それから数十分……
side-ルイズ
「はぁ〜〜〜〜」
彼に百合ではないとわかってもらうのに結構な時間が掛かったわ。 会って間もないのにこんなに振り回されるなんて…。
まさかこれが主人公補正というものなの? 物語として見る分には楽しいけれど、当事者になると結構大変よこれは…。
とりあえず、今は確認するべきことをハッキリさせないと…。
「とりあえずアナタのこと少し教えてもらえるかしら?」
「あ、僕はヴィストリアって言います」
よしっ! 平賀 才人じゃないっ!
私は思わずガッツポーズをとるけど、それも仕方ないと思うのよ。
「え、えぇっと…」
はっ!? 変な目で見られてる!?
「コホン。続きをお願い」
喜ぶのは後。
平賀 才人ではないのなら彼は何者なのか。
もっと情報が必要ね。
「あ、うん。続けるね。住んでた所は
闇ヶ谷?聞いたこと無いわね?
ハルケギニアには無い名前だし、私の元いた世界にも私が知ってる地名にはないわね。
「ヴィストリア…さん…?って呼べば良いかしら?」
「あ、ヴィスティで良いよ。いつもそう呼ばれてるからそっちの方が良い」
「そう。ならヴィスティって呼ばせてもらうわね。代わりに私のことは…っていけない。私の自己紹介がまだだったわね」
情報収集に霧中になりすぎて礼儀がなってなかったわ。
名乗られたのに名乗らないなんて失礼よ。
「ごめんなさい。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。長いからルイズって呼んでくれていいから」
「……ゑ?」
なんか彼が固まっちゃったわ。
どうかしたのかしら?
side-ツヴァイ
ぴくっ
『……なにかしらこの心底世界を怨みたくなるほどの不快感は……まるで大切な聖域に土足で踏み込まれた気分だわ……この感覚……そう…どこの腐れ蛆虫か知らないけれど、私のヴィスティの愛称を軽々しく呼んだのね?あぁ…本当に忌ま忌ましい……ヴイスティ以外の生命体なんて全て消えてしまえば良いのに…』
「ひっ!?」
乳お化けが怯えているけれど、今はそれどころじゃない。
『ヴィスティは私のモノで私はヴイスティの物なのに………私たちの間に土足で踏みいるなんて本当に良い度胸してるわね…。千回殺してもまだぬるいわ……地獄の業火で永遠に焼かれ続ければ良いのよ……そうね…その明かりの元で私たちは愛を囁くの…汚らしい蛆虫の死骸でも燃やせば少しは私たちの世界にも彩りを添えてくれるわ……えぇ、そうしましょう…ヴイスティはきっと褒めてくれる……たくさん撫でてくれる…それはとても素敵…とてもロマンチックだわ……うふふふふふふふ…』
「こ、恐すぎますよぅ……」
side-ティファニア
あうぅ〜なんだか腕輪さんから不穏を通り越して呪詛的な何かが溢れ出してきます…。
震えが止まりません…。 鳥肌が収まりません…。 何だかとっても危険な気がしてならないです。
は、早くヴィスティさんって方を見つけないと、大変な事になる気がしますぅ〜。
side-ルイズ
「……ゑ?る、ルイ…えと…もう一度お願いします」
多量の冷や汗を流しながらルイズに頭を下げて聞き直すヴィストリア。
「まぁ、長い名前だしね。ルイズで良いわよ。」
「あの、えと……失礼な事聞くけど…
!?…なんで、この子がその事を!?
私、そんなに有名なの? そこまで有名になる程無能なの?
「あら?ルイズ。あなた学院の外でも有名みたいね?…ん?でも、少しニュアンスが違った気がするけど…?」
隣で聞いていたキュルケがそう聞いてきた。
「あの…ルイズ…さん?平賀才人って人居ますか?」
「いいえ。居ないわ。居てたまるもんですか!あんな変態ドスケベ優柔不断エロ犬なんて!!」
「あう!ご、ゴメンナサイ…」
ルイズのあまりの剣幕にビクビクと子犬のように萎縮してしまうヴィストリア。
「私は聞いた事ないけど…ルイズは知ってるの?その…ひ、ヒリガル・サイトーン?って人」
「キュルケさん。気にする程じゃないですよ?寧ろ気にしては駄目です。というより、存在自体認めては駄目ですから!」
そこまで否定される平賀才人に合掌。
「あぁ、因みに私はキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。キュルケでいいわ。よろしくね?」
「あ、はい。よろしくです。(間違いない…ゼロの使い魔の世界…でも、どうして?確か原作では、ルイズさんとキュルケさんは仲が悪いはず…並行世界?…あれ?でも、今ルイズさんは平賀才人を居ないと言った。知らないとかじゃなく居ない。まるで、その存在を知っている…?)」
ヴィストリアはのめり込む様に思考に耽る。
「どうしたの?難しい顔して…?」
キュルケがヴィストリアに問いかける。
「はっ!い、いえ、気にしないでください。ちょっと混乱しただけですから!」
「そう?なら、良いけど…」
「はい。心配してくれて、ありがとうございます」
キュルケの配慮に、笑顔を以て礼を返すヴィストリアだった。
コンコン…
不意に扉をノックする音が響く。
「あら?こんな夜更けに誰かしら?開いてますよー」
ガチャ…キィ~~
ルイズが許可を出すと扉が開く、するとそこには小柄で鮮やかな青髪と大きめの眼鏡をかけて、身長より長い杖と本を持った少女が立っていた。
「タバサ。どうしたのこんな時間に?」
「ルー姉が心配で、様子を見に来た。」
入ってきた少女の名はタバサと言うらしい。 そして、ルイズの事をルー姉と呼んだ。
「ありがとう。ごめんね?心配かけて…」
トコトコとタバサが近づいてきたので、頭を撫でるルイズ。
「あ、ヴィスティ。この子はタバサ。ちょっと口下手だけど、とっても可愛い子よ?」
「ルイズさん…やっぱり百合…」
「違うから!私百合じゃないから!!ちゃんと男の子も好きだから!」
「もって事は…女の子も好きで男の子も好き…両刀?」
「そうじゃなくて!あ~~~また変な誤解されてるううううう!!!」
かくして、ルイズによるルイズの為のヴィストリア説得が再び始まったのである。
そうして更に1時間後…
「つ…疲れたorz」
説得による満身創痍でベッドにグダ~とするルイズ。
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ…大丈夫よ…うん。大丈夫…」
全てはヴィストリアのせいなのだが、全くもって本人は理解していない。
「さて…もう遅いし、そろそろ寝ましょう。私も部屋に戻るわね?」
「お休みなさい。ルー姉」
「あ、はい。お休みなさいキュルケさん。タバサ。」
「お休みなさい。」
キュルケとタバサは保健室を後にした…
「ルイズさん…」
「うん?どうしたのヴィスティ?」
ヴィストリアの真剣な表情にルイズも顔を引き締める。
「貴女は……"本当にルイズさんなんですか?"」
「……え?(まさ、か…ヴィスティは…もしかして)」
ヴィストリアのまさかの発言に茫然となるルイズだった。
「あなた……一体…?」
うまく思考が働かない。 今、彼はなんと言った?
"本当にルイズなのか?"
ヴィスティは…“本当のルイズ”…を知っている?
どういうこと? 彼も転生者? それとも、私とは違うトリップした人?
わけが判らない。 きっと今の私は呆然としたマヌケ顔で彼の顔を見ているのだろう。
ふと彼の紅い瞳が目に入る。 自分のルイズとしての皮を透過し、その下の“本当の私”まで届きそうなその視線。
まるで一点の曇りも無い綺麗なルビーのような瞳がまるで今の“ルイズとしての私”を消し去る魔石に見えた。
「……あっ…」
ふと声が漏れた。 それと同時に今のルイズとしての自分が消えていくような錯覚を覚えて、自らの身体をギュッと抱きしめる。
背中に冷や汗が流れる。 全身の肌が
心臓が狂ったように暴れまくっている。
怖い。 あの眼が怖い。 人の視線にこれほどの恐怖を感じたことはなかった。
なのに眼が離せない。まるで見入られたようにその瞳から視線を動かすことができなかった。
「ルイズさん?」
声をかけられてハッとする。 それと同時にあの瞳の拘束が外れた気がした。
カクン、と視点が落ちる。 膝から崩れ落ちたのだと気付いたのはペタリと床に座り込んでしまってからだった。
「えっ!?ちょ!ル、ルイズさんっ!?」
慌てて駆け寄るヴィスティ。 焦った声に顔を上げるとそこにはやはり先程の紅い瞳。
だが、そこには先程までの真実を知ろうとする意志は無く、純粋な心配の色だけがあった。
「ご、ごめん…ちょっと待って…」
先程までの恐怖はない。だが未だに暴れ回る心臓を落ち着けるのに少し時間が必要だった。
ルイズSIDE END
数分後…
「落ち着きましたか?」
「………うん。」
「ごめんなさい。なんだか、変な事聞いてしまったみたいで…」
「あ…えと…」
気遣いの声にルイズは声を詰まらせる。
こうしてヴィスティと二人きりになり、意識が彼に集中したことでルイズは理解する。
彼がとても純粋な人である、と。 彼の瞳があまりに真っ直ぐ過ぎるのだ、と。
現に今、座り込んでしまったルイズの背を撫で、介抱しているというのに、彼の瞳には女性に触れていることに対する劣情の色は一欠けらも見えない。 純粋に心配をし、気遣ってくれているのだと簡単に判ってしまう。
先程の恐怖した視線もそうだったのだろう。 彼は純粋にルイズのことが知りたかった。
だが、ルイズは無意識にその視線を
この世界での“ルイズ”としての立場を崩されてしまう気がしたから。
そのやりとりがルイズに計り知れない恐怖をもたらしたのだ。
だが、ルイズは彼の純粋さを理解できた。 同時に彼の中にある優しさも。
なぜか彼にならすべてを話しても大丈夫な気がした。
会ってまだ一日も経っていないにも関わらず。 そんな自分を不思議に思いながらルイズは決意する。
彼に
「…聞いてもらえる?私のすべてを」
そうしてルイズは、これまでの経緯をポツリポツリとだが事細かく話し出す。
「…つまり、亜紀さ…じゃなくて、ルイズさんは"転生者"って事?」
「うん。最初は凄く戸惑ったよ…身体中が痛くて、動かなくて…意識が遠のいて…気付いたら…赤ちゃんになってたから…」
「うん…戸惑うねそれは…(追いかけて足滑らせて階段から落ちて死んだと思ったら赤ちゃんになりましたって…本当にそんな経験する人がいたなんて…)」
同情している訳ではないが、なんて不憫な娘だと思わずには居られなかった。
「ヴィスティは…」
「はい?」
「ヴィスティは…あなたは何者なの?」
ルイズは、今一番気になっている事を躊躇いつつも本人に直接聞く事にした。どうせいつかは聞かなければならない事なら、今の内に聞いておこう…と。
「僕?」
「うん。闇ヶ谷なんて聞いた事ないから…闇ヶ谷って、どこにあるの?名前的に日本のどこかだっていうのはわかるんだけど…」
「えっと…日本じゃなくて
「……はい?」
ヴィストリアの突然の暴露に頭の上に大量の?を浮かべながら首を傾げ、茫然とした表情で固まるルイズ。
「ですから、魔界。」
「………え?」
ルイズのフリーズは続く。まぁそれも仕方のない事だろう…今の彼女は前世とは違い、ファンタジーの世界にすんでいるとはいえ、まさかその様な物まで出てくるとは思いもしなかったのだから。
「あ、あれ?魔界って伝わらない?おかしいな?魔界って方言なのかな?えっと…えーっと…標準語で魔界って何て言うんだっけ?」
ルイズがいつまでも訳が判らないといった表情で固まるので、伝わらなかったと勘違いするヴィストリア。
「えっと、ヘル…は地獄だし…パンデモニウム?…も、違うな…えーっと…なんだったけ?」
軽く混乱しているヴィストリア。 先に正常に戻ったのはルイズの方だった。
「えと…魔界?…背がちっちゃくて年齢が1300歳超えてて上半身裸で高笑いする触角の髪が特徴的な魔王が居るあの魔界?」
「もしかして、ラハールくんのこと…かな?」
「………魔界戦記ディスガイア?」
「…?何それ?」
転生者であるルイズからラハールの特徴が出てきたのには驚いたが、それよりも疑問に思う単語があった為、そちらを聞く事にしたヴィストリア。
「私の世界にあった小説・ゲーム・アニメ・漫画になった最凶やり込みゲーム。」
「へぇ…僕の世界って、ゲームなんだ…ちょっと複雑かも」
「でも、少なくとも私はヴィストリアなんてキャラクターは知らないよ?」
一応そのゲームのプレイヤーでもあったが、流石に17年も前の記憶であった為、薄れてきてはいるが、彼の名前は精々がランダム入力で出てくる名という位しか思い出せない。
「ん~~~~もしかしたら、亜紀…ルイズさんが転生した
「……無理に言い直さなくてもいいよ?」
「う…ごめん…」
「あ、ううん。気にしてないよ。ところで…弊害って?」
なんとなくだがヴィストリアの言に興味を持ったので聞き返すルイズ。
「うん。もしかしたら、僕もイレギュラーになるのかな?って…《大谷亜紀》という存在が、ルイズさんに憑依転生する事でゼロの使い魔本来の物語が
「……じゃぁ、ヴィスティは、私の使い魔になる為に生み出されたイレギュラーかもしれないって事?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。"世界"って言うのは、僕達の様な生きる者や、神ですら認識できない"真理"と言えるものだからね。世界がそう望んだのか、それとも、最初から決まっていたのか…それは誰にもわからない事だからね」
「ううううう……難しすぎてよくわかんない」
元々この世界の人間ではないルイズは並行世界説はある程度知っている。しかし、理解できるかと言えば別問題だ。
「大丈夫だよ。僕も判ってないし。今のは僕の憶測だしね」
「ふぅん…ねぇ…ヴィスティは、魔界に住んでたって事は…”悪魔”なの?」
「え?ううん。僕は”魔族”だよ?」
「……?何か違うの?」
悪魔と魔族の違いがまるで判らないというルイズ。
「悪魔って言うのは、魔族の中で”罪を犯した罪人につけられる称号”なんだ」
「そうなの?」
「うん。人間界では悪魔も魔族も一緒に考えられたりしてるけどね」
「私も同じだと思ってた…」
元々からして人間であるルイズが、他の種族…この場合人外の類を識別できよう筈も無い。
「意外と人間界には間違って伝えられてることが多いんだよね。たとえば、よく死神と悪魔を一括りで言われてたり」
「え?死神って悪魔じゃないの?」
またしても認識の違いが出てきた事に驚くルイズ。
「うん。死神は神族だから魔族や悪魔とは別物。その点では堕天使に近いかもしれないね。人間界では死神が現れると死ぬって考えてるみたいだけど、それも間違い。"死神が現れるから死ぬ"んじゃなくて、"死ぬから死神が現れる"んだよ?」
ヴィストリアは出来る限り判り易く説明していく。
「それって、よくお年寄りが言う"お迎えが来た"みたいな?」
「うん。まさにその通り」
すぐに理解してもらえたのが嬉しいのか、ニッコリと微笑む。
「へぇ…あ、じゃぁヴィスティはどんな称号なの?」
「僕の?」
「ええ。ちょっと興味あるし。」
「えと…その……う。」
尻すぼみする様な小さな声で答えるヴィストリア。 当然だが、そんな小さな声で聞きとれる人は早々居ない。
「え?ごめんなさい?よく聞き取れなかったんだけど?」
「えっと、ね…魔王。」
「……わ、わんもあぷり~ず?」
何かの聞き間違いだろうと思いつつも、動揺し過ぎて下手な発音で聞き返すルイズ。
「魔王…一応…ラハールくんと同じ…」
恥ずかしそうに、しかし寂しそうに答える。
「…………はい?魔王?」
「…うん。」
「………え!ちょっ!?はぁっ!?全然見えない!?」
またもやフリーズ。 しかし、先程からちょくちょく思考が停止していたせいで復帰が早かった。
「う……よく、言われる…」
「どうみてもメイドじゃないの!?見た目、女の娘だし!?」
「う…それも、よく言われる…」
「あぁ、やっぱり…」
ヴィストリア本人にとっては納得できない事だが、ついつい納得してしまうルイズ。
「僕も、いつの間にか魔王になってて戸惑ったし…魔力構成とか魔法創造は得意だけど魔力量調整とかはかなり苦手なへっぽこなのに…別に部下とかもいないし、魔界を治めているわけでもないし……なんで僕、魔王になんてなってたんだろう?」
魔王になったつもりもないのに魔王になっていた事を思い出してどんよりと暗いオーラを纏い始めるヴィストリア。そんなヴィストリアを見兼ねたルイズはとりあえず質問を続けた。
「ち、ちなみに、どのくらいの力を持ってるの?」
「えと…さっきも言ったけど僕、実は魔力量の制御が苦手で…0か50か100かしか出せないというへっぽこ具合でして…」
「ぜ、全力だと…どうなるの?」
「余裕で一国が地図から消えます…」
戸惑いがちに全力解放の場合を聞くと、ルイズの想像よりも上だった。
「国単位!?核ミサイルが可愛く見えるわよ!」
「え?でも核ミサイルと違って放射能汚染とかないからむしろクリーンで……」
「破壊可能範囲を言ってるの!!」
一国を消す時点でクリーンもクソもないだろうに。
「実は地球のアトランティスとムー大陸が無くなったのって僕が魔力全開放出しちゃったから……」
「まさかの幻の大陸消滅の原因が目の前に!?」
「……という冤罪をツヴァイにかけられた。僕、やってないのに…」
「やってないの!?紛らわしい言い方しないでよ!!」
何とも紛らわしい発言のせいか、からかわれているのではないかと思い始めるルイズ。
「ちなみにアトランティスの住人はムー大陸の生き残りの人達の子孫だとか…」
「どうでも良いわよそんな雑学はっ!」
こんなところでいきなりトリビア出されても反応に困るだけだ。
「参考までに言っておくけど、魔力量半分くらいなら…秋葉原を崩壊出来るよ…」
「なんで秋葉原限定なの!?なんでムー大陸破壊の半分の魔力を使いながら秋葉原限定!?ムー大陸って確か結構大きくなかった!?破壊可能範囲的には小国の日本くらいは余裕で消し飛ぶでしょう!?」
何故に秋葉原が例えに出たのだろうか?
「いや…まぁ破壊可能範囲的にいえば確かに日本くらいは消せるんだけど…」
「でしょう!?」
「だけどきっとその場合、"秋葉原だけ"は堪え切るんだろうなぁ…」
「秋葉原にどんな偏見持ってるの!?ただの電気街じゃない!」
そう、電気街。たとえメイド喫茶やオタク共の聖地とか言われているが結局のところ、電気街でしかないのだ。それが何故に、魔王の魔力解放出力半分とはいえ耐えきるなどというのだろうか?
「忠告しておくよ。秋葉原を甘く見ないほうが良い…」
「いったい秋葉原でなにがあったの!?魔王ともあろう人がそこまで警戒する秋葉原ってなんなの!?」
いわゆるゲンドウポーズを取って重い表情でルイズに忠告するヴィストリア。
何処から突っ込んでいいのか判らなくなってきている。
「秋葉原…あそこは、魔界だ…」
「魔界在住の人に魔界認定された!?」
まさかの魔王本人に魔界認定をされた秋葉原。 すでにルイズの思考はいっぱいいっぱいだ。
「それに秋葉原には様々な能力者がいるし…」
「いないからっ!秋葉原はそんな魔境じゃないからっ!」
ただの電気街でしかない日本の町が魔境と誤認されている事に納得できないルイズ。
「そんなことないよ。だって僕、秋葉原で邪気眼っていう魔眼を持った人に会ったし…」
「ただの中二病患者だからっ!別に能力者じゃないからっ!!」
まさか、ヴィストリアは人の言に真に受けやすい性格で、虚実の判断に疎いのだろうか?
「幸いその時はまだ使う時じゃなかったらしくて僕は助かったんだけど…」
「発動なんてしないからっ!ってなんで私たち秋葉原についてこんなに熱く語ってるの!?」
「まぁ熱くなってるのはルイズさんだけどね」
「誰のせいなのかな!?っていうか続きは!?」
もう秋葉原を魔境とされたくないのか話題を戻すルイズ。
「あぁ、うん……あれ?なんの話だっけ?」
「魔力量の話よっ!」
「あぁそうだった。全力で国単位、半分で秋葉原…」
「秋葉原は譲る気ないのね…」
どうしてそこまで秋葉原を引き合いに出したがるのだろうか?
「あ、秋葉原といえば…」
「もう秋葉原はいいからっ!!続きを話してよっ!」
「あぁ、うん。それで、危険すぎるから、アインを作ったんだ」
「アイン?」
一瞬、志〇けんを思い浮かべたが、すぐにどこかの国で1という意味があったような気がすると思い直す。
「この子。僕の付けてる指輪。
「ちょっちょ!ちょっとまって!デバイス!?まさかリリカルで
こんどは某魔砲少女で有名な彼のアニメのデバイスが出てきた事に驚くルイズ。
「うん。リリカルなアレに出てくるデバイス。と言っても、真似ているだけで中身は全くの別物だけどね?アインは補助目的だから防御と収納と
「ユニゾンできるの!?ストレージ型なのに!?」
元ネタの設定はどこへ行ったとも思うが、所詮は真似ているだけだからどうにでもなるんだろう。と、無理矢理に自分を納得させる事にした。
「うん。まぁ、つまり本気を出すと全部無くなっちゃうから、ツヴァイが居ないと本当の意味で本気は出せない…んだ…けど、ね…うぅぅ。ツヴァイ…どこ行っちゃったの…?もしかして、僕に愛想が尽きたの?」
「だ、大丈夫よ!きっと何かの手違いなんだよ!ツヴァイって娘のこと、私もなにか協力できることないか考えてみるから。だから今日はとりあえず休みましょう?ね?」
これ以上はこっちの精神も持たないと思い、とりあえず就寝する事にしたのだった。
???SIDE
真っ暗な部屋。
飾り気のない部屋の中心にキングサイズのベッドが置かれている。
そのベッドに眠るのは一人の少女。 ふと、寝苦しそうに眉をしかめる。
『………』
ぱちりと開くルビーを思わせる綺麗な双眼。
『……?』
なにか違和感があるのか首を傾げる少女。
ムクリとベッドから起き上がり、周りを確認するように見渡す。
その少女の手にはいつの間に手に取ったのか真っ白なスケッチブックが…。
『……?』
クンクン。 可愛らしい鼻をひくひくさせるその様は子犬のよう。
『……いない?』
サラサラとスケッチブックにサインペンが踊り、魔界の文字を記していく。
それは筆談。
『……匂い、しない?』
そしてなにかを確かめるように眼を閉じ、意識を集中させる。
『この世界にいない………どこ?』
眼を開き虚空を睨みつける。 そしてフフ…と控えめな笑み。
『……見つけた』
呟き(というか書き込み?)と共に、少女の姿はこの世界から掻き消えた。
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第三話 現状把握??