「「あ」」
放課後のグラウンド。セシリアと鈴は学年別トーナメントに向けて訓練をしようとしていた。
「奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど。」
「奇遇ですわね。私も全く同じですわ。」
「ちょうどいい機会だし、この前の実戦のことも含めてどっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわね。」
「あら、珍しく意見が一致しましたわね。どちらの方が強く、優雅であるか、この場ではっきりさせましょうではありませんか。」
二人はメインウェポンを呼び出し、戦おうとしたとき、超音速の弾丸が二人の間を飛翔する。
「「!?」」
二人は緊急回避した後に砲弾が発射された方を同時に向く。そこには・・・
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・」
セシリアの表情がこわばる。
「どういうつもり?いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない。」
鈴は双天牙月を肩に預けながら衝撃砲の準戦闘状態へとシフトさせる。
「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。・・・・ふん、データで見たときの方が強そうではあったな。」
「何?やるの?わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいなんて大したマゾっぷりね。それともジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってんの?」
「アラアラ鈴さんこちらの方はどうも言葉をお持ちでないよう出ですからあまりいじめるのはかわいそうですわよ?犬だってワンと言いますのに。」
「はっ・・・・・。量産機に負ける程度の力量しか持たぬものが専用機持ちとは。よほど人材不足と見える。数くらいしか能のない国と、古いだけがとりえの国はな。」
二人の堪忍袋の緒が切れる。
「ああ、ああ、わかった。スクラップがお望みなわけね。セシリア、どっちが先にやるかジャンケンしましょう。」
「ええ、そうですわね。私としてはどちらでもいいのですが・・・」
「はっ!二人がかりで来たらどうだ?一足す一は所詮二にしかならん。下らん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか。」
「・・・今なんて言った?あたしの耳には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど?」
「場にない人間を侮辱するとは、同じ欧州連合の候補生として恥ずかしい限りですわ。その軽口、二度と叩けぬようにここで叩いておきましょう。」
「とっとと来い。」
「「上等!」」
一夏、箒、シャルルの三人はグラウンドに向かっていた。そんな時女子達の騒ぎ声が聞こえる。
「ねね、グラウンドで代表候補生同士が戦ってるんだって。」「しかも二体一で・・」
まさか!
一夏は急いで走り出した。
「どうした一夏!」
「箒!織斑先生を呼んでくれ。」
「っ、わかった。」
一夏がグラウンドに向かうとそこにはラウラに苦戦しているセシリアと鈴の姿があった。
鈴は龍咆をラウラにむけて放つがラウラのAICで防がれる。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな。」
「くっ!まさかこうまで相性が悪いなんて・・・・」
ラウラは鈴をワイヤーブレードで捕まえる。鈴の援護のためにセシリアはビットを飛ばす。
「そうそう何度もさせるものですか!」
ラウラはビットからの攻撃を回避しAICでビットを止める。
「動きが止まりましたわね。」
「貴様もな。」
セシリアの狙い澄ました狙撃はラウラのレールカノンによって相殺される。ラウラは先刻捕まえた鈴をセシリアに向けてぶつける。体制を崩した隙をラウラはわずか一秒で間合いを詰める。
「『瞬間加速』!」
ラウラはプラズマ手刀を起動させ、左右同時に鈴へ襲い掛かる。
「この・・・・・・!」
鈴は距離を置きながらも幾度となく凌ぐ。うまくアリーナの形状に合わせて追い詰められないようにしている鈴だが、ラウラは再びワイヤーブレードで襲い掛かる。今度は六つ。さすがの鈴もこれには苦戦する。
「くっ!」
鈴は衝撃砲を展開する。
「甘いな。この状況でウェイトのある空間圧縮兵器を使うとは。」
ラウラはレールカノンで衝撃砲を破壊する。
「もらった。」
「!」
体制を崩した鈴にラウラはプラズマ手刀で襲い掛かる。
「させませんわ!」
間一髪のところをセシリアはスターライトmkⅢを盾にして防ぐ。それと同時にセシリアはウェイト・アーマーに装着されたミサイルビットをラウラに向けて発射させる。とてつもない煙と爆発音が響く。
「アンタ、無茶するわね。」
「苦情は後で。けれど、これなら確実にダメージが・・・」
セシリアの言葉が止まる。煙が晴れるとそこには何もなかったかのように立っているラウラの姿があった。
「終わりか?なら次はこちらの番だ。」
ラウラは瞬間加速で近づき、鈴を蹴飛ばし、セシリアに近距離でレールカノンを撃つ。さらにラウラはワイヤーで二人を捕まえ、拳で殴りかかる。
「あああああ!」
拳は脚、腕、体に叩き込まれる。シールドエネルギーは減っていき、機体維持警告域を超え、操縦者生命危険域に到達し、ISは強制解除される。しかしラウラはその二人の首をワイヤーで絞める。
「いいかげんに・・」
「シャルル!」
「!一夏・・・」
「俺があいつらをワイヤーから離す。俺が時間を稼いでいる間に助けてくれ。」
その直後、一夏は白式を展開しラウラに近づく。
「ふっ。愚かな・何も考えずに突っ込んで来るなど。」
ラウラはAICを使い一夏を止めようとするが・・・・
「っ!何だと!」
一夏は目の前からいなくなっていた。そして捕まえているはずの二人もいなくなっていた。一夏は瞬間加速を使いラウラの後ろに周り、さらに両手でセイビングビュートで助け出した。
「う・・・・一夏。」
「お見苦しいところをお見せしましたわね。」
「今はあまり喋るな。シャルル、頼む。」
「うん。わかったよいt・・・うわ。」
「ちょっ!」「きゃっ!」
一夏はセイビングビュートで助けた二人をシャルルに向けて渡す。
「貴様!死ににきたのか!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・・お前だけは・・・許さん!」
一夏は後ろに周り蹴りを喰らわす。ラウラは飛ばされる。一夏はパーティクル・フェザーをラウラに向けて連射するがラウラはワイヤーブレードで防ぐ。一夏は宙を舞い蹴りを喰らしさらにアームドネクサスでラウラに攻撃する。ラウラは体制を崩す。一夏はラウラに問いかける。
「お前に聞いていいか。」
「なんだ?」
「織斑先生は・・・千冬姉は、お前に・・人を殺すことを教えたのか?」
「黙れ・・・」
「千冬姉はそんなお前を怒ったんじゃないのか?」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!貴様に・・・教官のことを語る資格はない!」
ラウラは一夏に襲い掛かる。が、しかしそれを千冬がIS用のブレードで防いだ。
「まったく。模擬戦をやるのは構わんが施設まで破壊する事態ならば教師として黙認しかねん。この決着は学年別トーナメントでつけてもらう。」
「教官が仰るなら。」
「わかりました。」
「では学年別トーナメントまでの私闘を禁止する。解散!」
パン!と千冬は手を叩いた。
保健室。セシリアと鈴はベットの上で打撲の治療を受けて包帯を巻かれていた。
「別に助けてくれなくてもよかったのに。」
「あのまま続けていれば勝っていましたわ。」
「お前ら・・・・あの状況でよく言えるな。」
「何!なんか文句でのあるの?」
「大有りだ。あの状況をよく考えてみろ。セシリアはライフルとビットを破壊されて、鈴は衝撃砲が使えなくなった。それに対してラウラはAICを使えてレールカノン装備。おまけに近接戦闘武器のプラズマ兵器をまだ使えた。どう考えたって攻撃しても返り討ちされるだけだろ。」
「うっ・・・・・・」
「・・・・・ごめん。」
「まあ、無事でよかった。けど聞いていいか?」
「何よ?」
「どうしてあいつと戦ったんだ?」
「もしかして好きな人の悪口言われたからじゃないからかな。」
「ん?」
シャルルが飲み物を買ってきた。入るときなんかいってたみたいだがよく聞き取れなかった。
「なななな何を言ってるのか、全然わからないわね!こここここここれだから欧州人ってのは困るのよね!」
「べべべ別に私はっ!そ、そういう邪推をされるといささか気分を害しますわな!」
「お前ら・・なんか知らんが落ち着け。」
「そうだよ。はい、ウーロン茶と紅茶。とりあえず飲んで落ち着いて、ね?」
「ふ、ふん!」
「不本意ですがいただきましょうっ!」
二人はシャルルからもらった飲料水の一気に飲む。
「そういやもうひとつ聞いていいか?」
「なんか皆でこそこそ話している話があったが・・・あれ何なんだ?」
「!そ、それは・・」「その・・・・」
「?」
ドドドドドドドドドドドドドドドド
「なんだ?この音は。」
いきなり扉が吹っ飛ぶ。そして生徒達が雪崩のごとく入ってきた。
「織斑君。」
「デュノア君。」
「なんだ?」
「ど、どうしたの皆?落ち着いて。」
「「「「「これ!」」」」」
そう言って皆は申込用紙を出してきた。
「ああ、そういうこと。」
「どういうこと、一夏?」
「学年別トーナメントのためにペアを組んでくれってことだよ。」
「そういうこと。だから・・・・」「織斑君、私と一緒に組もう!」「デュノア君、私と一緒に組もう!」
「気持ちはありがたいが俺はシャルルと一緒に組むから諦めてくれないか。」
「まあ・・・そういうことなら。」「他の女子と組むよりかいいし・・・」「男同士って言うのも絵になるし・・・ごほんごほん」「コミケのネタとしてもハアハア・・・」
今なんか変な声が聞こえたぞ!
皆は納得したようで保健室から出て行った。
「あの、一夏・・・」
「一夏!」
「一夏さん!」
「あ、あたしと組みなさいよ!幼馴染でしょう!」
「いえ、クラスメイトである私と!」
「「ダメだ・ですよ。」」
「「「山田先生!」」」
「織斑君。どうしてあなたはダメといったのですか?」
「理由は二つ。ひとつは二人は打撲によって骨にヒビが入っている。皮膚表面上に出てないがあのときにわずかながら聞こえた。」
「織斑君・・・何者なのですか?」
「ISが使える高校生です。」
「じゃあ一夏。もうひとつの理由は?」
「簡単だ。ISだよ。」
「織斑君、気付いてたんですか!」
「あの状況をよく考えれば・・」
「どういうことですの?」
「お二人のISはダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと後々重大な欠陥を生じさせます。ISを休ませる意味でも参加は許可できません。」
「そういうことだ。だが安心しろ、敵は打つ。必ずな。」
一夏のその言葉に皆恐怖感じた。そのとき
ドクンドクン
!まさか・・・
一夏は胸ポケットにしまっているエボルトラスターの鼓動を感じ取った。
「シャルル、二人を頼む。」
「一夏!急にどうしたの?」
「野暮用だ。」
そう言って一夏は保健室から走り出す。
「あっ、織斑君!廊下は走っちゃ・・・」
ドオオオオオオオオオオン
「「「キャァァァァァァァァァァァ!」」」
「!な、何!」
『皆さん、シェルターに避難してください。』
「またビーストですの!」
「こんなときに!」
「デュノア君、二人を頼みます。」
「先生は!」
「私は他の生徒のためにISで出撃します。」
「わかりました。気をつけてください。」
そう言って山田先生は保健室を後にした。
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トーナメントに向け訓練しようとしたセシリアと鈴。二人の間を砲弾が通る。