まえがき コメントありがとうございます。今回は月ちゃんとの逢引ターンです。好きなキャラNo.3ですので書くのが楽しみです。早くメイド月ちゃんも書きたい!ではごゆっくりしていってください。
私、月は今洛陽の街中で一刀さんと手を繋いでいます。嬉しい反面とても恥ずかしいのですが一刀さんが離してくれません。なんでこのようなことになったのでしょうか。それは一刀と月が城を出たところから始まる。
「では一刀さん、ついてきてください。」
「あぁ、よろしく頼むね。」
俺と月は街に出てあたりの散策に出かけた。隣から見た月の表情はどこかご機嫌のようだった。
「月、何かご機嫌だね。良いことでもあった?」
「はい!一刀さんとこうやって二人でお出かけなんですから。」
「そっか。じゃあ思いっきり楽しもう。」
「はい!」
二人の頭の中には既に街の案内という名目が消えてなくなっていた。街を少し見回っていると農民の恰好をした清羅の部隊の兵に出会った。
「おや兄貴、そちらの娘っ子はどちらですかい?」
清羅の部隊の何人かは俺のことを兄貴と呼ぶ。姐さん(清羅)の主=兄貴らしい。そんな柄じゃないんだけどなー。
「こちらは洛陽の諸侯の董卓さんだよ。」
「はじめまして。董卓仲頴です。あなたは一刀さんのところの兵隊さんですか?」
月はぺこっと頭を下げるとこの兵に疑問を投げかけた。そう言うと兵は月のことをじろじろと見ていた。
「あぁ。兄貴のじゃなくて韓飛姐さんの隊の者だけどな。しかしお嬢ちゃん、結構可愛いじゃねえの。兄貴も隅に置けねえなぁ。」
彼が俺の横腹にちょいちょいと肘をあててくる。
「あんまり女の子ばっか配下にしてっと、関羽様がまた嫉妬しだすぜー。」
「愛紗は嫉妬してもすぐ大人しくなってくれるから別にいいよ。あのちょっと困った顔もまた可愛いしね。」
「かぁ~!モテる男は言うことが違うねぇ。董卓さんよ、あんたも気を付けた方が良いぜ。兄貴は可愛い女の子を見つけるとすーぐ自分のもとに置きたがるからな。」
その言葉に月は首を横に振って違いますよと言った。
「一刀さんは優しいので、皆が一刀さんの近くにいたいんです。私もその一人ですし。」
「そこまで言うならもう何も言わねぇ。じゃあそろそろお邪魔虫は退散すっか。兄貴に董卓さんよ、逢引の邪魔して悪かったな。」
「逢引!?」
「ちょっ!そんなんじゃないって!」
そう言うも彼は手をひらひらと返して行ってしまった。あぁもう、月が顔を真っ赤にしちゃったじゃないか。
「へぅ////。」
「ごめんな、変なこと言われちゃって。」
「い、いえ。私もその、逢引だったらまた楽しいだろうなとは思いましたけど、それだったら一刀さんに迷惑がかかってしまいます。」
「迷惑って訳じゃないけどさ。その・・・。」
二人の間に少しの沈黙が流れた。この空気はちょっと耐えられないなー。
「その、月は俺と逢引したいってことでいいのかな?」
「は、はい//。」
「じゃあ、逢引らしさを出すために手を繋ぎたいんだけど。」
そう言うと一刀は月の手を取った。
「一刀さん!?もう繋いでます!繋いでますよ。」
「嫌だったかな?」
「いえ、嫌ではないです。嫌ではないのですが、その、恥ずかしいです・・・。」
月は顔を真っ赤にしている。あぁもう、可愛いなぁ。月は恥ずかしそうにしながらも指を絡めて来てくれた。俺も指を絡めると再び歩き出した。
「ここが洛陽で一番美味しい桃饅頭のお店です。」
「いらっしゃい。おや、董卓様。今日は呂布様が一緒ではないのですね。」
店の奥から恰幅の良い店主が出てきた。やはり恋も顔を覚えられているらしい。まぁ当然のことだろうな。
「はい。今日は一刀さんと一緒です。」
店主は俺に視線を移すとほほぅと何か納得したような表情をした。
「あなたがあの天の御使い様ですか。」
「?何で俺が御使いだって分かったんですか?」
「今朝方から、数名の農民らしき人たちが洛陽に天の御使いが来たと情報を流していたんですよ。人が好くて白い羽織を身に着けていると詳しく教えていたので一目で分かりました。」
おそらく情報を流すように促したのは朱里と雛里だろうな。こんな風に知ってもらえるのはありがたい。というか、城を出たあたりから物陰からずっと視線を感じるのだが・・・。おそらく星と清羅あたりだろうなー。見張りついでとかそのあたりだろう。
「そうですか。まぁ、自覚はあまりないので、こちらに滞在している間は名前で呼んでいくれるとありがたいです。俺は北郷一刀です。」
「一刀様ですか。」
そういうと店主はふと顔を綻ばせた。
「一刀様の周りには大体女の子がいると噂に聞いてはいましたが、董卓様でしたか。手を繋いでいるところを見るあたり、今は逢引の途中ですかな。」
「///。」
「まぁ、そんなところです。」
そんな噂まで流していたのか。・・・あながち間違ってないから反論できない。
「ではお二人にこれを差し上げますので後でお食べください。」
そういうと桃まんを一つずつ手渡してくれた。
「ありがとうございます。けどお代は?」
「いつも呂布さんがたくさん買っていかれるので繁盛しているのです。いつものお礼と言いますか、ささやかな贈り物として受け取ってください。」
「ありがとうございます。また恋さんと寄らせてもらいますね。」
「はい。」
店主に分かれを告げると俺たちはまた街中を歩きだした。
「せっかくだし、どこか落ち着いたところで桃まんをいただこうか。」
「いいですね。冷めないうちにいただきましょう。」
「どこか良いところはないかな?」
「そうですね。街の外れに森林があるからそちらに行きましょう。」
「森林か。涼しげでいいね、じゃあ行こうか。」
二人で城から持ってきた水と貰った桃まんを持って森林に向かった。森林を抜けると川を見つけたので近くの木陰に移動し二人で腰かけた。日陰で風がほどよく吹いているので心地よい。
「風が気持ちよいですね。」
「そうだねー。日陰があると過ごしやすいし、木が背もたれになってるから良いね。とりあえず、貰った桃まんを食べようか。」
俺が桃まんを食べようとしたところ、月が待ってくださいと言われて遮られた。
「どうしたの?」
「その、私が食べさせてあげます//。」
・・・これはあれかな?あーんをさせてください。というやつかな?
「じーーーっ。」
うっ。そんなに見つめられると断れないぞ?いや、断るつもりはないんだけどさ。
「じゃあ、あーん。」
俺が口を開けるとおずおずと月は持っていた桃まんを俺の口に入れてきた。桃まんをかじるとほのかな桃の風味が口の中に広がる。あんこに桃をすりつぶして混ぜてるんだな。純粋に美味い。
「うん、美味い。」
「お口にあって良かったです。」
「機会があったら俺も作ってみようかな。」
「一刀さんはお饅頭を作れるんですか?」
月は意外そうな顔で俺を見てくる。
「向こうにいた頃は料理もお菓子も自分で作ってたからね。大体のものは作れるよ。」
「一刀さんは何でも出来るんですね。尊敬します。」
「月にそう言われるのは光栄だね。」
ちょっと照れくさかったので月の頭を軽く撫でる。撫でられた月は頭上に?マークを浮かべていた。
「私はなんで頭を撫でられてるのでしょうか?」
「何でだろうね。照れ隠しに頭を撫でてみた。みたいな?」
そう言うと月はくすくすと笑いだした。笑われるようなこと言ったかな?
「自分で照れ隠しと言っては照れ隠しになりませんよ。」
「・・・確かにな。」
月につられて俺も笑いだしてしまった。先ほどの気恥ずかしさもどこかに飛んでいってしまった。
「月に食べさせて貰ったことだし、次は俺が月にあーんをしてあげる番だよな。」
「え!?そ、そんな、私はいいですよ。一刀さんに食べさせてあげれれば十分です。」
「じゃあ月に食べさせてあげたいんだ。これじゃ駄目かな?」
「うぅ、その言い方はズルいです。断れなくなってしまったじゃないですか。」
一刀さんに食べさせてあげたかっただけなのですが、何でか私も食べさせてもらうことになりました。一刀さんは今食べやすいように一口大に千切ってくれています。どことなく嬉しそうなのはなんででしょうか。うぅ、食べさせてもらうのはどこか気恥ずかしいですね。一刀さんも同じ気持ちだったのでしょうか。
「はい。あーんして。」
「や、やっぱり自分で食べます。」
「駄目。」
いきなり却下されました。やはり決意するしかないようですね。
「はい。お願いします。」
月は目を瞑って口をあーんと開けた。なんか、雛鳥に餌をあげる親鳥の気分だ。たしか親鳥は自分で取ってきた餌を嘴越しに雛鳥にあげていたから、口で・・・って俺は何を考えているんだ!?//
「一刀さん、まだですか?その、このままというのも恥ずかしいのですが//。」
「そ、そうだね。ごめんごめん。」
俺は千切った桃まんを月の口の中に入れてやるとやはり美味しいですね。と顔を綻ばせていた。うん、月の綻んだ顔も可愛い。役得だよなー。月が食べ終わると次は私の番ですねと言ってくる。
「またやるの?」
「はい♪」
そうらしい。まぁ楽しいからいいか。二人で交替であーんをしながらお互いの桃まんを食べてしまった。
「美味しかったね。」
「そうですね。味が違ったら交換して食べさせあいできたんですけどね。貰ったものですから贅沢は言えません。」
「けどそれだったら間接的に接吻することになるよな。」
何気なく言った一言だが月が顔を真っ赤にするのに時間は掛からなかった。
「一刀さんはそういうことしてみたいですか?」
「・・・本音を言うとしてみたい。」
「ふふっ、一刀さんは正直ですね。」
「・・・正直なのがモットーだからね。」
このやり取りで恥ずかしさもどこかに消えて二人で笑い合っていた。ひとしきり笑った後、月が軽く欠伸を漏らした。
「眠い?」
「お腹いっぱいで安心したようです。一刀さんと一緒にいて楽しかったですし、少し体力を使っていたのですね。はふぅ・・・。」
月がもう一度欠伸をすると一刀は足を伸ばし膝をぽんぽんと叩いた。
「じゃあ眠ってていいよ。俺の膝枕っていうのが心許ないけど。」
「それはありがたいのですが、その間一刀さんはどうしてるのですか?」
「背もたれに木もあるしね。暇になったら月の寝顔を見てようかな。」
一刀が冗談っぽく言うものの月はその言葉に照れてしまった。どうせなら一刀さんに膝枕してあげたいと思っている月であった。
「では、お邪魔します//。」
「どうぞ。」
月はちょこんと一刀の膝に頭を乗せると一刀は月の頭を撫でる。また撫でられてます。一刀さんは撫で癖でもあるのでしょうか。
「本当ならふかふかの枕とかならいいんだけどね。あいにく森の中だし、俺の膝で我慢してね。」
「はい。それはむしろ嬉しいです。けど、恥ずかしいですね。それと不思議な気分です。膝枕してもらったのは初めてです。」
「そうなの?」
「そうですね。幼いころから身分から親もそのような暇はありませんでしたし、私が諸侯になってからも同じことです。人に甘えることすらなかなか機会もなかったので、こうやって膝枕してもらって、甘えさせてもらっているようでちょっぴり幸せです。」
「そっか。」
一刀は話を聞きながら月の頭を撫で続けた。膝枕をしていると昔、菊璃に膝枕をしてもらっていたころのことを思い出していた。
「私も今の一刀みたいに霧刀さんに膝枕をしてもらったことがあってね。その時に言われたの。まだ私たちが会って間もなかったころのことね。自分の身分のせいで働いてばかりで人生なんてつまらないって思っていたの。」
その時の母さんの表情は今でも覚えている。どこか昔を懐かしむように穏やかな表情をしていた。
「そんな風に考えたのが口に出ていたのね。それを聞いた霧刀さんは何ていったと思う?つまらないなら僕が君の人生を色鮮やかなものにしてあげるって。ふふっ、歯に衣を着せた物言いで似合わないと思いながらも何でかこの人とならそんな人生を歩んでもいいかなって思ったの。その時からずーっと霧刀さんのことを見てた。けど、霧刀さんの周りにはたくさんの女の子がいて。どうにか私を見てくれるように必死になったわ。そして霧刀さんは私を選んでくれて、結婚して。一刀が生まれて。今はとっても幸せね。」
そして、母さんは一息ついて。一刀、あなたは今、幸せ?って聞いてきた。俺はその問いに勿論!と返すと、そう。良かった。と言って俺の頭を撫でてくれたんだ。何でここでそんな話をしたの?って聞くと母さんはそうねと相槌を打って、
「一刀がこの先、大切な人が出来た時にでもこの話を聞いたことを生かして参考にしてもらえればって思ったのよ。お義父さんの孫で霧刀さんの子なんだからたくさんの女の子と接点を持つでしょうね。」
くすくすと笑う母さんに俺は?マークを頭上に浮かべるしかなかった。そこで丁度父さんが部屋に入ってきて、何を話していたんだ?って聞くと母さんが、霧刀さんのプロポーズのこと♪って冗談で言ったことに父さんはそりゃあ恥ずかしそうに慌てふためいていた。今思うと惚気話を聞かされていたのではないかと疑いたくなったが、それ以前に懐かしい。母さんたちは元気にやっているんだろうか。
などと考えていると月がにこにことしながら俺の顔を見ていた。
「俺の顔、何かついてる?」
「いえ、一刀さんが嬉しそうというか、幸せそうな顔をしていたので。何を考えていたんですか?」
「考えていたというか思い出してたんだ。俺が母さんに膝枕をしてもらっていた時に聞いた話のこと。大切な人が出来た時に参考にしてもらえればってね。」
それを聞いた月の顔が少し赤くなったことをよそ目に一刀は話を続けた。
「じゃあもっと月が甘えられるように、幸せだなって感じられるように俺がお手伝いしてあげる。」
「くすくす、一刀さん。そう言うと口説いてるように聞こえますよ。」
「あら、思ったことを言っただけなんだけどな。」
「そこが一刀さんの美徳なんですよ。それなら、もっと一刀さんに甘えちゃいます。そして、一刀さんにも幸せになってもらいます。」
「あぁ。」
そして会話が終わって数分後、月がすぅ・・・、すぅ・・・、と寝息を立てて眠ってしまった。
「俺も月の寝顔を見てると少し眠くなってきたな。少し寝ようかな。」
一刀が眠りについたころ、月の手が一刀の空いている手に重ねられていることに一刀は気づかなかった。その頃、一刀の後をつけ・・・こっそり護衛をしながら木の物陰から覗いていた二人、星と清羅はというと・・・
「まさか家臣以外にも手を出すとは・・・、主はやはり大物のようだ。」
「ご主人様はみんなのものだから。今度、私も膝枕してもらおうかしら。」
などと護衛というより覗きに徹した二人がいたそうな。傍から見れば不審者と間違われてもおかしくないような光景だったのは言うまでもない。
一刀と月が眠りについて約三刻後、二人はほぼ同時に目が覚めた。
「おはようございます、一刀さん。」
「おはよう、月。ぐっすり眠れた?」
「はい、おかげさまで。」
月が立ち上がるともう夕方で戻らないとみんなが心配するといけないので木陰をあとにして森林をゆっくり歩いて城に戻ることにした。その時、二人の手は自然と繋がれていた。
「またこんな機会があったらいいな。」
「きっとありますよ。」
「そうだな。」
二人は他愛無い会話を続けながら森林を抜け、街を通り城に辿り着いた。城では謁見の間で桃香たちが談笑していた。
「ただいま。」
「ただいま戻りました。」
「あ、ご主人様、月ちゃん、お帰り~。」
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
「月、お帰り。」
「一刀に月、今日は楽しめたんかいな?」
その霞の一言に俺と月は顔を見合わせるとくすっと笑って、
「あぁ。」
「とっても楽しかったです。」
と返した。すると霞がにやっと笑って俺と月の間に来た。
「それはそうやろうな。なんせ、手ぇ繋いでるくらいやもんな。」
改めて俺の左手に視線を移すと俺と月の手はしっかり繋がれていた。それは月も同じで、へぅ。と言って顔を真っ赤にして俯いてしまった。相当恥ずかしいんだろうな。俺も恥ずかしくないとは言わないけど・・・。俺と月が黙っていると桃香が俺の右隣までてくてくと歩いてきた。
「明日は私の番だからね。忘れないでね?ご主人様♪」
俺の右手を握るとこちらを向いて満面の笑みを向けてくる。
「忘れてないよ。」
「月、一刀とどないなことしてきたん?ちょい聞かせてーな。」
「えーとですね。もらった桃まんを食べさせてもらったり、食べさせてあげたり。後は膝枕してもらいました♪」
カチーン。と音を立てたように固まってしまった。護衛兼覗きをしていた二人と当事者二人と鈴々と桃香以外である。固まっている者たちお構いなしに桃香が爆弾を投下した。
「今夜、一緒のお部屋で寝ることになったら私にも膝枕してね♪」
この言葉に月と詠が俺の部屋割りをどうするかについて保留になっていたことを思い出したようで。それを聞いた途端みんなの目の色が変わった。
「今日は私と一緒がいいです!他に部屋も空いてないわけですし。」
「一刀さんには私の部屋で寝てもらいます。今日のお話の続きもしたいです。」
「ご主人様は私たちの部屋の方が良いと思います。体格的に私たちの寝台の方が余裕もありますし。」
「(こくこく)」
「うちだって一刀と一緒がいいわぁ。今朝は模擬戦しただけやし、話足らん。」
「私たちの部屋に来ませんか?星ちゃんと私、両手に花ですよ。」
「そうですぞ。このような美少女をほっとくのは勿体ないというものです。」
「わ、私の寝台をお使いください!夜の間は私が隣で護衛をします!」
このままじゃ平行線のままで埒が明かない。じゃんけんでも教えようかな。それが一番無難だろう。ちなみに、これに参加していないのは詠と華雄。鈴々は愛紗と相部屋なのでどっちでもいいようだ。恋とねねは動物の餌の時間で居合わせていなかった。皆が言い争っているところに割って入ってじゃんけんを教えた。この時代にはさみはおそらく存在しないのでグーを弓兵、チョキを槍兵、パーを騎馬兵に例えてこれで決めてはどうだろうと提案したところすんなり了承してくれた。そして俺のその日の部屋割りを賭けたじゃんけんが始まった。二人部屋のところは一人が代表で参加する形になる(雛里、星、愛紗)。それからすぐにじゃんけんが始まったのだが六人という大人数なのでなかなか決着がつかない。それから一分後、決着がついた。勝ったのは月、桃香、星だ。負けた三人はあそこでグーを出しておけば・・・とぶつぶつ呟いていた。
「必ず勝つぞー!」
「負けません!」
「この勝負、もらった!」
なんかやる気に満ち溢れている三人。じゃんけんでここまで盛り上がれるのも珍しい。
「最初はグー、じゃんけんぽん!」
結果は・・・、
「一刀さん!勝ちました!」
月は満面の笑みでこちらにとてとてと近寄ってきた。俺の上着を正面からくいくいっと引っ張ってくる。頭を撫でてってことかな?思いっきり甘えちゃいますって言っていたからそれかな?
「よしよし。頑張ったな。」
月の頭を撫でるとえへへ。と言って気持ちよさそうに目を細めていた。詠は月の意外な行動に少し驚いてるようだった。月が俺から離れると晩御飯にしましょう。と言って厨房に向かった。
「じゃあ俺も月の手伝いをしてこようかな。誰か料理できる人っている?」
「では私も手伝いましょう。」
「朱里ちゃん、私たちもお手伝いしよう。人数も結構いるし、鈴々ちゃんもいるし・・・。」
「そうだね。ここでご主人様に良いとこ見せておかないと。」
「うー、こんな時に料理できない自分が恨めしい・・・。」
「と、桃香様。私たちは卓と食器の準備をしましょう。」
「じゃあうちが案内したるからついてきてや。」
「せっかくだし、宴の形式にした方がいいわね。酒樽を運ぶから手が空いてる人は手伝って。」
「ふむ。それは私が手伝おう。」
「私も手伝うか。何もしない訳にはいかないしな。」
「鈴々も手伝うのだ!」
と言うわけで料理班は俺と月、清羅に朱里と雛里。食器を並べるのが桃香と愛紗と霞。酒樽運びが鈴々と星、華雄と詠。詠が酒樽を運ぶのは難しいんじゃないか?っていうかあの三人がいるから心配いらないか。俺たちは月が向かった厨房に向かった。厨房に到着すると月が材料を出していたところだった。
「月、詠が宴形式にするって言ってたぞ。」
「そうですね。私たちも何だかんだ会ったばかりですし、この機会に親睦を深めるのも良いですね。」
「では何を作ればいいか言ってもらえれば私たちも手伝いますので。その間に董卓さんとご主人様で材料を取ってきてもらえれば朱里ちゃんと雛里ちゃんで進めておきますので。」
「ありがとうございます。では、そうですね。では朱里ちゃんと雛里ちゃんは棒棒鶏、韓飛さんは麻婆豆腐を作ってください。」
「分かりました。」
「(こく)」
「私のことは清羅でいいですよ。」
「では私のことも月と呼んでください。清羅さん。」
「ええ。」
俺と月が材料を取りに行き戻ってきた後、俺たちも料理を作るのに加わった。完成したのは実に一刻後のことだった。ここまで大がかりに料理を作ったのは何年振りだろう。手が空いてる人たちを呼んで料理を宴の会場まで運んだ。
「すごーい!これ、全部ご主人様たちで作ったの?」
「あぁ。久しぶりに料理したけど上手くいってよかったよ。」
「ふむ。この出来なら街の料理人も称賛するだろうな。それと、この山のように積んであるメンマ。なかなかいいもののようだ。」
星がメンマを食べたがるのはうちの陣営では言わずとも知れているからな。もっとも、星のことだから持参しているとも考えられるがそこは気にしないでおこう。料理を並べ終えた頃にちょうど良く恋とねねも来て親睦を深めるという名目で宴が始まった。開始早々、鈴々と恋がもの凄い勢いで料理を平らげていく。これじゃうかうかしてると食べ損ねそうだ。ちなみに、今回の料理はエビチリ、フカヒレの姿煮、若鶏の唐揚げ。豚の角煮、蟹の宝楽焼、棒棒鶏。麻婆豆腐に酢豚と八宝菜。デザートに林檎のパイ焼と点心と杏仁豆腐だ。現代にいた頃には滅多にお目に掛かれない中華料理フルコース。お酒は老酒と白酒。さすがに回るテーブルはないようだ。それぞれ話に華が咲いている。星と霞の飲み比べには参加したくないな・・・。どこに行こうか迷っていると桃香がご主人様~と言いながらふらふらとこちらに近づいてきた。ん?目が潤んで焦点がなかなか定まらない様子。あれは酔ってるよなー。桃香が俺の目の前に辿り着くとがばーっと抱きついてきた。全体重がのし掛かってくるので倒れこんでしまった。やばい。酒のにおいと桃香の甘い香りでくらくらしてきた。引っぺがそうにもなかなか離せない。うっ、みんなの視線が痛い。
「桃香様!何をしておられるのですか!?」
と言ってこちらに向かってくるが桃香はお構いなしに俺に頬擦りしてくる。普段の甘えたがりに拍車が掛かってるな。ふと桃香は頬擦りを止めるとじーーっと俺の顔を覗き込んでくる。何か嫌な予感が・・・。
「ご主人様・・・。」
「な、何?」
「好きーーー!ちゅーーーー。」
桃香がふいにしてきたキス。頬だったのが幸いだがキスをされたのが初めてだった俺は思考が停止してしまった。口をぱくぱくするもどうも言葉が出てこない。
「と、桃香様!?な、ななな、何を!?早く離れてください!」
「や。愛紗ちゃんも~、ご主人様に甘えればいいんだよ~。」
愛紗が桃香を引っぺがそうにも相手が桃香なのでそこまで力を込められない。桃香の肩を掴んでいる状態で桃香が俺にもっと引っ付こうとしたため前に体重をかけたところ、愛紗がその勢いに巻き込まれ愛紗も俺の上に倒れこんできた。二人の顔が近い・・・。愛紗も顔を真っ赤にしていた。
「す、すみません!すぐに離れますので//」
姿勢を立て直そうとする愛紗だったが、愛紗の後ろから霞が、
「うちも混ぜてーなー。」
と言って霞も飛び込んできた。よって、愛紗も身動きが取れなくなり困った表情を見せた。
「ご主人様、何とかしてください//」
「そう言われても・・・。」
どうしようもない。というか霞の力が予想以上に強い。誰か助けてくれないかと視線をやるが星と清羅、華雄は酒を呑みながら傍観に徹しているし詠とねねは恋が食べすぎないように見張りをしている。それでも十分食べ過ぎているようだが。鈴々は料理を食べることになってるし、うちの二大軍師はあわわ。はわわ。と言って何か慌てている。薄情者―!と思いながら諦めていると唯一の救いの月がこちらに近づいてきた。
「月!助けてくれ!」
「すみません。私の力では桃香さんや霞さんを引き離すことは出来ないので。」
と苦笑いをしていた。うーん、これは諦めるしかない。はぁ、女の子にくっ付かれているのは嬉しいんだけど、正直言って・・・お腹空いた。空腹と女の子の甘い香りから解放されたのは、霞がもう一回呑みなおすそうと言って立ち上がり、桃香が疲れて眠りについた一刻後のことだった。俺、何もしてないはずなんだが結構疲れた。愛紗が桃香をおぶって寝台までつれていくのを確認すると俺はとりあえず床に座って一杯の水を飲んだ。
「ふはぁー。生き返った。」
「一刀さん、お疲れ様です。」
どこかに行っていた月が俺の隣に座った。
「月、どこに行ってたんだ?」
「空になった食器を片づけていたんです。」
「そっか。ごめんね、手伝いできなくて。」
「いえいえ、あのような状況でしたし。なんだかんだで清羅さんと詠ちゃんも手伝ってくれたので。」
それからすぐに愛紗が戻ってくると時間も時間だったのでお開きとなった。星と清羅、霞と華雄はまだ吞むようだった。愛紗はふあーと大きな欠伸をしながら部屋に戻っていった。鈴々も眠いのだー。と目をくしくしと擦りながら愛紗について行った。朱里と雛里は先に部屋に戻ったようだ。恋は眠ったねねをおぶって詠と一緒に部屋に向かった。
「とりあえず、私たちも部屋に行きましょうか。」
「そうだね。」
俺と月は月の部屋に向かった。月の部屋に着くとちょっと取ってくるものがありますので中で待ってください。と言って部屋を出て行った。
「ふぅ。」
とりあえず椅子に座らせてもらい一息ついた。
「ここが月の部屋か。」
想像どうり、部屋の中には埃一つなく清潔感が漂っていた。それと月自身の香りだろうか。甘い香りが部屋を満たしていた。何か落ち着く。何をするでもなくぼぉーっとしていると月がお待たせしました。と言って部屋に戻ってきた。
「お帰り。ん?その持ってるものは何?」
「炒飯です。一刀さん、さきほどは何も食べていなかったようなので。」
「ありがとう。月も一緒に食べる?」
「いえ、私はお腹いっぱいなので。」
これはありがたい。寝る前に食べるのは健康上良くないことだが、何も胃に入れないとおそらく空腹で眠れないだろうから。
「あの、その、また一刀さんにあーんしてもいいですか?」
月が俺のために作ってくれたものだし、このくらいのお願いなら聞いてあげよう。
「いいよ。」
「では、あーん。」
月がスプーンで炒飯を俺の口に入れてくれる。シンプルに入り卵と刻み葱に塩コショウで味付けされたシンプルなものだが美味い。
「うん、美味い。細かな配慮も出来るし料理も出来る。月は良いお嫁さんになれるよ。」
「お嫁さんですか//。それを言うなら一刀さんも同じ意味で良いお婿さんになれますよ。」
そんなこと初めて言われたぞ。というか、そういうのは男にいう言葉じゃないんだが純粋に嬉しい。
「ありがとう。じゃあ俺たちが夫婦になったら良い夫婦になるね。」
「そうですね。」
ふふっと笑う月にほっこり温かい気持ちになった。お互いに一刀が求婚を申し込んだとも取れる言葉には気づかないようだった。それから残りの炒飯も月のあーんで食べ終わった。
「ご馳走様。美味しかったよ。」
「いいえ、どういたしまして。」
「お礼に今度、俺が向こうにいたころの料理を作ってあげるよ。」
「はい。楽しみに待ってますね。」
お互いに他愛無い会話を一刻ほど続けた後、俺は水で軽く口を漱いで月の寝台に入った。
「お邪魔します。」
「はい、どうぞ。」
月の体が小さいお陰で俺が入っても十分な隙間があった。というか、この寝台大きすぎるような・・・。月が俺の腕に月の腕を絡めてきた。
「眠るときに誰かが隣にいてくれるって良いですね。落ち着きます。」
「そうだね。たまに人肌が恋しくなることってあるし。」
「今日は楽しかったです。また二人でお出かけしましょうね。」
「あぁ。今度はもっと計画を立てて一日かけてのんびりしよう。」
「はい♪」
俺が月の頭を撫でていると月の寝息が聞こえてきた。月の寝顔はどこか穏やかで微かな笑みを浮かべていた。俺もそろそろ寝ようかな。おやすみ、月。良い夢を・・・。
あとがき 拠点:月 逢引!?へぅ// はどうだったでしょうか。いやー、拠点にしては長くなりました。霞姐さんの約二倍の量です。書くのはとても楽しかったです。この時点だと桃香より月ちゃんの方がメインヒロインみたいになっていますね。可愛いからまぁいいかw。今の段階でハーレムすぎワロタスレが立ちそうですが翠や紫苑たちが増えたら大変なことになりそうです。それでは次回 拠点:華雄 真名がない者同盟・・・? でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。