夏の日の夕方でした。
弱い、やわらかな日差しがカーテンをすり抜けます。
「かみさま ありがとう」
むぎわらぼうしをかぶった女の子は、穏やかに笑ってそう言いました。
真っ白くてしかくい、暖かな世界がそこにありました。
おおきな空のそのずっと奥にいるかみさまは、
その時穏やかに笑ったようにみえました。
女の子はもう一度、ありがとう、と言いました。
むぎわらぼうしを今度は手で弄りながら、
女の子は穏やかに続けました。
「あのこにもういちどあえて うれしかったです
わたしはもう てんごくからみているしかできないから
そしてそれはほんとうにつらかったから
だから もういちどあえて」
女の子の目からは涙が零れました。
ありがとう、ともう一度言うと、女の子はヒカリになりました。
ヒカリになった女の子はやがて飽和して
はじけて消えました。
「でも わるいことしちゃったわ」
いつかの花の花びらが落ちたような
そんな優しい声でした。
「つぎのなつにまたあおうっていってくれたのに」
優しくて淋しい声でした。
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夏の日3部作の第2部です。女の子が結局何者だったのかはまた別のお話になりますが、女の子は間違いなく男の子を何よりも大切に思っておりました。