No.481205

真・恋姫†無双 ~我天道征~ 第10話

seiさん

一刀達の元に、季衣と流琉という新しい仲間が加わった。
そしてここでも、一刀はいつもの種馬ぶりを発揮するのだった。

今回は季衣と流琉の拠点パートです。
まあ、ぎりぎり1週間以内ということで頑張ったかな?

2012-09-08 07:49:57 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:6400   閲覧ユーザー数:5065

 

 

 

 

 

 

 

 

注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪兄ちゃんとご飯≫

 

【side 季衣】

 

僕と流琉は、兄ちゃん達と一緒に陳留へと行き、華琳様との謁見を行った。

僕達は力を認めてもらい、華琳様の親衛隊の隊長という役職に就くことができた。

その時に、華琳様や春蘭様の真名も許してもらえました。

だけど、あの時に聞こえた華琳様の言葉ってなんだったんだろう?

 

( 「ふふっ。二人とも可愛らしいわね、とても美味しそうだわ♪(ジュル)」 )

 

美味しそうって、どうゆうことだろ? あとで、兄ちゃんにでも聞いてみよう。

 

 

 

今日は、春蘭様が直々に稽古をつけてくれるらしく、朝から訓練場に来ていた。

離れた場所には、華琳様と桂花ちゃんも見学に来ている。

 

「でええええええええいっ!!」 ブオオオオーーーーン!!

 

僕は春蘭様に、渾身の力を込めて岩打武反魔を飛ばす。

岩打武反魔は風きり音をたてながら、春蘭様に向かって一直線に飛んでいく。

しかし春蘭様は、それをよけようともしなかった。

 

ガキーーーーン!!

 

「そ、そんな!」

 

逆に持ってる刀を立てて、それを受け止めてしまった。

そのことに僕が呆けていると、春蘭様がこちらへと向かってきた。

僕はそれに気付き、武器を急いで引き戻そうとしたけど、

 

「遅い!」

「(ガキンッ!)うわっ!」

 

すでに春蘭様が接近していて、刀を振り上げていた。

その攻撃を手に持っていた鎖で防ごうとしたけど、それすら弾き飛ばし僕は転んでしまった。

 

 

春蘭様はそのまま僕に近づき、手を取って起こしてくれた。

 

「甘いぞ、季衣。確かにお前の攻撃は重く強烈で、そこいらの者では、簡単に吹き飛ばせるであろう。

 しかし、大陸は広い。私のように、その攻撃を受け止められる者もいるだろう。

 自分の力を信じることは大事だが、過信してはいかん。」

「・・・はい。」

 

春蘭様の言葉に、僕はさっきのことを思い出す。

確かに春蘭様は、僕の渾身の一撃を受け止めた。

力なら負けないと思っていた僕は、少なからず落ち込んでいた。

 

「お前よりも強い奴は、たくさんいる。だが、お前はまだまだのびる。

 そやつらに負けぬためにも、季衣よ、日々の鍛錬をしっかりと行うんだぞ。」

「はい、春蘭様!」

 

春蘭様の言葉に、僕は元気よく返事をした。

 

 

「お疲れ様。春蘭、季衣。」

「華琳様♪」

「ありがとうございます、華琳様。」

 

僕達の稽古が終わるのを見計らって、華琳様が水の入った竹筒を渡してくれた。

 

「相変わらず、見事な力ね。季衣。」

「でも、春蘭様には敵わなかったです。」

「春蘭も言っていたでしょ。貴方はまだまだ成長するわ。いつか春蘭に追いつく日も来るでしょう。」

「は、はい!春蘭様に追いつけるよう、頑張ります。」

 

僕は華琳様の激励に嬉しくなり、力強くそう答えた。

 

 

「はっはっはっ、その意気だぞ季衣。だが、華琳様の右腕たるこの私だ。そう簡単には、追いつかせんぞ。」

「ちょっと、待ちなさいよ!誰が、華琳様の右腕ですって。華琳様の右腕は、この私よ、私!」

「何だと!華琳様をお守りし、仇名す者を討つ刀たるこの私こそ、右腕にふさわしいだろう。」

「ふん、刀と刀をぶつけ合うのだけが戦じゃないのよ。国の行く末を左右する政も立派な戦い。

 そして、その大事な役目を任されている私こそ、華琳様の右腕にふさわしい人間よ。」

「私だ!」

「私よ!」

 

春蘭様のちょっとした言葉から、桂花ちゃんとの言い争いが始まってしまった。

華琳様はいつものことなのか、呆れた様な顔でそれを見ていました。

 

 

「ふん、春蘭。あなた、北郷に負けたくせに、よくもまあずうずうしくも右腕なんて言えるわね。」

「なっ!」

「か、華琳様。兄ちゃんが春蘭様に勝ったって本当ですか?」

 

桂花ちゃんの言葉に、僕は思わずそのことを質問してしまった。

 

「あら、そういえば季衣は知らなかったわね。

 ええ、確かに一刀は、一度手合わせということで戦って、春蘭に勝っているわね。」

 

僕達も助けてもらったから、兄ちゃんが強いのはわかってたけど、まさか春蘭様より強いなんて思わなかった。

僕がそのことに驚いていると、今度は春蘭様が言い返していた。

 

「くっ、ならそっちこそ、貴様が思いつかなかったすごい案を、北郷が献策したではないか。

 北郷さえ考えつく様な案を思いつかずに、よくあれだけ言えるな。」

「なっ!」

「華琳様?」

「これも本当よ。今、陳留で行われている大規模な政策は、一刀の案によるものが多いわね。」

 

政のことは良くわからないけど、華琳様がここまで言うんだから、すごいことなんだってことはわかる。

僕はその話を聞いて、兄ちゃんがとてもすごい人なんだと感心していた。

 

「じゃあ兄ちゃんって、強いだけじゃなくて、頭も良いんですね。」

「ええ、そうね。あら?じゃあ二人の話を総合すると、一刀が私の右腕ということになるのかしら?」

「「か、華琳様~!!」」

 

華琳様が楽しそうにそう言うと、春蘭様達は泣きそうになっていた。

 

 

そんな風に兄ちゃんの話をしていると、

 

「おーい、華琳―!」

 

城の方から、ちょうど良く兄ちゃんがやってきた。

 

「あら、一刀じゃない。どうかしたの?」

「ああ、警備隊ついての報告書を持ってきたんだけど、執務室に華琳がいなかったからさ、それで話を聞いたらここにいるって言われてね。」

「あら、それは悪いことをしたわね。」

「別に構わないよ。ところで、春蘭と桂花はなんで俯いてんだ?」

「あ!兄ちゃん、今は・・・」

 

そう言いながら、兄ちゃんは二人に近づいて行った。

僕が止めるのも間に合わず。

 

「「貴様(アンタ)の・・・」」

「え?」

「「せいだーー!!!」」

 

ドグシャ!!

 

「何がーー!!?」

 

兄ちゃんは二人の拳をくらって吹っ飛んでいた。

 

 

「それじゃ、報告書は後で読ませてもらうわ。」

「いつつ、ああ、よろしく頼む。」

 

兄ちゃんは殴られた所をさすりながら、そう答えた。

 

「夕刻頃には終わるでしょうから、それまでは自由にしてていいわよ、一刀。」

「お、マジ? やったね♪」

 

兄ちゃんは急なお休みをもらえたみたいで、とても嬉しそうにしていた。

 

 

(そういえば、僕も午後からはお休みをもらってたっけ。)

 

そう思った僕は、

 

「ねえ、兄ちゃん。時間があるなら、一緒にご飯食べにいかない?」

 

と、兄ちゃんを食事に誘うことにした。

 

「季衣とか。そうだな、そう言えば忙しくて一緒に食事したことなかったな。よし、食べに行くか。」

「本当?やった♪」

 

兄ちゃんと食事に行けることになり、僕は飛び跳ねて喜んだ。

 

 

「あっ、華琳様達もどうですか?」

「せっかくのお誘いだけど、悪いわね。これから少し用事があって、あまり時間がないのよ。」

「私も華琳様と一緒よ。」

「すまんな、季衣。私もこの後、調練の予定が。」

 

僕は兄ちゃんだけでなく、華琳様達も誘ってみたが、みんな用事があるらしく、申し訳なさそうにしていた。

 

「そうですか、残念です。」

「ふふっ、また後で誘ってちょうだい。季衣、今日は二人で楽しんできなさい。」

「はい、華琳様♪」

 

華琳様の言葉に、僕は元気よくそう返事をした。

 

 

 

 

そして僕と兄ちゃんは、町へとやってきた。

あたりは昼時ってこともあって、とても賑わっていた。

そしてあちこちのお店からは、美味しそうな匂いが漂ってきていた。

 

「わあー、どのお店も美味しそうだなー。兄ちゃん、早く行こうよ。」

 

僕はそんな中を、どのお店にしようか迷いながら、後ろからついてくる兄ちゃんを急かす。

 

「季衣、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。」

「だって、兄ちゃんと初めてご飯食べるんだもん。もう待ちきれないよ。」

「ははっ、それは嬉しいな。よし、今日は俺がおごってやるから、好きなだけ食べていいぞ、季衣。」

「えっ、本当?ありがとう、兄ちゃん♪」

 

思わず僕は、兄ちゃんに抱きついて喜んでしまった。

兄ちゃんも嬉しそうに、僕の頭を撫でてくれた。

 

 

「じゃあ兄ちゃん、ここにしよう。」

 

そういって僕は、よく行っている拉麺屋の前まできた。

そこに着くと、なぜか兄ちゃんは看板を見上げたまま固まっていた。

 

「・・・拉麺、弍楼。」

「どうかしたの、兄ちゃん?」

「いや、たぶん気のせいだ、入ろう。」

 

そう言って兄ちゃんは、僕の背中を押す様にして店の中へと入った。

 

 

「いらっしゃい!お、嬢ちゃん、今日も来てくれたのかい。」

「うん。だってここの拉麺、美味しいんだもん。」

「嬉しいこと言ってくれるねー。今日は兄ちゃんとも一緒かい。まあ、座りな。」

 

店のおっちゃんが元気よく声をかけてきてくれ、僕らはそのまま空いてる席についた。

 

「へえ、結構繁盛してるんだなぁ。」

「ここの拉麺美味しいし、量も多いんだ。ちょっと注文の仕方が変わってるけど。」

「注文の仕方?」

 

兄ちゃんは不思議そうな顔をしていた。

まあ、初めは僕も戸惑ったもんね。

 

「先に僕が注文するから、それを真似してみてよ。」

「あ、ああ。」

 

 

そう兄ちゃんに言うと、僕はおっちゃんに向かって注文をした。

 

「弐楼拉麺特盛、全部ましまし泰山で!」

「あいよ。全部ましまし泰山だね。」

「ねえ、変わってるでって、兄ちゃんどうしたの?」

 

僕が注文をして兄ちゃんの方をみると、なぜか兄ちゃんは頭を抱えて机に突っ伏していた。

 

「頭痛いの?」

「いや、大丈夫だよ季衣。色々な感情に整理をつけていただけだから。」

「?」

 

兄ちゃんはよくわからないことを言っていたけど、体には特に問題ないみたいで、安心した。

 

「じゃあ俺は、弐桜拉麺のヤサイアブラで。」

「あいよ。」

「兄ちゃん、よく別の注文の仕方わかったね。ここにきたことあったの?」

「いや、ないよ。ここには、ね。」

 

なぜか兄ちゃんは、疲れ切った顔をしていた。

本当にどうしたんだろ?

 

 

「あい、おまちどう!」

 

そうしていると、僕達の前に拉麺がやってきた。

僕がそれを食べようとすると、なぜか兄ちゃんが僕の拉麺をじっと見ている。

 

「何、兄ちゃん?」

「季衣。それ、食べられるのか?」

「え?これくらい食べた内にも入らないよ。それより兄ちゃんこそ、そんな量で足りるの?」

「は、ははは、大丈夫。十分すぎるくらいだから。」

 

兄ちゃんは、顔を引き攣らせながら笑っていた。

さっきから、変な兄ちゃんだな。

 

 

僕達は拉麺屋を後にして、また町を歩いていた。

あの後僕は、おかわりを繰り返して、同じのを3杯食べた。

いつも食べているのと同じはずなのに、今日は特別美味しく感じたからだ。

 

(兄ちゃんと一緒だからかな?)

 

僕は隣を歩く兄ちゃんのことを見ながら、そう考える。

なんでかはわからないけど、なんとなくそうなんだということはわかる。

 

 

そんなことを考えていると、またお腹がすいてきた。

 

「兄ちゃん、次はあっちの屋台にいこう。」

「いいっ!?まだ食べるのか?」

「まだまだ入るよ。さあ、早く行こう。」

 

なので、兄ちゃんの腕を引っ張りながら、次の屋台へと向かっていった。

 

 

 

 

【side 一刀】

 

あの後俺達(というか季衣)は、屋台を十軒ほどはしごし、その先々で山のように食事をした。

季衣のお腹が満足するのに反して、俺の懐はひもじくなっていった。

しかし、一度おごると言った以上、今さらそれを撤回するわけにはいかない。

それは兄として、なにより男として、格好がつかない。

 

「兄ちゃん、今日はありがとう。」

 

そんな季衣は満足したのか、笑顔でお礼を言ってきた。

 

「どういたしまして。季衣が喜んでくれて良かったよ。」

(まあ、季衣の笑顔が見れたし、これくらい安いもの、なのかな?)

 

俺はそう考えて、自分を納得させることにした。

空になったはずの財布が、妙に重く感じたが。

 

 

「ふあ~。」

 

お腹が一杯になった俺は、連日の政務疲れもあり、眠気が襲ってきた。

 

「兄ちゃん、眠いの?」

「ん?ああ、お腹が一杯になったら、なんだかね。」

「じゃあ、僕良い所知ってるから、そこにいこう。」

「え、ちょ、季衣。」

 

季衣は俺の手を引っ張りながら、その良い所へと案内し出した。

 

 

町を出て、森に入り、しばらく歩くと、ちょっとした小川の近くにでた。

町から離れたこともあり、とても静かで落ち着く場所だった。

 

「へえー、良い場所だな。」

「訓練の帰りに、たまたま見つけたんだ。」

 

季衣は自慢げにそう答えた。

 

「それじゃ、ちょっと休むか。」

 

俺はそう言って、近くの木に寄りかかるようにして胡坐をかいた。

 

「よいしょ。」

「あの、季衣さん?」

「うにゃ?」

「何をしておられるんですか?」

「僕も休憩♪」

 

なぜか季衣は、俺の足の間に腰をおろし、寄りかかるように背中を預けてきた。

 

「座りづらくないか?」

「ううん、大丈夫。温かくて、とっても気持ちいいよ。」

「ならいいけど、つらくなったら言えよ。」

「ありがと、兄ちゃん♪」

 

季衣が喜んでるならいいかと納得し、そのまま二人でまったりとする。

 

 

その内心地よい風も吹き、だんだんと瞼が重くなってきた。

季衣の様子をみると、

 

「す~、す~。」

 

そんな可愛らしい声をだしながら、すでに眠っていた。

俺もそのことを確認すると、瞼の重さに抵抗することをやめ、そのまま目を瞑った。

 

 

 

「それで、こんな時間まで季衣を連れ出して、どこで何をしていたのかしら、一刀?」

 

俺は玉座の間で正座をし、華琳達に囲まれていた。

季衣は少し離れた所で、その様子を窺っていた。

 

実はあのまま俺達は熟睡してしまい、目が覚めた時には夜にまでなっていたのだ。

そして夕方になっても現れない俺に、華琳が調べさせた結果が今の状態である。

 

 

「あー、えーと、そのー、何といいますかー。」

 

さすがに、昼寝をしてそのまま寝過ごした、なんていったら大目玉をくらってしまう。

何か良い言い訳がないか必死に考えていたのだが、そんな嘘をつこうとした俺に、天罰が下される。

 

 

「華琳様、兄ちゃんが遅刻したのは、僕のせいなんです。」

「季衣の?」

 

季衣は俺が困ってると思い、なんとか庇おうとしてくれているみたいだ。

その優しさが、逆に俺を地獄に追い込むとは知らずに。

 

「はい、僕が兄ちゃんの上に乗ったまま寝ちゃったからなんです。」

「一刀の上に乗って!?」

(あれ、季衣さん?間違いではないですが、ちょっと言い方がまずいのでは?)

 

季衣の発言に、まわりに何かおかしな空気が流れて行く。

 

 

「季衣よ、それはどういうことだ?」

「兄ちゃんに、お腹一杯食べさせてもらったら、なんか眠くなってきちゃって。」

「腹一杯に、」

「食べさせられた、だと。」

 

さらに答えていく季衣だが、なぜだろう、何か変な方向に勘違いされている気が。

 

「き、季衣。アイツに、ひどいことされなかった?」

「ううん、兄ちゃん優しくて、とっても気持ち良かったです。」

「「「「なっ!?」」」」

(あ、俺の人生オワタ。)

 

その瞬間、俺は死を覚悟した。

なぜなら、震える4人の背中に鬼を見たからだ。

 

 

「季衣、もういいわ。色々辛いだろうけど、今日はしっかりと休みなさい。」

そんな、華琳の優しい声が聞こえる。

 

「?よくわからないですけど、わかりました。じゃあ兄ちゃん、またね。」

「あっ、季衣待ってくれ!この状況をなんとか(バタンッ)・・・・・。」

 

俺が呼びとめる間もなく、季衣は部屋から出て行ってしまった。

俺は扉に手を伸ばした姿勢で固まっていたが、次の瞬間には全身が震えあがっていた。

 

「さて、一刀。何か言い残すことはないかしら?」

「我らも鬼ではない、それくらいの慈悲はやろう。」

 

そこに、4匹の鬼がいた。

 

「え、えーと、せめて釈明の機会を。」

「ふん、つまらない最後の言葉だったわね。」

「ちょっ、ちが!!」

「北郷、死ねえええーーー!!!」

「ぎゃあああーーーーーーーーー!!!!」

 

そして、その日の城には、俺の悲鳴が木霊したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪兄様とご飯≫

 

その日、俺は自室で仕事をしていた。

俺の出した天の知識に関する政策も、本格的に動き出した。

行うにあたって、充分な検討を華琳や桂花がしてくれたが、それでも問題は起きてしまうもんだ。

今俺がしてる仕事というのが、その問題に関して、他の天の知識で何か使えるものがないかというものだ。

しかし、政治や経済なんかに詳しいわけでもない俺は、頭から煙を出しながら、竹簡とにらめっこが続いていた。

 

 

そんなことをしていると、あたりはすっかり暗くなり、静まり返っていた。

 

ぐ~~!

 

「あー、腹減ったなー。」

 

仕事を始めてから、結構な時間が過ぎており、夕食もまだだったことに気がつく。

 

「でも、この時間じゃちょっと遅いよな。」

 

すでに城の食堂は夕食の時間を過ぎているし、町の方もほとんど終わってしまっているだろう。

こういう時、思わず現代の24時間営業のコンビニやファーストフード店なんかを思い出してしまう。

むこうにいた時は当たり前すぎて気付かなかったけど、この時代に来て初めて、恵まれた時代にいたんだと気がつかされる。

 

 

ぐ~~!!

 

と、そんな感傷にふけっていても、やはりお腹は膨れない。

 

「何か、あまりもんでもないかな。」

 

何か少しでも腹に入れないともたないと思った俺は、食料を求めて台所へと向かうことにした。

 

カチャカチャ、カチャカチャ

 

台所に近づくと、すでに誰もいないはずなのに、食器の音がきこえる。

不思議に思った俺が、中を覗き込むと。

 

「流琉?」

「兄様?」

 

流琉が食器を洗っていた。

 

 

「どうしたんだ、こんな時間に皿洗いなんかして?」

「いえ、実は季衣が、いきなり私の料理を食べたいって言い出したので、作ってあげてたんです。」

「なるほど、で今は、その片付け中ってわけね。ちなみに、季衣は?」

 

俺はあたりを見回し、話に出てきた季衣のことを尋ねる。

 

「季衣だったら、食べ終えた後、お礼だけ言って部屋に戻っちゃいました。」

 

流琉はそんな親友のことを、あきれたような声で答える。

 

「ははっ、季衣らしいな。」

「ところで、兄様こそなんで台所なんかに?」

「ん?ああ、実は仕事に夢中になってたら、夕飯を食いっぱぐれちゃってね。で、何か残りもんでもないかなーとか思ってさ。」

「そうなんですか。でも、すでにそういったのは全部片付けられてしまってますよ。」

「えっ、そんなー。」

 

何もないとわかると、さらにお腹が減ってくる。

俺はショックを受け、近くのイスに力なく座り込む。

 

 

そんな俺を見かねたのか、流琉が願ってもない申し出をしてくれた。

 

「あのー、兄様。もし良かったら、私がおつくりしましょうか?」

「えっ、本当?」

「はい。季衣の料理を作った時の材料が余ってますので、それでも良ければ。」

「良い、良い。全然それでOK。」

「おーけー?」

「ああー、大丈夫とか、問題ないってこと。むしろお願いします。」

「ふふっ、はい。それじゃ、少し待ってて下さいね。」

 

俺はそんな流琉の申し出を二つ返事でOKすると、さっきまでが嘘のようにご機嫌になった。

 

 

トントントントン ジュージャッジャッ

 

リズミカルな包丁の音や、炒めものをする音が響き、次第に食欲をそそる匂いも漂ってきた。

流琉の手際はかなり良く、その手は止まることなく、流れるように調理を進めて行く。

俺はそんな流琉に感心しつつ、料理が完成するのをおとなしく待つのだった。

 

しばらくすると、俺の前に美味しそうな湯気を出す、炒飯、青椒肉絲、湯(タン)が並べられた。

 

「うおー、うまそう。いただき「あら、一刀と流琉じゃない。」華琳?」

 

俺がこれから食べようとした時、タイミング良く華琳が台所に現れた。

 

「食事中だったかしら。」

「まあね。そうゆう華琳はつまみ食いに「ちがうわよ。」くるわけありませんよね。」

 

俺の冗談を、華琳は一睨みで黙らせる。

 

 

「この先に資料を取りにいこうとしたのだけど、この明かりがついていたから、気になって覗いてみたのよ。」

「あのー、華琳様。もし宜しかったら、ご一緒にいかがですか?」

「なっ!!」

「あら、いいの?」

「はい、いつもの調子で少し多めに作ってしまったので、残り物のような形で申し訳ないのですが。」

「そういえば、私も夕餉はまだだったわね。匂いや見た目は申し分ないし、それじゃあご相伴に預かろうかしら。」

「はい。それじゃ、すぐに準備しますね。」

 

そういって流琉は、華琳の分の準備に取り掛かり、華琳は俺の隣の席へと腰をおろした。

 

 

「か、華琳。早く資料を取りにいかなくていいのか?」

「急ぎの案件でもないし、誰かを待たせている訳でもないから、少しくらい構わないわ。」

「そ、そうだ。もしかしたら、誰か部屋に訪ねてくるかもしれないぞ。」

「もうこんな時間よ。緊急のことでもない限り、それはないわよ。」

「え、えーと、ああ!こんな遅くにメシ食うとふと「首を刎ねられたいのかしら、一刀?」ごめんなさい。」

 

俺は、なんとか華琳を部屋に返そうと頑張るが、最終的には絶を首に突き付けられることで終了した。

 

 

「一刀、貴方はそんなに私と食事をしたくないのかしら?」

「そ、そんなわけないじゃないですか、華琳様。」

 

こんな美少女と食事ができるのだ、喜ぶやつはいても、嫌がる奴はいるわけがない。

そう、食事を楽しむだけだったらいいのだが、華琳との場合、それだけではすまない。

俺は、ついこの前のことを思い出す。

 

 

 

季衣との一件で迷惑をかけたということで、華琳達を食事に連れていくことになったのだが、出てきた料理を食べるや否や。

 

「駄目ね。」

「へ?」

「炒め方が甘いせいで、火の通り方にムラがあるわ。次に味付けね。食が進むように工夫はされているようだけど、そのせいで味が濃く、素材の良さを殺してしまっているわね。」

「なんだと、おめえ!俺の料理にケチをつけようってのか!」

「あわわわ・・・」

 

華琳がその料理に駄目だしをし始め、店主のおっちゃんは爆発寸前になっていた。

 

「あら、駄目な所を駄目だと教えてあげているのよ。これはケチじゃなくて、助言よ。」

「なんだとー!」

「そんなこともわからないようなら、すぐに店をたたんだほうがいいわね。」

「か、華琳!」

「出てけーー!!もう、二度とくんじゃねえぞ!!」

 

とうとう爆発してしまったおっちゃんは、俺達を店の外へと追い出してしまった。

 

 

「ああ、ここ安くて旨かったのに~・・・」

「駄目な所を、駄目だと教えてあげたのよ。料理人ならそれを受け入れ、精進すべきじゃないかしら。」

「いや、華琳の言ってることはわかるけどさ。もう少し言い方ってもんが。」

「そんな遠まわしに言っても、しょうがないでしょ。」

「その通りです、華琳様。華琳様に感謝こそすれ、怒るなんて勘違いも甚だしいです。」

「ああ、そこも、変に煽るな!」

「さっきの店主め、華琳様になんて無礼を。叩き斬ってくれる!」

「そっちは落ち着け!!」

 

華琳はさも当然のように反省してないし、桂花はそれに同調して煽るし、春蘭に至っては、刀を持って殴り込みにいきそうになってるし。

 

 

「だけど、あの程度の店が多くあるのだとしたら、陳留を治めるこの私の沽券に関わるわね。

 これは、他の店も調査する必要がありそうだわ。一刀、次の店に案内なさい。」

「へ??」

 

俺が春蘭を抑えている間に、そんな話になっており、俺は顔を青ざめさせた。

 

「春蘭、とっとと行くわよ。今日は多くの店を回らないといけないのだから。」

「はい、華琳様!」

 

そういって華琳達は、呆然としてる俺を尻目に、ずんずんと先に行ってしまう。

そんな俺の肩に手を置き、秋蘭が一言、

 

「あきらめろ、北郷。」

 

と、それだけ言って、華琳達の後を追っていった。

 

その後俺は、お気に入りの店など十軒ほど華琳に紹介し、その全てで出禁にされてしまったのだった、

 

 

 

今思い出しても、ダメージがでかい。

それだけ、華琳の料理に対する評価は厳しいのだ。

もし流琉がそんな目にあったら、どんなことになるか。

下手したら、村に帰りますとか言いかねんぞ。

 

 

俺は必死に打開策を考えるが浮かばず、とうとう華琳の前にも料理が並べられる。

 

「お待たせしました。どうぞ召し上がってください。」

「ええ、頂くわ。」

(えーい、南無三!)

 

俺はもしもの場合、華琳の口を抑えて、この場から連れ去る覚悟を決める。

その後に、お仕置きがあることも込みで。

 

 

そして俺は、料理を口へと運ぶ。すると、

 

「うっまーーーい!!」

「お口にあって良かったです。」

 

流琉の料理はとても旨く、今までの人生の中でもトップクラスに入る味だった。

俺は夢中で料理を口に運んでいたが、ふと隣の人物が視界に入り、箸が止まる。

その人物は何も言わず、ただ黙々と全ての料理に箸をつけていく。

 

 

ある程度食べ進めると、箸を置き、流琉のことを見る。

俺が息を飲む中、華琳がその口を開いた。

 

「この料理は、すべてあなたが作ったの、流琉?」

「は、はい。」

「素晴らしい腕前だわ。まさかあなたが武だけではなく、こんな才も持ち合わせていたなんてね。」

 

華琳の口から放たれたのは、賛辞の言葉だった。

 

「いえ、そんな。」

「謙遜しなくていいわ、流琉。今後はこっちの分野でも、あなたの力を貸してもらえないかしら?」

「は、はい。私なんかの力でよければ。」

「ふふ、ありがとう。それじゃ、それじゃ、せっかくの料理が冷めてしまわない内に、食べてしまいましょう。」

 

そういって食事を再開する華琳。

俺も最悪の想像が現実にならなかったことに安堵し、流琉の美味しい料理に舌鼓をうつのだった。

 

 

 

 

【side 流琉】

 

今私は、兄様と一緒に後片付けをしている。

あの後華琳様は、もう一度私に食事のお礼をしてくれ、そのまま仕事へとお戻りになりました。

 

片付けは私がやるから、兄様も部屋に戻っていいですよと言ったのだが、ごちそうしてもらったんだから、せめてこれ位は手伝わせてほしいと言ってくたので、今はこうして一緒に片付けをしています。

兄様は、こういう所が本当に優しいと思う。

 

初めの頃は、私のことを助けてくれた恩人としかみていなかった。

だけど、一緒に過ごしていくうちに、兄様の持つ優しさや温かさに気付き、少しずつ惹かれていった。

今では、兄様がいるとその姿を、無意識に目で追ってしまう自分がいた。

 

そんな兄様に料理を喜んでもらえ、さらにこうして一緒に片付けをしているのだ、こんなに嬉しいことはない。

私は思わず、顔が緩んでしまった。

 

 

「ん、流琉。そんなに嬉しそうにして、どうしたんだ?」

「えっ?あ、その、お二人に料理を気に行ってもらえて良かったなって。」

 

兄様がいきなり質問してくるもんだから、とっさにそう答えてしまった。

だけど、嘘はついてませんよね。

 

「ああ、あの料理は本当に旨かったな。流琉は気も利くし、将来良いお嫁さんになるよ。」

「え、ええっ!?」

「てか、むしろ俺が流琉のことをお嫁さんにほしいくらいだよ。なんてね。」

「兄様の、お嫁さん。」

 

兄様が最後になんか言っていた気がしますが、その前の言葉で私の頭の中は一杯になっていました。

 

 

 

「ただいま、流琉。」

「おかえりなさい、兄様。」

 

家の扉を開け、兄様が帰ってくる。

私はそんな兄様を出迎えるため、玄関に行く。

 

「こら、何度言ったら治るんだ。もう兄様じゃないだろ。」

 

そういって兄様は、私のおでこを指で軽く押す。

 

「ごめんなさい。あらためて、おかえりなさい、あなた。」

「ただいま、お前。」

 

私達は、そんな甘い空気を出しながら、家の中へと入っていく。

 

 

そのまま私は、途中だった料理の続きを行いながら、兄様に質問する。

 

「あなた、先にご飯にしますか、それともお風呂にしますか?」

「そうだな、それじゃ。」

「きゃっ!」

 

いきなり兄様が、私のことを後ろから抱き締める。

 

「先に、流琉のことから頂こうかな。」

「に、兄様。まだ料理の途中だから、危ないですよ。」

「ほら、また兄様って言ってるぞ。」

「・・・あなた。」

 

私は手に持っていた包丁を置き、兄様に向き直る。

 

「愛してるよ、流琉。」

「私もです、あなた。」

 

どんどんと兄様の顔が近づいてくる。

 

・・・る、・・る

 

私は目を瞑って、その時を待つ。

 

・・・るる、るる。

 

あと少しで、触れ合う。

 

「流琉っ!!」

 

 

 

「えっ!?」

 

私が目を開くと、目の前には心配そうな顔でこちらをみている兄様がいた。

まわりはもちろん、さっきまでいた台所だ。

そこまで確認し私は、さっきまでのことは全部自分の妄想だと気がつく。

だんだんと我に返ってくると、なんてことを考えていたのだろうと恥ずかしくなり、俯いてしまった。

 

「流琉、大丈夫か?なんか、ぼーっとしてたけど。」

「だ、大丈夫です。」

 

兄様のそんな優しさが、今は心に痛いです。

まさか、あんな妄想をしていたなんて言えるわけもなく、私はさらに俯いてしまう。

 

 

「顔も真っ赤だし、風邪でもひいたんじゃないか?」

「えっ、兄様?」

 

そういって兄様は、私の前髪をかきあげる。

そしてそのまま、

 

「(ピタッ)うーん、ちょっと熱いな。」

(に、に、に、兄様のおでこが、わ、わ、私にーー!)

 

自分のおでこと、私のおでこをくっつけてきたのだ。

 

「あれ?さらに熱があがってきたかな。」

(兄様の顔がこんなに近くに。あれ、これも私の妄想?っていうか、どこからが本当なんだろう?)

 

すでに私の頭は茹であがってしまい、何も考えられなくなっていた。

 

 

「流琉、やっぱり少し熱っぽいぞって、顔も真っ赤じゃないか! 本当に大丈夫か?」

 

兄様がおでこから離れると、私の顔見て、びっくりしていた。

 

「そ、そそそ、そうですね。風邪かもしれないので、これで休ませてもらいますね。兄様、おやすみなさい。」

「あ、ああ、おやす」

 

すでに洗いものは終わっていたため、私は兄様の返事も聞き終わらない内に、逃げるようにその場から離れた。

 

 

そのまま私は自室へ戻り、赤くなった顔を隠す様に、寝台へと潜り込む。

初めこそ照れと恥ずかしさで一杯だったが、だんだん時が経ってくると、嬉しさがこみあげてきた。

 

(ここに、兄様のおでこが。)

 

私はそう思いながら、自分のおでこに手を当てる。

その度にあの時のことを思い出し、顔が綻んでしまうのを止められない。

私は寝るまでの間、何度もそんなことを繰り返し、幸せな気持ちのまま眠りにつくのだった。

大好きな兄様の夢が、見られるように願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

sei 「第10話、季衣と流琉の拠点パートをお送りしました。

   二人とも食のイメージが強かったので、それをテーマに書いてみました。

   食の部分、あんまり関係なくね?というツッコミは置いといて下さいね。

 

   季衣と流琉にの役職については、初めでさらっと書きましたが、原作と同じ華琳の親衛隊にしました。

   決して、設定を考えるのが面倒とかいうのではなく、原作の設定を大事にした結果ですよ。

 

   さてさて、それでは今回のゲストを紹介します。

   今話の主役の一人である、この方に来てもらいました。どうぞ!」

 

 

流琉「どうも、今回のゲストの流琉です。よろしくお願いしますね。」

 

sei 「か~わ~い~い~♪」

 

流琉「ええっ!?」

 

sei 「あ~、こんな妹ほしかったな~。」

 

流琉「せ、sei さん?」

 

sei 「ああ、すいません。少しトリップしてしまいました。

   あらためて今回のゲストは、恋姫の妹にしたいキャラ筆頭、流琉ちゃんでーす。」

 

流琉「え、えーと、それ何ですか?」

 

sei 「え、私の独断と偏見ですけど。」

 

流琉「・・・sei さんに聞いた私が馬鹿でした。」

 

sei 「とりあえず、先を進めましょうかね。」

 

 

流琉「今回は私と季衣の話でしたけど、季衣の話に出てきたラーメン屋さんって。」

 

sei 「ん?ああ、あのお店のことですか。ラーメン屋って考えたら、ふっと思いついた店名です。」

 

流琉「あれって、ラーメン二」

 

sei 「拉麺弍桜です。」

 

流琉「だから、じ」

 

sei 「弐桜です。」

 

流琉「・・・・・」

 

sei 「あれをどう読んだか知りませんが、この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありませんから!」

 

流琉「・・・そ、そうですか。」

 

sei 「話題を変えましょうかね。」

 

 

流琉「あのー、私がなんか恥ずかしい妄想してるんですけど、あれって本来稟さんの役じゃ。」

 

sei 「確かに、妄想といったら稟なんですけどね。

   だから過激な表現を抑えたり、鼻血を吹きだして倒れたりなんてしてないじゃないですか。」

 

流琉「で、でも、なんで私なんですか?」

 

sei 「いやー、なんとなく流琉って、ああ言うあま~い妄想癖がありそうだなーって思って。」

 

流琉「そんなことないです!」

 

sei 「本当に?」

 

流琉「そ、それは・・・。」

 

sei (ニヤニヤ)

 

流琉「あー、もうこんな時間じゃないですか。今回はこれで終わりですね。」

 

sei 「逃げた。」

 

 

流琉「sei さん、次回はどんな話なんですか!!」

 

sei 「そんな必死にならんでも。

   まあ次回は、動きだす黄巾党とその裏に渦巻く陰謀に、一刀達はどう立ち向かうのかって話ですね。」

 

流琉「・・・それって、前回のコメントにまんまありましたよね。」

 

sei 「格好良かったんで、パク、いやいや、引用させてもらいました。内容的にも、ほぼこの通りですし。」

 

流琉「はあー、後で怒られても知りませんよ。」

 

sei 「まあ、なるようになりますよ。」

 

流琉「それでは、次回も兄様の活躍をご期待下さい。」

 

 

 


 
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