「一体、何をしようとしているんだ?」
フィルノはナノハがティルヴィングを上に向けて構えたのを見て、何かをしようとしているのは分かったが、一体何をしようとしているのだろうと思った。
剣先に魔力が収束しており、その魔力は今までのなのはの魔力に比べて遥かに高くて比べる必要もないぐらいであった。
「座標特定、目標ヴォルフラム」
そう言った刹那、ティルヴィングが向けた上空に歪みが現れ、その歪みは次元空間に繋がっており、ヴォルフラムが居るところへ繋がっていた。
そしてティルヴィングの剣先に魔力は収束を止めて、そしてすぐに放つのだった。
「『ティルヴィング・フルアクセスブレイカー』っ!!」
刹那、剣先から上空に向けて砲撃が放たれ、次元の歪みの中へと突き進んでいくのだった――
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「っ!? こちらに向けて砲撃魔法っ!?」
「総員、攻撃を受けても大丈夫のように備えるんや!!」
ナノハが魔力を収束させていた時に一体何をするつもりだと思っていたはやてであったが、まさか目標がこのヴォルフラムだと思いもしておらず、すぐに乗っている全員に向けて命令を言い放つのだった。
このヴォルフラムはたとえ巨大な魔力を受けようとも耐えきられるように周りをコーティングされているのだが、それでもナノハの攻撃に備える必要はあったのである。
そして攻撃に備えられるように準備が終わると、その直後にナノハの放った砲撃がヴォルフラムに直撃するのだった。
「くっ、」
かなりの振動をヴォルフラム内で感じられ、揺れているのだった。
そんなことは想定内ではあったのだが、すぐに予想外の事が起こるのだった。
「なっ!? 画面がショートしました!?」
「あ、ありえへんやろそんなの!? しかも画面だけってどういうことや!?」
「分かりません。あの砲撃魔法は確かに防御はしているのですが……」
確かに、ヴォルフラムは完全にナノハの放ったティルヴィング・フルアクセスブレイカーを防いではいるのであるが、それなのに画面がショートする原因が全く分かっていなかった。
しばらくすると砲撃が収まり、被害は画面がショートしただけで済むのだった。
「……これでは、完全に様子をうかがうことが出来ないね」
「一応、シグナム三等空佐、ヴィータ一等空尉には連絡は取れるんやろうな?」
「はい、画面には映りませんが、声だけなら大丈夫のようです」
「まるで画面の所だけショートさせたような感じやな。とりあえず繋いでくれへんか?」
「分かりました」
はやての命令ですぐにヴィータとシグナムの二人に繋げる。
「繋がりました」
「ヴィータ一等空尉、そちらはどんな状況や?」
『はやてか。今、フィルノ・オルデルタの所へシグナムと一緒に向かっている所だが、なんかあったのか?』
「さっきの砲撃で、ヴォルフラムに直撃を受け、完全に防御しきったと思ったんやけど、画面がショートしたようでな。そちらの状況が今把握できないんや」
『じゃあ、さっきの砲撃は!?』
「その通りや。おかげでこちらからはどういう状況か把握できんへんから、そちらから状況を聞こうと思ってな」
はやての言葉にヴィータは驚いているようだったが、代わりにシグナムが状況を伝えるのだった。
『あの砲撃の後、向こうは何も動かずにその場に居るままだが、今の所何も――』
「シグナムどうしたん?」
突然言葉が止まったことにはやては気づき、一体何があったのかと思うが、すぐにヴィータは言葉を返す。
『あぁ、すまん。どうやらのんびりしている場合ではないらしい。向こうが転移魔法を発動させてここから退却しようとしてるのでな』
『だから、それを阻止しようと今から向かうつもりだ』
「待つんや!! 向こうの戦力は分からへんから無暗に戦わなずに、それ以上深追いはせえへん方がええ!! フェイトちゃんでもかなりの負傷を負ったのやぞ!!」
さすがにそれをヴィータとシグナムにこれ以上戦わせたとしても勝ち目ないし、
『ならそのまま逃がせと言うのかよ!! 確かにあたしたち二人では勝ち目がないかもしれないけど!!』
「分かっているなら今すぐ向こうが転移したら戻ってくるんや!! それに、さっきの攻撃はどう見たって本気ではないから、もし本気で戦ったら死ぬ可能性だってあるんだぞ!!」
『……分かった。主はやての言葉に従うとしよう』
『シグナム!! どうしてだよ!!』
シグナムがはやての言葉に従ったことにヴィータはシグナムに対して怒っていたが、シグナムは冷静に返す。
『冷静に考えたら、それが一番いいだろう。主はやての言うとおり、このまま戦ったとしたら絶対に負けると言っていい。たとえ増援を貰ったとしてもな』
『分かっているよそんなことは。だけど、そう易々と逃がすことが許せねぇんだよ!!』
『それは誰もが思っているさ。だけど今の状況では退却した方が一番いいだろう』
『……ちっ、分かったよ』
ヴィータは渋々であったが、はやてとシグナムの二人に言われて舌打ちをしながらも諦めるのだった。
だが、ヴィータがそう言わなければ、自分も言っていた可能性があるとシグナムは思い、ヴィータが居てくれたから冷静になれたのだと思うのだった。
「さて、とりあえず何かまだするかもしれへんから、向こうが転移魔法が終わったらこちらに戻ってくるように頼むな。一度時空管理局本部に戻らないといけなくなったし」
『『了解!!』』
ヴィータとシグナムはナノハ達が何かをするかもしれないと思い、転移魔法が終わるまで待機をするのだった。
そしてナノハ達が居なくなったのを確認し、ヴィータとシグナムの二人はヴォルフラムに戻り、ヴォルフラムは一度管理局へと戻るのだった。
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「さて、とりあえずディメルニアに帰ってきたが……」
フィルノは戻ってきてすぐに管制室ですぐにエメリアも集めて全員に言おうとするが、全員の目はナノハに向いていた。
ナノハは全員が自分を見ている事に気になったが、どうして自分を見ているのか大体察するのだった。多分自分の姿を見てこちらを見ているのだろうと思ったのである。
「あぁ、さっきも言ったが、口調などは変わったけど性格は私のままだからね。それに、一応今まで通りフィルノの言葉に私は従うだけだから」
「な、ならいいが……さて、これからの事だが」
ナノハの言葉を来て、フィルノは全員の方へ振り向き、他のみんなもフィルノの方を向いて、言葉を待つのだった。
「とりあえず、当分は前と同じように研究所の破壊をメインにする。そしてそれから数日してからあることをとやるつもりだ」
「ある事って?」
「それは後ほど教えるさ。まぁ、さすがにこの数日間は忙しかったから数日休んでから研究所の破壊をしてくれ。それじゃあ、当分の間はそれぞれ自由にしていてくれ」
一体数日後に何をするのかと思ってデュナが聞いたが、フィルノは今は教えず、とりあえず当分は休むように言うのであった。
そしてそれぞれが居なくなり、ナノハも自分の部屋へと戻るのだった。
管制室にはフィルノだけになり、フィルノは誰もいなくなると独り言をつぶやくのだった。
「さて、ここから始まるんだ。歴史を変えるような事件を、俺たちで動かすんだ――」
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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