No.482653

IS―インフィニット・ストラトス― きゅー組物語(没)2

さぁ、お酒が入ってまいりましたぁ!!!

盛り上がってまいりましたぁ!! 
一人で!!!一人で!一人で………

2012-09-11 15:13:27 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1085   閲覧ユーザー数:1064

「はぁー」

 

IS学園に来てから少しの時間が経った。仕事にはぼちぼち慣れてきたが、環境の変化にはまだまだ慣れない。そんな時期である。

 

「お疲れですか?」

 

「ええ、今までヤローばっかりの世界に居たもんでまだまだ慣れないんですよ。」

 

隣の机から声をかけられる。彼女は山田真耶先生、例のIS適格者“織斑一夏”のクラスの副担任である。小柄な体格及び童顔に不釣り合いな双丘が特徴的な同僚だ。

 

「ヤローばっかり?」

 

「えぇ、前の職場は男が殆どでしたので。」

 

ISのお陰で男性の社会的立場は狭くなる一方だが、その影響を受けない業界と言うのも確かに存在する。

俺が居たレスキュー隊なんかもその一つだ。人間が生物である以上、肉体的な男女差と言うのはどうしても存在する。

単純な筋力や馬力が必要とされる一方で、ISの所持が出来ない組織。たとえば警察や消防、民間では建築業界等は未だ男性社会の色が濃い。(ISは軍事利用が主流であり、尚且つ各国で確保できる数に制限がある。IS保有数=軍事力の構図がほぼ完成しつつあるこの世界では、軍隊及びそれに準ずる組織以外でISを運用する国家は今の所存在しない。)しかし、IS業界はほぼ完全な女性社会なのである。

 

「あはは、それじゃぁ確かにこの学園の環境に慣れるにはもうちょっとかかりそうですね。」

 

「えぇ、まぁ。せめてもの救いは、九組の生徒は男を見下さない所ですかねぇ。」

 

女性のみが扱える当代最強の兵器であるISの為に存在するこのIS学園において、男性を見下す人間は少なからず存在する。只廊下を歩いている際にも「男だなんて。」と言った陰口を時折聞く事がある。だが九組の生徒からはそういった発言が聞こえてこない。きっと、ほぼ全員が何らかの形で災害の現場を見たことがあり、人間の命の脆さを体感しているためなのだろう。結果として九組の生徒は、男女間の差別意識が他の組に比べ非常に低い。

 

その九組は、現在基礎体育(ISを使用する体育は実技体育、使用しない体育を基礎体育と呼ばれている。)の授業中だ。グラウンドには、担任による米海兵隊式の掛け声でランニングをする教え子達の姿が確認できる。

 

 

「副担任は~童貞くーん!」

 

と、ロジーナが歌えば

 

「「「副担任は~童貞く~ん!!!」」」

 

と、生徒達が其れに追随する。

 

「小ぶりなお尻で誘ってる~!」

………。

 

「「「小ぶりなお尻で誘ってる~!!!」」」

………………

 

 

本当にこの学園は女性主体の学校なのかと疑いたくなるような下品な歌詞でランニングをする九組の面々。隣の山田先生は、顔を真っ赤にしてうつむいてしまっている。正直、泣きたい。何とも形容し難い空気だ、だが救いの女神が居ない訳ではない。

 

 

 

 

「こらぁ!!またお前かロジーナァ!!!」

 

そんな中、女神の怒声が聞こえる。

我らがブリュンヒルデ、織斑千冬だ。

 

「やっべ!千冬だ!!!」

 

ロジーナ先生、そのセリフはまるで近所の悪ガキです。

 

「少しは、教師としての自覚を持たんか!!」

 

「待った待った!流石に広辞苑はまずいっ!死んじゃう死んじゃヴェッ」

 

カエルの潰されたような声を残して、ロジーナ沈黙。ズルズルと

 

「はぁぁぁ、それじゃぁ山田先生。ちょっと行ってきます。」

 

騒ぐ→見つかる→沈む。流れるような一連のコンボで、九組担任は時たま授業からフェードアウトする。

そんな時は副担任であるところの俺が、彼女の授業を引き継ぐのだ。仕事に慣れるという意味では、有り難いのだが………

 

「えっと、おつかれさまです。」

 

山田先生が、苦笑いしながらも労いの声をかけてくる。

 

「………山田先生、これって副担任の仕事なんでしょうか。」

 

「たぶん違うと思いますよ。」

 

「………ですよねぇ。」

 

何やらどっと肩が重くなる。信じられるか?これでまだ一時間目の授業なんだぜ?

 

 

 

 

重い足取りでグラウンドに向かうと、九組の面々に出迎えられる。

 

「出雲先生ー、早く早く―!」

 

尻尾があればブンブンと振っているであろう、明るい笑顔でアンナが声をかけてくる。

好奇心旺盛、それこそ子犬のような彼女は体を動かす事が大好きだ。

 

「おーう、とりあえず腕立てと腹筋背筋を3セットずつから始めるぞ-!」

 

「「「はーい。」」」

 

うむ、皆素直で宜しい。

 

「終わったら、ラペリングやるぞ-。」

 

「先生、質問質問。」

 

と生徒から声がかかる。

 

「んー?どうしたー?」

 

「私達、IS使うのに何でラペリングなんかすんの?飛べば良いじゃん。」

 

あー、そうだよなー。この子達からしたら、そんな感覚だよなー。

 

「あのな、ISが使えない時、エネルギー切れで飛べない時、どーすんのよ?可能性は低いかも知んないけど、もしもの事に備えるのも俺らの仕事だぞ?」

 

「あー、なるほどー。」

 

災害現場においては、あらゆる事態を想定しなければならない。ISを破棄しなければならない状況だったり、エネルギー切れのISを展開状態にしたまま行動しなくてはいけない状況だったり。その対処をしっかりと行う事が、我々の仕事でもあるのだ。

 

「他に何かあるかー?」

 

「「「ありませーん!」」」

 

「宜しい、じゃあ腕立て始め!!!」

 

 

何事もなく、基礎体育を終えて廊下を歩いていると前から男子生徒が歩いてくる。

IS学園唯一の男子生徒で、世界最強の姉を持つ“織斑一夏”その人だ。

 

「はぁ~。」

 

何やら、憂鬱そうである。

そういえば、イギリスの代表候補生徒と決闘をするとか聞いた気がする。

 

「おいおい、どうした織斑。朝っぱらから溜息か?」

 

「あ、出雲先生。」

 

新学期開始三日目に出会った俺たちは、この女性だらけのIS学園で生徒と教師と言うよりも兄弟の様な関係を築いている。

 

「ちょっと、クラス内でゴタゴタがあってですね。」

 

「あー、例のイギリスの候補生との決闘か。」

 

「先生にまで話が回ってるんですか?」

 

「まぁ、狭い環境だからな。面白そうなイベントには教師も生徒も飛びつくんだよ。」

 

「うわぁ、ますます負けらんなくなってるし。」

 

「でもま、向こうはバリバリのエリートさんだ。胸借りる気でぶち当たってこい。何かあったら、九組のがしっかり救助してやる。」

 

「あはは、そうなんないように頑張ります。」

 

「んじゃ、そろそろ行くわ。あんまり気負うなよ、織斑。」

 

「ありがとうございます、出雲先生。」

 

「じゃ、次の授業があるから俺はこれで。」

 

そう言って、俺は教室へ向かった。

次は、特別教養か。

 

 

「んじゃ、昨日の復習からなー」

 

ノックアウトから立ち直ったロジーナ先生が教壇に立つ。

特別教養の授業。これは恐らく九組のみの授業だ。

IS救助隊の装備についての授業で、IS関連の知識に関しては下手すると生徒以下の俺も毎回授業を見学している。

 

「現在IS救助隊のが使用しているIS、お前らが使うことになるのは“type―86EX セイバーⅡ”だ。コイツの特徴は何だぁ?じゃぁ、セレネ!」

 

「はい、長時間活動能力と各種装備の大容量搭載能力です。」

 

IS救助隊のIS保有記数は現在18機。その内13機がアメリカの第一世代“F-86 セイバー”の改修機である“type―86EX セイバーⅡ”である。残りの5機はフランスの第二世代機“ラファール”の派生機“ファラガット”となっている。

 

 

「その通り。活動時間は平均96時間、最大搭載量は70立方㍍に80tだ。」

 

この“セイバー”は第一世代機ながらも、未だに第一線で活躍している。その搭載能力から、ガンシップの様な運用がなされている。

 

「じゃぁ、コイツの欠点は?オルガ!」

 

「え、えっと。超高速巡航能力の喪失、です。」

 

「その通り。ま、それでも充分に早いから救助用途での使用には支障が無いけどな。」

 

国連は、固有の軍事力を持てない組織だ。そんな組織がISを保有するまでには様々な政治的な取引が有ったようだ。ISを保有するほどの国力が無い第三世界の各国が一丸となって動いてみたり、それが面白くない先進各国がバラバラに蠢いてみたり………兎に角色々あったらしい。

 

「んじゃぁ、次はぁ………」

 

こうして、IS学園での一日は回ってゆく。


 
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