No.479017 IS学園にもう一人男を追加した ~ 76話rzthooさん 2012-09-02 21:17:51 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:1357 閲覧ユーザー数:1338 |
一夏SIDE
マドカ
「お前を殺す"モノ"だ。織斑一夏」
一夏
「っ!」
脳に指令がいく前に、体が先に身を翻して後頭部に押し付けられたライフルの弾丸を避ける。そして、敵の腹部に蹴りを入れて距離を取った。
マドカ
「チッ・・・」
セシリアの『ブルー・ティアーズ』のように、ビットが飛び出し、俺の周囲を囲みながら青白いレーザーが放たれる。
一夏
(こんな狭い所じゃ、白式の機動性は生かせない・・・)
そう思った俺は、ビットを掻い潜り、後ろからの敵とビットの攻撃を雪羅で防ぎながら、慣れないバック飛行を続けた。だが、慣れない飛行を続けたせいか、前方へ回りこんだビットの反応に遅れてしまった。
マドカ
「捉えたっ!」
身を反転し、完全停止を行った俺の隙を狙う敵。雪羅の荷電粒子砲で迎撃するが、装甲スレスレで避けた敵はライフルの銃剣を向けて突っ込んでくる。
マドカ
「死ねっ!」
一夏
「っ、ふざけるな!!」
足払いでライフルを往なし、懐へ飛び込んできた敵に雪羅をかざす。
マドカ
「っ!?」
一夏
「"死ね"とか簡単に言うんじゃねぇ! それなら、お前がっ」
何度も特訓したんだ・・・このゼロ距離射撃はっ!
一夏
「お前がっ!」
白い少女
『ダメっ!!!』
?
『フラン博士! 成功です!』
だれ、だ・・・?
フラン
『お~! そ~ですかー!!』
ここは・・・どこだ?
?
『完璧な"仕上がり"です! これなら、すぐにでも実戦に・・・って、フラン博士?』
フラン
『・・・』
わたし、は・・・だれだ?
フラン
『君は"私の子"ですよ』
・・・わかるのか・・・わたしの、こえが・・・
フラン
『当たり前じゃないですかー・・・そーです! 名をつけましょー!』
"な"・・・? わたしにか・・・
フラン
『ほかの子達はつける事が出来ませんでしたからね~・・・そうですね・・・円(マドカ)。円にしましょー!』
まどか・・・マドカか・・・
円・・・"穏やかで円満な様になるように"と付けられた。だが、私は所詮、"人形"。名とはかけ離れた環境で私は育ち、そして今も"円"を名乗れず、"マドカ"・・・"エム"として生きてきた。
だからなのだろうか・・・私は心のどこかで"ありふれた家庭"を望んでいた。私は自分が"人"として名乗れるように、私を作った目的人物である織斑千冬、同じ血が流れている織斑一夏を消そうと、何年も思い続けてきた。
どんなに手が汚れても良い。私が私でいる為には2人の存在がとても邪魔だった。その存在自体が私を"モノ"だと認識させる。
首に提げたロケットには、未だに写真を入れない・・・入れられない。私を"モノ"だと思い返す存在があるからだ。
だから・・・
一夏
「ハッ・・・」
気づけば、俺の意識は現実に引き戻された。状況的に、俺が"マドカ"と名乗る少女を荷電粒子砲で撃った後らしい。床には荷電粒子砲で出来た焦げが一直線に伸びていた。
一夏
「い、今のは・・・」
あの時、俺は暗い空間にいた。体の感覚も感じさせない場所。だけど、頭に響くように"マドカの声"が流れ込んできた。
しかも、それだけじゃない。"マドカ"がこれまでの記憶が、事細かに俺の脳に刻み込まれたんだ。"マドカ"の事や、楯無さんが教えてくれた情報以上の『亡国企業』の事。"マドカ"以外にもクローンが作り出された事などなど。
勿論・・・獅苑の事も。
でも、何故だろう・・・さっきの現象が夢、幻とは思えない。それが"現実なんだ"と疑う余地もないくらいに・・・
一夏
「・・・白式。お前がそう思わせているのか?」
なんて、問いかけても返事が返ってくる訳がないのにさ・・・
とりあえず、俺は吹っ飛ばされた"マドカ"の元へ。この通路の先に大きな部屋があるようで、"マドカ"は周りの木箱や機材の下敷きになって壁にもたれかかっている。
一夏
「うわっ!」
何で、こんな所にテニスボールが散乱してんだ・・・?
マドカ
「・・・」
一夏
「お、おい・・・」
ぐったりしている"マドカ"に手を伸ばす。
マドカ
「っ!」
[ガチンッ!]
一夏
「おおっと・・・!」
だが、差し出した手は払われて、金属同士の接触音が鳴る。
マドカ
「・・・覗いたな?」
一夏
「え?」
マドカ
「私の中・・・覗いたな」
ギラッと"マドカ"の眼が俺を捉え、気づいた時には首を掴まれ、逆に俺が壁に叩きつけられていた。
一夏
「うっ・・・」
マドカ
「私には分かる。お前が真実を知った今、私に対してどう思っているのか・・・」
一夏
「な、なら、お前を認めてくれる奴がいるって事だって」
マドカ
「知ってるさ。実際に私の近くにも居たしな・・・だが、私の存在は誰かに認められないといけないのか?」
一夏
「っ・・・」
マドカ
「お前が私を認めるか否かは関係ない。私がお前達に対する気持ちは変わらない・・・端からお前ら姉弟に恨みなんてないんだからな」
すると、"マドカ"の背後からビットが飛び出し、銃口が俺を狙う。
一夏
「・・・少し、俺に時間をくれないか?」
俺は"マドカ"の冷たい眼光から目を離さないで、心を落ち着かせて問いかける。
マドカ
「何だ?」
どうせ、俺が何と言おうと状況は変わらないだろう。諦めに聞こえるかもしれないけど、"気になった事"をそのままにしたくない。
一夏
「俺はお前の感じた事や、記憶の中身を知った・・・」
マドカ
「・・・」
一夏
「お前は・・・獅苑に対して特別な思いがあるのか?」
マドカ
「っ・・・」
一夏
「俺は感じ取った。お前が獅苑に・・・"希望"を持っている事を」
あれは、私が持ち場に着く前の時だった。
フラン
「ふ~んふんふ~ん」
二足ロボをメンテナンスしている博士と遭遇した。すると、博士もこちらに気づいたようで無駄に高いテンションで挨拶して、またロボと向き合う。
私はこの時、『B』が言った『獅苑(アイツ)は"特別"』というのが気になっていた。
マドカ
「・・・少し、私に時間をくれないか?」
フラン
「ん? なーんですかー?」
私は博士に聞いた。博士は少し言葉を詰まらせていたが、ちゃんと"真面目"に教えてくれた・・・博士しか知らない『No.40』の秘密を。
マドカ
「・・・方舟だ」
一夏
「え?」
この時、俺の首を掴んでいた手が弱まった。だが、何故か俺はその場から逃げ出そうとはせず、"マドカ"の手は首に置くという形になる。
マドカ
「方舟なんだ。朝霧獅苑は・・・『No.40』は・・・」
一夏
「方舟・・・」
マドカ
「私の記憶を覗いたお前なら知っているだろ。私達クローンは失敗作も含めて51体」
俺が知った記憶の中では、成功体が5体。失敗体は44体。訳ありで保管されているのが2体・・・だったかな。
マドカ
「失敗体の処理は本来、一研究員の提案で生体実験のモルモットに使用するはずだった。だが、博士は反対した・・・そして、博士はまだ未完成だったワープ機能を応用して、失敗作の全てを『No.40』に融合させたんだ」
一夏
「・・・」
は、話についていけない・・・
マドカ
「想像が出来ないなら、粘土で考えてみろ」
一夏
「・・・うっ」
気分、悪くなるわ・・・
マドカ
「その真実を立証するものはないが、アイツの近くに居たお前なら知っているんじゃないか?」
一夏
「・・・」
確かに知っている・・・『コウ』だ。もし、『コウ』がその失敗作の1体であるなら、オカルト的に乗り移ったと考えてもおかしくはない・・・おかしくない、のか?
俺はどうかしているのか? 目の前に俺を殺そうとしている相手がいるのに、非常に落ち着いている。しかも、こんな現実離れの話を聞いても疑心の気持ちが一切ない。
今なら、オレオレ詐欺にかかってしまうかもしれな・・・
[・・・ゴゴゴッ]
一夏・マドカ
「っ!?」
天井が地鳴りをあげて、あの頑丈な素材にヒビが入っていく。そこから溢れる粉々の氷・・・氷?
何で、天井から氷・・・?
マドカ
「・・・まさか!」
"マドカ"が完全に面食らっている俺から手を離した時、俺は自由になったのと同時に摩訶不思議な出来事に直面する。
一夏
「・・・な、何だよ、これ」
天井から降ってきた氷が集結しだし、一体の氷人形が出来上がった。そして、また一体・・・二体・・・三体と増え続け、床一面が凍っていく。
マドカ
「チッ・・・博士の恐れていた事が起きたか・・・」
一夏
「おい! 何がどうなって!?」
マドカ
「自分の頭で考えろ!」
一夏
「ま、待てよ!」
氷人形
『アアァ・・・!』
俺は"氷人形"を避けながら、激昂した"マドカ"の後を追う。
そして、着いた場所は、俺達がさっきまで居た部屋の上の階に当たる所だった。
一夏
「っ!?」
全面に広がる極寒の世界・・・ここにも、氷人形が揺ら揺らと"ある氷像"に群がっている。その"ある氷像"を見た瞬間、俺は驚愕した。
一夏
「千冬姉っ!!」
考えるよりも先に体が動いて、氷像と化した千冬姉に群がる氷人形を一掃する。
一夏
「千冬姉・・・! 何で・・・」
マドカ
「感傷に浸るな! 次が来るぞっ!!」
氷上から這い出てきた氷人形を、青白いレーザーが"粉砕"する。だが、砕けた氷は周りの氷を取り込んで再生していく。
氷人形
『アアァ!』
マドカ
「チッ・・・」
一夏
「おい! こいつらは一体、何なんだ!?」
マドカ
「さっきも話したろう。"朝霧獅苑は方舟"だと・・・こいつらは、その失敗作の"歪んだ魂"だ」
一夏
「は、はぁ!?」
マドカ
「詳しい説明は省くが、朝霧獅苑は今、暴走している。その暴走を止めない限り、この人形共は無限に沸いてくるぞ」
そう言ったマドカは、ライフルで氷人形を撃ち抜く・・・いま気づいたが、青白いレーザーの流れ弾が氷塊を撃ち抜いても、溶ける様子がまったくなく、人形は固体の姿を保っている。まさに"溶けない氷"、って事か。
一夏
「な、なら、獅苑を止めれば、千冬姉を助けられるのか?」
マドカ
「知らん・・・だが、それしか方法がないかもしれんな」
何とも曖昧な返答・・・だが、"マドカ"の言うとおり、今はそれしか方法がないだろう。
一夏
「だけど、獅苑は一体、どこに?」
周りを見渡しても、見えるのは群がる氷人形どもだけだ。
マドカ
「人形共の中に、朝霧獅苑がいるはず・・・この40体の亡霊の中に」
一夏
「この中に紛れ込んでるって事か・・・」
だったら、一気に雪羅のカノンで・・・!
そう思った瞬間だった。この極寒の地の境界線だった頑丈な壁が、何者かの故意によって崩される
[ガラガラガラ・・・]
一夏
「あ、あいつは・・・」
壁が崩れた先に、ダルそうに髪を掻く"見知った奴"が現れた。
B
「随分と、変わった場所じゃねぇか・・・ええ、おい」
ウッドSIDE
ウッド
「お前達は先にシャトルへ向かえ。ほか2名は私に付いて来い」
ボディーガード
「ハッ」
この基地はもう持たない。だが、私さえ残っていれば・・・
オータム
「"残っていれば、何とでもなる"・・・とでも、思ってんのか?」
ウッド
「・・・オータムですか。その手の銃で何をするのですか?」
オータム
「言わなくても、おおよその見解はつくだろ」
ウッド
「・・・足止めしなさい。私は先に行く」
ボディーガード
「ハッ」
オータム
「ドイツの訓練機ごときが・・・まぁ、足止めされてもいいか。どうせ関係ないんだからな」
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