「はーい、ではではインタビューを始めまーす。中々凄い戦いを見せてくれた一夏君、今の心境は?」
「あー、やっぱり悔しくないと言ったら嘘になるな。僅差で負けちまったし、結局体が少しバテちまったし。でもまあ、また新しい突破口でも見つけて、今度こそは勝とうと思う。」
「じゃあ、織斑先生にも聞いたけど、織斑先生を相手に勝ったって本当?」
「本人に聞いたならもう知ってると思うが、まあ、勝ったな。あれもギリギリだったが。」
「ほー。では、ズバリ、強さの秘訣は?」
「心技体を分け隔て無く鍛える。後は、飯は食えるだけ食っておいて、必要に応じて休息を取る事、位か。」
おーー、と報道部の全員が拍手を贈る。
「まさしく武人って感じがするねー。」
「じゃあ、織斑先生とはどう言う関係?見た所随分気に掛けてる様だけど・・・・」
ピキン。
一瞬にして周りの空気が凍り付いた。一夏ゆっくりと息を吐き出すと近くにあった紙に
『ノーコメント。これ以上詮索すれば、全員を地獄に送る。』
と書いた。それを見た全員が頷く。
(こ、怖い・・・・・正に鬼だ・・・)
「織斑先生は、俺の姉だ。」
「えええええええええええええええ?!?!?!」
「質問はこれで終わりか?」
「あ、じゃあ、最後にもう一つ。随分と生徒会長と仲が良いみたいだけど・・・・?」
意味ありげに楯無と一夏を見比べる。だが、どちらも表情を読み取れない。
「それについては、」
「ノーコメントって事で。ごめんね、薫子ちゃん。」
一夏は立ち上がるとふらふらしながら楯無と部屋に戻った。一夏はベッドに倒れ込んで、直ぐに眠り始めた。
「あらま・・・・もう寝ちゃったんだ。」
ベッドの上に座ると、一夏の寝顔を見物し始めた。
「可愛い・・・・」
楯無は一夏の隣で寝転び、一夏の頭を優しく撫で始めた。そして何を思ったのか、カメラで一夏の寝顔を撮影し始めた。
「これ高値で売れるわね〜♪」
「お姉ちゃん、何してるの?」
「あら簪ちゃんも見て見なさい、一夏君の寝顔。」
簪が静かに入って来て回り込み、一夏の顔を恐る恐る見てみた。
「可愛い・・・・・」
「じゃあ、添い寝しようっと。」
二人は一夏の両隣に陣取って寝転んだ。どちらも一夏を抱き枕にして眠り始めた。
そして次の日・・・・・
「またか・・・・・お前らいい加減にしろよ・・・・ラウラまで・・・・」
例の如く、一夏の左右では更識姉妹が自分を抱きしめ、上にはラウラが自分を敷き布団の様にして眠っていた。
「んぅみゅ・・・・」
「起きろ。」
答えの代わりに両頬にキスされ、一気に眠気が退いた。
「おはよ、一夏。」
「今日は第二ラウンドね。」
「今回は勝たせてもらうぞ、楯無。とりあえずシャワーを浴びたいから、ラウラをどかしてくれないか・・・・?そして楯無はルームメイトだから仕方無いが、お前ら毎回俺の部屋に侵入するのはやめてくれ。起きられないし、狭いぞ。」
「えー!?やだ・・・・」
簪が膨れっ面でムスっとして文句を言う。
「ラウラも、いい加減兄離れした方が良いぞ?」
「しかし、兄様・・・・・寂しいです・・・・」
「同じクラスなんだから、いつでも会えるだろ?休みになったら家に戻るから、また修行再開しなきゃいけないし。少しの辛抱だ。な?またバームクーヘン作ってやるから。」
「はい・・・・」
「正に餌付けね。」
「言うなれば、海老で鯛を釣るではなく、バームクーヘンで黒兎を釣る、だな。」
立ち上がってシャワーを浴びていると、ドアが開いた。鏡でタオル一枚を体に巻き付けた楯無と簪が入って来た。
「お前らなあ・・・・限度と言う物を考えろ。」
「だって、全然構ってくれないんだもん・・・・」
「今はTPOが間違ってるだろう?」
顔を上げずに目を瞑って手探りでシャンプーとリンスを手に取る。
(若干髪が伸びて来たな。)
「じゃあ、背中洗ってあげるね。」
「人の話を聞いてんのか、お前らは?!」
だが構わずにボディーソープで背中を洗い始める二人。二人の白く細い指先が背中を這い回った。
(うおおう、ちょ・・・・・これはヤバいだろ、流石に。)
出来るだけ意識しない様に一夏は『無』に至った。
「はーい、終わりー。」
とりあえず終わらせてシャンプーとボディーソープを落とした。
「俺はもう上がるぞ。」
「私達の背中も洗って?」
「おい・・・・はあ、分かった。」
仕方無いので、『無』に至ったまま片手ずつで二人の背中を洗った。やはりと言うべきか、姉妹揃って染みも無い美しい肢体である。一通り終わると、一夏は今度こそ出た。
「俺はちょっとやる事があるから先に出る。止めるなよ?」
答えも聞かずに一夏は外に出た。
「一夏君、以外と初心なのかしらね。」
「お姉ちゃんの所為だよ?!一夏怒っちゃったじゃない・・・・・それに、初心なのかどうかは兎も角、一夏って殆ど表情が崩れないから何考えてるか全然分かんないし・・・」
「全く、あいつらは、何を、考えてるん、だ!!!」
そして同時刻、トレーニングルームにて。一夏は言葉一つ一つを強調するごとに、サンドバッグを殴っていた。
「こっちの、理性も、持たねえんだ、よ!!!」
軽く運動を済ませると、食堂に向かって大盛りの和食を二つ取り、終わらせると脇目も振らずに教室に向かった。教室では既に千冬がいた。
「昨日の・・・・・更識との戦い、無茶をし過ぎだぞ。大丈夫なのか?」
「無茶は日常茶飯事だ。あれ位どうと言う事は無い。フレキシブルとスプレッドはただ脳に掛かる負担がデカいと言うだけで、命にも別状は無い。俺は今までの俺とは違う。心配するなよ。」
「ここでは敬語を使え。と言いたい所だが、授業が始まるまではまだ時間がある。今回は多目に見るとしよう。だが、無茶だけはするな。お前に死なれては、私も寝覚めが悪い。」
「俺がそう簡単にくたばる程ヤワに見えるか?あの時も言った筈だ。俺が強くなったと。俺はあの時攫われた時の俺とは違う。そもそも、俺を攫ったあいつらは一体何者なんだ?」
「確証は無いが・・・・・お前を攫ったのは
「ファントム、タスク・・・・分かった。ありがとう、千冬姉。」
一夏は一旦教室の外に出ると、箒とはち合わせた。
「お、箒。ちょうど良かった。お前に頼みたい事がある。」
「そ、そうか?何だ?」
「お前、篠ノ之束の連絡先、持ってるだろう?俺にも教えてくれ。確率は低いが、第二回モンド・グロッソで俺を拉致した奴らの情報が出て来るかもしれない。」
「な、何?!そうなのか?!」
「ああ。どうなるかは分からないが・・・・」
「わ、分かった。」
携帯を渡し、一夏はそれで電話をかけた。
『ハロハロー!箒ちゃーん!』
「残念ながら一夏だ。」
『おー!いっくん!久し振りだね〜、どうしたの?』
「実は、四つ程聞きたい事がある。一つは、俺のISの事についてだ。しばらく考えていたが・・・・まさか、白式は白騎士なのか?白式を『しろしき』に言い直して、それを並べ替えれば、コアナンバー001、初の実戦投入されたIS、白騎士になる。」
『うーん、そうだよー!鋭いねー、いっくん!ズバリピンポン、白式は元は白騎士だよー!新しく生まれ変わったのだー!』
「もう一つは、ウチの姉から聞いたんだが、俺を攫ったと思しき組織、ファントムタスクについて何か知らないか?」
『うーん、残念ながら天才束さんの頭脳でも詳しい事は何も分からないんだよネー・・・・ブーブー。』
「やはりか・・・・まさしく
『う〜ん・・・・海で一度見て見たけど、確かに白式は攻撃力が超高い短期戦の攻撃特化のタイプだよ・・・・でも・・・・あ、そうだ!白式のエネルギー最大値を引き上げれば良いんだ!私ってば天才!設計図は私が作ったら直ぐに送るから、いっくん頑張ってね〜♪』
「分かった。ありがとう、束さん。最後に、もう一つだけ。ISを作った理由って、何なんだ?」
『それはね〜、秘密!じゃ〜ね〜、バイビー!』
一方的に切られてしまう。
「よし。とりあえず、聞くべき事は全て聞いた。これで良い。ありがとな。」
「ああ。しかし・・・・まさかあんな秘密を隠していたとは・・・
携帯を箒に返すと、自分の席に戻った。
「い、一夏!その、今日、また戦うのだろう?」
「ああ。あの時はアイツを助けて俺が負けた。だから、今回は俺が勝ちを取る。向こうの手の内は、最初の一戦で見尽した。俺もほぼ全てを見せた。残るは、技術の差だ。国家代表だから当然俺より連続稼働時間は長いが、そんな事は関係無い。使いっ走りを頼んで悪いがいつものメンバーを、全員集めろ。放課後、第三アリーナに来い。理由は着いてから話す。」
「あ、ああ。」
ベルが鳴り、授業が始まった。山田先生が教壇に立って授業を始めた。一夏は四六時中怖い表情でノートを取っているため、教室全体が通夜の様に静まり返っていた。
(問題はこれからか・・・・・目標が多くなってるし、大きくなってる・・・・)
そして放課後、代表候補生達(と箒)が第三アリーナで一夏の前に集まった。
「ワザワザ時間を取らせてすまない。皆をここに集合させたのは、ある意味俺の為でもあり、お前らの為でもある。言うなれば強化トレーニングだな。」
「どう言う、事ですの・・・?」
「例えば、セシリアの目標はフレキシブルを使える様になる事。箒は絢爛舞踏にあまり頼らずに立ち回る事。鈴音は衝撃砲の使い所の見極め、等々。」
「確かに、一夏って僕達の全員よりも強いよね。」
「そうでもない。特に、一番面倒な能力を持ってるのが三人、いや四人いる。シャルロット、ラウラ、簪、そして箒だ。」
「何故ですか、兄様?」
「シャルロットはラピッドスイッチがある。俺は実弾兵器は持っていないし、涅槃で防げてもシールドエネルギーを消費するから、そう簡単には近づけない。かと言って遠距離戦では絶対に負ける。武装も豊富だ。ラウラはご存知タイマンでは反則級の力を発揮するAICを持っている。当然掻き乱せば、どうにか倒せるが、その工程まで辿り着くのが難しい。簪はミサイルポッド山嵐がある。あれを一斉発射された日には、恐らく俺は塵一つ無く死んでいる気がする。流石の俺も四十八発のミサイルを完全に避け切る自身はほぼ無い。最後に、箒は絢爛舞踏があるから面倒だ。自分だけで無く、触れた味方も回復出来る。当然、回復する前に倒してしまえば良いが、言う程簡単では無い。どちらも敵に回せば難敵だ。心強い味方だがな。」
一夏はラウラの疑問にスラスラと答えた。
「で、これから 俺以外で自分が相性がいいと思う奴とペアを組め。フィーリングでも良いし、お互いの長所、短所を理解し合っての上でも結構だ。」
ラウラ、シャルロット、セシリア、簪、箒、そして鈴音はそれぞれグループに分かれた結果、こうなった。
・ラウラ/シャルロット
・セシリア/鈴音
・簪/箒
「さてと、じゃあペアになった所で、順番に俺と模擬戦を開始する。一対二だ。終わった後にそれぞれの反省点を教える。」
「でも、それじゃ、フェアじゃないよ。」
「確かにな。だが、これはミステリアス・レディのクリア・パッションをどうやって突破するか、そしてその上でどうやって水を精製するアクアクリスタルを潰すかだ。こっちとしてはアンフェアも良い所だぞ。順番はそっちで決めてくれて構わない。後、俺に勝ったペアには、それぞれデザートを一品奢る。(これでやる気を出すとは思えないが・・・・)」
「兄様、でしたら私は兄様の手作りバームクーヘンを食べたいです!」
「え、一夏って料理出来るんだ?」
目を輝かせるラウラの発言にシャルロットは驚いていた。
「まあな。元々俺は食うのが好きだから。料理も自然と身に付いた。ネットで色々とメニューを検索してるんだぜ。さてと、時間も無い。来い!」
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はい、第二ラウンドは次話投稿となります。