「あ、香椎。ちょっといいか?」
教室にもどった奈々子に竜児がちかよってくる。
「ええいいわよ。」
「あのさ水泳勝負のことなんだけどさ、ここだけのはなし大河の奴実は泳げなくてよ。
香椎水泳やってたんだろ?よかったら今度教えてやってくれないか」
「それは別にいいんだけど・・・・・・高須君もくるの?」
「え?どこにだ?」
「だから私と逢坂さんの二人きりでプールに行くのって聞いてるのよ。」
「ああ。もちろん俺も行くつもりだぞ。香椎が嫌じゃなければだが」
「嫌なわけないわ。新しい水着買っておくからたのしみにしててね!」
「お、おう!」
思いがけない竜児の誘いに奈々子の胸が躍る。
恋敵?である大河も一緒だが竜児と過ごす機会が増えるのだ。
いつもより気合を入れてお風呂に入ろうと人知れず奈々子は決意するのだった。
「わりいわりい、待ったか?」
「おそいわよ馬鹿犬!」
「ちょっと遅れただけじゃない。大丈夫、私達も今来たところよ」
勝負は1週間後の水曜日に決まっていた。
そして今日は日曜日、大河の特訓の日である。
「それじゃあ行きましょうか」
今日きたのはレジャー施設のラクージャ。
デートスポットとしても人気でなかなかチケットがとれないのだが
能登君が余っていた券をくれたそうなのだ。
竜児とデートという響きだけで今日の奈々子はご機嫌だ。
まあ実際には3人なのでデートでも何でもないのだが今の奈々子は
そんなこと関係ないと言わんばかりに浮かれていた。
水着に着替えてプールの中で再び竜児と合流した奈々子たちは
いきなり普通のプールに入ってもダメだということで
子供用のプールに向かっていた。
「香椎、大河は全く泳げないらしいんだがどこから始めたらいいんだ?」
「うーんそうねえ、とりあえず顔を水につけるとこから始めましょうか」
「あたしだってそれぐらいできるわよ!馬鹿にしないでよ!」
そういって大河は鼻先をちょこんと水につけたあと
得意げな顔でこちらをむいた。
「・・・・・・いくらなんでもそりゃねえだろおまえ」
竜児と奈々子がかわるがわるお手本を見せようやく決心がついたのか
大河は顔を水に沈め始めた。
「ふぅ、やっとか」
「でもこうしてみると私たち親子みたいね。
高須君がパパで私がママで、逢坂さんが子供」
てっきり竜児は顔を赤らめてまた照れるのかと思っていた。
「そうだな。香椎は家庭的だしすごいいい家族になれてそうな気がするぜ」
いままでこういう冗談をいったことはいくらでもあったけど
こんな反応は初めてだった。
竜児の思いがけない反撃に奈々子は顔を赤らめる。
「ぷはっ!ねえ、見た見た?今結構水についてたでしょ!」
そこで大河が顔をあげ二人きりの時間は終わりを告げる。
そのあとも昼過ぎまで大河の泳ぎの練習は続き、なんとかビート板をつかえば前に進めるようにはなった。
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15です。
2つの記事に分けていたところを1つにまとめたりしているので
だいぶはやいですね。
そろそろ物語が動いていくところなのですが
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