑をかけてしまった命の恩人…。助けてもらった礼も出来ずに別れてしまった悔しさが私達にはあった。

 

あのまま彼らと一緒に居たら彼らのためにならない…。彼らはこれから一大勢力を気付こうという豪の者たち。その者たちの未来を私達のために潰して欲しくわ無い。

 

私達も泣く泣くではあったが分かれる決断をしたんだから、今度は頼ってもらえるくらい、私達が有名になって、そこでまた彼らのところに行こう…。

 

 

「そうするって三人で誓ったもんね~?」

 

「でも、中途半端じゃあまた迷惑をかけるわ…。私達がこの大陸一の歌姫になるくらいじゃなきゃ…。」

 

「あぁ~もう!! ちいたちが一気に有名になる方法って無いのかな~…??」

 

「そんな都合の良い方法があるわけ…(コンコン)…はい。」

 

「申し訳ございません…。張三姉妹様のお部屋はこちらですか?」

 

「はい~。もしかして追っかけの方?」

 

「はい。追っかけの方が今、宿の入り口で渡したいものがあると…。」

 

「なんだろう…。お姉ちゃん、貰ってくるね!?」

 

「お願い。」

 

 

そう言って宿の入り口に向かう。

 

そこには青い髪に眼鏡をかけ、黒の外套の上に白い模様入りの外套を着た不思議な格好の男が立っていた。

 

 

「え~っと…。あなたが追っかけの方?」

 

「はい。あなた方は素晴らしいものをお持ちです。その歌はこの大陸を制するに相応しい…。そんなあなた方に是非貰っていただきたいんです。」

 

 

男はそう言って、懐から一冊の本を取り出した。その本は古びてボロボロだったが、何とか表題だけは読むことが出来た。

 

 

「太平…妖術書…??」

 

「はい。是非…。」

 

「あっ…ありがとうございま~す!!(な~んだ、食べ物の方が良かったな~…。)」

 

「いえいえ。では、私はこれで。」

 

 

男の人はそう言うと暗い街中に歩いていった。

 

私はその本を持って部屋へと戻る。

 

 

「お帰り。何を貰ったの?」

 

「う~ん…よくわかんない本~。お姉ちゃんは食べ物の方が良かったのにな~。」

 

そう言って本を人和ちゃんに渡し、私は椅子に腰を落とす。

 

「……!!! 姉さん達!!この本…凄いわよ…。」

 

 

本を読んでいた人和ちゃんが急に大声を上げた。

 

 

「どうしたのよ、人和?」

 

「これを使えば…私達も直ぐに有名に慣れるわ!!」

 

「本当!!? じゃあ、この本をくれたあの人に感謝しなきゃ~!!」

 

「そうと決まれば、早速明日から活動開始よ!!!」

 

「「「お~!!!!!」」」

 

 

このときの私達は有名になれるというその一面しか見てなかった。

 

この先に待ち受けるものの正体も分からずに…。

 

 

「ふふふ…。まぁ、せいぜい頑張ってくださいね、お三方…。」

 

 

男は誰もいない夜の町の大通りを歩いていた。その顔に不気味な笑みを浮かべながら…。

 


 
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